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多様な天然炭素資源を活用する革新的触媒の創製

1.目標名

多様な天然炭素資源を活用する革新的触媒の創製

2.概要

 世界では、石油に依存する化学産業が急激に変容しつつある。米国では、シェール革命を受け、安価な天然ガス原料のエタンを使用して製造するエチレンが強い競争力を持ち始めている。中国でも、石炭を用いたメタノールの合成等が行われている。一方で、天然ガスに豊富に存在するメタンや低級アルカンを効率良く活性化する画期的な触媒の創製は非常に難度が高く、実現できれば、国際的にもインパクトが非常に高い。特に、二酸化炭素排出(エネルギー投入)が少ない製造技術に期待が高まっており、極めて高い技術の醸成が急務である。
 そのため、本戦略目標では、日本が誇る触媒研究の高い競争力を活かして、メタン(CH4)や、低級アルカン(CnHx: n = 2,3)等の多様な資源を、化成品原料やエネルギーとして活用するための革新的触媒を創製する。最先端の物質合成・計測・計算技術とデータ科学を利活用した物質探索を共通基盤として、原理解明と触媒創製を戦略的に推進し、多様な天然炭素資源を高効率に活用する社会を切り拓く。
 近年進化している、計算・計測技術を駆使することで画期的な触媒を設計及び創製することができれば、新たな触媒研究の基盤を確立することができるだけでなく、ナノテクノロジー・材料研究における新たな方法論を切り拓くことも期待でき、我が国のさらなる競争力強化につながる。

3.達成目標

 本戦略目標では、天然ガスの大半を占めるメタン(CH4)や、低級アルカン(CnHx: n = 2,3)等の多様な天然炭素資源を、化成品原料やエネルギーとして活用するための革新的触媒を創製することを目的とする。具体的には、以下の達成を目指す。
(1)メタンを化成品原料やエネルギーへ変換するC1化学を実現する触媒の創製
(2)低級アルカンを化成品原料やエネルギーへ高効率に変換する触媒の創製
(3)物質創製、計測・解析、理論計算、実験・計算データを利活用した物質探索の連携による、触媒反応の指導原理解明へ向けた共通基盤の確立

4.研究推進の際に見据えるべき将来の社会像

 3.「達成目標」に記載した事項の達成を通じ、以下に挙げるような社会の実現に貢献する。

  • 天然ガスに豊富に含まれるメタンや低級アルカン等、石油以外の多様な炭素資源を化成品や燃料に変換して利活用することが可能となり、我が国の根幹を支える基幹産業が形成されている社会。
  • 石油に依存しない多様な原料・エネルギー源活用型社会を構築することで資源リスクを減少するとともに、将来的にメタンハイドレードの利用が実現した場合、資源立国への道が拓けている社会。

5.具体的な研究例

(1)メタンを化成品原料やエネルギーへ変換するC1化学を実現する触媒の創製
 メタンを反応基質とし、メタノール等の高付加価値化成品への直接合成反応を実現する高活性・高選択性反応触媒を開発する。

(2)低級アルカンを化成品原料やエネルギーへ高効率に変換する触媒の創製
 エタン/プロパン等を反応基質とし、エチレングリコールや酢酸、プロパノールやアクリル酸等の高付加価値化成品への反応を実現する革新的な高活性・高選択性反応触媒を開発する。

(3)物質創製、計測・解析、理論計算、実験・計算データを利活用した物質探索の連携による、触媒反応の指導原理解明へ向けた共通基盤の構築
 触媒反応の実作動条件・その場での動的表面計測を実現する。大規模理論計算による触媒反応のマルチスケール、マルチフィジックス解析を実現する。マテリアルズインフォマティクスの活用による実験・計算データを利活用した物質探索を実現する。

6.国内外の研究動向

(国内動向)
 我が国の触媒研究は国外に対して高い競争力を有しており、バイオマスからの可溶化・糖変換、化成品触媒、太陽光を使った水分解・水素生成、二酸化炭素を燃料・原料へ変換する人工光合成等については、研究開発が鋭意進められている。一方で、メタン・低級アルカンを化成品原料やエネルギーとして利活用する研究は未踏の領域である。最近になり、従来の触媒研究とは異なる発想で常温アンモニア合成を可能としたエレクトライド触媒の研究(細野ら、2012)など、メタン・低級アルカンからの原料・エネルギー変換に資する可能性がある研究が活発化している。これらの周辺研究領域の知見や、計測・計算・データ科学の急速な進展を取り込み、メタン・低級アルカンからの原料・エネルギー変換へ取り組む体制を早期に構築する必要がある。

(国外動向)
 シェール革命を受けて、メタンや低級アルカンを利活用する技術開発は各国の産業競争力へ直接的な影響を及ぼすこととなったため、欧米を始めとする各国で研究開発が進められている。
 例えば、露国では、亜酸化窒素を用いてメタンからメタノールの選択合成で160度において最大96パーセントを達成したとの報告がなされている。また、米国では、米エネルギー省における挑戦的な先端研究へのファンディングプログラム・ARPA-Eにおいて、2013年からメタン資化性微生物を使って、メタンを液体燃料に変換する小規模プロセスを開発するプロジェクトの支援が行われている。加えて、ベンチャー企業が、微生物を利用したメタンからの化成品製造へ取り組んでいる。

7.検討の経緯

 「戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会 報告書」(平成26年6月27日)に基づき、以下の通り検討を行った。

(サイエンスマップ及び科研費DBを用いた国内外の研究動向に関する分析資料の作成)
 「サイエンスマップ2012&2010」(平成26年7月31日科学技術・学術政策研究所)及び科学研究費助成事業データベースにおける情報を用いて、国内外の研究動向に関する分析資料を作成した。

(分析資料を用いた専門家へのアンケートの実施及び注目すべき研究動向の作成)
 「科学技術振興機構研究開発戦略センター」や「科学技術・学術政策研究所科学技術動向研究センターの専門家ネットワークに参画している専門家」に対し、作成した分析資料を用いて今後注目すべき研究動向に関するアンケートを実施した。その後、アンケートの結果の分析等を行い、注目すべき研究動向として「エネルギー高効率変換に向けた革新的触媒の創製」を特定した。

(ワークショップの開催及び戦略目標の作成)
 注目すべき研究動向「エネルギー高効率変換に向けた革新的触媒の創製」に関係する産学の有識者が一堂に会するワークショップを開催し、特に注目すべき国内外の動向、研究や技術開発の進展が社会的・経済的に与え得るインパクトやその結果実現し得る将来の社会像、研究期間中に達成すべき目標などについて議論を行い、ワークショップにおける議論等を踏まえ、戦略目標を作成した。

8.閣議決定文書等における関係記載

科学技術イノベーション総合戦略2014(平成26年6月24日閣議決定)
第2章第1節1.3.(3)<1>
シェールガス、非在来型原油や二酸化炭素等多様な原料から効率的にエネルギー・化学品の生産を図る革新的触媒技術等及び微生物やバイオマスによるエネルギー資源の生産技術を研究開発する

9.その他

○触媒がカバーする研究領域は幅が広く、プロジェクトごとにターゲットとしている領域が異なる。大型プロジェクトの主な対象は以下の通りである。

  • 平成24年度戦略目標「環境、エネルギー、創薬等の課題対応に向けた触媒による先導的な物質変換技術の創出」の下で行われている研究では主に二酸化炭素を変換する化成品触媒や太陽光を使った水分解・水素生成を対象としている。
  • 科学技術振興機構の先端的低炭素化技術開発(ALCA)ではバイオマスからの可溶化・糖変換や、化成品触媒を対象としている。
  • 経済産業省では人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)において、太陽光と光触媒を使った水分解反応により生成した水素を用いて、二酸化炭素を原料へ変換する人工光合成へ取り組んでいる。
  • 平成24年度戦略目標「環境・エネルギー材料や電子材料、健康・医療用材料に革新をもたらす分子の自在設計『分子技術』の構築」、平成25年度戦略目標「選択的物質貯蔵・輸送・分離・変換等を実現する物質中の微細な空間空隙構造制御技術による新機能材料の創製」の下で行われている一部の研究では、バイオマスからの可溶化・糖変換や、化成品触媒を対象としている。

○このように、本戦略目標で対象とするメタンや低級アルカンからの化成品原料やエネルギーへの変換は重要な領域であるにも関わらず、現在までに対象としているプロジェクトがない未踏領域であり、本戦略目標の下で行われる研究に関して、他機関とも連携した体制を構築していくことが期待される。

お問合せ先

研究振興局基礎研究振興課

課長:行松 泰弘、基礎研究推進室長:岩渕 秀樹、室長補佐:浅井 雅司、基礎研究・機構係長:春田 諒
電話番号:03-5253-4111(内線4386)、03-6734-4120(直通)

-- 登録:平成27年05月 --