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二次元機能性原子・分子薄膜による革新的部素材・デバイスの創製と応用展開

1.戦略目標名

二次元機能性原子・分子薄膜による革新的部素材・デバイスの創製と応用展開

2.達成目標

近年のナノテクノロジーやナノエレクトロニクス技術の進展に伴い、構造の特異性・新規性に基づいた多様かつ驚異的な物性や機能が明らかになりつつあり、世界的に注目されているグラフェンやトポロジカル絶縁体を先行例として、二次元機能性原子・分子薄膜(原子・分子の二次元的構造、あるいはそれと等価な二次元的電子状態を表面・界面等に有する機能性を持った薄膜物質)の基礎学理の構築と革新的部素材・デバイスへの応用双方の視点を包括する研究を戦略的に推進することにより、以下の目標を達成することを目指す。

○二次元機能性原子・分子薄膜のシーズ技術の先鋭化や多様性の拡大に資する新構造原子・分子薄膜及びその特性・機能を保持した革新的部素材・デバイスの創出
○機能性原子・分子薄膜の特性・機能の研究による薄膜創成や部素材・デバイス設計に係る学理の創出
○社会的ニーズに応える機能性原子・分子薄膜による多様な革新的部素材・デバイスに係る基盤技術の創出

3.将来実現しうる重要課題の達成ビジョン

従来のバルクや一般的な薄膜とは異なる特性・構造(高キャリア移動度、低抵抗性、柔軟性、透明性、高強度、高耐熱等)を持ち、新しい機能や従来材料の特性を凌駕(りょうが)する機能の発現が期待される二次元機能性原子・分子薄膜の研究開発を推進し、新規材料や革新的部素材・デバイスに展開することで、主として以下の3点の実現が期待される。

○アプリケーション・ニーズに資する新機能・新物質・新現象の発見及び複数の学術分野間(物理学、化学、関連するデバイス工学等)の連携促進。
○次世代の部素材・デバイスに求められる省エネルギー化、小型化、軽量化、及び新機能の創出
○部素材産業やエレクトロニクス産業並びに次世代のデバイス・システムの創出等に供される関連産業の国際競争力の強化

4.具体的内容

(背景)
二次元機能性原子・分子薄膜には、1:二次元性という構造の単純性や独特の対称性等に起因して三次元物質と比べて特異な性質を有する、2:異種材料との組合せが容易である、3:薄膜であるが故に例えば電界による外部変調が容易である、等の多くの長所があり、新たな機能発現の場として利用できる可能性がある。同時に、これらの課題の達成においては、新たなサイエンスが切り拓(ひら)かれる可能性が含まれており、実験及び理論面において新概念が創出される期待が大きい。
これまでは、高品質な二次元機能性原子・分子薄膜の安定的な作製は必ずしも容易ではなかったものの、グラフェンを始めとして、様々な新しい二次元薄膜作製に係る手法の提案が試みられている。我が国でも、これまで半導体分野で培われた結晶成長技術など、多くの技術や知識が蓄積されており、それらを活用して従来の薄膜とは異なる究極の物質としての二次元機能性原子・分子薄膜に係る研究を推進することで、新たな現象・原理に基づく革新的な特性を有する材料、部素材・デバイス創製への展開が大きく開けることが期待される。
このような新しい展開を引き起こすためには、物性実験・理論、合成化学、デバイス工学等の分野の研究者との連携促進が不可欠であるとともに、近年進展の著しい計測技術や計算科学との協働も必須である。

(研究内容)
構造の特異性・新規性に基づいた多様かつ高度な特性・機能の発現が期待されている二次元機能性原子・分子薄膜に関して、構造と機能に関する基礎学理の構築と、機能性部素材・デバイスへの応用の双方の視点を包括する研究を戦略的に推進する。例としては以下のとおり。

○二次元機能性原子・分子薄膜のシーズ技術の先鋭化や多様性の拡大に資する新構造原子・分子薄膜及びその特性・機能を保持した革新的部素材の創出・デバイスの創出
・原子・分子薄膜の完全結晶実現を志向する結晶成長・合成技術の創出
・原子・分子薄膜の構造や物性に関する計測・解析・加工プロセス技術開発

○機能性原子・分子薄膜の特性・機能の研究による薄膜創成や部素材・デバイス設計に係る学理の創出
・部素材・デバイス設計に本質的に重要な、電子輸送特性、光吸収特性、フォノン散乱、熱伝導、スピン流等の物理的・化学的相互作用に起因する物性に関する基礎的知見の探求とその蓄積

○社会的ニーズに応える機能性原子・分子薄膜による多様な革新的部素材・デバイスに係る基盤技術の創出
・異方的な電子輸送特性や熱伝導性、物質選択性など、二次元性の特徴を生かした部素材創成のための基盤技術、あるいは大面積化・大量生産化等の技術に関する研究
・透明電極・配線・導電性薄膜など、極限薄膜としての導電性に着目し、同時にその他の特異的物質機能を付加した応用技術に関する研究
・センサーデバイス等、原子・分子薄膜の物性が物質の吸着などにより敏感に変化する性質(高感度性)をデバイス応用する技術に関する研究
・高速電子デバイス等、原子・分子薄膜中の電子の高速輸送特性など特有の優れた電子物性をデバイス応用する技術に関する研究
・原子・分子薄膜と異種材料との接合による新機能デバイスの提案と原理実証

5.政策上の位置付け(政策体系における位置付け、政策上の必要性・緊急性等)

第4期科学技術基本計画(平成23年8月19日閣議決定)では、我が国が直面する重要課題への対応として、「産業競争力の強化に向けた共通基盤の強化」が求められており、「付加価値率や市場占有率が高く、今後の成長が見込まれ、我が国が国際競争力のある技術を数多く有している先端材料や部材の開発及び活用に必要な基盤技術、高機能電子デバイスや情報通信の利用、活用を支える基盤技術など、革新的な共通基盤技術に関する研究開発を推進するとともに、これらの技術の適切なオープン化戦略を促進する」こととされている。
また、科学技術イノベーション総合戦略(平成25年6月7日閣議決定)では、クリーンで経済的なエネルギーシステムの実現に向けて、「革新的デバイスの開発による効率的エネルギー利用の取組」を進め、そのことにより、「革新的デバイスを用いた製品による新市場の創出及び我が国の国際競争力強化を図るとともに、エネルギーの効率的な利用と国際展開をねらう先端技術を有する社会を実現する」こととされている。
さらに、日本再興戦略-JAPAN is BACK-(平成25年6月14日閣議決定)では、クリーン・経済的なエネルギー需給の実現に向けて、「広域系統運用、無駄を徹底排除するデバイス・部素材や蓄電池の普及により、時間・場所の制限を超えた効率的なエネルギー流通を達成し、日本全体で最適なエネルギー利用が可能となる社会を目指す」こととされている。
以上から、本戦略目標下で実施する研究開発の実施により、大幅な軽量化や小型化、低消費電力化等を実現する革新的部素材・デバイスを用いた製品やシステムに供される関連産業の国際競争力強化を図ることは、政策的にも求められているところである。

6.他の関連施策との連携及び役割分担・政策効果の違い

我が国では、例えば戦略目標「ナノデバイスやナノ材料の高効率製造及びナノスケール科学による製造技術の革新に関する基盤の構築(平成18年度設定)」や「新原理・新機能・新構造デバイス実現のための材料開拓とナノプロセス開発(平成19年度設定)」の下、二次元機能性原子薄膜に関連する公的研究開発は部分的に実施されているものの、いずれも個別の要素技術に特化した研究課題の域を出ない状況にあり、今後の国際競争に対応できるような、本戦略目標で掲げる基礎と応用をシームレスにつなぐ、様々な要素技術と応用開発を包括する取り組みはなされていないのが現状である。本戦略目標においては、近年、欧米アジア各国でもグラフェン関連の研究開発に戦略的に資金が投入される中、大学等におけるこれまでの取組の成果を積極的に活用するとともに、「情報デバイスの超低消費電力化や多機能化の実現に向けた、素材技術・デバイス技術・ナノシステム最適化技術等の融合による革新的基盤技術の創成(平成25年度設定)」等の関連する戦略目標やプロジェクト間と緊密な連携を確保し、速やかな成果の実用化を目指す。
さらに、経済産業省の協力を得て、当該目標において創出される成果を民間企業のプロジェクトへ速やかに展開し(例えば、実用化への取組を行う研究機関や民間企業の部材試作ラインを活用する。)、あるいは経済産業省の事業において発生する科学的に深堀を要する課題について、本戦略目標に参画する研究者の協力を得て解決を図る(例えば、民間企業等から研究を受託する。)といった取組を実施する。特に、幅広い産学官の研究者が集結するTIA(つくばイノベーションアリーナ)の枠組みを最大限生かし、本目標におけるオールジャパンのドリームチームによる基礎研究の成果を、我が国の産業競争力の強化に直結する体制を構築する。

7.科学的裏付け(国内外の研究動向を踏まえた必要性・緊急性・実現可能性等)

これまで日本は、部素材の産業が、自動車産業やエレクトロニクス産業とともに国際的な競争力を得てきており、これらを支える役割を担ってきた。世界の主要各国は、研究開発の拠点化とアライアンス化を進める一方、日本企業の研究開発アクティビティは大幅に低下しており、更に昨今の公的な研究開発投資低減の流れのもとで、アカデミアの基礎研究・開発も他国に後れをとりつつあるのが現状であり、今後、長期的観点に立って革新的部素材・デバイスに係る基盤技術を創出し、育てていくことは喫緊の課題である。
一方で、日本でも基盤的な研究成果は幾つか出てきている。例えば、2010年のノーベル物理学賞の受賞研究対象となったグラフェンを従来のシリコンに代わる半導体材料として利用する場合に鍵となるバンドギャップ導入に関して、日本の物質・材料研究機構の研究グループが、電界効果型トランジスタ(FET)構造を用いたバンドギャップ導入を確認した。現時点では電気伝導率の面から、すぐに実用化に至ることは難しいとされているものの、欧米・アジア各国ではグラフェンの産業応用での大型の研究開発投資を進めている。グラフェン素子におけるバンドギャップ制御技術の確立は”Beyond CMOS”実現につながり、半導体技術の観点からも注目すべき研究である。
グラフェンに関しては2010 年のノーベル物理学賞受賞対象研究となったことからも明らかなように、現在精力的な研究が世界中で行われており、ナノカーボン研究において最も注目すべき分野であるといえる。ただし、我が国の研究開発施策は欧米に比較して不活発であり、この分野全体としてみたときの国際的な貢献も低いとの声が大勢である。特に、欧州では、グラフェンがEU Future Emerging Technology flagshipに採択され、今後10年間で10億ユーロが措置される予定である。また、アジアでも韓国を中心に、グラフェン関連の研究成果が目立ってきており、今後の産業化へのシナリオ次第では強力な存在となる可能性がある。
我が国は材料分野の研究では国際的にトップレベルであり、機能性原子・分子薄膜研究では、物理学者と化学者の連携・融合が核心であることを考えると、今後の我が国の取り組みとして、周辺分野との融合、応用分野との垂直連携を基軸とし、これまでに培ったナノカーボン材料研究に係る技術と手法、人材を基にして、人材育成や国際連携も視野に入れた大型の国家プロジェクトやプログラムを推進すべきである。

8.検討の経緯

科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 ナノテクノロジー・材料科学技術委員会がまとめた「ナノテクノロジー・材料科学技術の研究開発方策について<中間取りまとめ>」(平成23年7月)において、「エレクトロニクスの省エネルギー化、多機能化」が課題解決に向けた重点研究開発課題とされ、省エネルギー性能の向上やグローバルな競争環境を注視しながら研究開発を加速することが重要であるとされた。具体的な課題として「カーボンナノチューブ、グラフェン等のカーボンナノエレクトロニクス」が挙げられ、自在制御など実用化に向けた課題の克服が必要とされた。
グラフェンを始めとする二次元薄膜が注目を集めている中、独立行政法人科学技術振興機構研究開発戦略センター(CRDS)科学技術未来戦略ワークショップ「機能性原子薄膜/分子薄膜の創生と展開」(平成24年2月)が開催され、エレクトロニクス動作に際してのエネルギーロス最小化には、究極的に薄い膜、つまり原子薄膜、分子薄膜が理想的であることが指摘された。
上記の議論を踏まえ、CRDS戦略プロポーザル「二次元機能性原子薄膜による新規材料・革新デバイスの開発」(平成24年3月)が策定された。
本戦略目標案は、これらの検討の結果を踏まえて作成したものである。

9. 留意点

お問合せ先

研究振興局基礎研究振興課

課長:安藤 慶明、基礎研究推進室長:岩渕 秀樹、専門職:森島 健人、基礎研究・機構係:春田 諒
電話番号:03-5253-4111(内線4386)、03-6734-4120(直通)

-- 登録:平成26年02月 --