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人間と機械の創造的協働を実現する知的情報処理技術の開発

1.戦略目標名

人間と機械の創造的協働を実現する知的情報処理技術の開発

2.達成目標

情報科学技術(知的情報処理技術関連)を中心に、認知科学、ロボティクス(知能・制御系)の学問分野と融合した新たな領域を構築し、人間と機械の創造的協働を実現する統合的な知的情報処理技術を開発するため、以下の目標の達成を目指す。

○場の状況と話の流れに応じた対話の実現に向けた知的情報処理技術の開発
○人間と機械の創造的協働を実現する知的情報処理システムの開発に向けた対話、作業等のメカニズムの解明と技術開発

3.将来実現しうる重要課題の達成ビジョン

本戦略目標下において、「2.達成目標」に記載した研究成果を得られることにより、現在の知的情報処理技術では解明できていない、場の状況と話の流れに応じた対話の実現に向けた知的情報処理技術や、人間と機械の創造的協働を実現する知的情報処理システムの開発に向けた対話、作業等のメカニズム解明と技術開発を行い、それらの技術を統合して新たな知的情報処理技術を創出することを目指す。
本事業終了後に、これらの研究成果を実証的に展開・発展させることで、2025年頃には、

・高度な質問応答・助言システム(高齢者支援、個別教育、医師の診断支援 等)
・高度な意思決定支援システム(専門家の議論支援、政策・制度設計支援 等)
・自律的ロボット(人間が行う作業の模倣、災害救助、介護者の支援 等)

等の知的情報処理システムを開発することにより、アンビエントな情報社会が構築され、我が国の重要課題である安全かつ豊かで質の高い生活の実現や新たな知の創造、イノベーションによる新産業・新サービスの創出等に貢献することを目指す。

4.具体的内容

(背景)
複雑化した社会において、人間は多様な情報や価値判断から適切な問題解決や創造活動を行う等、多様な知的活動を行っている。また、認知科学の分野では、人間の知的処理の原理解明が進められており、ロボティクス分野では、課題達成型ロボットの開発・実用化が行われている。
現在の知的情報処理技術の開発では、人間の知的活動を工学的に実現するために、音声認識、自然言語処理等、個別タスクごとに研究開発や音声対話等の研究開発が進んでおり、このアプローチに認知科学やロボティクス(知能・制御系)のアプローチを追加することで、相乗効果を発揮するような協働研究体制が構築できる。また、異分野の研究を融合することにより、イノベーションの創出の期待が高まる。

(研究内容)
本戦略目標では、上記達成目標を実現するため、情報科学技術(知的情報処理技術)の研究者を中心に、認知科学、ロボティクス(知能・制御系)の研究者と協働研究体制を構築し、人間と機械の創造的協働を実現する統合的な知的情報処理技術の開発を目指す。具体的には以下の研究を想定する。

1)場の状況と話の流れに応じた対話の実現に向けた知的情報処理技術の開発
・特定の人間の周辺環境や、対話する人間の行動(相手の態度、声の抑揚、言葉使い等)把握等、非言語の情報により状況を把握する技術の開発
・人間が発した言語から多様な意味や解釈を生成し、場の状況や話の流れに基づく推論を加えて理解する技術の開発
・対話する人間の特性(性格や習慣等)に基づき、適切な対話を実現するための情報表現生成技術、タイミング制御技術の開発 等

2)人間と機械の創造的協働を実現する知的情報処理システムの開発に向けた対話、作業等のメカニズムの解明と技術開発
・対話を通じて曖昧性を減少させ、解決すべき課題を定義する技術の開発
・機械が対話で得た情報やWebに存在する情報等に基づき、人間に対し効果的に回答、提案、助言等の解決策を提示する技術の開発
・人間と機械の対話プロセスも含めた意味レベルで適応的な振る舞いをする情報システムの開発 等

なお、統合的な知的情報処理技術の開発に当たっては、倫理的・法的・社会的課題に配慮するために、関連する人文社会系の研究者の助言・提案を研究開発段階から取り入れておくことが求められる。

5.政策上の位置付け(政策体系における位置付け、政策上の必要性・緊急性等)

第4期科学技術基本計画(平成23年8月19日閣議決定)では、「安全かつ豊かで質の高い国民生活の実現」において、「国民生活の豊かさの向上」として、人々の生活における真の豊かさの実現に向けて、最新の情報通信技術等の科学技術を活用した公共、民間のサービスの改善・充実、人々のつながりの充実・深化等、科学技術による生活の質と豊かさの向上に資する取組を推進すると掲げている。さらに、「科学技術の共通基盤の充実、強化」として、複数領域に横断的に活用することが可能な科学技術や融合領域の科学技術に関する研究開発を推進すると掲げている。
科学技術イノベーション総合戦略(平成25年6月7日閣議決定)では、「世界に先駆けた次世代インフラの整備」において、「次世代インフラ基盤の実現」として、インフラが有機的・効率的に構築され、データや情報が流通・循環し、生活者や企業の潜在的なニーズを取り込むことで、生活者のQOLが向上するほか、企業の経済活動の支援等、生活の豊かさと安全・安心を実感できる社会を目指すと掲げている。
日本再興戦略-JAPAN is BACK-(平成25年6月14日閣議決定)では、「ITを利用した安全・便利な生活環境実現」において、ビッグデータ等を活用して、安全・便利な生活が可能となる社会を実現するため、関係各府省が連携し、重点課題について、ITを活用分野複合的な解決に取り組むと掲げている。
世界最先端IT国家創造宣言~第二次安部内閣の新たなIT戦略~(平成25年6月14日閣議決定)では、「研究開発の推進・研究開発成果との連携」において、情報通信社会の今後の動向を見据えた研究開発を推進するとともに、イノベーションにつながる様々な先端技術を迅速かつ的確にIT戦略と連携させるため、研究開発を推進すると掲げている。

6.他の関連施策との連携及び役割分担・政策効果の違い

独立行政法人科学技術振興機構(JST)CRSET「共生社会に向けた人間調和型情報環境の構築」(平成21年度開始)は、実空間コミュニケーション、ヒューマンインタフェース、メディア処理などの要素技術を融合・統合し、「人間と情報環境の調和」を実現する基盤技術を構築することを目的としている。また、JSTさきがけ「情報環境と人」(平成21年度開始)は、ユビキタスコンピューティングや、ユーザビリティテスト、統計分析など利用現場における知的機能の評価研究、知的機能のネットワーキング等を目的としている。一方、本戦略目標は、人間と機械とのインタフェースにとどまらず、人間の知的活動の質向上や人間と機械の創造的協働を実現することや、情報から「知」を取り出し、人間の知的活動を支援するツールや共通的基盤技術の構築することを目指しているものであり、他の関連施策と連携して取り組むことにより、相乗的な効果が期待される。

7.科学的裏付け(国内外の研究動向を踏まえた必要性・緊急性・実現可能性等)

欧州では、EUの第7次研究枠組み計画(FP7)において自然言語解析技術がWork Programの一つにあげられ、関連した取組として言語解析ツールの相互運用や機械翻訳のプロジェクトに年間5000万ユーロ(約65億円)の予算が割り当てられている。
また、米国では、DARPAにおいて、自然言語処理や画像の深い意味理解技術が重要な目標に位置づけられており、Machine Reading Program(年間2000万ドル:約20億円)等、大規模な予算が割り当てられている。また、Google、Amazon、Apple、IBM等の巨大IT企業は、世界をITビジネスで圧巻しているだけでなく、情報通信技術においても最先端の研究開発を進め、世界をリードしている状況である。特に、知的情報処理技術の関連では、IBMは質疑応答システム「ワトソン」を開発し、1997年に、当時のチェス世界チャンピオンに勝利し、2011年にはクイズ番組「ジェパディ!」で人間との対戦による総合優勝等の成果を上げている。 さらに、IBMは平成26年1月、「ワトソン」の本格的な事業化に向け、10億ドルを投資すると発表した。現在、医師の診断支援システムだけでなく、金融、小売、官公庁等、幅広い業界に応用することを進めようとしている。
我が国においては、知的なICTを実現するための分野融合的な取組として、国立情報学研究所の「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトがある。これは人とは独立に機械のみによって東大入試レベルの統合的なAIを実現しようとする試みである。我が国の現在の知的情報処理技術の開発は、人間の知的活動を工学的に実現するために、音声認識、自然言語処理など個別タスクごとの研究開発が進んでおり、知的なICT技術を社会へ適用していくためには、人と機械の創造的協働を実現する人間参加型の枠組みでの研究開発の取組が今後重要である。
知的情報処理技術の研究開発においてこのまま米国や欧州に大きくリードを許し続ければ、あらゆる科学技術分野において研究開発スピードに後れを取ることになり、我が国の国力にも影響を及ぼすことから、研究開発は一刻の猶予も許されない状況である。

8.検討の経緯

JST研究開発戦略センター(CRDS)情報科学技術分野の俯瞰活動において、新しい社会的価値を創造するために出現しつつある重要な技術開発として、知的情報処理技術、サイバーフィジカルシステム、ビッグデータの3項目を抽出した。その後、知的情報処理技術について、核となる有識者によるコアメンバー会議の開催(平成25年4月)等、本戦略目標において取り組むべき内容について議論を進めた。
平成25年7月には、CRDSが国内外からの有識者を集めて本戦略目標に関する科学技術未来戦略ワークショップを開催して、取組内容の詳細化と異分野連携や研究者コミュニティの醸成を図った。本ワークショップにおいて、知的情報処理システム作成、人間と機械の協働、知的活動に関わる人を増やすための人間を刺激するための知のシステムの構築等、複数の提案があった。
本戦略目標は、これらの検討の結果を踏まえて策定したものである。

9. 留意点

本研究開発の実施に当たっては、個々の研究チームが独立した要素技術の開発に終始することのないよう、統合的な研究体制を形成することが必要である。
また、本事業では開発した技術を統合して新たな知的情報処理技術を創出し、本事業終了後に知的情報処理システムの開発を目指していることから、研究開発の成果として、特定分野でのサービスをデモンストレーションできるよう、研究領域を推進していくことが重要である。

お問合せ先

研究振興局基礎研究振興課

課長:安藤 慶明、基礎研究推進室長:岩渕 秀樹、専門職:森島 健人、基礎研究・機構係:春田 諒
電話番号:03-5253-4111(内線4386)、03-6734-4120(直通)

-- 登録:平成26年02月 --