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選択的物質貯蔵・輸送・分離・変換等を実現する物質中の微細な空間空隙構造制御技術による新機能材料の創製

1.戦略目標名

 選択的物質貯蔵・輸送・分離・変換等を実現する物質中の微細な空間空隙構造制御技術による新機能材料の創製

2.達成目標

 空間空隙構造制御技術(物質を構成する元素間結合の隙間(「空間空隙」)の形状・寸法・次元及び配列等の構造を自在に設計・制御・活用するための共通基盤となる技術)により,そのもととなる物質が本来持ち得なかった革新的な機能を創出し,通常の材料では解決できない環境・エネルギー,医療・健康等における諸課題を解決するグリーン/ライフ部素材の創製に向け,以下の目標の達成を目指す。

○ 選択的物質貯蔵・輸送・分離・変換等を可能とする革新的な空間空隙制御材料の創製
○ 空間空隙構造制御技術に係る技術体系の構築

3.将来実現し得る重要課題の達成ビジョン

 本戦略目標において「2.達成目標」に記載した研究成果が得られることで,その諸技術を活用した新たな機能を持った材料が創製され,幅広い社会ニーズや産業分野での課題解決に適用することが可能となる。デバイスや医薬品等の各応用分野に応じて,学術界と量産・市場化等を担う産業界との協力体制を早期から構築することにより,第4 期科学技術基本計画(平成23年8月19日閣議決定)に掲げられたグリーンイノベーション及びライフイノベーションの推進に向け,環境・エネルギー,医療・健康,社会インフラ等の分野から,例えば,以下の成果が事業終了後5年程度で得られることを目指す。
・不安定な気体を効率的に貯蔵・輸送し,かつ自在に分離・変換する技術の開発
・排水や汚染水,大気の浄化を高性能かつ経済的に行う分離膜の開発
・感知機能や有効成分の放出調整機能を備えたドラッグデリバリーシステムの開発
・耐震・免震機能を飛躍的に向上する空隙率制御による超軽量・高強度構造材料の開発
 このほか,太陽電池・二次電池等のエネルギー変換材料や,半導体・超伝導等の電磁気材料,センサー・生体適合材料等の分子認識材料といった様々な分野での実用化が考えられる。

4.具体的内容

(背景)「空間空隙」を舞台とする新しい概念へ!
 近年,物質・材料の設計の自由度及び組成・構造の制御性が格段に向上し,持続可能社会の実現に不可欠な新機能を発現する物質・材料の創出が可能となってきている。この10年間の成果として,ポーラス(多孔質)材料,メソポーラス材料,カゴ状構造物質などで,特異なナノ構造を特徴とする新物質の形成法や多様な機能を引き出すシーズ技術が発掘され,熾烈(しれつ)な国際競争の中で,技術の先鋭化が著しく進展してきた。現時点で我が国は素材産業において世界的に高いシェアを誇り,基礎的な研究も高いレベルにあるが,今後も競争力を維持できる保証はない。特に,物質・材料に対し,高エネルギー変換,超伝導,高イオン伝導,耐熱,高機械強度,軽量,生体活性,医療,創薬等に関わる新機能の発現や,飛躍的な機能向上に対する要求が世界的に高まっている中,各国に先駆けて,「界面」「表面」といった概念から歴史的に一歩進んだ「空間空隙の活用」という新しい概念の下,革新的な次世代新機能材料を開発・供給していくという戦略が今こそ求められている。
(研究内容)「空間空隙」を活用した新機能の創出へ!
 本戦略目標で提示した空間空隙構造制御による新機能材料の創製という新たなコンセプトの下,それを目指す過程で創出される多数の技術シーズを基盤とし,基礎・応用,物理・化学など,立場の異なる研究者間の意識を高いレベルで共有し,人的ネットワーク形成を促進しつつイノベーション創出を図る。具体的には,達成目標である「選択的物質貯蔵・輸送・分離・変換等を可能とする革新的な空間空隙制御材料の創製」の実現に向けた(1)技術シーズに基づく機能先鋭化の課題及び(2)社会実装に向けた基盤的技術課題と,達成目標「空間空隙構造制御技術に係る技術体系の構築」に向けた(3)材料創製の基盤となる観察・解析技術,原理解明等に係る課題を相互に連携しつつ推進することにより,達成目標及び将来ビジョンの実現を目指す。具体的には,以下の研究を想定する。
(1) 空間空隙制御材料の設計と合成<機能先鋭化>
・空間空隙制御材料における構造及び相互作用の設計と機能発現
・空間空隙構造を有する物質の新規合成技術開拓
(2) 空間空隙制御材料の実装<社会実装に向けた基盤的技術>
・ナノからマクロへの規模拡大,高強度化,高速合成,低コスト化
(3) 共通基盤技術の構築<観察・解析技術,原理解明>
・空間空隙制御材料における物理的諸現象(物質輸送・貯蔵及び物質・エネルギー変換等)の観測・解析技術
・計算機シミュレーション及びマルチスケール・モデリングによる空間空隙構造の合成プロセス及び構造と機能の設計・解析技術

5.政策上の位置付け(政策体系における位置付け,政策上の必要性・緊急性等)

 第4期科学技術基本計画では,産業競争力の強化に向けた共通基盤の強化のため,「付加価値率や市場占有率が高く,今後の成長が見込まれ,我が国が国際競争力のある技術を数多く有している先端材料や部材の開発及び活用に必要な基盤技術,高機能電子デバイスや情報通信の利用,活用を支える基盤技術など,革新的な共通基盤技術に関する研究開発を推進するとともに,これらの技術の適切なオープン化戦略を促進する」こととされ,また,領域横断的な科学技術の強化に向け,「先端計測及び解析技術等の発展につながるナノテクノロジーや光・量子科学技術,シミュレーションやe-サイエンス等の高度情報通信技術,数理科学,システム科学技術など,複数領域に横断的に活用することが可能な科学技術や融合領域の科学技術に関する研究開発を推進する」こととされている。さらに,「ナノテクノロジー・材料科学技術の研究開発方策について<中間取りまとめ>」(平成23 年7 月 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 ナノテクノロジー・材料科学技術委員会)においては,「国際的な優位性を保持するためには,革新的な技術の開発が不可欠であることから,社会的課題を設定する際に把握可能な技術のみに重点化するのではなく,中長期的観点から,潜在的可能性を持つ技術の創出に向けた研究開発等の取組も推進すべき」とされ,課題解決に向けた重点研究開発課題である「物質材料設計及び制御技術」の一つに「空間及び空隙構造の制御」が取り上げられている。
 以上のとおり,第4期科学技術基本計画に掲げられている重要課題「グリーンイノベーションの推進」「ライフイノベーションの推進」「我が国の産業競争力の強化」に向け,革新的な材料の開発が政策的にも求められているところである。

6.他の関連施策との連携及び役割分担・政策効果の違い

 現在,我が国の材料開発関連の戦略目標としては,物質・材料の特性・機能を決める元素の役割の解明を目指す「レアメタルフリー材料の実用化及び超高保磁力・超高靱性等の新規目的機能を目指した原子配列制御等のナノスケール物質構造制御技術による物質・材料の革新的機能の創出」(平成22 年度戦略目標)や,「環境・エネルギー材料や電子材料,健康・医療用材料に革新をもたらす分子の自在設計『分子技術』の構築」(平成24年度戦略目標)が存在する。これら既存の戦略目標は材料組成や成分そのものを改変させて「如何(いか)に新機能を創発させるか?」といった考え方であるのに対し,本戦略目標は元素や分子間に存在する「空間や空隙(カゴ)を如何に活用するか?」といった全く逆のアプローチである。すなわち,既存の戦略目標と目的や研究内容において相互補完関係にあり,新機能創出という共通目標を掲げて異なるアプローチから推進するものである。既存の戦略目標との相乗効果により我が国の材料開発の基盤を更に強固なものとすることで,環境・エネルギー,医療・健康等の諸分野における新材料開発において革新をもたらすことが可能となる。なお,空間空隙制御材料の一つの例として触媒やエネルギーキャリア(エネルギーの輸送・貯蔵のための担体)があるが,「環境,エネルギー,創薬等の課題対応に向けた触媒による先導的な物質変換技術の創出」(平成24年度戦略目標)及び「再生可能エネルギーの輸送・貯蔵・利用に向けた革新的エネルギーキャリア利用基盤技術の創出」(平成25年度戦略目標)との研究成果や基盤技術の共有等の連携を図ることが求められる。
 文部科学省においては,平成24年度より,ナノテクノロジーに関する研究設備の全国的な共用体制を構築する「ナノテクノロジープラットフォーム」事業を開始するなど,研究施設・設備の共用や異分野融合のための環境整備を促進している。本戦略目標においては,研究の効果的推進,既存の施設・設備の有効活用,施設・設備導入の重複排除等の観点から,大学・独立行政法人等が保有し広く開放されている施設・設備や産学官協働のための「場」等を積極的に活用することが求められる。

7.科学的裏付け(国内外の研究動向を踏まえた必要性・緊急性・実現可能性等)

 空間空隙制御材料としては,ゼオライト,メソポーラス材料,多孔性金属錯体(金属-有機骨格体(Metal Organic Framework (MOF))/多孔性配位高分子(Porous Coordination Polymer (PCP))等が主要な材料群となっている。特に,近年MOF/PCPに関係する論文数が中国を中心として世界的に増加傾向にあり,トムソン・ロイターの「Materials Science and Technology 2011」においても,3つの注目研究テーマの1 つにMOF が採り上げられ,当分野に対する中国の対応について,「これらのデータは,MOF の研究が中国の研究者と中国政府にとって優先的な研究分野であることを示しており,これは恐らく,単に学術的興味のためだけでなく,エネルギー貯蔵やその他の産業応用に向けた巨大な可能性を狙ってのことだろう」と紹介している。また,同社の論文引用数に基づく分析によると,“ドラッグデリバリーやバイオセンサーへの応用に向けたメソポーラスシリカナノ粒子(Mesoporous silica nanoparticles for drug delivery and biosensing applications)”や“高秩序メソポーラスポリマーカーボン構造(Highly ordered mesoporous polymer and carbon frameworks)”が世界的に注目されているところである。
 一方,我が国では,世界で初めてメソポーラスシリカの合成に成功するとともに,多孔性配位高分子(PCP)の応用可能性に1990年代から着目し世界的な成果を上げるなど,「空間空隙」を活用する試みは他国に先駆けて行われてきた。最近では,セメントの構成成分の一つでもあるナノサイズのカゴ状の骨格がつながった構造を有する12CaO・7Al2O3(C12A7,酸化カルシウム・酸化アルミニウム化合物)を活用した高活性なアンモニア合成触媒の実現が発表され,約100年前に確立されたアンモニア製造技術(ハーバーボッシュ法)に革新をもたらす可能性があるとして産業的にも学術的にも注目されており,また東日本大震災以降,セシウム等の放射性元素の回収・除去にゼオライト等のナノポーラス材料が着目されるなど,空間空隙制御材料による課題解決の新たな展開も期待されている。
 以上のような国内外の研究動向を踏まえ,我が国としてもこれまでの学術的・技術的・人的蓄積を生かし,「空間空隙」という新しい概念の下,応用展開を見据えた基盤的研究を早急に実施すべきである。

8.検討の経緯

 独立行政法人科学技術振興機構研究開発戦略センター(JST/CRDS)が開催した「物質・材料分野」俯瞰(ふかん)ワークショップ(平成20年12月)及び「ナノテクノロジー分野」俯瞰ワークショップ(平成21年8月)において,ナノテクによる新機能材料開発の重要性が改めて確認されるとともに,重要課題として「空間空隙制御・利用技術」が挙げられた。これを受け,科学技術未来戦略ワークショップ「空間空隙制御・利用技術」(平成21年10月)が開催され,「新物質開発を先導する指導原理の一つとして空間・空隙を設計・制御する方法論はコアとなる重要概念であり,そのための具体的な諸技術は社会課題解決や産業競争力強化に大きく寄与する」との共通認識が得られるとともに,具体的な技術的課題の抽出や制度設計上の課題に関する検討が行われた。上記の議論を踏まえ,JST/CRDS 戦略プロポーザル「空間空隙制御材料の設計利用技術~異分野融合による持続可能社会への貢献」が策定され,「微細な空間・空隙を設計・制御することにより,革新的物質機能を生み出す方法論」がコアとなる概念として示され,地球規模の社会的課題解決や,我が国の産業競争力強化に大きく寄与することが期待されている。
 以上の議論も踏まえ,科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 ナノテクノロジー・材料科学技術委員会が取りまとめた「ナノテクノロジー・材料科学技術の研究開発方策について<中間取りまとめ>」(平成23年7月)において,課題領域「科学技術基盤」における「物質材料設計及び制御技術」として,「空間及び空隙の制御(ナノ,マイクロ,ミリのマルチスケールのポーラス構造等で,高比強度,強靱性,選択透過性,反応性等の実現等)」が課題解決に向けた重点研究開発課題とされ,既存の組織を超えて活動を統合するような新たな枠組みが必要であるとの指摘がなされ,それ以降,継続的に議論が重ねられた。
 また,総合科学技術会議 科学技術イノベーション政策推進専門調査会 ナノテクノロジー・材料共通基盤技術検討ワーキンググループにおいて,今後強化すべき技術領域の一つとして空間空隙制御材料が取り上げられ(平成24年11月),特許網構築の重要性,実用化に向けた集中的な取組とともに,合成・物性・相互作用等のメカニズムの理解に向け,計算科学を含む基礎的なアプローチを並行して進めることの重要性が示された。
 本戦略目標は,これらの検討の結果を踏まえて作成したものである。

9. その他

 本戦略目標においては,「空間空隙」という新しい概念の下,応用展開を見据えた基盤的研究を推進することとしている。環境・エネルギー,医療・健康等における諸課題の解決のためには,空間空隙構造制御技術を軸に様々な研究領域の研究者が積極的に参入し,実質的に協働するための環境が必要となる。また,本戦略目標の成果を共通基盤技術の構築に向けて発展させていくためには,産業界との協力体制を早期から構築するなどの取組が重要である。

お問合せ先

研究振興局基礎研究振興課

課長:安藤 慶明、基礎研究推進室長:上田 光幸、室長補佐:野田 浩絵、基礎研究・機構係長:浜田 勇
電話番号:03-5253-4111(内線:4386)、03-6734-4073(直通)

-- 登録:平成25年03月 --