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情報デバイスの超低消費電力化や多機能化の実現に向けた,素材技術・デバイス技術・ナノシステム最適化技術等の融合による革新的基盤技術の創成

1.戦略目標名

 情報デバイスの超低消費電力化や多機能化の実現に向けた,素材技術・デバイス技術・ナノシステム最適化技術等の融合による革新的基盤技術の創成

2.達成目標

 従来のシリコンデバイスによる微細化,集積化が限界を迎える中,現在より2桁以上低い消費電力と2桁以上高速の情報デバイスを開発することを共通目標とし,将来のエレクトロニクス産業の基盤を確立するため,新規機能性材料の適用可能性の追求等による素材技術(先端材料や部材の開発及び活用に必要な基盤技術)の創出,新材料・新原理・新構造の論理素子・記憶素子の動作検証等によるデバイス技術の構築,先進的なナノテクノロジー等の実装に向けたナノシステム※最適化技術の創出,そしてそれら技術の融合に取り組むことにより,以下の目標を達成することを目指す。

○革新デバイスを下支えする新規機能性材料の創製及び適用可能性の追求による素材技術の創出
○超低消費電力,超高速,超大容量等を可能にする新材料・新原理・新構造の論理素子・記憶素子等による革新デバイス技術の創出
○異分野の要素技術を集積・統合・融合することによるナノシステムの最適設計に向けた基盤技術の創出

※本戦略目標においては,ナノテクノロジーを基軸として他分野の要素技術を集積・統合・融合し,全体として重要課題の解決に資する高度な機能を提供することが可能で,かつ社会的に認知される部品・装置・システムのことと定義する。

3.将来実現し得る重要課題の達成ビジョン

 本戦略目標において「2.達成目標」に記載した研究成果を企業等の実用化研究につなげることにより,その諸技術を活用した革新的なデバイスが開発され,情報通信機器やシステム構成機器の超低消費電力化,高機能化や多機能化の実現が可能となる。
 これにより,具体的には以下のような社会の実現につなげ,第4期科学技術基本計画(平成23年8月19日閣議決定)に掲げられた「エネルギー利用の高効率化及びスマート化」,「産業競争力の強化に向けた共通基盤の強化」,「領域横断的な科学技術の強化」等の達成に貢献することを目指す。
(1) あらゆる情報通信端末,情報デバイス等が超低消費電力化されることにより,省エネルギー時代に適合した持続可能な高度情報通信ネットワーク社会の形成に大きく貢献する。
(2) 新たな動作原理に基づくデバイスの融合による,タッチパネル,フレキシブルディスプレイ,太陽電池,バイオセンサ等,多方面での応用が可能となり,真のユビキタス社会が実現される。
(3) 知識基盤社会,低炭素社会,高度情報化社会等に対応した社会的付加価値を有する最終製品を生み出すことにより,我が国の国際競争力を堅持し,新たな産業構造を切り拓(ひら)く基幹産業が育成される。

4.具体的内容

(背景)
 現在,半導体産業は世界的に厳しい競争に直面しているが,最近の予測※1 では,2012年の市場規模は2,899億ドルと過去最高であった前年度をわずかに下回ったものの,今後も緩やかな成長を継続していくと予想されており,その位置付けについては,例えば「半導体産業は「見えるインパクト」と「見えざるインパクト」を通して,日本の社会,経済,環境に大きな影響を与えている」と紹介※2 されるなど,産業競争力の基盤としての役割を果たしている。また,今後の本格的なIT 化に伴い,我が国の情報量は爆発的に増大(情報爆発)し,試算では2025年には現在の100~200倍もの情報がインターネット上を行き交う時代となり,こうした情報爆発に対応すべく,情報を処理するIT機器の台数が大幅に増加するとともに,各機器の情報処理量が急増し,今後のIT機器による消費電力量の急増が深刻な課題になると指摘されている(消費電力量が2025年には2006年比で約5.2倍,2050年には2006年比で約12倍になると推計されている。)※3。また,民間調査機関の推計※4 によれば,世界の情報量は,2020年には約40ゼタバイト(2010年度時の約50倍)へ拡大する見込みであり,この増え続ける情報を処理するために,現在のシリコンデバイスの集積化,微細化は今後も必須の流れとなっている。しかし,現状のシリコンデバイスでは,集積化に伴う素子の消費電力増大,微細化の物理的限界,特性ばらつきの増大等が喫緊の課題となっている。これらの制約を突破する方策として,近年,世界的に進展の著しいナノエレクトロニクス技術を駆使して,従来のCMOS(相補性金属酸化膜半導体)技術に沿って新たな機能を持った材料及びデバイスを付加し性能向上を図る方向と,従来のCMOS を超える新しい動作原理に基づくデバイス及びシステムの実現を目指す方向とが模索されている。
(研究内容)
 このような現状において,本戦略目標では,微細化・高速化や低消費電力・多機能化を個別に追及するのではなく,先進的なナノテクノロジー等の要素技術を糾合することにより,革新的なシーズを創出し,将来のエレクトロニクス産業の基盤を確立することを目的として,具体的には,以下のような研究を行う。なお,本戦略目標では,材料,デバイス,システム等,それぞれの分野の専門家がプロジェクトの早期の段階から連携・協働できる体制を構築し,現在より2桁以上低い消費電力と2桁以上高速の情報デバイス(携帯電話,パソコン,ストレージ等をはじめとするICT機器全般)を開発するという共通目標の達成に向け,戦略的かつ機動的な研究を実施することが求められる。具体的には,以下の研究を想定する。
(1)革新デバイスを下支えする新規機能性材料の創製及び適用可能性の追求による素材技術の創出
・新規機能性材料の構造や物性に関する計測・解析・加工プロセス技術の創出
・革新デバイスになることが期待されるグラフェン等の原子薄膜の結晶実現・機能解明・学理構築に関する研究
(2) 超低消費電力,超高速,超大容量等を可能にする新材料・新原理・新構造の論理素子・記憶素子等による革新デバイス技術の創出
・優れた物性を有する新物質・新規機能性材料をデバイスに応用する技術に関する研究
・異種材料の接合等による新機能デバイスの提案と原理実証
・微細化・高集積化を可能とする革新的なデバイス・アーキテクチャ技術の創成
(3)(1),(2)をはじめとする要素技術を集積・統合・融合することによるナノシステムの最適設計に向けた基盤技術の創出
・デバイス機能を発現・最適化するための物質構造及びデバイス構造の設計及び計算機シミュレーション技術の創出・素材,回路等の様々な階層の連携・協調による超低消費電力化技術の創出

※1 世界半導体市場統計(WSTS: World Semiconductor Trade Statistics),“WSTS SemiconductorMarket Forecast Autumn 2012”,2012.11
※2 一般社団法人半導体産業研究所(Semiconductor Industry Research Institute Japan),「半導体産業が日本の社会・経済・環境に与えるインパクトの社会科学分析 最終報告書」,2009.7
※3 経済産業省「情報通信機器の省エネルギーと競争力の強化に関する研究会」
※4 IDC, “Big Data, Bigger Digital Shadows, and Biggest Growth in the Far East”, 2012.12

5.政策上の位置付け(政策体系における位置付け,政策上の必要性・緊急性等)

 「第4期科学技術基本計画」では,エネルギー利用の高効率化及びスマート化に向け,「情報通信技術は,エネルギーの供給,利用や社会インフラの革新を進める上で不可欠な基盤的技術であり,次世代の情報通信ネットワークに関する研究開発,情報通信機器やシステム構成機器の一層の省エネルギー化,ネットワークシステム全体の最適制御に関する技術開発を進める」こととされ,また,産業競争力の強化に向けた共通基盤の強化のため,「付加価値率や市場占有率が高く,今後の成長が見込まれ,我が国が国際競争力のある技術を数多く有している先端材料や部材の開発及び活用に必要な基盤技術,高機能電子デバイスや情報通信の利用,活用を支える基盤技術など,革新的な共通基盤技術に関する研究開発を推進するとともに,これらの技術の適切なオープン化戦略を促進する」こととされている。
 総合科学技術会議においても,「平成25年度科学技術重要施策アクションプラン」(平成24年7月19日総合科学技術会議 科学技術イノベーション政策推進専門調査会)において,「大幅なエネルギー消費量の削減を目指す「エネルギー利用の革新」」が政策課題として掲げられ,「技術革新によるエネルギー消費量の飛躍的削減」が重点的取組とされた。また,「平成25年度重点施策パッケージの重点化課題・取組」(同上)では,我が国で発見されたカーボンナノチューブやグラフェン等のナノカーボン新材料を,世界に先駆け様々な部材・製品(熱交換器,電池,エレクトロニクスデバイス,複合材料等)へ応用することにより,幅広い産業で部材,部品及び製品の産業競争力を高めるとともに,新たな成長産業を創出することなどから,我が国の産業競争力の強化に向けた重点的取組として,「ナノカーボン新材料(CNT(Carbon Nano Tube)・グラフェン等)の様々な分野への応用/商用技術の開発」が提示された。
 以上のとおり,「グリーンイノベーションの推進」や「我が国の産業競争力の強化」に向け,革新的な材料による省エネデバイスの開発が政策的にも求められているところである。

6.他の関連施策との連携及び役割分担・政策効果の違い

 大学等におけるこれまでの取組や既存の戦略的創造研究推進事業等の成果を積極的に活用するとともに,関連するプロジェクト間と緊密な連携を確保し,速やかに成果の実用化を図る。具体的には,本戦略目標において創出される成果については,将来のエレクトロニクス産業の基盤を確立する観点から,研究期間中であっても,知的財産を適切に確保した上で,研究成果の実用化を目指す産学連携事業等や民間企業のプロジェクトへ速やかに展開する。特に,幅広い産学官の研究者が集結するTIA(つくばイノベーションアリーナ)やその他の研究開発拠点等の枠組みを最大限に活用し,本戦略目標における基礎研究の成果を,我が国の産業競争力の強化に直結させる体制を構築する。

7.科学的裏付け(国内外の研究動向を踏まえた必要性・緊急性・実現可能性等)

 米国では2011年2月に改定された「米国イノベーション戦略」において重点項目として「ナノテクノロジーを加速化する」との表現が盛り込まれ,特にナノエレクトロニクスへの投資の必要性が謳(うた)われている。また,欧州においては,長期的かつ多額の資金が必要なハイリスク研究で,産業界の支援が明確な領域を優先的に支援する「ジョイント・テクノロジー・イニシアティブ(JTI)」を立ち上げており,その中に,「ナノエレクトロニクス」が含まれている。中国においては,国家中長期科学技術発展計画綱要(2006~2020年)に基礎研究分野の重点科学研究のテーマとしてナノテクノロジー研究が盛り込まれており,具体的な重点課題として「コンセプト及び原理段階のナノデバイス,ナノエレクトロニクス,ナノバイオ・医学」が挙げられている。
 一方,我が国の現状については,「ナノエレクトロニクスでは日本は総じて高い水準を保つが,世界のアクティビティと比較すると必ずしも楽観できるものではない。特にナノエレクトロニクスを牽引(けんいん)するナノCMOS技術においては,世界的に研究開発の拠点化とアライアンスが進む中,日本メーカーの研究開発アクティビティは大幅に低下している。深刻なのはアカデミアの基礎研究・開発も他国に遅れ始めたことであり,今後,長期的観点に立った人材育成策や産学協同体制の構築を図らない限り,やがては韓国あるいは中国に追い抜かれることは避けられないだろう」と,諸外国との国際比較に基づき分析している※。
 このような状況を踏まえ,本戦略目標を通じて,ナノエレクトロニクスに関わる研究開発が進展することで,大幅な低消費電力化,小型化,新機能を有するデバイスが実現し,ビッグデータ時代に不可欠な省エネシステムを達成するとともに,エレクトロニクス産業等の競争力強化を実現することが求められる。

※独立行政法人科学技術振興機構研究開発戦略センター,『ナノテクノロジー・材料分野 科学技術・研究開発の国際比較2011年版』,2011

8. 検討の経緯

 独立行政法人科学技術振興機構研究開発戦略センター(JST/CRDS)が開催した科学技術未来戦略ワークショップ「次世代を拓くナノエレクトロニクス~2030年の先を求めて」(平成21年3月)において,(1)微細化,集積化の限界を突破又は回避するためのナノエレクトロニクス基盤技術の研究開発,(2)ナノエレクトロニクスデバイスのための新材料探索とデバイス適用可能性の実証の推進の重要性が改めて確認された。上記ワークショップの議論も踏まえ,JST/CRDS 戦略プロポーザル「ナノエレクトロニクス基盤技術の創成-微細化,集積化,低消費電力化の限界突破を目指して-」(平成21年7月)が策定され,新原理,新構造,新材料の探索と,それらを用いたデバイスの研究開発に対する長期にわたる取組が必要であることが提言された。グラフェンを始めとする二次元薄膜が注目を集めている中,JST/CRDS 科学技術未来戦略ワークショップ「機能性原子薄膜/分子薄膜の創生と展開」(平成24年2月)が開催され,エレクトロニクス動作に際してのエネルギーロス最小化には,究極的に薄い膜,つまり原子薄膜,分子薄膜が理想的であることが指摘された。上記ワークショップの議論を踏まえ,JST/CRDS 戦略プロポーザル「二次元機能性原子薄膜による新規材料・革新デバイスの開発」が策定され,「アプリケーションニーズに応える機能性原子薄膜による革新デバイス基盤技術の創出」と「シーズ技術の先鋭化に資する新構造原子薄膜の機能研究とデバイス設計学理の創出」が,具体的な研究開発課題として提言された。
 以上の議論も踏まえ,科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 ナノテクノロジー・材料科学技術委員会が取りまとめた「ナノテクノロジー・材料科学技術の研究開発方策について<中間取りまとめ>」(平成23年7月)において,「エレクトロニクスの省エネルギー化,多機能化」が課題解決に向けた重点研究開発課題とされ,省エネルギー性能の向上やグローバルな競争環境を注視しながら研究開発を加速することが重要であるとされた。また,情報科学技術委員会が取りまとめた「情報科学技術に関する推進方策(中間報告)」(平成23年9月)において,情報科学技術に今後求められる方向性として,「IT システムの超低消費電力化(グリーン化)」が挙げられた。以降,両委員会において継続的に議論が重ねられた。
 本戦略目標は,これらの検討の結果を踏まえて作成したものである。

9. その他

 世界各国がしのぎを削る中,我が国としてもこれまでの学術的・技術的・人的蓄積を最大限生かし,TIAなどの世界的な産学官集中連携拠点等とも連携して,本戦略目標における基礎研究の成果を,我が国の産業競争力の強化に直結させる体制を構築させることが重要である。そのため,本戦略目標では,大学等におけるこれまでの取組や既存の戦略的創造研究推進事業等の成果を積極的に活用するとともに,関連するプロジェクト間と緊密な連携を確保し,速やかに成果の実用化を図ることが求められる。

お問合せ先

研究振興局基礎研究振興課

課長:安藤 慶明、基礎研究推進室長:上田 光幸、室長補佐:野田 浩絵、基礎研究・機構係長:浜田 勇
電話番号:03-5253-4111(内線4386)、03-6734-4073(直通)

-- 登録:平成25年03月 --