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再生可能エネルギーをはじめとした多様なエネルギーの需給の最適化を可能とする、分散協調型エネルギー管理システム構築のための理論、数理モデル及び基盤技術の創出

1. 戦略目標名

 再生可能エネルギーをはじめとした多様なエネルギーの需給の最適化を可能とする、分散協調型エネルギー管理システム構築のための理論、数理モデル及び基盤技術の創出 

2. 達成目標

 再生可能エネルギーの安定的かつ大量導入を可能とし、多様なエネルギー源の有効活用ならびに災害時にも頑強なエネルギーインフラの構築に資する理論、数理モデル及び基盤技術を創出するため、以下の3つの目標の達成を目指す。

○再生可能エネルギー需給の状態把握・推定・予測に関わる理論及び基盤技術の創出

○多様なエネルギーの需給制御による分散協調型エネルギー管理システム構築に関わる理論及び制御基盤技術の創出

○需要側と供給側のエネルギーネットワークの統合メカニズムと人間行動を考慮したエネルギー管理の最適化及びシステム全体の社会的合理性を追求する理論及び基盤技術の創出

3. 将来実現しうる重要課題の達成ビジョン

 本戦略目標は、太陽電池パネルや蓄電池など再生可能エネルギーをはじめとした多様なエネルギーの需給に関わる技術群を地域性や利用形態等に応じて組み合せて動かし、その需給状況を双方向かつリアルタイムに把握・分析し、分散エネルギーシステムと既存の電力系統が需給予測や消費予測情報に基づいたエネルギーシステムの最適化を行って、優れた経済性や災害時安定性等を有するエネルギー需給システムの実現を目指した、分散協調型エネルギー管理システム構築に関する理論及び基盤技術の開発を目指すものである。

 また、国や自治体が支援する都市エネルギーインフラのスマート化(知能化)・グリーン化関連の実証事業との連携にも留意しつつ、出口を意識した基礎研究を行うことによって、得られる研究開発成果を社会実装に向けた取り組みへと繋げていくことを目指す。これにより、分散協調型エネルギー管理システムの構築実現や、そのシステムの社会的普及が促進され、発電量が不安定な再生可能エネルギーの受容可能量を増大させ、災害にも頑強なエネルギーインフラの実現につなげることを目指す。さらには、第4期科学技術基本計画に掲げられているグリーンイノベーションの目標実現に向けた重要課題「安定的なエネルギー供給と低炭素化の実現」の達成に貢献する。また、本戦略目標下で構築された理論およびシミュレーション技術をエネルギー政策の立案にも展開することにより、より高度化したスマートコミュニティの実現に貢献することを目指す。

 さらには、社会インフラパッケージとして海外事業展開を視野に入れ、新しい分散協調型エネルギー管理システムを構築する基盤技術の国際標準化につなげ、我が国の社会・技術システムの構築力強化に貢献することを目指す。また、世界各国への技術移転によるCO2排出量削減の達成により地球温暖化対策にも貢献することを目指す。

4. 具体的内容

 今後、我が国が社会インフラとしてどのような新しいエネルギーシステムを構築していくべきかというエネルギー戦略の議論にあたっては、再生可能エネルギーを含む分散型エネルギーシステムと従来の電力系統システムとの調和をどう図るか、熱エネルギーなど多様なエネルギー源の最大限の活用、災害時も含めたエネルギーシステムの安定性、社会への導入コストなどに関して、科学的根拠に裏付けられた検討が必要である。この科学的検討には、これまで我が国でエネルギーシステム構築に主として携わってきた送配電工学分野、パワーエレクトロニクス分野や電力計測分野に加え、新しいエネルギー管理システムを確立するために、システム科学をはじめとした様々な分野の研究者の参画が必要となる。

 たとえば、多様で複雑なシステムを構築・運用するための制御技術、最適化技術、数理モデルやシミュレーション技術、取得データを高速に処理し分析するためのセンサネットワーク技術やデータマイニング技術、複雑なシステムの構造と機能を分析するネットワーク論や、自然エネルギーを予測するための地球環境計測・予測技術、人間行動を考慮したエネルギー消費予測などさまざまな研究分野の研究者を結集し、研究開発を推進することが必要である。

 このような分野融合的な研究開発を通じて、再生可能エネルギーを含む多様なエネルギーを最大限活用するための分散協調型エネルギー管理システムの構築に資する、複雑分散系に対応した理論研究及び基盤技術開発を進める。

 これにより、我が国のエネルギー政策への貢献だけでなく、情報通信分野と計測制御分野等の融合(実世界と情報社会の融合)による新しい学理や学問分野の創出が期待される。また、地域やその時の社会状況に応じてエネルギーシステムの要件も動的に変化していくため、様々な要求に応えられる普遍的・基盤的な理論・技術の構築を目指す。このためには、現状のエネルギーシステムを前提とした実データに基づくアプローチや、自動車、ロボット工学など他分野で実績のあるシステム制御理論・技術の展開、既存のエネルギーシステムにかかる制約等の前提をゼロベースに理想的なシステムを検討するアプローチなど、様々な切り口が考えられる。

 以下に具体的なアプローチ例を挙げる。

【アプローチ1】分散協調型エネルギー管理システムの安定化、最適化のための理論及び基盤技術に関する研究

 分散して存在する需要側及び供給側のサブシステム(大規模太陽光発電所(メガソーラー)や風力発電機群(ウインドファーム)、大型蓄電池システム、コジェネレーションシステムを備えた工場、太陽光パネルを備えたビルや住宅群など)間でエネルギーと情報の両方を双方向かつリアルタイムにやりとりするための情報通信技術や、膨大なセンサ情報等からエネルギー需給者間の状況を把握し互いに協調し合う条件を分析する情報処理技術、分析データを基に分散型エネルギーシステム全体を最適化するためのアルゴリズム、数理モデルに関する研究を行う。また、エネルギーシステムを安定化させるために必要なパワーエレクトロニクスの研究や、電力品質(電圧・周波数)、コスト、発電設備や送配電資産の利用効率、CO2排出量、発電量、システムの安定性や故障や災害等の外乱に対する頑強性などの評価指標に対し、定量的な分析・評価を行い、どのようなシステムが最適であるかの研究開発を行う。

  • 最先端の再生可能エネルギー発電量予測シミュレーションや予測推定理論を組み込んだ分散協調型の予測制御研究
  • 停電が波及しにくく、自己修復を可能にするための電力ネットワークのトポロジー制御研究
  • 分散協調型エネルギー管理システムに最適化手法を応用するための研究
  • 太陽光発電と電気自動車間のエネルギー移動を考えた需給バランス制御のための最適制御理論研究
  • 需要側と供給側のエネルギーと情報を双方向でリアルタイムにやりとりするための情報通信技術
  • 大量のセンサデータからシステム制御に必要なデータを高速に取り出し、解析するための情報処理技術及び、パワーエレクトロニクスなどのシステム制御に大きくかかわる要素技術の研究

【アプローチ2】人間行動を考慮したエネルギー消費モデルの構築と、それに基づくエネルギー需給バランスの最適化メカニムの設計

 需要側と供給側それぞれの利己的意思決定をエネルギーシステム全体の社会的利益につなげるために、人間行動を考慮したエネルギー消費モデルの構築と、それに基づくエネルギー需給バランスの最適化メカニズムの研究を行う。例えば、再生可能エネルギー発電や従来の大規模発電による電力価格をどのように動かせば、需要と供給の均衡を取りながら電力需要のピークカットやピークシフトが可能になるか、低炭素化や経済的合理性などの社会的利益が担保できるのかについて、定量的に示すことを可能にする。

  • 情報収集と制御が可能な知能化した次世代システムを利用した需要誘導による分散型エネルギーシステム全体の最適化方式の研究
  • メカニズムデザイン理論やゲーム理論等を取り入れた消費電力・供給電力の安定かつ最適な配分決定のための動的な電力価格決定メカニズム研究
  • 行動経済学に基づくエネルギー消費モデルの設計やエネルギーシステムに対する社会的合意形成のための方法論の研究

【アプローチ3】衛星データや地域気象観測、地理情報、過去の需給実績から学習して予測性能を向上させる手法等により、精度の高い需要予測と再生可能エネルギー発電予測を可能にする研究

  • 地球観測衛星データ、気象観測データ、地球環境モデルを組み合わせて算出される日射量や風力風向、地表面温度など再生可能エネルギー生成に関連する物理量に関するモデル構築と、それに基づく準リアルタイム予報システムの研究
  • 地域環境パラメータ予測と地域の地理情報(地形、再生可能エネルギー発電設備等の位置情報、人口・産業分布等)との統合的解析を通じて、地域規模での再生可能エネルギー発電量予測を可能にする研究
  • 自然エネルギーの時空間変動を考慮した土地利用モデルの研究(再生可能エネルギー発電機の立地モデルなど)
  • 過去の需給実績から学習して予測性能を向上させる適応・学習技術やマルチエージェントシミュレーションを用いた電力需要予測に関する研究

【アプローチ4】計算機シミュレーションや模擬シミュレータの開発及びそれを用いた上記理論やシステム技術の統合分析・評価研究

  • 小規模の実験装置を併合し、実データ等を踏まえたハイブリッドシミュレータ技術の創成
  • 並列分散型計算機を用いたエネルギー需給ネットワーク制御の高精度シミュレータ開発に資する基盤技術の創成
  • 計算機シミュレーション及び摸擬シミュレータを用いた、アプローチ1~3の総合分析・評価研究

5. 政策上の位置付け(政策体系における位置付け、政策上の必要性・緊急性等)

 新成長戦略(平成22年6月18日閣議決定)における成長分野の一つであるグリーンイノベーションの実現に向け、第4期科学技術基本計画(平成23年8月19日閣議決定)では、「エネルギーを安定的に供給、確保していくため、革新的な再生可能エネルギーの開発と普及の拡大、分散エネルギーシステムの構築、強靭な社会インフラの整備等を速やかに進めなければならない」として、「基幹エネルギーと分散エネルギーの両供給システム及びエネルギー需要システムを総合的に最適制御するスマートグリッド等のエネルギーマネジメントに関する研究開発や自律分散エネルギーシステムの研究開発を促進し、これらの海外展開を図る」ことが目標として掲げられている。本戦略目標は、この目標達成に必要な基礎研究段階の課題解決を目指すものである。

 また、本戦略目標では、制御、信号処理、モデリング、シミュレーション、ネットワーク、適応学習などシステム科学技術分野を含む基礎的な制御研究や衛星データを活用した気象予測に関する成果との連携による領域横断的な展開も想定している。これは、第4期科学技術基本計画における「先端計測及び解析技術等の発展につながるナノテクノロジーや光・量子科学技術、シミュレーションやe-サイエンス等の高度情報通信技術、数理科学、システム科学技術など、複数領域に横断的に活用することが可能な科学技術や融合領域の科学技術に関する研究開発を推進する」ことに貢献する。

 さらに、東日本大震災以降の状況変化により、再生可能エネルギーの本格的な系統導入は、より緊急の政策課題となっている。新成長戦略実現会議下のエネルギー・環境会議において、従来の集中型システムの改良だけでなく、分散型の新システムを目指す議論が始まり、その中間的な整理において、「分散型のエネルギーシステムの実現」が「基本理念2:新たなエネルギーシステム実現に向けた三原則」の一つとして取り上げられるなど、必要性の高い課題として位置付けられている。

6. 他の関連施策との連携及び役割分担・政策効果の違い

 本戦略目標の関連施策として、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が米国ニューメキシコ州にて行っている日米スマートグリッド実証(平成21年度~平成25年度)や、資源エネルギー庁が行っている次世代送配電系統最適制御技術実証事業、次世代型双方向通信出力制御実証事業、太陽光発電出力予測技術開発実証事業、次世代エネルギー・社会システム実証事業がある。これらの事業は、スマートグリッド向け各種技術の実装と特定地域での実証を進めている。また次世代送配電系統最適制御技術実証事業では、安定した集中型電力ネットワークに再生可能エネルギーを取り込んだ場合でも、電力系統の最適制御が可能となる技術の開発を進めている。

 これに対して本戦略目標は、分散協調型エネルギー管理システムの実現という出口のイメージを掲げつつ、そのための普遍的・基盤的理論、数理モデルと基盤技術の構築を目的とする。このため、電力を含むエネルギー、パワーエレクトロニクス、計測・制御、統計数理、情報通信、情報処理、気象予測、社会科学などさまざまな研究分野の研究者を結集し、研究開発を推進するものであり、我が国のエネルギー政策への貢献に加え、分野融合による新しい学理や学問分野の創出を目指すものである。

 本戦略目標の達成により、様々なエネルギー源(太陽光発電、風力発電、コージェネレーション、蓄電など)や、制御システムの規模(家庭内、工場内、小規模コミュニティー内など)や地域性に基づく制約(気象条件、地理的条件など)に柔軟に対応できるシステムの基本モデルの作成と、様々な視点(コスト、エネルギー効率、CO2削減量など)を組み合わせた評価が可能となるため、本戦略目標の研究成果は、実証事業におけるエネルギーシステムの最適制御への展開が期待されると共に、将来、多種多様なコミュニティに適用可能なエネルギー管理システムの設計を可能とする。これらが、本戦略目標が担う、他の事業にはない役割である。また、再生可能エネルギーの大量導入のみならず、災害時にも頑強な分散型エネルギー管理システムの構築などに必要な理論の確立を目指す。さらに、エネルギー管理システムを社会インフラパッケージとして経済成長の著しいアジア諸国等に展開することにより、我が国の国益のみならず地球規模の環境問題の解決に貢献することができる。このような海外展開を視野に入れる場合、第一段階として、大学等の研究機関が主体となり、科学的手法に基づいた中立的なシステム制御基盤技術を構築することが求められる。これを基盤として、企業が国際競争力を持つ製品としてパッケージ化し、研究成果の海外展開と国際標準化へと繋がっていく。

7. 科学的裏付け(国内外の研究動向を踏まえた必要性・緊急性・実現可能性等)

 米国電気電子技術協会(IEEE)の論文誌“IEEE Transactions”に、2010年より新たに ”IEEE Transactions on Smart Grid”としてスマートグリッド研究分野 が追加されたことに象徴されるように、この数年でスマートグリッドに関する学会発表数や論文数、特集号、学会での特別セッションなどが増加している。システム科学技術分野においてもトップクラスの研究者がこの分野に参入し、最先端の数学的・統計的モデル、アルゴリズムを利用して、分散型エネルギーシステムの安定性、最適性のための理論及び基盤技術開発に関する研究が盛んとなっている。

 動的かつ柔軟に電力価格を変更するリアルタイムプライシングについても、この問題は社会システムである需要側と技術システムである供給側との間の戦略的な相互関係として表現することができるため、制御工学、応用数学、経済学、電力工学の境界分野の課題として、様々な研究者によって研究が進められているが、その中でもゲーム理論、チーム理論に基づいたアプローチが特に盛んに議論され始めている。

 日本はこれまでもパワーエレクトロニクス分野など個々の要素技術としては世界でも先導的な立場を担ってきている。今後は、スマートグリッド向け要素技術全体をシステムとしていかに構築していくかが問題となる。システム科学技術研究を豊かな要素技術の成果と結び付けて戦略的に振興することにより、世界をリードする研究体制と実施体制を我が国が築くことは不可能ではない。

 米国ではエネルギー省が、気象・気候予測を行う商務省海洋大気庁と連携してスマートグリッドに取り組むとしている。多国籍企業においても、中東での発電に気象予測情報を活用することを考えており、我が国の気象・気候予測研究を実施する大学に対して技術提供を求めてきている。我が国の研究開発成果を我が国の利益として守りつつも国際展開する必要があり、研究開発の促進は重要であるといえる。

 人類の共通課題である地球環境問題への貢献として、再生可能エネルギー大量導入に向けたエネルギーインフラ技術の早期確立と実用化、海外への技術提供も含めた水平展開は、世界における我が国の役割である。そのためには経済性、拡張性も視野にいれたシステム構築の方法論の確立が急務である。

8. 検討の経緯

 科学技術振興機構研究開発戦略センター(CRDS)において4回の有識者会議を開催し、システム科学技術として解決可能な重要課題について議論を重ねた。CRDSはこれらの議論を踏まえ、平成23年3月に戦略提言「システム構築による重要課題の解決にむけて ~システム科学技術の推進方策に関する戦略提言~」を取り纏めた。また同年8月にワークショップ「再生可能エネルギーと分散制御システム」を開催し、有識者による分散制御システムの技術課題についての議論・検討を行った。

 本戦略目標は、これらの検討の結果を踏まえて作成したものである。

9. 留意点

 効果的、効率的なエネルギーインフラを実現する基礎基盤技術を構築するため、我が国をはじめ世界のエネルギー政策の方向性に留意することが重要である。また、実証事業への成果提供や協力関係の構築のため、他省庁が実施する事業との適切な連携が望まれる。

お問合せ先

研究振興局基礎研究振興課

-- 登録:平成24年02月 --