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世界最高性能の2本のタンパク質構造解析用放射光ビームラインが完成

平成22年5月10日

-SPring-8およびKEK/PFで微小タンパク質結晶構造解析に最適化したビームラインが始動-

 文部科学省委託事業「ターゲットタンパク研究プログラム」※1において、独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長:理研)と高エネルギー加速器研究機構(鈴木厚人機構長:KEK)は、大型放射光施設SPring-8※2と放射光科学研究施設(PF:フォトン・ファクトリー)※3 に、タンパク質結晶構造解析※4専用ビームラインとして世界最高精度の高輝度特性及び低エネルギー利用という異なる特徴を実現した2本の放射光ビームラインの開発を行ってきました。
 この度、これらのビームラインが完成したことを受け、本年秋からの一般共用に向けた課題募集を開始することとなりましたので、お知らせいたします。
 これらは、「高難度タンパク質をターゲットとした放射光X線結晶構造解析技術の開発」において、理研放射光科学総合研究センター(石川哲也センター長)基盤研究部 山本雅貴部長とKEK物質構造科学研究所構造生物学研究センターの若槻壮市教授(センター長)の研究グループにより開発されたものです。
 これらのことにより、これまで解析できなかった10 マイクロサイズの結晶構造の解析が可能になり、生命現象や疾病にかかわる重要なタンパク質の構造解析に貢献することが期待されます。さらに、我が国の研究資源を最大限に活用すると共に、ライフサイエンス研究の起爆剤にしたいと考えています。


<発表のポイント>
・SPring-8・KEK/PFで2本のターゲットタンパク研究プログラムビームラインが完成
・今回、本年秋から開始する一般共用に向けて課題を募集
・これまで解析できなかった10 マイクロサイズの結晶構造の解析が可能に
・生命現象や疾病に関わる重要なタンパク質の構造解析に貢献

1.背景

 生物機能の直接の担い手であるタンパク質の立体構造と機能を解明する構造生物学は、基本的な生命現象の解明や医学・薬学等への貢献などに資するライフサイエンス全体の基盤として重要な役割を果たします。文部科学省委託事業「ターゲットタンパク研究プログラム」では、生命現象の理解に重要な高難度解析タンパク質をターゲットとし、その立体構造と機能の解明を目指した研究を進めています。 
 タンパク質の立体構造を決定する手法に、X 線結晶構造解析法があります。この方法では、タンパク質を規則正しく配置した状態(結晶)にする必要がありますが、その複雑な構造ゆえに結晶化そのものが難しく、また、特に高難度解析タンパク質では構造を精密に決定するための十分な大きさの結晶を得ることが困難です。これらの小さな結晶から精密な構造情報を得るために、10 マイクロサイズ以下のタンパク質微小結晶からの構造解析手法の開発が待ち望まれていました。
 そこで、「ターゲットタンパク研究プログラム」では、10マイクロサイズ以下の微小結晶からの構造解析法、および結晶の重原子ラベルを必要としない構造解析法の開発を目標として、理研/SPring-8及び高エネルギー加速器研究機構/PFにおいて、タンパク質微小結晶からの構造解析に最適化した2本の相補的なマイクロビームビームラインの整備を進めてきました。
 この度、これらのビームラインが完成したことを受け、一般共用に向けた課題募集を開始することにより、本プログラムの研究成果を広く公開することといたしました。

2.公開するビームラインの利用課題申請方法

利用料は各機関の規定に従って負担。詳細は各機関にお問い合わせください。

1) SPring-8 ターゲットタンパクビームラインBL32XU
 今回、本年10月以降実施課題について募集を行います。本ビームラインは、世界初の1マイクロサイズの超高輝度微小ビームにより、10マイクロサイズ以下のタンパク質微小結晶からの構造解析が可能なビームラインです。
なお、申請に当たっては、SPring-8ホームページの「研究課題募集」ページにて申請条件等を確認の上、要領に従って申請してください。

  • 研究課題募集」(※SPring-8ホームページにリンク)
  • 一般課題(10月以降実施分)公募開始:5月10日(月曜日)

2)KEK/PF ビームラインBL1A
 課題申請に当たってはKEKホームページの「放射光共同利用実験課題募集」ページにて申請条件等を確認の上、要領に従って申請してください。

3.今後の期待

 今回稼働開始するSPring-8及びKEK/PFの2本の新規ビームラインは、重要な生命機能に関わる膜タンパク質やタンパク質複合体のように、これまで構造解析できなかった高難度解析タンパク質の微小結晶からの構造解析を可能にし、ライフサイエンスの基礎研究や創薬などの産業応用において重要なタンパク質解析研究の未踏領域を切り拓くものと期待されています。

<補足説明>

※1 ターゲットタンパク研究プログラム
 現在の技術水準では解明が極めて困難であるものの、学術研究や産業振興に欠かせない重要なタンパク質をターゲットにして、高難度タンパク質の構造・機能解析のための技術開発を行いつつ、これらの構造と機能の解明を目指すことを目的とした事業。プログラムの実施期間は、平成19年度~平成23年度までとなっています。 

※2 大型放射光施設SPring-8
 兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高の放射光を生み出す理化学研究所の施設。ほぼ光速で進む電子が、その進行方向を磁石などによって変えられると接線方向に電磁波が発生します。これが「放射光(シンクロトロン放射)」と呼ばれるものであり、電子のエネルギーが高く進む方向の変化が大きいほど、X線などの短い波長の光を含むようになります。特に第三世代の大型放射光施設と呼ばれるものには、世界にSPring-8、APS(アメリカ)、ESRF(フランス)の3つがあります。SPring-8(電子エネルギー:8GeV)の場合、遠赤外から可視光線、真空紫外、軟X線を経て硬X線に至る幅広い波長域で放射光を得ることができ、国内外の研究者の共同利用施設として、物質科学・地球科学・生命科学・環境科学・産業利用などの分野で利用されています。

 ※3 放射光科学研究施設PF
 KEK放射光科学研究施設(PF)には、わが国最初の専用光源として1982年に完成したフォトンファクトリー(光の工場)という愛称で呼ばれるPFリングと、大強度パルス放射光を発生するアドバンストリング(PF-AR)の2つの光源加速器があります。これらの光を駆使して、タンパク質などの生体物質、巨大磁気抵抗効果や高温超伝導などの興味深い性質を示す強相関電子物質、地球内部環境下での物質、触媒、環境関連物質など、さまざまな物質の構造と機能を、原子・分子のレベルで研究しています。

※4 タンパク質結晶構造解析
 遺伝子からの最終生成物であり生体機能を実現するタンパク質を結晶にして、X 線の回折現象を利用して、その原子レベルでの3次元立体構造を決定する実験手法です。

お問合せ先

研究振興局ライフサイエンス課

課長 石井 康彦
電話番号:(直通03-6734-4367) (内線4360)

研究振興局基礎基盤研究課量子放射線研究推進室

室長 髙谷 浩樹
電話番号:(直通03-6734-4099) (内線4385)

(研究振興局ライフサイエンス課)

-- 登録:平成22年05月 --