平成21年1月28日
設置計画履行状況等調査(以下、「アフターケア」という。)は、各教職大学院の教育水準の維持・向上及びその主体的な改善・充実に資することを目的として、文部科学省令(※1参照)および告示(※2参照)に基づき、文部科学省が、設置認可後、当該認可時における留意事項(設置基準の要件は満たしているが、一層の改善・充実が必要と認められた事項)、学生の入学状況、教育課程の編成・運営状況、教員組織の整備状況その他の設置計画の履行状況について、各教職大学院から報告を求め、書面、面接又は実地により調査するものである。
なお、文部科学大臣は、公私立大学の設備、授業その他の事項について、法令の規定に違反していると認めるときは、学校教育法第15条に基づき、改善勧告や変更命令などの是正措置を講ずることができることとされており、是正措置の発動に当たり必要があれば、当該大学等に対して報告又は資料の提出を求めることも可能である。国立大学についても同様に、法令違反等の状況が判明した場合には、国立大学法人法に基づき、是正措置要求などの措置を講ずることができることとされている。
アフターケアの本来の目的は、設置計画の履行状況を調査することであるが、仮に調査の過程で法令への適合性に疑義が生じた場合には、大学設置・学校法人審議会としてこれを指摘し、文部科学大臣の判断により、これらの是正措置等を段階的に講ずることもあり得る。
大学設置・学校法人審議会大学設置分科会では、アフターケアについて、運営委員会の下に「設置計画履行状況等調査委員会」を設置し、所要の調査審議を行っているが、教職大学院については、新たな教員養成の中核を担うものであるという制度の特質を踏まえ、特に専門的な調査審議を行う必要があることから、「教職大学院特別審査会」(別紙1)に付託し、調査に当たっている。
教職大学院特別審査会では、今年度に開設した19の教職大学院(別紙2)を対象として書面調査を実施した。
書面調査は、「設置計画履行状況報告書」及びこれを裏付ける詳細な「補足説明資料」の提出を求め、これらの資料に基づき行った。
また、書面調査の結果を踏まえ、今年度が制度実施の初年度であることも考慮し、すべての教職大学院に対して実地調査を実施した。実地調査においては、教職大学院からの説明聴取、学生インタビュー、教育委員会インタビュー及び施設設備調査を行うことにより、設置計画の履行状況全般について調査を行った。
実践力・応用力などの専門性の高い教員を養成する新しい専門職大学院として、連携協力校等の学校現場の課題に即した授業内容、実務家教員と研究者教員との協働による指導体制の整備など設置の趣旨・計画に沿った取組が各教職大学院において意欲的に行われ、設置認可時に付された留意事項についても、おおむね適切に履行されている。
また、教育委員会の積極的な協力により、多くの現職教員学生が強い意欲と熱意で学習していること、教育委員会との連携が教職大学院存立の基盤として着実に進んでいる教職大学院が少なからず見られることは、特筆に値する。
しかし、個別所見で指摘するとおり、入学者の確保、教育委員会との連携協力、教育課程の編成・運営、教員組織の整備とファカルティ・ディベロップメント(授業内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究)(以下、「FD」という。)の取組状況、施設・設備の整備などについて課題を残している教職大学院も多く見られる。とりわけ平成20年度における定員割れの状況は深刻であり、入学者の確保について大きな課題を抱えている。併せて、理論と実践の融合の在り方、学部新卒学生と現職教員学生の授業の履修形態、教育課程の重要な柱である実習の位置づけと実際の運用、実習免除の在り方など種々課題を残している教職大学院も少なくない。
各教職大学院においては、今年度の留意事項を踏まえて、設置計画の確実かつ円滑な履行に努めていくことはもとより、デマンドサイドのニーズを反映し、高度の実践的指導力の育成を目指したより一層の努力を期待したい。
今年度の調査結果を踏まえて留意事項を付した教職大学院は別紙3のとおりであるが、これらの留意事項は、今年度の調査時の大学の状況に基づき付したものであることを付言しておく。
個別に留意事項は付さなかったものの、全体の傾向として留意すべき点を含めて、主な項目ごとに所見をまとめると、以下のとおりである。
1 入学者の確保
平成20年度において19の教職大学院のうち8の教職大学院が定員割れの状況にあり、入学者数が定員を満たしている教職大学院でも、現職教員を対象とする学校経営関連のコースにおいて定員割れが生じている等、教職大学院において入学者の確保は重大な課題になっている。
定員割れの主な要因としては、1.設置初年度であったことから、学生募集に十分な期間が確保できず、現職教員や教育学部在学生に教職大学院設置についての情報が行き届かなかったこと、2.教育委員会からの現職教員派遣学生について想定していた人数を確保できなかったことなどが挙げられる。
教育委員会からの現職教員派遣学生が少ない教職大学院では、大学院設置基準第14条特例の実施(教育上特別の必要があると認められる場合には、夜間その他特定の時間又は時期において授業又は研究指導を行う等の適当な方法により教育を行うことができる)や大学院修学休業制度等を活用した現職教員の自発的な入学に力を注いでいるが、勤務との両立の厳しさ、経済的負担などから今後も人数的に多くは望めない状況にある。
今後、各教職大学院が求める人材像を踏まえた上で安定的に入学者を確保するため、各教職大学院においては、充実したカリキュラム内容や指導方法を積極的にPRするとともに、現職教員学生の受入れについて教育委員会と粘り強く協議を進めることを期待したい。
2 教育委員会との連携協力
教育委員会との連携協力については、教育委員会が求める人材養成ニーズの共有化、連携協力校における実習等の協力、実務家教員の派遣、教職大学院の運営への参加など全体として着実に進んでいるが、各都道府県によって、現職教員学生の派遣人数、学生の学習環境支援、採用試験合格者への名簿登載期限の延長等の措置などについて取組の差が見受けられ、連携協力の意識に対する温度差も感じられる。各都道府県が抱える財政的事情はあるものの、現職教員の派遣や勤務継続の学生に対する支援等を引き続き要請していく必要がある。また、個々の大学レベルでの協議には限界があるため、国としても各教育委員会に積極的な連携・協力を具体的に要請することが有益であると考えられる。
また、連携協力校との円滑な連携を図るためには、学生の研究課題が当該学校の課題に密接に結びつき、大学教員がこれに積極的に関与し、連携協力校自体が連携のメリットを確実に確認できるようにしていくことが重要である。
3 教育課程の編成・運営
教育課程においては、実務家教員と研究者教員との協働による指導体制のもと、設置計画に基づき、学校現場の課題に即した実践的指導力育成のためのカリキュラムが構築され、授業実践が行われている。
また、学部新卒学生と現職教員学生が一緒に参加する授業形態は、概ね双方に有益であり好評であるが、少なからずの現職教員学生から、一部の授業においては必要に応じて学部新卒学生とは別々に授業をしてほしいという意見もあり、今後検討する必要がある。
実務家教員と研究者教員との教育上の連携については、一部の大学において、すべての共通科目の全授業でチーム・ティーチング(TT)方式を活用し、それぞれの持ち味を活かした授業を実践している等の先進的な取組が見られるが、単なるリレー方式やオムニバス方式による授業に終わっている教職大学院も少なくないため、理論と実践を融合するための工夫と努力がさらに必要である。
教職大学院における実習は教育課程上重要な柱となるもので、多くの学部新卒学生は教職大学院での実習について学部の教育実習とは質的に異なるものとして高く評価している。しかし、連携協力校等の実習校において教職大学院及び実習の趣旨について周知が徹底しておらず、学生が戸惑ったケースも多々見受けられるため、今後は、教職大学院における実習の趣旨や意義を実習校に周知した上で、実習の成果が十分に上がるよう実習校との恒常的な協力体制を強化することが必要である。さらに、現職教員学生の現任校での実習実施においては、日常の勤務との区別を確実にする方策を確立する等十分な配慮が求められる。
また、実習免除の運用については、各教職大学院とも慎重な取扱いの努力が見られるが、なお実習の到達目標と相関性のある基準の確立と厳格な運用が必要である。なお、実習を全部免除する場合には、理論と実践の融合の観点から、教職大学院における実習の意義を踏まえ、実践的指導力の育成が十分に行える教育内容となるよう留意することが必要である。
一方、教職大学院の修了者の質の保証は、今後の教職大学院の在り方に関わる重要な課題であり、各教職大学院において、目指すべき「教師像」の提示、ポートフォリオの活用などの工夫を進めつつ、教職大学院での学習成果を確認し、修了を判定する在り方についてなお今後十分に検討する必要がある。
なお、授業力向上を目標としているコースに所属する学生の中には、教職大学院においても自分の教科の専門的な力量を高める講義を履修したいとの希望を持っている者もいるが、学内外に対する教職大学院の趣旨の更なる周知徹底を図ることが必要である。
4 教員組織整備とFDの取組状況
実務家教員と研究者教員からなる教員組織の整備は、すべての大学で着実に行われているが、一部の教職大学院で実務家教員の年齢構成のバランスを欠いていたり、専任教員数が学生数に比して少ないため実習指導などでやや困難な状態が見受けられ、改善が必要である。
理論と実践の融合という教職大学院の基本方針を踏まえ、教育課程全般にわたり科目担当者同士の授業内容に関する連携が極めて重要である。そのためには、学生アンケートを実施する等学生の要望・意見を踏まえて教育課程の充実・改善を図るなど、日常普段のFDの推進が不可欠である。なお、各教員によってシラバスの内容に粗密が見られるため、改善が求められる。
5 施設・設備の整備状況
各教職大学院とも既存の施設・スペースを活用し、講義室、演習室、教員研究室、自習室などの施設整備に積極的に取り組んでいる。しかしながら、関係施設の分散配置、コミュニケーションスペースの不足、施設のバリアフリー化など課題が残っているところも少なくない。
来年度に開設する5の教職大学院を含むすべての教職大学院に対し、来年度も引き続き、設置計画の履行状況及び留意事項への対応状況について書面による報告を求め、必要に応じて実地調査又は面接調査を実施することとし、各教職大学院における一層の改善を促進していく方針である。
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※1 大学の設置等の認可の申請及び届出に係る手続等に関する規則(抄) ※2 文部科学省告示第50号(抄) ※3 学校教育法第109条の3(抄) |
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