第95号 平成20年8月18日
初中教育ニュース
第95号
〔初等中等教育局教職員課教員免許企画室〕
シリーズ第7回となる今回のテーマは「複数の免許状を所持している場合」です。
教員免許状には、複数の種類(教諭、養護教諭及び栄養教諭)、学校種(教諭の場合には、幼稚園、小学校など)及び教科(中学校の場合、国語、社会など)の免許状が存在しますが、これらのうち複数の免許状を所持している場合に、それぞれの免許状ごとに30時間以上の更新講習を受講・修了しなければならないのか、というご質問をいただきます。そこで、今回はこれらの扱いについてご説明をしたいと思います。
まず、旧免許状の所持者の場合からご説明します。
平成21年3月31日以前までに免許状を授与された方は、旧免許状所持者であることは、第1回で説明しましたが、旧免許状所持者の方が、複数の免許状を所持している場合、30時間以上の更新講習を受講・修了することで、すべての免許状が更新されることになります。
例えば、小学校教諭一種免許状と、中学校教諭一種免許状(社会)を所持されている小学校教諭の方の場合には、30時間以上の更新講習を受講・修了することで、すべての免許状の更新講習修了確認を行うことができます。つまり、30時間以上の更新講習を2回(60時間以上)受講・修了する必要はない、ということです。
また、養護教諭一種免許状と、中学校教諭一種免許状(保健)を所持されている養護教諭の方の場合についても同様に、30時間以上の更新講習を受講・修了することで、すべての免許状の更新講習修了確認を行うことができます。
ただし、更新講習の受講に際して、更新講習の内容うち18時間以上履修しなければならない「教科指導、生徒指導その他教育の充実に関する事項」(いわゆる選択領域)については、必ず現在の職(教諭、養護教諭又は栄養教諭の職)に対応した更新講習を履修しなければなりません。所持している免許状のいずれの種類の免許状を履修しても構わないということではありません。
例えば、小学校教諭の方で、小学校教諭免許状と養護教諭免許状を所持されている方の場合には、18時間以上の選択領域については、教諭を対象とした更新講習を履修する必要があります。教諭を対象とした更新講習または養護教諭を対象とした更新講習のいずれのものを履修しても構わないということではありません。
また、別の例をあげますと、養護教諭の方で、養護教諭免許状と中学校教諭免許状を複数所持している場合には、更新講習18時間以上の選択領域については、養護教諭を対象とした更新講習を履修する必要があります。いずれの対象のものを履修しても構わないということではありません。
次に新免許状所持者の場合についてご説明します。
平成21年4月1日以降に授与される免除状は新免許状の扱いになります。(ただし、平成21年3月31日以前に免許状を授与されている方が、平成21年4月1日以降に別の免許状を授与された場合には、旧免許状所持者としての扱いになります。)
新免許状を複数所持している場合、所持している免許状の種類等によって、取り扱いが異なります。順を追ってご説明いたします。
また、新免許状の有効期間についての考え方についてですが、新免許状では旧免許状と異なり、10年間という有効期間が付されることとなります。
そのため、複数の新免許状を所持している場合には、複数の有効期間が存在していて、それぞれの有効期間の満了日ごとに更新講習を受講・修了しなければならないのか、というご質問があります。この場合には、これらの有効期間は、最も遅く満了となる有効期間に統一されることになります。
例えば、平成22年3月25日に中学校教諭免許状を授与され、平成23年3月25日に小学校教諭免許状を授与された場合には、いずれの免許状も平成33年3月31日まで有効となります。
なお、旧免許状所持者の場合には、最も遅く免許状を授与されてから10年後よりも、修了確認期限の方が先に到来する場合には、最も遅く免許状を授与されてから10年後まで修了確認期限を延期することができます。
次回は、「受講義務と受講免除との関係」について、ご説明したいと思います。
修了確認期限のご確認や教員免許更新制に関する情報が掲載されている、文部科学省HPのアドレスはこちらです。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/koushin/index.htm
(※教員免許更新制へリンク)
〔初等中等教育局教職員課教員免許企画室〕
成田市で中学校教員を勤め、本年4月から初等中等教育局教職員課で研修生として勤務している内田です。
平成21年4月から実施される教員免許更新制では、大学等が免許状更新講習の開設者とされているところから、大学等がこの夏休みを中心に予備講習を開設しています。この予備講習は、来年度から質の高い免許状更新講習を円滑に開設することができるように、いくつかの大学等において免許状更新講習の試行として、少数の受講定員により開設しているものです。
私は、平成23年3月31日を修了確認期限とする者ではありませんが、このたび、免許状更新講習の開設促進を業務としていることから、関東地域のある大学の予備講習を実際に受講(12時間以上の必修領域)してみました。
一日目は、講義の後で、集団討議が行われました。それぞれが、保護者対応の難しさ、不審者・変質者対策と登下校時の安全指導、児童・生徒による携帯電話等の取扱いやネット上のさまざまなトラブル等、直面している課題を話し合いました。聴覚障害のある先生と同じグループになりましたが、手話通訳の方がいたので、お互いに話がしやすかったです(この大学では、集団討議では手話通訳の方が付き添ったり、大教室ではパソコン通訳を介して教室内での声(講師の声、受講者の発言、ビデオ教材のナレーションなどの全て)を文字にしてスクリーンに投影していました。また、視覚障害の方にも介助の方がつくなどの対応をしていました)。
携帯電話のトラブル等の低年齢化などの話や、特別支援学校の下校時の変質者対策などを聞くと、校種が違っても抱えている問題に大差はないのだと感じました。この集団討議は、大学側で意図的に異校種・異年齢により編制したとのことで、普段、校種を越えて交流することが少ないので、よい機会となりました。
二日目は、パワーポイントやビデオ教材を用いての講義でした。法改正や学習指導要領の改訂について、社会的背景の変遷と関連づけながら学ぶことができました。また、特別支援教育については、私が教員になってから話題に上るようになったLD、ADHD、高機能自閉症などの発達障害について、傾向や指導の留意点などを学習しました。障害への理解がまだ十分になされてなく、ともすると、「協調性がない」等と見なされてしまいがちな生徒について、障害をまず理解することが適切な指導につながるのだと改めて考えさせられました。
履修認定試験は、60分で4問を解きます。この大学では必修領域の4分野についてそれぞれ選択式になっていて、やりやすい問題を選んで解くことができます。大学の方では冒頭には「落とすための試験ではないので、あまり不安がらないでほしい」と話していました。私は全て記述式を選び、講習で学んだことを元に、静まりかえった教室で、緊張に包まれながら、必死に答えを書きました。問題は、講習で習ったことばかりなので、記憶を整理しながら、どうにか答えをまとめることができたと思います。
ふと時計をみると、既に45分が経過していました。生徒に「終わっても気を抜かないで見直しをしなさい」とよく注意していたことを思い出し、自分の解答を読み直しました。そっと周りを見渡すと、みなさんも一生懸命ペンを走らせていました。
特に、危機管理や教育法規などは、現場ではなかなか学ぶ機会がないものでした。現場では、校務分掌に沿った担当者がそれぞれの担当分野の研修会には参加できます(安全指導担当者が「危機管理研修会」とか、教育相談担当者が「教育相談研修会」というように)が、学んだことを互いに情報交換したり、還元したりすることが十分にはできないという実情があります。
現場に立って、児童・生徒と向き合ってさまざまな出来事に対応することが教員としての資質や能力を高めるということは、言うまでもありません。そのうえでさらに、この講習を通じて、実践の裏付けとなる知識や技能を身につければ、さらに向上するのではないかと感じました。
この予備講習の開設成果を各大学等でいかして、来年度から全国各地域で現職教員の知識技能のリニューアルが図られることが期待されます。
次回は、8月27日に鹿児島県の種子島で、九州地域の大学が開催予定の予備講習の様子をご報告します。
修了確認期限のご確認や教員免許更新制に関する情報が掲載されている、文部科学省HPのアドレスはこちらです。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/koushin/index.htm
(※教員免許更新制へリンク)
〔生涯学習政策局生涯学習推進課〕
「放課後子ども教室推進事業」は、放課後や週末等に小学校の余裕教室等を活用して、子どもが安全・安心な場所で学習や体験活動・交流活動の取組を実施するものです。
シリーズ第5回目は、福岡県春日市での取組をご紹介します。
東っ子なかよしキャンプを開催して(春日東小学校放課後子ども教室)
春日市立春日東小学校長 青才 徹
東っ子なかよしキャンプは、今年で5年目を迎えました。このキャンプは、おやじの会が主催する校内宿泊キャンプで、今年は7月26日(土曜日)27日(日曜日)の二日間、児童235名(全校児童830名)、父親90名、PTA役員・教職員その他30名の参加を得て盛大に開催することができました。
一日目は、異学年の縦割りグループによるカレー作り、夜のキャンプファイアー、花火大会、校舎内を一周するきもだめし大会、と行事も盛りだくさんです。二日目はラジオ体操に始まり、グループによる校区内の清掃ボランティア活動、ゲーム大会を行い、最後は特別出演の教職員バンドによる演奏で二日間を楽しく過ごすことができました。
本校「放課後子ども教室」の特徴は、おやじの会がイベントを企画するところにあります(学校主導ではありません)。毎月1回、土曜日の午前中を利用して、うどん道場や親子ウォークラリー、素麺流し、ソフトボール大会、餅つき大会など親子共々楽しむイベントを行っています。モットーは「おやじが楽しむこと」と「おやじの絆を深めること」です。教職員も会員として参加しています。東っ子なかよしキャンプは、この年間企画の中で一番のイベントになっています。保護者から寄せられたキャンプの感想に、「エネルギッシュなお父様方が受付で元気に声をかけてくださり、アットホームな雰囲気に安心してお願いしました。」「今回初めて参加させていただきました。子どもはもちろんですが、親の私も大変楽しかったです。」という意見がありましたが、本校の取り組みを代弁しているように感じます。
本年度より本校は地域運営学校としてスタートします。学校・家庭から地域へと広がる取り組みになるよう、おやじたちと手を取りながら充実させていきたいと思います。
「放課後子ども教室」の情報は、以下の「放課後子どもプラン」のホームページをご覧ください。
http://www.houkago-plan.go.jp/
(※放課後子どもプランホームページへリンク)
〔初等中等教育局特別支援教育課〕
このたび、文部科学省では、小学校、中学校等における障害のある子どもと障害のない子どもとの交流及び共同学習が積極的に取り組まれるように、「交流及び共同学習ガイド」を作成し、文部科学省ホームページに掲載しました。
障害のある子どもと障害のない子どもとの交流及び共同学習は、双方の子どもの社会性や豊かな人間性を育成する上で重要な役割を果たしています。
本ガイドでは、交流及び共同学習を実際に推進していく際のおよその手順に沿って、教育課程上の位置づけ、障害のある子どもの特性に応じた配慮、関係者の共通理解の工夫、事前・事後学習の留意点、評価の方法など、重要と考えられる事項を具体的事例と共に示しています。
教育委員会や各学校等におかれては、本ガイドの内容を参考にするなど、交流及び共同学習の一層の推進に役立てていただければ幸いです。
詳細は、こちらです。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/010/001.htm
(※特別支援教育へリンク)
〔初等中等教育局国際教育課〕
近年、日本に在留する外国人が増加しており、公立の小・中・高等学校等に在籍する外国人児童生徒数は、72,751人(平成19年5月1日現在)、そのうち日本語指導が必要な外国人児童生徒数は25,411人(平成19年9月1日現在)となっており、外国人の子どもの就学や学校での受け入れ後の教育が大きな課題となっています。
このため、文部科学省では「初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会」において、これらの課題に関する当面の対応策について審議を行い、このたび報告書を取りまとめました。報告の主なポイントは以下のとおりです。
文部科学省では、本報告の内容を実現すべく、必要な事業の予算要求を行うとともに、都道府県や市町村、関係機関・団体に対し協力を求めるなどの取組を講じていくこととしています。
詳しくはホームページをご覧ください。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/042/houkoku/08070301.htm
(※初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会 報告へリンク)
〔文部科学省・厚生労働省幼保連携推進室〕
先月7月29日に総理大臣のイニシアチブのもと「社会保障の機能強化のための緊急対策−5つの安心プラン−」が取りまとめられました。「5つの安心プラン」の中には、「こども交付金」の創設など、認定こども園の改革について盛り込まれています。
また、認定こども園の普及促進策や運用改善策など総合的な支援方策を講じることを目的として本年5月より文部科学省・厚生労働省で両省局長級の検討会を立ち上げて検討してきましたが、このたび検討結果である「認定こども園の普及促進について」を取りまとめましたので、お知らせします。
これらを踏まえ、今後、幼保連携推進室において、認定こども園制度がより一層積極的に活用されるよう取り組んでまいります。
「5つの安心プラン」及び「認定こども園の普及促進について」についてはこちらをご覧ください。
〔生涯学習政策局社会教育課〕
地域のボランティアが学校のサポートを行う「学校支援地域本部」の取組が全国各地で始まっています。
学校支援地域本部は、地域の大人が学校の教育活動に関わることで、子どもたちの多様な体験、経験の機会が増えたり、規範意識やコミュニケーション能力が向上する、また、教員がより教育活動に力を注ぐことができる、あるいは、地域の教育力が向上するといった効果が期待されます。
このたび、「学校支援地域本部事業」を広く周知し、全国的に広げていくため、下記のとおり、全国6地区で研究協議会を開催することとしました。当日は基調講演、パネルディスカッションなどを予定しています。
ご興味のある方は、この機会にぜひご参加下さい。(参加は無料です。)
詳細及び参加申込みについてはこちらをご覧ください。
http://www.shienhonbu.com
(※学校支援地域本部ホームページへリンク)
〔大臣官房国際課〕
青年海外協力隊及び日系社会青年ボランティア「現職教員特別参加制度」は、公立学校及び国立大学附属学校の教員を対象として、現職の身分を保持したまま、国際協力機構(JICA(ジャイカ))の青年海外協力隊及び日系社会青年ボランティア事業に参加できる制度です。
本制度は、現職教員が参加しやすいように派遣期間や応募手続を設定しており、以下の特徴があります。
応募書類提出締切日は、各教育委員会等により異なりますので、所属する教育委員会等にお尋ねください。(教育委員会等から文部科学省への書類提出期限は平成20年10月2日)
教員としての経験を国際協力に活かしたい!、国際協力の経験を帰国後に学校現場で活かしたい!という皆様の応募をお待ちしております。
〔文教施設企画部施設企画課防災推進室〕
文部科学省では、学校施設が避難所となった際に必要な防災機能の強化を推進するために、「学校施設の防災機能強化の推進モデル事業」を実施しており、現在、都道府県や市区町村教育委員会、付属学校を置く国立学校法人、学校法人を対象に、事業実施団体の公募を行っています。
参加を希望する場合は、平成20年8月22日(金曜日)18時までに参加希望調書を提出して下さい。詳細についてはこちらを御覧下さい。
http://www-gpo3.mext.go.jp/MextKoboHP/list/kpdispDT1.asp?id=KK0000871
〔生涯学習政策局参事官(学習情報政策担当)付〕
文部科学省では、映画その他の映像作品及び紙芝居について、教育上価値が高く、学校教育又は社会教育に広く利用されることが適当と認められるものを選定し、あわせて教育に利用される映像作品等の質的向上に寄与するために、教育映像等審査規程(昭和29年文部省令第22号)に基づいて映像作品等の審査を行っています。
5月の文部科学省選定作品等(学校教育教材)の紹介
〔内閣府政策統括官(沖縄政策担当)〕
内閣府の「アジア青年の家」事業が沖縄県において開催されています。
今回のプログラムは、「環境」をテーマに設定し、日本、アジアなどの75名の若者が、8月6日(水曜日)から8月27日(水曜日)までの3週間、様々な体験を通じ、主体的に活発な議論をすることにより、将来イノベーションを起こす人材を育成するものです。
プログラムには、環境問題に関する専門家などによる講義をはじめ、沖縄の伝統文化や生活に直に触れる機会として、ハーリー競漕、伊江島でのホームステイや農業体験なども盛り込まれています。また、8月23日(土曜日)には、第一線で活躍している科学者の方に、科学者の道を志したきっかけ、科学技術の素晴らしさなどについて伝えていただく「科学者シンポジウム」が沖縄県において開催されます。ぜひご参加ください。
中学校・高等学校の学校づくり・授業づくりに役立つ情報が満載の月刊誌「中等教育資料」(文部科学省教育課程課編集)8月号が8月1日に発売されました。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/main_b7.htm
(※出版物案内へリンク)
生涯学習行政担当者必携 実務に必要な情報満載
http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/chiiki/chiiki/08020402/001.pdf(PDF:123KB)
(※地域づくり支援室についてへリンク)
終戦記念日に思う
8月15日は終戦記念日(戦没者を追悼し平和を祈念する日)だった。全国戦没者追悼式が行われ、正午には我々文部科学省の職員も起立して戦没者に対し黙祷を捧げた。甲子園の高校球児たちも試合を中断して黙祷した。戦争の記憶を風化させずに次の世代に引き継ぐことは、我々の責任だと思う。
20世紀の戦争では、おびただしい数の無辜の民衆が殺された。ゲルニカ、重慶、ドレスデン、さらに日本では東京大空襲を始めとする各地への空襲、沖縄戦そして広島・長崎への原子爆弾投下。そうした戦禍の悲惨さを思うたびに、強い怒りと悲しみを覚える。
我が国においても国際社会においても、戦後体制を築いた人たちに共通していたのは、このような悲惨な戦争を二度と起こすまいという固い決意だった。
「平和憲法」とも呼ばれる日本国憲法の前文は平和を希求する言葉に満ちている。「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚する」「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」等々。
この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。改正教育基本法は前文で「我々日本国民は…世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願う」と謳い、第1条で教育の目的として「平和で民主的な国家及び社会の形成者」の育成を挙げている。平和への志向は改正前と変わらない。
国際連合憲章前文も「われら連合国の人民は、われらの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い」云々と謳い、平和への強い意志を示している。
平和は、世界の人々にそれを支える心がなければ維持できない。だからユネスコ憲章は前文でこう宣言した。「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」「政府の政治的及び経済的取極のみに基く平和は、世界の諸人民の、一致した、しかも永続する誠実な支持を確保できる平和ではない。よって、平和は、失われないためには、人類の知的及び精神的連帯の上に築かなければならない」。1953年から連綿と続いているユネスコ協同学校(ユネスコ・スクール)事業は、各国の学校でのユネスコの理想に即した実践を通じて、子どもたちの心の中に平和のとりでを築き、国境を越えた心と心の絆を結んでいこうという取組だ。
北京ではオリンピックが開かれている。「平和の祭典」とも呼ばれるオリンピックには、国と国とが政治的に対立していても、人と人とはスポーツマンシップを通じて連帯できるという理想がある。北京オリンピックでは一国一校運動も行われている。中国の子どもたちがこの運動を通じて国境を越えた心の絆を結んでくれるなら、それはとても素晴らしいことだ。
ユネスコもオリンピックも、現実には様々な政治状況に影響されてきた。しかし、国家間の政治的な対立を越える平和の理想は忘れないようにしたい。
新学習指導要領では、中学校社会での「大戦が人類全体に惨禍を及ぼしたことを理解させる」との記述を受け、その解説において「我が国が多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大な損害を与えたこと、各地への空襲、沖縄戦、広島・長崎への原子爆弾の投下など、我が国の国民が大きな戦禍を受けたことなどから、大戦が人類全体に惨禍を及ぼしたことを理解させ、『国際協調と国際平和の実現に努めることが大切であること』(内容の取扱い)に気付かせる」との記述が盛り込まれた。
一方、同じ指導要領の道徳の章には「世界の中の日本人としての自覚をもち、国際的視野に立って、世界の平和と人類の幸福に貢献する」との記述がある。その基本はどの国の人々とも同じ人間として尊重し合うということだ。同じ道徳の章に「生命の尊さを理解し,かけがえのない自他の生命を尊重する」との記述がある。まず自己の生命の尊厳を深く自覚する。そこから他者の生命も同じく尊いものであることを知る。そうして互いの生命の尊厳を尊重し合う。憲法前文の「人間相互の関係を支配する崇高な理想」もユネスコ憲章前文の「平和のとりで」も、その根本は「自他の生命の尊重」にあると思う。沖縄で言われる「命どぅ宝(ぬちどぅたから)」だ。いじめのない学校と戦争のない地球は、「命どぅ宝」の心でつながっている。教室の中に世界平和の第一歩がある。
日本人も含めた人類が過去に犯した大きな過ちと、その結果奪われたあまりに多くの尊い命を深く心に刻むこと。かけがえのない命をお互いに大切にし、国境を越えて心の絆を結び合うことの素晴らしさを大きく心に抱くこと。「平和的な国家及び社会の形成者」は、そうやって育つのではないだろうか。
〔大臣官房審議官(初等中等教育局担当) 前川 喜平〕
(大臣官房総務課法令審議室長 淵上 孝)
(初等中等教育企画課教育制度改革室長 佐藤光次
)
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