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第3章 学校のICT化におけるICT支援員について

3−1 ICT支援員の必要性

 第1章で述べたように、授業におけるICT活用が進まない理由について「ICT活用をサポートしてくれる人材がいない」との回答が、小中学校、高等学校ともにほぼ7割にも達している。また、授業におけるICT活用の支援について「学校又は地域単位で、授業におけるICT活用を支援する専門家を確保し、彼らを派遣する体制を確立してもらいたい」との回答が、同様に8割を超えている。
 しかし、こうしたニーズに対し、学校における外部のICT人材の活用状況は、平成19年3月時点で、授業支援のために外部人材を活用している学校、研修支援(講師、補助者)のために外部人材を活用している学校とも、小中学校全体の2割にも満たない(情報化実態調査より)(注1)。

 前述のとおり、教員のICT活用指導力の向上が課題となっているが、授業におけるICT活用を進めるためには、教員にとってのICT活用の敷居を低くすることが必要であり、ICT活用について校長がリーダーシップを発揮し、教員が困ったときに相談ができ、安心して指導に当たることのできる環境づくりをすることが重要である。
 授業でのICT活用について教員に研修を行うことは必要である。ICT活用の場面や方法は多様であり、身近にある機器・ソフトウェアや素材を使って簡単にできる活用のコツやノウハウをつかむこと、慣れることでICT活用指導力は格段に高まるため、利用のきっかけを与えてICT活用の良さへの教員の気づきを生むことが極めて重要である。
 また、ICT活用に伴う準備等の負担を軽減することも非常に重要である。ICT機器・ソフトウェアや教材、その活用方法が多様化する中で、それらについて教員が常に最新の情報を入手し、準備から設定・操作、トラブル対応までを行うことには困難が伴う場合がある。アンケート調査でも、「ICT活用が進まない」理由として「授業でICTを活用するための準備に時間がかかりすぎる」と回答している学校が、小中学校、高等学校ともに8割を超えている(注2)。授業でICTを活用したくても準備等に手が回らない状況も想定され、簡単なサポートによっても効果は期待される。

 本検討会では、授業などにおけるICT活用を円滑に進める環境づくりとして、教員のICT活用を支援する「ICT支援員」によるサポート体制を早期に普及させることを目指し、その一般的なモデルについて検討した。
 その際、ICTに関する高度な知識・技術を求めることはICT支援員の確保そのものを難しいものにし、効率性の観点で必ずしも適当ではない。むしろ、ICT活用の基礎的なスキル等をもとに、学校における実践を通じたOJTや日々の自己啓発によってICT支援員の能力を高めていくことが効率的である。また、こうしたICT支援員を地域(教育委員会)で一括して必要な人数を任用し、学校単位ではなく地域で共有する形で活用していくことが、域内の学校における様々な実践例やノウハウの獲得を可能とし、地域全体としてICT活用の水準向上が図られる点で、非常に効果的である。これをまとめると、図3−1のようなイメージとなる。
 なお、地域や学校の実情に応じて、ICT支援員を学校単位で配置するなど、ここで示した一般的なモデルとは異なる方法を採ることも可能である。


図3−1 ICT支援員に係る体制整備のイメージ

  • (注1)外部ICT専門家を授業支援のために活用している小中学校は約15パーセント、研修支援のために活用している小中学校は約19パーセント。
  • (注2)「強くそう思う」または「ある程度そう思う」と回答した学校の割合(小中学校:約82パーセント、高等学校:約89パーセント)

3−2 ICT支援員の事例

 ICT支援員を積極的に活用することで、ICT活用の促進等に効果を上げている事例が見られる。

1国内の事例

  • 目黒区(東京都)では、教育委員会で「情報教育指導員」を非常勤職員として雇用し、各区立小中学校において、授業支援・指導計画作成に関する相談・助言、校内における研修支援、校務補助(ホームページの更新等)、機器の維持管理(簡単な調整等)を行っている。教員とICT支援員の連携のため、学校の担当者との間で授業支援に関する要望とそれに対する提案等をメールでやり取りしている。
  • 日野市(東京都)では、教育委員会が民間企業への委託により配置している「メディアコーディネータ」が、各市立小中学校等において、授業展開案の作成、授業中の指導支援、研修会・研究会等の支援、ICT活用環境の維持・改善など、ICTを活用した授業の設計・実施を支援している。専門家の助言を随時受けて支援の向上を図るほか、活動記録システムにより事後評価等に役立てている。
  • 柏市(千葉県)では、教育委員会が民間企業への委託により配置している「IT教育支援アドバイザー」が、各市立小中高等学校において、コンピュータやインターネットを学習活動に利用する教員の操作技術に関する指導補助、教材等の作成、校内研修指導等を行っている。教育委員会では、ICT活用における教員個々の自立を促す目的から、IT教育支援アドバイザーの配置申請を含め、教員のためのナレッジマネジメントを支援するシステムをウェブ上で提供している。

2海外の事例

  • 米国では、学区の教育CIOのスタッフのうち「専門技術者」が、ICT支援員として学校での技術的な支援を行っている事例がある。コンピュータやネットワークのサポート、アプリケーション構築・維持・管理、教育技術支援を行い、中学校や大規模校では各校に、小学校では複数校の掛け持ちで、配置されている例が多い。
  • 英国では、学校の権限で、技術支援を行う「ICTテクニシャン」やそれを支援する「技術支援アシスタント」のほか、「ティーチングアシスタント」が配置されている事例がある。ICTテクニシャンはネットワーク管理、機器の整備・保守等を行い、ティーチングアシスタント(国家資格をもつ)が授業中の指導補助等を行っている。

3−3 ICT支援員の機能・業務

(1)ICT支援員の機能

 前節で述べた国内の事例を踏まえ、ICT支援員に求められる機能は、授業のほか、教員研修や校務にわたって、教員と相談したり依頼を受けたりしながら、また、学校からの要望も受けながら、ICT活用の支援を行うことである。

【ICT支援員の機能】

  • 1授業におけるICT支援
  • 2教員研修におけるICT支援
  • 3校務におけるICT支援

 このうち、授業におけるICT活用を通じた子どもたちの学力の向上などの効果を目指す趣旨から、ICT支援員の機能のうち「1授業におけるICT支援」を中心的な機能と位置づけ、他の機能については学校における具体的なニーズに応じて追加的に求めていくという考え方が望ましい。
 その際、重要なことは、授業等におけるICT活用の充実を図るためには、全ての教員がICT活用指導力を有することが必要であり、そうした観点から、ICT支援員の活用は、ICTを活用した授業等を全ての教員が自立して行うことができるように支援することであり、また、自立できた教員に対しては更なる要望に応え「わかる授業」「魅力的な授業」の実現・発展に向けた多様な支援をするとの考え方に基づくことである。
 ICT支援員の配置については、国内の事例において、ICTを活用した授業の増加・円滑化、「楽しくわかる授業」の実現、学校ホームページの充実などのほか、ICT活用に対する自信や意識の向上、ICT活用指導力の大幅な向上が挙げられており、教員のICT活用に関する能力や意識の面に大きな成果が見られていることに注目すべきである。

(2)ICT支援員の具体的な業務

 前節で述べた国内の事例も踏まえ、ICT支援員の具体的な業務は、授業や研修(教員向けの校内研修)、校務において、主として以下のようなものと整理できる(図3−2、図3−3)。

○機器・ソフトウェアの設定や操作

 授業や研修の開始前に機器やソフトウェアを設定したり、授業中や研修中に操作したりする。また、校務に必要なソフトウェアの設定を行う。

○機器・ソフトウェアの設定や操作の説明

 授業や研修に向けて、あらかじめ、機器・ソフトウェアの設定方法や操作方法を教員や研修講師(情報主任等)に説明する。また、授業中に、児童生徒が使う機器・ソフトウェアの操作方法について説明するなど、教員の指導を支援する。校務で使用するソフトウェアの設定方法や操作方法を教員に説明する。

○機器・ソフトウェアや教材等の紹介と活用の助言

 授業や研修に使用する機器・ソフトウェアやディジタル教材について情報を収集し紹介するとともに、それらの効果的な活用方法や指導案・指導計画づくりについて教員に助言する。

○情報モラルに関する教材や事例等の紹介と活用の助言

 情報モラルに関する教材や事例、対処法等について情報を収集し紹介するとともに、それらの効果的な活用方法や指導案・指導計画づくりについて教員に助言する。
 インターネット上の有害情報等の問題については、情報サービスの変化・多様化や、その中で児童生徒がこれまでなかったような被害に遭うケースの出現も考えられることから、最新の情報をもつICT支援員の役割は重要である。

○ディジタル教材作成等の支援

 授業や研修に向けて、あらかじめ、必要なディジタル教材について教員の依頼を受けて作成する。

○機器の簡単なメンテナンス

 授業や研修、校務に使用する機器やソフトウェアの簡単な調整・保守を行い、トラブル時には故障箇所の切り分けや保守管理業者への連絡を行う。


図3−2 ICT支援員の機能と具体的な業務


図3−3 ICT支援員の具体的な業務(時系列イメージ)

(3)ICT支援員の活用に当たっての留意点

 学習の充実、授業等におけるICT活用の促進のため、ICT支援員を積極的に活用することが必要である。前項までに述べたICT支援員の機能・業務に照らして、ICT活用に関する基礎的なスキルを有する者がICT支援員となり得る。ICT機器・ソフトウェアが普及した現代社会において、こうした人材を探すことは決して難しいことではない。学校を理解し支援することに好意的な者を外部人材として有効活用するとの視点をもって、積極的に任用の機会を与えるという姿勢が重要である。国内の事例からも、ICTについて高度な知識・技術を持ち合わせていなくても、ICT支援員の機能を適切に実現できている。
 現場の経験がないことについても、学校への配置の前に適切なガイダンスや研修を行うことで対応可能であり、むしろ、学校での実践の経験を積むことでOJTにより知識やノウハウを身に付けることが効率的であると言える。
 こうしたことを踏まえ、ICT支援員の活用に当たっては、以下のような点に留意することが必要である。

1ICT支援員の形態について

 ICT支援員として外部人材を活用する方法については、教育委員会における直接雇用、民間企業やNPO法人等との契約によるほか、ボランティアの参加を得たり、大学や大学院との連携(教員養成課程など教職を目指している者の実習としての位置づけなど)によることも考えられる。

2ICT支援員に求める機能について

 前節で述べたように、ICT支援員については「授業におけるICT支援」を中心的な機能と位置づける考え方が望ましい。
 したがって、例えば、学校内の情報機器・システムの保守管理については、専門的な保守管理業者に委託することで対応し、ICT支援員の業務としては、簡単なメンテナンスやトラブル時の故障箇所の切り分けなど限定的なものとすることが適当である。

3ICT支援員に求められる能力と育成方法について

 ICT支援員は、ICT活用の基礎的なスキルをもっていると同時に、実践に役立つ知識・技術についての情報収集に意欲的かつ積極的に取り組めるようなICTへの高い関心をもっていることが必要である。最新の情報を教員の支援や学校の取組みに活かすといった姿勢が求められる。
 また、教員や子どもたちと関わっていく上でのコミュニケーション能力を持ち合わせている人物であることが必要である。例えば、教員や子どもたちにICT活用についてわかりやすく説明することができること、教員や教育委員会との報告・連絡・相談ができ事務能力を有すること、子どもたちとのコミュニケーションが円滑にできることなどが求められる。
 これらの点について、学校への配置の前に基礎的な研修を行うことが必要であるとともに、配置後もOJTや定期的な研修の実施、自己啓発を奨励する仕組みづくりにより、資質・能力を高めていくことが重要である。
 なお、ICT支援員に対する具体的な研修内容については、次章で説明することとする。

4教員や教育委員会との意思疎通や連携体制について

 ICT支援員の業務を円滑に行うに当たっては、教員が授業でどのようにICTを活用したいのかという要望を吸い上げたり、教材等を視覚的に見せたい等の具体的な要望に対しICTの特性を生かしてそれを実現するためのアドバイスをしたりするなど、教員や教育委員会(担当指導主事等)と十分な意思疎通を図ることが重要である。
 また、ICT支援員の機能を十分発揮させるためには、ICT支援員の能力向上や業務上の問題解決、配置に当たっての学校側との調整などを円滑に行うことが重要であり、例えば教育CIO補佐官等において、こうしたコーディネート機能を担っていくことが重要である。その際、国内の事例にも見られるように、グループウェアなどのICTを活用して連携を充実させることは、OJTとしての側面も含め、有効な方策である。なお、ノウハウを有する民間企業との契約によることを含め、コーディネータ機能の実現に外部人材を活用することも考えられる。

3−4 ICT支援員の業務の具体例

 前節において、ICT支援員の業務を整理したが、このうち授業におけるICT支援に係る業務の具体例を挙げる。

○機器・ソフトウェアの設定や操作

(例)

  • 普通教室においてコンピュータや周辺機器を使用する授業を行う際、授業の開始前に、必要な機器を設置し、機器・ソフトウェアの起動をしたり、使用する画像や文書等のファイルを開いておいたりする。
  • 体育の授業で、跳び箱やマット運動などの自分のフォームを見ながら学習する場面で、ディジタルビデオカメラとコンピュータの起動や接続をしておいたり、録画・再生の設定や操作をしたりする。
  • 理科の授業で、写真を用いた観察記録ノートをつくる際、教員の説明に合わせ、ディジタルカメラを操作して撮影する、画像をパソコンに取り込みプリンタで印刷するなど、実際に手本を見せる。
  • 教員の説明に関連させて、教材を実物投影機とプロジェクタで大きく映したり、動画を途中で止めたり戻したりしながら提示する。

○機器・ソフトウェアの設定や操作の説明

(例)

  • 総合的な学習の時間で、学校行事(修学旅行等)の新聞などを作成する際、あらかじめ教員に、ワープロソフトやお絵かきソフトを使って写真やイラストを挿入しながら作品をつくる方法を説明する。
  • 技術・家庭科の授業で、木工製品の設計を学習する際、あらかじめ教員に、学習用設計ソフトウェアの操作方法を説明する。

○機器・ソフトウェアや教材等の紹介と活用の助言

(例)

  • キーボード入力やマウス操作の練習ができるインターネット上の学習ソフトウェアを紹介する。
  • 教科書の内容をディジタル化し、写真や動画、アニメーションなど理解を深める工夫がなされたディジタル教科書の活用について紹介する。
  • インターネットで調べ学習をする際、関連サイトのリンク集を作成しておく。また、授業中には、これらのサイトや児童生徒が見つけた有用なサイトを適宜プロジェクタで提示するなどにより、検索等を円滑に行えるよう支援する。
  • 社会科の世界の国々や理科の気象の学習など、実物を見ることが困難な事象にイメージをもたせたり、生活科の植物の発芽や理科の昆虫のからだの学習など、注目すべき特徴や変化を大きく提示したりするなど、授業における効果的なICT活用のポイントを助言する。
  • コンピュータ教室で授業をする際、児童生徒のコンピュータ上に教材を配付したり回収したりできるソフトウェアを使った、効率的な授業運営について助言する。

○情報モラルに関する教材や事例等の紹介と活用の助言

(例)

  • インターネットのルールとマナーの学習のため、児童生徒が、インターネット上の問題を学習するための指導の先進事例、有害サイトを擬似体験できる教材等について情報を収集し、紹介する。
  • 学校裏サイトやプロフ等に起因する事件、技術を悪用した事例について情報を収集し、これらに関する指導の方法についてアドバイスする。
  • インターネット上の有害情報に関わる法令・制度の動向等について情報収集し、紹介する。

○ディジタル教材作成等の支援

(例)

  • 国語科における漢字の書き順の学習のため、プレゼンテーションソフトのアニメーション機能を活用し、一筆ずつ示して書き順をわかりやすく見せられるような教材の作成を支援する。
  • 総合的な学習の時間で、学校行事(運動会等)の招待状や絵手紙を作成する際、児童が短い時間で仕上げられるようにするための、雛形(フォーマット)の作成を支援する。

○機器の簡単なメンテナンス

(例)

  • コンピュータ教室や普通教室、職員室等のコンピュータについて、定期的に起動・動作の確認をする。
  • 授業で使うディジタルカメラを充電したり、メモリを確認したりする。
  • インターネットに接続できなくなるトラブルが発生した際、保守管理業者に連絡し、学校ネットワーク管理者に報告する。
  • 授業後などに、作成したファイルやフォルダを確認・整理したり、機器・ソフトウェアの設定を確認したりするほか、ウイルスチェックなどのセキュリティ対策を行う。