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第1章 学校のICT化のサポート体制の整備の必要性について

 本章では、学校のICT化の目的を概説した上で、学校・教育委員会における現状の課題を踏まえ、学校のICT化のサポート体制の整備の必要性について述べる。

1−1 学校のICT化の目的と現状

(1)学校のICT化の目的

 社会の情報化が急速に進展し、今後も更なる情報コミュニケーション技術(ICT)の発展が予想される。学校においても、コンピュータやインターネット、ディジタルカメラなどのICTが多様な学習のための重要な手段として活用されるようになってきている。
 このような状況の下で、児童生徒が、情報社会に主体的に対応できる「情報活用能力」を身に付けることの重要性はますます高まっている。
 また、「わかる授業」を実現し「確かな学力」の育成に資するため、教員がICTを効果的に活用した授業を展開することが重要となっている。
 さらに、教員の校務の多忙化が指摘されており、教員1人1台のコンピュータ整備など校務の情報化により教員の事務負担の軽減を図り、子どもと向き合う時間を確保することが求められているところである。
 学校のICT化は、これら教育の情報化を通じて教育の質の向上を図るために、学校教育に関連する様々な場面でのICT活用をソフト・ハードの両面で効果的かつ円滑に進めることを目的とするものである。

(2)我が国のICT戦略と学校のICT化の現状

 教育の情報化を推進するため、政府においては、「世界最先端のIT国家を目指す」ことを目的とした「e-Japan戦略」(平成13年〜17年)に続く国家戦略として、平成18年1月に「IT新改革戦略」を策定し、学校のICT環境整備の推進、教員のICT活用指導力の向上等に取り組んでいる。しかし、同戦略等に掲げられた具体的な数値目標について、平成22年度までの達成のためには格段の取組みが必要な状況となっている。
 学校のICT環境整備と教員のICT活用指導力の状況について、前者については、全国平均で見ると数値は伸びているが、都道府県別に見ると、例えば校内LANの整備率については、9割程度に達している地域がある一方で、3割にも達していない地域があり、大きな差が見られる(図1−1)。後者についても、平成19年2月に文部科学省が「教員のICT活用指導力の基準の具体化・明確化に関する検討会」を通じて策定した「教員のICT活用指導力の基準(チェックリスト)」を活用した教員のICT活用指導力の評価で、ICTを活用して指導できる能力を有すると回答した教員の割合は、指導の場面に応じた項目ごとに差はあるものの、総じて6割程度にとどまっている(図1−2)(注1)。(いずれも平成19年3月現在。文部科学省「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」(以下「情報化実態調査」という)より)


図1−11 学校のICT環境整備の現状


図1−12 都道府県別の校内LAN整備率


図1−2 教員のICT活用指導力の現状

 また、「IT新改革戦略」では、「学校のIT機器の保守・点検等を行う人材の不足などの問題があり、学校現場のIT化による改革が十分に進んでいるとは言えない」という課題を指摘した上で、「IT基盤のサポート体制の整備等を通じ、学校のIT化を行う」ことを目標に掲げるとともに、実現に向けた方策として、「IT化のサポート体制を強化する」ことを提言しているところである(図1−3)。

 このように、政府として、学校のICT化のサポート体制の強化の重要性を示しているところであるが、その実現方策については、CIO(Chief Information Officer)の設置の推進や学校のICT環境の整備計画の作成などを示すにとどまっており、本検討会では、より具体的な内容を明確にすることが必要であると考え、検討を行ったものである。


図1−3 「IT新改革戦略」抜粋(学校のIT化のサポート関連)

 なお、IT新改革戦略評価専門調査会においても、教員のICT活用を支援するICT支援員の活用を含め、学校のICT化のサポート体制の確立が重要であることが指摘されている(注2)。

1−2 学校のICT化のサポート体制の整備の必要性

(1)学校のICT化のサポート体制の整備に当たっての視点

 子どもたちの能力をはぐくむ上で最適な学校づくりを進めていかなくてはならない。情報社会の中にあって、学校教育においてもICT環境の整備、教員のICT活用指導力の向上など学校内での人的・物的リソースの充実に加え、地域社会との連携を含めて、幅広い視点でハード・ソフト両面からICTを有効に活用していくことが重要である。
 こうした取組みを確実かつ計画的に進めるためには、教育委員会や校長のリーダーシップの発揮、教員の指導力の向上のための学校内の協力体制や学校外からの支援体制の構築が必要であり、このための組織的・人的なサポート体制づくりが大きな課題である。
 ICT化を重要な戦略と位置づけ、ICTの導入・活用を組織的・計画的に進めるために、情報化の統括責任者であるCIOを置く民間企業も増えているほか、国立大学法人もほぼ全てでCIOを置いており、地方公共団体においても電子自治体の推進のためCIOを置くところが増加してきている。(次章参照)
 ICTについては、技術進歩が速い、技術的な知識・ノウハウが必要である等の事情から、外部人材の活用は効果的であり、戦略的に重要である。理科支援員、スクールカウンセラー、特別支援教育支援員等のように、学校でも外部人材が積極的に活用されている。また、文部科学省では、平成20年度より学校支援地域本部事業を開始し、地域全体で多様な形態で学校や教員を支援する取組みを促進している。このように、地域社会の支援・協力を得るという視点も今後ますます重要になってくる。

 しかしながら、学校・教育委員会においては、ICT化について、次項で述べるように多くの課題が見られるところである。

(2)学校・教育委員会における具体的な課題

 平成18年度に文部科学省が実施した「地域・学校の特色等を活かしたICT環境活用先進事例に関する調査研究」(注3)におけるアンケート調査(以下「アンケート調査」という)などにおいて、学校のICT化のサポート体制の整備の必要性を浮き彫りにする結果が得られている。

  • (注3)社団法人日本教育工学振興会(JAPET)への委託により実施。アンケート調査(平成18年12月〜19年1月)に回答した学校及び教育委員会の数は、小中学校 6,498、高等学校 803、教育委員会 376。以下、詳細なデータについては、下記Webサイトを参照。
    http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/19/06/07060405.htm

1学校のICT環境整備に係る課題

 前節において、学校のICT環境整備の遅れについて述べたところであるが、アンケート調査でも、「授業におけるICT活用が進まない理由」として、小中学校、高等学校とも6割を超える学校が「活用したくても、機器の台数が不足している」と回答しており(図1−4)、特に、普通教室について小中学校、高等学校とも7割あるいはそれ以上の学校が「活用したくても、機器の台数が不足している」と回答している(注4)。ICT活用を進める上でICT環境整備が課題となっている。


図1−4 「機器の台数が不足している」との回答の割合(アンケート調査より)

 また、計画的にICT環境整備を進めるための整備計画の策定については、「IT新改革戦略」において2008年までの策定が目標とされているが、教育委員会の現状を見ると、「計画有」とした割合は、都道府県・政令指定都市では6割を超えるものの(約61パーセント)、市区町村では3割程度にしか達しておらず(約31パーセント)、多くの市区町村において、その策定が急務となっている。(平成18年10月文部科学省調べ。全ての都道府県・市区町村から回答)

  • (注4)「よくあてはまる」または「ある程度あてはまる」と回答した学校の割合

2授業におけるICT活用に係る課題

 前項で述べたとおり、ICTを活用して指導することができる教員は、平成19年3月時点で、6割程度にとどまっており、ICTを活用した効果的な指導の仕方について、教員一人一人が身に付けていくための取組みが必要となってくる。アンケート調査でも、「授業におけるICT活用が進まない理由」として、小中学校、高等学校ともに半数を超える学校が「授業のどのような場面でICTを活用すればよいかがわからない」と回答しており(注5)(図1−5)、その対応が求められる。


図1−5 「ICT活用の場面がわからない」との回答の割合(アンケート調査より)

 都道府県・政令指定都市においては、8〜9割の教育委員会が「授業におけるICTの活用」を、全教員に対する研修としてある程度実施している(注6)が、市区町村については、「ICT機器の基本操作」や「授業におけるICTの活用」に関する研修をあまり実施していない教育委員会が約7割に達する(注7)。各学校の校内研修についても、小中学校、高等学校とも、ICT活用の効果について教職員が共通理解をもつよう取り組んでいる学校は1割程度しかない(注8)。また、初任者研修において、教員によるICT操作スキルに大きな差は見られないものの、授業において教員がICTを活用したり児童生徒がICTを主体的に活用できるように効果的な指導を行ったりするICT活用指導力の向上に関する研修は不足している。
 このように、授業におけるICT活用について、教員に対する研修の充実を図ることが課題となっている。

 また、教育用ソフトウェアや教材コンテンツについて、「教科書の内容に即した教材コンテンツ」、「無料または安価な教育用ソフトウェア」、「教員や児童生徒が操作しやすい教育用ソフトウェア」を増やしてほしいと回答した小中学校がいずれも9割を超え、高等学校でもそれぞれ8〜9割にのぼっており(注9)(図1−6)、使いやすいディジタル教材等の提供・活用の促進が課題となっている。


図1−6 「操作しやすい教育用ソフトウェアを増やしてほしい」との回答の割合(アンケート調査より)

  • (注5)「よくあてはまる」または「ある程度あてはまる」と回答した学校の割合
  • (注6)全教員に対する研修内容として「ICT機器の基本操作」を「よく実施している」または「ある程度実施している」と回答した都道府県・政令指定都市教育委員会の割合
  • (注7)全教員に対する研修内容として「ICT機器の基本操作」や「授業におけるICTの活用」を、「全然実施していない」又は「あまり実施していない」と回答した市区町村教育委員会の割合
  • (注8)「ICTを活用した授業の効果を実証的に明らかにするための調査などを実施し、その結果を教職員が共通理解するための機会」について「学期に1回以上実施している」または「1年に1回は実施している」と回答した学校の割合
  • (注9)それぞれ「強くそう思う」または「ある程度そう思う」と回答した学校の割合

3ICTの活用等を支援する人材に係る課題

 授業等で使用するICT機器やソフトウェアには様々なものがあり、効果的な活用にはそのコツやノウハウをつかむことが大切である。また、技術進歩が速いために、活用やメンテナンスにおいて困難を伴うこともある。こうした事情から、ICT活用をサポートする人材への期待が高まっている。
 アンケート調査でも、「授業におけるICT活用が進まない理由」として「活用をサポートしてくれる人(同僚、専門家)がいない」と回答している学校が、小中学校、高等学校とも約7割に達しており(図1−7)、小中学校、高等学校とも8割を超える学校で、「学校又は地域単位で、授業におけるICT活用を支援する専門家を確保し、彼らを派遣する体制を確立してもらいたい」と回答している。(注10)


図1−7 「ICT活用をサポートしてくれる人がいない」との回答の割合(アンケート調査より)

 また、こうした学校におけるICT活用のサポート人材のほか、教育委員会においても、教育委員会外の情報担当専門家の必要性について「情報化計画の立案・推進のための外部専門家が必要」と回答している教育委員会が約7割に達している。(アンケート調査より)

 学校における授業でのICTの活用、また、教育委員会における情報化の推進において、教員や教育委員会をサポートするための外部人材等の活用が課題となっている。

  • (注10)いずれの質問も、「強くそう思う」または「ある程度そう思う」と回答した学校の割合

4情報セキュリティの確保に係る課題

 授業や校務におけるICT活用に伴い、児童生徒の個人情報保護など情報セキュリティ上の対応が必要であり、情報セキュリティポリシー等の規程を整備し、その適切な運用を図ることが必要となる。
 しかしながら、例えば、仕事上必要なため個人所有のコンピュータを学校で使うことがある教員は、平成19年3月時点で、全体の半数近く(約46パーセント)に達し、さらにその半数以上(約52パーセント)は学校のネットワークに接続して使っているほか、こうした個人所有のコンピュータを学校のネットワークに接続する場合の利用規程を有する学校は半数程度(約56パーセント)にとどまっているなど、学校における情報セキュリティ確保の体制整備が課題となっている。(情報化実態調査より)

5開かれた学校づくりに係る課題

 学校における学習や指導の面での情報提供に対する保護者のニーズは高まっており、保護者や地域住民の理解・協力を得るうえで情報の発信やコミュニケーションを促進することが重要となっている。
 このためには、学校ホームページを活用して学校情報を発信・共有していくことが効果的であるが、平成19年3月時点で、小中学校等のうち約8割(約80パーセント)で公式ホームページが開設されているものの、このうち「概ね週1回以上更新している」とする学校は1割程度(約10パーセント)で、4割程度(約40パーセント)は「概ね学期ごとに1回」又は「概ね年1回以下」の更新となっており、開かれた学校づくりに資する積極的な情報公開・広報等が課題となっている。(情報化実態調査より)

1−3 学校のICT化のサポート体制の全体イメージ

 前節で述べたように、教育の情報化については、ICT環境整備、授業でのICT活用、支援のための人材、情報セキュリティ、保護者や地域への情報発信など、様々な側面から課題が挙げられるが、これらを克服し、情報化のメリットを最大限、教育の質の向上へとつなげていくためには、教育の情報化について計画的かつ組織的な取組みが不可欠である。
 これらの課題を含め様々な課題に総合的に対応していくためには、教育の情報化について地域・学校のそれぞれで責任あるマネジメント体制を整えたり、教育委員会や学校の現場レベルの支援のために外部人材を活用したりするなど、教育委員会及び学校において、学校のICT化のサポート体制を整備することが必要である。
 「IT新改革戦略」において、学校のICT化のサポート体制について、その強化の必要性が提言されたが、地域によっては既に、整備計画の策定による計画的なICT環境整備の推進や、授業における教員のサポート体制の充実などの積極的な取組みが効果を上げた事例が見られる。これらの取組みは、地域や学校における教育の情報化を計画的かつ組織的に進めるための統括的な責任をもつ人材や組織を設置したり、学校における授業支援等のための外部人材を活用するなどのサポート体制の整備により、学校のICT化に意欲的に取り組む先進的な事例と言える。
 事例については次章以降で述べるが、これらを踏まえると、学校のICT化のサポート体制の全体像は、図1−8のようなイメージとなる。教育委員会及び学校において、教育の情報化を計画的かつ組織的に進めるための統括責任者(CIO:Chief Information Officer)として「教育CIO」と「学校CIO」がその機能を発揮し、また、学校において教員の授業支援等を行う人材として「ICT支援員」を積極的に活用する体制である。


図1−8 学校のICT化のサポート体制の全体イメージ

 以下各章において、国内外の事例や他分野における学校のICT化の事例等を参考に、教育CIO・学校CIO、ICT支援員の機能・業務、求められる資質・能力、その育成方法等について詳細を述べた上で、学校のICT化のサポート体制の普及に向けた方策について提言することとする。