ここからサイトの主なメニューです

重要文化財(建造物)耐震診断指針に基づく基礎診断実施要領の策定について

13財建造第二号

平成一三年四月一〇日
各都道府県教育委員会文化財保護主管課長あて
文化庁文化財部建造物課長通知

重要文化財(建造物)耐震診断指針に基づく基礎診断実施要領の策定について

重要文化財(建造物)の地震時における安全性の確保については、文化庁は、各都道府県教育委員会の協力をお願いしているところであります。

また、文化庁では、「重要文化財(建造物)耐震診断指針」「重要文化財(建造物)所有者診断実施要領」を策定し、それぞれ「重要文化財(建造物)耐震診断指針の策定について」(平成一一年四月八日 庁保建第一四九号)「重要文化財(建造物)所有者診断実施要領の策定について」(平成一一年四月八日11保建第二七号)において示しているところです。

前掲指針においては、所有者診断の結果、必要に応じて所有者等が建築専門家に依頼して実施するものとする基礎診断について基本的な事項を定めており、このたび、基礎診断の具体的な診断項目及び診断方法について、「重要文化財(建造物)基礎診断実施要領」を策定しました。

所有者等が、所有者診断の結果、必要に応じて本要領に基づいて診断を実施する事が望まれ、また、診断に際しては各都道府県教育委員会の適切な指導助言が望まれます。

貴教育委員会におかれましては、重要文化財(建造物)の存する域内の市(区)町村教育委員会に周知いただくとともに、御指導方よろしくお願いいたします。

重要文化財(建造物)基礎診断実施要領

平成13年4月

文化庁文化財部建造物課


1 本要領は、「重要文化財(建造物)耐震診断指針」(平成11年4月)に基づいて基礎診断を行う際の具体的な方法を示すものである。

2 本要領に示す具体的な計算式、数値等は、現時点での研究の成果に基づくものであり、今後逐次改訂される可能性がある。

目次

第1章 保有耐震性能の確認

第1節 総則

第2節 エネルギー一定則による場合

第3節 等価線形化法による場合

第2章 必要耐震性能の設定

第3章 耐震性能の向上措置

第1章 保有耐震性能の確認

第1節 総則

(1) 適用範囲

文化財建造物の耐震性能が以下の1)~3)のいずれに該当するかを診断する。

1) 大地震動時の機能維持及び中地震動時の損傷なし

2) 大地震動時の非倒壊及び中地震動時の機能維持

3) 大地震動時の倒壊危険性及び中地震動時の非倒壊

注1) 大地震動とは、当該敷地において想定される最大級の地震動をいう。

注2) 中地震動とは、当該敷地において通常の建物の耐用年限内に一度以上受ける可能性の高い地震動をいう。

(2) 入力地震動

ア 建築基準法施行令等に準じて、大地震動及び中地震動を想定する。

(3) 限界変形

ア 非倒壊、機能維持、損傷なしのそれぞれに対する限界変形は、建物の構造特性に応じてさだめる。

イ 非倒壊の診断に用いる限界変形は、繰返し加力の影響を考慮した各階の荷重変形曲線上において、鉛直荷重支持能力を失わない限界の変形とする。

ウ 機能維持の診断に用いる限界変形は、仕上げ材の落下や建具の開閉障害等により建物の使用に著しい支障が生じない限界の変形とする。

エ 損傷なしの診断に用いる限界変形は、各階の荷重変形曲線上において、概ね直線域(弾性域)と見なせる限界の変形とする。



図1 限界変形の概念図(荷重変形曲線)

(4) 応答予測

ア 地震時の最大応答変位の予測値は、建物の各部の質量、積載荷重、積雪荷重、及び耐震要素の荷重変形関係によって求められる層の荷重変形関係に基づき、適当な方法を用いて算出する。

イ 最大応答変位の予測値の算出に当たっては、水平構面の剛性、質量や耐震要素の平面的偏在、層の耐震耐力の不均一等の影響を適切に勘案することとする。

ウ エネルギー一定則の運用に当たっては、各層の荷重変形関係を、損傷なし、機能維持、非倒壊の各限界変形まで積分したエネルギーと、初期剛性から算出される入力エネルギーとを比較することによって、最大応答変位の範囲を予測する。

エ 等価線形化法の運用に当たっては、各層の質量及び各層の荷重変形関係を用いて構造物を一質点系に置き換え、塑性化による剛性低下と履歴減衰を考慮した等価線形応答を用いて、加速度応答スペクトルから最大応答変位の予測値を求める。

(5) 建物の各部の質量

ア 原則として積算により、各階の質量を算出する。

イ ねじれや水平構面の変形を考慮した計算を行う場合には、モデル化に必要な各部の質量を算出する。但し、建物の用途、規模等に応じて定まる単位床面積当たりの屋根、壁、床の重量を用いた略算によることも可とする。

(6) 積載荷重及び積雪荷重

建築基準法施行令等を参考に、実状に応じた床の積載荷重、屋根等の積雪荷重を算出する。

(7) 耐震要素

ア 主要な耐震要素として、柱、梁、貫、壁等の効果を考慮する。

なお、腐朽、虫害、材の狂い、継手・仕口の緩み、不同沈下等、耐久性に係る項目に基づく耐力の低下は、ここでは考慮せず、健全な状態にあるものとして求める。

イ 前掲の耐震要素について、各耐震要素が終局状態に至るまでの荷重変形関係が、既往の実験等に基づき与えられるものとする。

第2節 エネルギー一定則による場合

1 考え方

(1) 地震の破壊力をエネルギーとしてとらえ、建物がこのエネルギーに等しい仕事をすることで最大応答が評価できるものとする。



図2 エネルギー一定則概念図

2 建物重量(W)の推定

(1) 地震時の建物重量として想定する荷重の組み合わせは、以下の通りとする。

一般地域:固定荷重(G)+積載荷重(P)

多雪区域:固定荷重(G)+積載荷重(P)+積雪荷重(S)



図3 荷重概念図

(2) 固定荷重(G)の推定

ア 建物各階の固定荷重は、木部、屋根、壁など、各部の重量の積算により求めることを原則とする。2層以上の建物については、木部や壁のうち、階高の上半を上層部の荷重、下半を当該階の荷重として積算する。木部の各材種別の比重、屋根の葺材別単位面積あたりの重量及び土壁の単位面積あたりの重量については別表の積算資料を参照のこと。

1) 木部の重量

各部材の材種別総材積を求め、比重により重量を算出する。板壁や木造天井、屋根下地の垂木・野地板などもこの中に含む。

2) 屋根の重量

屋根面積を算出し、葺材別の単位面積あたりの重量から算出する。

3) 壁の重量

壁面積を算出し、単位面積あたりの重量から壁重量を算出する。

イ 標準的な建造物にあっては表1~4に示す各部位の床面積当たり荷重に表5に示す建造物の種類と規模による調整係数をかけて得られる値から推定する。ここで、外壁や内壁は階高の上半を上層階の荷重、下半を当該階の荷重として積算する。

1) 屋根の重量

床面積当たりの基準屋根荷重を表1に示す。ただし、平面積が40m2を下まわる場合は軒面積当たりの基準屋根荷重として計算する。又屋根種類が複数有る場合は、その比率により調整する。

表1 床面積当たりの基準屋根荷重Wr(単位:N/m2)


屋根葺材料

基準屋根荷重 Wr

本瓦葺

3,300

桟瓦葺(葺土あり)

2,400

桟瓦葺(葺土なし)

1,300

檜皮葺、こけら葺

1,300

金属板葺

1,000

茅葺(基準葺厚を0.6mとし葺厚によって調整する)

1,500

板葺(石置板葺の場合、別途石の重量を加算する)

600

2) 外壁の重量

床面積当たりの基準外壁荷重を表2に示す。土壁の場合、基準の塗厚を大壁0.15m、真壁0.06mとして塗厚によって調整する。また、壁種類が複数有る場合は、その比率により調整する。なお、建物の形状が曲屋型(中門造等を含む)の場合は、特に基準荷重を3割減じる。

表2 床面積当たりの基準外壁荷重Wg(単位:N/m2)


外壁の種類

基準外壁荷重 Wg

土塗大壁(土蔵の土壁)

2,400

土塗真壁

1,200

板壁

700

3) 内壁の重量

床面積当たりの基準内壁荷重を表3に示す。ただし洋風建築で、平面積を部屋数で除した値が15m2以下の場合は、土壁の値を1200N/m2とする。

表3 床面積当たりの基準内壁荷重Wn(単位:N/m2)


内壁の種類

基準内壁荷重 Wn

土壁

450

板壁

200

4) 床の重量

床面積当たりの基準床荷重を表4に示す。ただし、土(つし2階の民家等で、2階床に土がおかれている場合がある)および積載荷重を含まない。

表4 床面積当たりの基準床荷重Wf(単位:N/m2)


床の種類

基準床荷重 Wf

通常の床

600

5) 固定荷重の調整

固定荷重の調整係数を表5に示す。ここで、調整係数Kdは、表1~4の各値に乗じるものとする。書院、客殿、方丈は民家の係数で算出する。ただし洋風建築の煙突等、木質材料、左官材料以外の材料が有る場合は別途計算する。

表5 固定荷重の調整係数Kd


建造物の種類

規模

調整係数Kd

社寺建築

高さ10m以下

1.6

 

高さ10m超12m以下

2.0

 

高さ12m超15m以下

2.3

 

高さ15m超

2.5

民家

高さ8m以下

1.0

 

高さ8m超11m以下

1.1

 

高さ11m超

1.4

ウ また、規模形式が類似する建造物は、別表2の積算資料から各部位の重量を推定することができる。

(3) 積載荷重(P)の推定

ア 2層以上の建物では床の積載荷重を考慮するものとし、建造物の実情に応じて適切に算出するものとする。

イ 標準的な用途の場合は、表6に従って推定するものとし、標準的な住宅の場合、床面積当たりの積載荷重(P1)は6,000N/m2としてよい。

表6 標準用途別基準積載荷重P1(単位:N/m2)


用途

基準積載荷重P1

住宅の居室

6,000

事務室

8,000

教室

11,000

店舗の売場

13,000

劇場、集会場等(固定席の場合)

16,000

同(その他の場合)

21,000

注1) 教室、売場、集会場等に連絡する廊下、玄関又は階段は21,000N/m2とする。

注2) バルコニーは6,000N/m2とする。但し学校の用途に供する建物にあっては13,000N/m2とする。

(4) 積雪荷重(S)の推定

積雪荷重(S)は、以下の式により算定する。

S=so×d×A×ub

so:単位積雪重量=20N/cm・m2

ただし多雪区域については特定行政庁が別に定める規定による。

A:屋根の水平投影面積

d: 垂直積雪量:特定行政庁が定める数値による。

ub: 屋根形状係数 ub=�(cos(1.5)β) βは屋根勾配(度)

3 地震層せん断力の分布係数Ai

地震層せん断力の分布係数Aiは、次式により算出する。

Ai=1+((1/�(αi))−αi)(2T/(1+3T))

αi:最上階からi階までの重量の和を地上部の全重量で除した値

T:設計用一次固有周期=0.03h

h:建物の高さ(単位:m)

4 各階の初期剛性及び保有限界エネルギー

各階、各方向の初期剛性(St)及び保有限界エネルギーは、水平抵抗要素の各階、各方向の初期剛性及びそれぞれの限界エネルギーの和で表される(図4)。

ここで、限界エネルギーとは、建物各階各方向の水平抵抗要素が、ある限界変形に至るまでに吸収できるエネルギーをいい、損傷なし、機能維持、非倒壊の各限界変形に対応するエネルギーを、それぞれ損傷限界エネルギー(Edo)、機能限界エネルギー(Efo)、倒壊限界エネルギー(Euo)とする。

また、図4に示す入力エネルギーは、地震力によって各階各方向に入力される地震エネルギーを示す。



図4 入力エネルギーと各耐震要素のエネルギー吸収量

(1) 全面壁の初期剛性及び限界エネルギー

全面土壁の場合、単位壁長当たりの初期剛性および基本限界エネルギーは、壁厚に応じて表7の値とする。

表7 土壁の初期剛性および基本限界エネルギー


水平抵抗要素

初期剛性(N/m/m)

損傷限界エネルギー(N・m/m)

機能限界エネルギー(N・m/m)

倒壊限界エネルギー(N・m/m)

土壁

10,000,000t/h

297th

880th

4,130th

h:階高(単位:m)

t:壁厚(単位:m)

注) 土壁の荷重変形関係は、塗厚や仕上げの程度に応じて相当な幅があるが、既往の実験結果から仕上げを含む壁厚によって標準的な荷重変形関係を抽出し(図5)、これによる吸収エネルギー量を算出している。ただし、最大耐力後の耐力の低下については、繰り返し加力の影響によってやや急激な低下を示す場合があることを考慮し、安全側の評価としている。



図5 土壁の荷重変形関係の想定

(2) 垂壁付き独立柱の初期剛性及び限界エネルギー

ア 垂壁と柱からなるラーメン構造のフレームのような水平抵抗要素が考え得ることが知られており(図6)、柱断面の径が15cm程度になるとこうした垂壁と柱の効果を評価することができる。そこで、図6における垂壁と柱からなるフレーム1単位当たりの効果として、以下の初期剛性および限界エネルギーを考える。なお、この場合はフレーム1単位当たりの値であるので壁長は乗じない。



図6 垂壁と柱からなるフレーム

イ 初期剛性(St)

独立柱が負担する垂壁の長さを、隣接する柱までの距離の中央までとすると、図7のような垂壁付き独立柱の、弾性域における水平力と水平変位の関係は、頂部水平変位δが垂壁のせん断変形による水平変位δwと、内法から下の柱の曲げ変形δcの和であることから、次式で与えられる。

δ=δw+δc

=(Ph/GLt)+(Ph13/3EI)

δ:頂部水平変位(m)

E:柱の曲げヤング係数(N/m2)

G:垂壁(土壁)のせん断弾性係数(N/m2)=10,000,000N/m2とする。

I:柱の断面2次モーメント(m4)

L:負担垂壁長(m)

注) 計算を行う方向の、隣接する柱までの距離(両側に垂れ壁がある場合は、両側の距離の和)の2分の1

t:土壁の厚さ(m)

h:階高(m)

h1:柱脚から内法までの高さ(m)

注) 2階以上の柱については、床面から内法までの高さ

従って、初期剛性St(単位:N/m)は以下のようになる。

St=(P/δ)=(3EGILt/(3EIh+GLth13))



図7 垂壁付き独立柱の変形

ウ 損傷限界エネルギー(Edo)

垂壁付き独立柱の、破壊に至るまでの水平力と水平変位の関係は、概ね図8のようになり、柱の曲げ破壊を生じる水平力Pcrと垂壁のせん断耐力の大小関係によって、最大変形が異なってくる。

ここでは、損傷なしの限界変形1/120rad.の荷重変形関係における位置によって場合分けを行い、それぞれの場合の吸収エネルギー量を算出する。通常、1/120rad.以下では柱の曲げ破壊は生じないと考えられるから、次の1)と2)の場合について求める。



図8 垂壁付き独立柱の水平力―水平変位関係

1) (h/120)≦δ1の場合

Edo=(Sth2/28,800)

ただし、δ1=(40,000Lt/St)

h :階高(m)

Edo:損傷限界エネルギー

St:各階の初期剛性

2) δ1<(h/120)≦δ2の場合

Edo=(1/2){40,000Ltδ1+Pmax((h/120)−δ1)}

ただし、Pmax=80,000Lt+St2((h/120)−δ1)

St2=(3EIG2Lt/(3EIh+G2Lth13))

G2:土壁のせん断応力―ひずみ関係の第2勾配=600,000/13(N/m2)

エ 機能限界エネルギー(Efo)

機能維持の限界変形1/60rad.の荷重変形関係における位置によって場合分けを行い、それぞれの場合の吸収エネルギー量を算出する。なお、通常、1 /60rad.以下では柱の曲げ破壊は生じないと考えられるから、次の1)2)3)の場合について求める。

1) (h/60)≦δ1の場合

Efo=(Sth2/7,200)

Efo:機能限界エネルギー

2) δ1<(h/60)≦δ2の場合

Efo=(1/2){40,000Ltδ1+Pmax((h/60)−δ1)}

ただし、Pmax=80,000Lt+St2((h/60)−δ1)

3) δ2<(h/60)―≦δ3の場合

Efo=(1/2){40,000Ltδ1+100,000Lt(δ2−δ1)+Pmax((h/60)−δ2)}

ただし、Pmax=120,000Lt+St3((h/60)−δ2)}

δ2=(40,000Lt/St)+(20,000Lt/St2)

St3=(3EIG3Lt/(3EIh+G3Lth13))(N/m)

オ 倒壊限界エネルギー(Euo)

損傷なしの限界変形1/15rad.の荷重変形関係における位置によって場合分けを行い、それぞれの場合の吸収エネルギー量を算出する。なお、計算に当たっては、柱が曲げ破壊するときの水平力Pcrを以下のように仮定した。

Pcr=(3Zefb/h1)

Pcr:柱の曲げ破壊を生じる水平力(N)

Ze:柱の有効断面係数(m3)=3/4Zと仮定

Z :柱の断面係数(m3)

fb:柱の長期曲げ許容応力度(N/m2)

h1:柱脚から内法までの高さ(m)

1) Pcr≦40,000Ltの場合

L:負担垂壁長(m)

t:土壁厚(m)

ただし、Pcr=(9Zfb/4h1)

[cir1 ] δcr≦(h/15)の場合 Euo=((Pcr・δcr)/2)(N・m)

ただしδcr=(Pcr/St)(m)

Euo:倒壊限界エネルギー

[cir2 ] (h/15)<δcrの場合 Euo=((St・h2/450)(N・m)

2) 40,000Lt<Pcr≦60,000Ltの場合

[cir1 ] δ1≧(h/15)―の場合 Euo=(St・h2/450)(N・m)

ただしδ1=(40,000Lt/St)(m)

[cir2 ] δcr<(h/15)の場合

Euo=(1/2){Pcrcr−δ1)+40,000Ltδcr}(N・m)

ただしδcr=δ1+(Pcr−40,000Lt/St2)(m)

St2=(3EIG2Lt/(3EIh+G2Lth13))(N/m)

G2:土壁のせん断応力―せん断ひずみ関係の第2勾配=600,000/13(N/m2)

[cir3 ] δ1<(h/15)≦δcrの場合

Euo=(1/2){Pmax((h/15)−δ1)+(40,000/15)Lth}(N・m)

ただしPmax=40,000Lt+St2((h/15)−δ1)(N)

3) 60,000Lt<Pcr≦80,000Ltの場合

[cir1 ] δ1≧(h/15)場合 2)[cir1 ]と同じ

[cir2 ] δ1<(h/15)≦δ2の場合 2)[cir3 ]と同じ

[cir3 ] δcr<(h/15)の場合

Euo=(1/2){Pcrcr−δ2)+60,000Lt(δcr−δ1)+40,000Ltδ2}(N・m)

ただし、δcr=δ2+(Pcr−60,000Lt/St3)(m)

St3=(3EIG3Lt/3EIh+G3Lth13)(N/m)

G3:土壁のせん断応力―せん断ひずみ関係の第3勾配=24,000(N/m2)

[cir4 ] δ2<(h/15)―≦δcrの場合

Euo=(1/2)―{Pmax((h/15)−δ2)+60,000Lt((h/15)−δ1)+40,000Ltδ2}(N・m)

ただし、Pmax=60,000Lt+St3((h/15)−δ2)(N)

4) 80,000Lt<Pcrの場合

[cir1 ] (h/15)≦δ1の場合 3)[cir1 ]と同じ

[cir2 ] δ1<(h/15)≦δ2の場合 3)[cir2 ]と同じ

[cir3 ] δ2<(h/15)≦δ3の場合 3)[cir4 ]と同じ

[cir4 ] δ3<(h/15)の場合

Euo=(1/2){Pmax((h/15)−δ3)+80,000Lt((h/15)−δ2)+60,000Lt(δ3−δ1)+40,000Ltδ2}(N・m)

ただし、Pmax=80,000Lt+St4((h/15)−δ3)(N)

St4=(3EIG4Lt/3EIh+G4Lth13)(N/m)

G4:土壁のせん断応力―せん断ひずみ関係の第4勾配=−600(N/m)

(3) 仏堂等の柱の初期剛性及び限界エネルギー

ア 仏堂などの長さに較べて比較的太い柱では、柱のロッキングに伴う抵抗が存在することが知られている。図9のような柱において、

(ao/h)≧(1/15)

の場合に限り、柱のロッキング抵抗を考慮する。



図9 柱の形状

図9において、柱が剛体と仮定すると、モーメントの釣り合いから、水平力が、

Po=(ao/h)W

を越えたときにロッキングが始まり、以下水平力Pと水平変位δの関係は近似的に

P=(W/h)―(δ−ao)

で与えられる。これは、図10に一点鎖線で示す直線である。現実には、柱の上下端で柱材またはその上下の部材のめりこみ変形が生じることから、水平力と変位の関係は、原点を通り上に凸の曲線となる。図10の多角形は、これを過去の実験等に基づき近似的に表したものである。



図10 柱のロッキング抵抗の荷重変形関係

イ 初期剛性

初期剛性は、図10の荷重変形関係の初期の勾配として、以下のように算出される。

Si=(P/δ)=(0.5Po/0.025ao)=(20W/h)(N/m)

ウ 損傷限界エネルギー(Edo)

ここでは、損傷なしの限界変形1/120rad.の荷重変形関係における位置によって場合分けを行い、それぞれの場合の吸収エネルギー量(荷重変形曲線において、変形角1/120rad.までに囲まれる面積)を算出する。

通常h/120rad.は0.025aoから0.15aoの範囲にあると考えられるから、次の1)から3)の場合について求める。

1) 0.025ao<(h/120)≦0.05aoの場合

Edo=(W/200)((h/24)−(7ao/12)−(7ao2/8h))(N・m)

Edo:損傷限界エネルギー

W:柱軸力(N)

ao:柱頭(大斗があるときは大斗尻)と柱脚の幅の平均(m)

h:柱長(m)

ただしSt2=6w/hとする。

2) 0.05ao<(h/120)≦0.1aoの場合

Edo=(W/800)((h/18)+(11/3)ao−(15/2) (ao2/h))(N・m)

ただし、St3=2w/hとする。

3) 0.1ao<(h/120)≦0.15aoの場合

Edo=(w/160)(ao+(29ao2/5h))(N・m)

エ 機能限界エネルギー(Efo)

機能維持の限界変形(1/60rad.の荷重変形関係における位置によって場合分けを行い、それぞれの場合の吸収エネルギー量を算出する。

通常h/60rad.は0.05a0以上であると考えられるから、次の1)から3)の場合について求める。

1) 0.05ao<(h/60)―≦0.1aoの場合

Edo=(w/400)((h/9)+(11ao/30)−(13/8) (ao2/h))(N・m)

Efo:機能限界エネルギー

ただし、St2=6w/hとする。

2) 0.1ao<(h/120)≦0.15aoの場合

Edo=(w/80)(ao−(31/20) (ao2/h))(N・m)

ただし、St3=2w/hとする。

3) 0.15ao<(h/60)の場合

Edo=(w/68)(ao−(h/120)−(797/400) (ao2/h))(N・m)

ただし、St5=−(15N/17h)とする。

オ 倒壊限界エネルギー(Euo)

倒壊限界エネルギーは、以下のように算出される。

Edo=(W/17)(ao−(h/30)−(797/1600) (ao2/h))(N・m)

Efo:倒壊限界エネルギー

5 形状係数(Fes)

形状係数Fesは、建物が立面的及び平面的に耐震要素のバランスが悪い場合に、必要保有水平力を割り増す係数であり、次式により求める。

Fes=Fs・Fe

Fes:形状係数

Fs:剛性率に応じて定まる割増係数

Fe:偏心率に応じて定まる割増係数

(1) 剛性率による割増係数(Fs)

剛性率による割増係数Fsは、剛性率Rsに応じて、以下の値とする。

Fs=(−5/3)・Rs+2.0 (Rs≦0.6)

Fs=1.0 (Rs>0.6)

ここで、

Rs=(rs



)

Rs:各階の剛性率

rs:各階の層間変形角の逆数



:当該建物のrsの相加平均=(



rsi/n)

n:地上部分の階数

各階の層間変形角rsiは、当該階に加わる地震力と水平せん断剛性の比で、次式により示される。

rsi=(1/Pi/Sti/hi)=(hi・Sti/Pi)

rsi:各階の層間変形角の逆数

St:当該階の水平せん断剛性=当該階の初期剛性を用いる

hi:当該階の階高

Pi:当該階に加わる地震力=Ai・Wi

Ai:地震層せん断力係数の分布係数

Wi:当該階の支える重量(上の階の自重を足し合わせたもの)

(2) 偏心率による割増係数(Fe)

偏心率による割増係数Feは、偏心率Reに応じて、以下の値とする。

Fe=1.0 (Re<0.15)

Fe=(10/3)・Re+0.5 (0.15≦Re≦0.3)

Fe=1.5 (0.3<Re)

ここで、

Re=e/re

Re:各階の偏心率

e:各階の重心と剛心との距離を、計算しようとする方向と直行する平面に投影した長さ

re:各階の剛心周りのねじり剛性を、その階の計算しようとする方向の水平剛性で除した数値の平方根(弾力半径)

ここで、各壁の剛性は、初期剛性を用い、壁の長さに比例するものとする。本診断では、壁の単位長さ当たりの剛性は、外周壁と内壁の2種類に集約して計算する。


 



 

 



 

図11 剛性率と割増係数(Fs)

図12 偏心率と割増係数(Fe)

(3) 重心位置の算出

x軸、y軸から重心Gまでの距離yg、xgは次式により算出する。

xg=(ΣWijAijxij/ΣWijAij)、yg=(ΣWijAijyij/ΣWijAij)

Σ:重心を求めたい階から最上階までの合計

Wij:各階の平面を長方形に分割したときの、固定、積載、積雪荷重の和。

ただし、重心を求めたい階の長方形の重量については、当該階の壁の中心高さから上の重量とする。

Aij:各階の平面を長方形に分割したときの、各長方形の面積。

xij:各階の平面を長方形に分割したときの、各長方形の対角線の交点のy軸からの距離。

yij:各階の平面を長方形に分割したときの、各長方形の対角線の交点のx軸からの距離。

(4) 剛心位置の算出

x軸、y軸から剛心Sまでの距離ys、xsは次式により算出する。

xs=(ΣStyiLyixi/ΣStyiLyi)、ys=(ΣStxiLxiyi/ΣStxiLxi)

Σ:剛心を求めたい階での合計

Stxi:x方向に平行な水平抵抗要素の初期剛性

Styi:y方向に平行な水平抵抗要素の初期剛性

Lxi:x方向に平行な水平抵抗要素の長さ

Lyi:y方向に平行な水平抵抗要素の長さ

yi:水平抵抗要素のx軸からの距離

xi:水平抵抗要素のy軸からの距離

6 保有限界エネルギーの算定

(1) 保有限界エネルギーの算定

損傷なし、機能維持、非倒壊の各保有限界エネルギーを、各階各方向の損傷、機能維持、非倒壊の各限界エネルギーの和で算定する。

7 地震力及び入力エネルギーの算定

(1) 地域係数(Z)

立地する地域における過去の地震の記録に基づく震害の程度及び地震活動の状況その他の地震の性状に応じて想定される地震被害の大きさに基づいて区分するものであり、建築基準法施行令88条第1項に規定される地方の区分に準じて表8に示す。

表8 地震地域係数


区分

地域

係数

[Roman1 ]

区分[Roman2 ]~[Roman4 ]以外の地域

1.0

[Roman2 ]

秋田県・山形県・新潟県・島根県・岡山県・広島県・愛媛県・高知県・宮崎県全県、

北海道のうち札幌市・函館市・小樽市・室蘭市・北見市・夕張市・岩見沢市・網走市・苫小牧市・美唄市・芦別市・江別市・赤平市・三笠市・千歳市・滝川市・砂川市・歌志内市・深川市・富良野市・登別市・恵庭市・伊達市・札幌郡・石狩郡・厚田郡・浜益郡・松前郡・上磯郡・亀田郡・茅部郡・山越郡・檜山郡・爾志郡・久遠郡・奥尻郡・瀬棚郡・島牧郡・寿都郡・磯谷郡・虻田郡・岩内郡・古宇郡・積丹郡・古平郡・余市郡・空知郡・夕張郡・樺戸郡・雨竜郡・勇払郡・網走郡・斜里郡・常呂郡・有珠郡・白老郡、上川郡(上川支庁)のうち東神楽町・上川町・東川町・美瑛町、

青森県のうち青森市・弘前市・黒石市・五所川原市・むつ市・東津軽郡・西津軽郡・中津軽郡・南津軽郡・北津軽郡・下北郡、

福島県のうち会津若松市・郡山市・白河市・須賀川市・喜多方市・岩瀬郡・南会津郡・北会津郡・耶麻郡・河沼郡・大沼郡・西白河郡、

富山県のうち魚津市・滑川市・黒部市・下新川郡、

石川県のうち輪島市・珠洲市・鳳至郡・珠洲郡、

鳥取県のうち米子市・倉吉市・境港市・東伯郡・西伯郡・日野郡、

徳島県のうち美馬郡・三好郡、

香川県のうち高松市・丸亀市・坂出市・善通寺市・観音寺市・小豆郡・香川郡・綾歌郡・仲多度郡・三豊郡、

熊本県・大分県([Roman3 ]に掲げる地域を除く)、

0.9

[Roman3 ]

山口県・福岡県・佐賀県・長崎県全県、

北海道のうち旭川市・留萌市・稚内市・紋別市・士別市・名寄市・中川郡(上川支庁)・増毛郡・留萌郡・苫前郡・天塩郡・宗谷郡・枝幸郡・礼文郡・利尻郡・紋別郡、

熊本県のうち八代市・荒尾市・水俣市・玉名市・本渡市・山鹿市・牛深市・宇土市・飽託郡・宇土郡玉名郡・鹿本郡・芦北郡・天草郡、

大分県のうち中津市・日田市・豊後高田市・杵築市・宇佐市・西国東郡・東国東郡・速見郡・下毛郡・宇佐郡、

鹿児島県(名瀬市及び大島郡を除く)、

0.8

[Roman4 ]

沖縄県全県

0.7

(2) 地盤が軟弱な場合の割増計数(Rg)

地盤が軟弱な場合は地震力を割増することとし、割増計数Rgを求める。Rgの値は、表9により定める。

表9


地盤の種類

地盤の状態

Rg

第一種地盤

岩盤、硬質砂れき層その他主として第三紀以前の地層によって構成されているもの又は地盤周期等についての調査若しくは研究の結果に基づき、これと同程度の地盤周期を有すると認められるもの

1.0

第二種地盤

第一種地盤及び第三種地盤以外のもの

1.2

第三種地盤

腐植土、泥土その他これらに類するもので大部分が構成されている沖積層(盛土がある場合においてはこれを含む。)で、その深さがおおむね30m以上のもの、沼沢、泥海等を埋め立てた地盤の深さがおおむね3m以上であり、かつ、これらで埋め立てられてからおおむね30年を経過していないもの又は地盤周期等についての調査若しくは研究の結果に基づき、これらと同程度の地盤周期を有すると認められるもの

1.5

(3) 振動特定係数(Rt)

建築物の固有周期および地盤の種類に応じた当該建築物の振動特性により、地震力の値を変化させる係数で、建築基準法施行令の建設省告示第1793号第1に規定された方法により算出する。ただし、振動特性係数は建築物の設計用一次固有周期T(0.03h、hは建物の高さ)が0.4秒以下の場合にあっては、地盤種別によらず1.0となる。一般に、木造建築物の一次周期は0.4秒以下であるから、Rtは通常は1.0と考えてよい。固有周期が0.4秒以上の場合は、別途Rtの値を算出する。

(4) 各階の初期剛性の算定

建物各階の梁間方向および桁行方向の初期剛性Stは次式により算定する。

St=ΣStiLi

St:各階、各方向の初期剛性(N/cm)

Sti:4で得られた耐力壁ごとの初期剛性(単位長さあたり)

Li:建物調査から得られた耐力壁ごとの壁長

(5) 各階の地震力の算定

建物各階の梁間方向及び桁行方向の地震力は、それぞれ梁間方向、桁行方向ごとに次式により算定する。

Qd=RgFesQud

Qud=ZRtAiCoWi

Rg:地盤が軟弱な場合の割増係数

Fes:形状係数

Qud:各階の地震層せん断力

Z:地震地域係数

Rt:振動特性係数

Ai:地震層せん断力係数の建物高さ方向の分布を表す係数

Co:標準せん断力係数

大地震動の場合:Co=1.0

中地震動の場合:Co=0.2

Wi:1階以上の建物重量(単位N)

(6) 入力エネルギーの算定

地震動による入力エネルギーEdは、各階の桁行、梁間方向ごとに次式により算定する。

Ed=(1/2)― (Qd2/St)

Qd:地震力によって各階に生ずる水平力

St:各階の初期剛性

8 判定

耐震性能が以下の1)~3)のいずれに該当するかを判定する。

1) 大地震動時の機能維持及び中地震動時の損傷なし

各階各方向において次の不等式が成立することを確認する。

大地震動時の入力エネルギー≦機能維持の保有限界エネルギー

中地震動時の入力エネルギー≦損傷なしの保有限界エネルギー

2) 大地震動時の非倒壊及び中地震動時の機能維持

各階各方向において次の不等式が成立することを確認する。

大地震動時の入力エネルギー≦非倒壊の保有限界エネルギー

中地震動時の入力エネルギー≦機能維持の保有限界エネルギー

3) 大地震動時の倒壊危険性及び中地震動時の非倒壊

各階各方向において次の不等式が成立することを確認する。

中地震動時の入力エネルギー≦非倒壊の保有限界エネルギー

第3節 等価線形化法による場合

1 考え方

力と変位の関係が非線型性を示す構造物の弾塑性応答解析を、弾性応答解析に近似して計算する。等価線形モデルでは、弾塑性復原力を等価な剛性KE(もとの初期剛性K1より小)と等価な減衰hE(もとの初期減衰h1より大)に置き換える。



図1 等価線形化法の考え方

2 地震動

(1) 検証用地震動は、工学的基盤において定義される基準地震動に基づいて定める。ただし、特別な調査・研究による場合には、本規定を適用しなくてもよい。

注)工学的基盤の設定方法は、原則として、十分な厚さを有するせん断波速度400m/s以上の地層またはそれと同程度に堅固な地層の上面とする。

上記の地盤が地表面下30mまでの範囲に認められなかった場合は、地表面下30mまたは杭の先端位置のうちいずれか深い方の面とする。

(2) 前項の基準地震動は、当該地における地震活動、過去の地震記録の特徴及び深層地盤構造を考慮して次式により算定する。

S=Z・Gs・So

S:基準地震動(単位m/S2)

Z:地震地域係数

So:工学的基盤での標準スペクトル(最大級及び中程度の標準地震動)

Gs:表層地盤による加速度の増幅率

注)振動の減衰による加速度の減衰率Fhは、後述の応答値の算出時に考慮する。

ア 地域係数(Z)

第1節の「6 地震力の算定と入力エネルギーの算定 (1)地域係数」を参照。

イ 表層地盤による加速度の増幅率(Gs)

工学的基盤上面以浅の地盤による加速度の増幅率(Gs)を、表1に掲げる第一種地盤に該当する区域にあっては表2に掲げる式により、第二種地盤又は第三種地盤に該当する区域にあっては表3に掲げる式により算出する。

表1


第一種地盤

岩盤、硬質砂れき層その他主として第三紀以前の地層によって構成されているもの又は地盤周期等についての調査若しくは研究の結果に基づき、これと同程度の地盤周期を有すると認められるもの

第二種地盤

第一種地盤及び第三種地盤以外のもの

第三種地盤

腐植土、泥土その他これらに類するもので大部分が構成されている沖積層(盛土がある場合においてはこれを含む。)で、その深さがおおむね30m以上のもの、沼沢、泥海等を埋め立てた地盤の深さがおおむね3m以上であり、かつ、これらで埋め立てられてからおおむね30年を経過していないもの又は地盤周期等についての調査若しくは研究の結果に基づき、これらと同程度の地盤周期を有すると認められるもの

表2


T<0.576

Gs=1.5

0.576≦T<0.64

Gs=0.864/T

0.64≦T

Gs=1.35

Tは、建物の固有周期を示す。

表3


T<0.64

Gs=1.5

0.64≦T<Tu

Gs=1.5(T/0.64)

Tu≦T

Gs=qv

Tuは次の式によって計算した数値とする。

Tu=0.64(qv/1.5)

ただし、qv=2.025(第二種地盤のとき)

2.7 (第三種地盤のとき)

ウ 標準地震動(So)

大地震動時、中地震動時の標準地震動(Sos、Soi)を建物の固有周期Tに応じて次のように規定する。

大地震動

T<0.16 Sos=(3.2+30T)

0.16≦T<0.64 Sos=8

0.64≦T Sos=5.12/T

中地震動

T<0.16 Soi=(0.64+6T)

0.16≦T<0.64 Soi=1.6

0.64≦T Soi=1.024/T

3 建物重量(W)の推定

第1節の「2 建物重量の推定」を参照のこと。

4 地震層せん断力の分布係数(Ai)

第1節の「3 地震層せん断力の分布係数」を参照のこと。

5 各階の荷重変形関係

第1節の「4 各階の初期剛性及び保有限界エネルギー」を参照のうえ、各階各方向ごとに、各耐震要素の効果を加えた荷重変形関係を求める。このとき、偏心の影響を考慮し、あらかじめ水平力荷重を第1節の「6 形状係数」で求める偏心率による各階の割増係数Feiで除しておく(図2)。



図2 各階各方向の荷重―変形曲線

6 等価1自由度系の荷重変形関係

1層の建造物、及び2層以上であっても1層の剛性が他に較べて十分小さい建造物については、1階階高中央以上の全質量を等価質量とし、1階の荷重変形関係を用いて、等価1自由度系と見なすことができる。

上記以外の2層以上の建造物では、外力分布を(弾塑性変形に対応した)1自由度系とした場合の荷重変形関係を用いて、各階の外力と変位から、等価1自由度系の荷重変形関係を求める。ただし、この場合に外力分布としてAi分布を用いても結果に大差がないことが知られており、本要領ではAi分布を用いてもよいこととする。

Ai分布にある荷重状態におけるi階の質量をmi、外力をPi、変位をδiとすれば、等価変位



、1次応答加速度1Saは、それぞれ以下のように与えられる(図3)。

図3


図3 等価1自由系の荷重変形関係の考え方

求めた等価1自由度系の加速度及び変形の関係を縦軸に加速度、横軸に変位をとったグラフ上にプロットする。

7 応答予測

2で示した基準地震動(S)を用いて応答予測を行うにあたり、地震動が建物に作用した際に建物の変形によっておこる加速度の低減を考慮する。すなわち、振動の減衰による加速度の低減率をFhとし、検証用加速度応答スペクトル(Sa)を次のように定める。

Sa=Fh・S

=Fh・Z・Gs・So

ただし、等価1自由度型の減衰による低減率Fhは、次式による。

Fh=(1.5/1+10×Heq)

Heq=0.25(1−1/�(μ)+0.05

μ=非倒壊の限界変形/損傷なしの限界変形

なお、各耐震要素のうち、柱のロッキングが支配的な場合には減衰Heqを0.1とする。

ここで、変位Sdと固有周期T、及び検証用加速度応答スペクトルSaの関係は

Sd=(T2/4π2)Sa

で表されるから、検証用加速度応答スペクトル(Sa)は、変位(Sd)の関数として、次のように表すことができる。

1) 第一種地盤の場合

[cir1 ] 大地震動

Sd<(0.1632/π2)FhZ Sa(Sa−A)2=4π2B2Sd

ただし、A=4.8 B=45

(0.1632/π2)FhZ≦Sd<(0.144D/π2)FhZ Sa=12FhZ

ただし、D=5.12×1.35

(0.144D/π2)FhZ≦Sd Sa=(D/4π2) (1/Sd)

[cir2 ] 中地震動

Sd<(0.1632/π2)FhZ Sa(Sa−A)2=4π2B2Sd

ただし、A=0.96 B=9

(0.1632/π2)FhZ≦Sd<(0.144D/π2)FhZ Sa=2.4FhZ

ただし、D=1.024×1.35

(0.144D/π2)FhZ≦Sd Sa=(D/4π2) (1/Sd)

2) 第二種地盤の場合

[cir1 ] 大地震動

Sd<(0.1632/π2)FhZ Sa(Sa−A)2=4π2B2Sd

ただし、A=4.8 B=45

(0.1632/π2)FhZ≦Sd<(0.216D/π2)FhZ Sa=12FhZ

ただし、D=5.12×2.025

(0.216D/π2)FhZ≦Sd Sa=(D/4π2) (1/Sd)

[cir2 ] 中地震動

Sd<(0.1632/π2)FhZ Sa(Sa−A)2=4π2B2Sd

ただし、A=0.96 B=9

(0.1632/π2)FhZ≦Sd<(0.216D/π2)FhZ Sa=2.4FhZ

ただし、D=1.024×2.025

(0.216D/π2)FhZ≦Sd

Sa=(D/4π2) (1/Sd)

6で求めたグラフ上に、検証用加速度応答スペクトル(Sa)を重ねてプロットし、その交点を等価1自由度系の応答予測値(応答加速度及び応答変位)とする(図4)。

1階の荷重変形関係をそのまま用いて等価1自由度系とした場合には、その応答変位がすなわち、建物の応答変位となる。

多自由度系を等価1自由度系に置換した場合には、その応答変位に対応する、多自由度系の変位を、6の手続きと逆の方法で求め、建造物の各階の応答変位とする。



図4 応答変位(加速度)の求め方

8 判定

耐震性能が以下の1)~3)のいずれに該当するかを判定する。判定に当たっては7で得られた各階各方向の応答変位と、各限界変位の大小を比較する。

1) 大地震動時の機能維持及び中地震動時の損傷なし

各階各方向において次の不等式が成立することを確認する。

大地震動時の応答変位≦機能維持の限界変形

中地震動時の応答変位≦損傷なしの限界変形

2) 大地震動時の非倒壊及び中地震動時の機能維持

各階各方向において次の不等式が成立することを確認する。

大地震動時の応答変位≦非倒壊の限界変形

中地震動時の応答変位≦損傷なしの限界変形

3) 大地震動時の倒壊危険性及び中地震動時の非倒壊

各階各方向において次の不等式が成立することを確認する。

中地震動時の応答変位≦非倒壊の限界変形

第2章 必要耐震性能の設定

1 必要耐震性能は、大地震動時及び中地震動時に許容される被災程度により、以下に区分する。

ア 「機能維持水準」:大地震動時に機能が維持でき、中地震動時に損傷がない。

イ 「安全確保水準」:大地震動時に倒壊せず、中地震動時に機能が維持できる。

ウ 「復旧可能水準」:大地震動時に倒壊の危険性があるが文化財として復旧でき、中地震動時に倒壊しない。

2 必要耐震性能の設定に際しては、以下に留意する。

ア 文化財的価値の保存に係る事項

1) 脆弱な化粧材が価値の中心をなしてこれらが崩落した場合に復旧が困難であるなど、小規模な変形でも価値の重大な損失を招くものは機能維持水準とすることができる。

2) 木造の構造体が価値の主要な要素をなすものであって、一定程度の変形があっても復旧が可能で、主要な価値を失わないものは安全確保水準とすることができる。

3) 屋敷構等の構成要素として主要な価値がある蔵や納屋などであって、大規模な変形が生じても構造体の過半を再用して復旧することができ、主要な価値を失わないものは復旧可能水準とすることができる。

4) 復旧が容易でない仏像等、重要な資産を屋内に存置する場合は、状況に応じて機能維持水準又は安全確保水準とする。

イ 活用上の安全性確保に係る事項

1) 学校・集会所、その他不特定多数が常時使用する大規模な建物は、可能な限り機能維持水準とする。

2) 医療機関・発電所、その他災害時における機能の継続性が特に必要とされる建物は、機能維持水準とする。

3) 前掲1)及び2)以外の通常の用途に供する建物は、安全確保水準とする。

4) 神社本殿、収蔵施設、門、鳥居、その他内部にほとんど人が立ち入らないか、一時的な通過の用にのみ供する建物は、復旧可能水準とすることができる。

5) ただし、安全性確保に係る措置が文化財的価値を著しく損なうおそれがある場合は、使用方法の見直しを含めて必要耐震性能の水準を再検討するものとする。

表1 必要耐震性能設定の目安


性能目標

機能維持水準

安全確保水準

復旧可能水準

大地震動時に要求される機能が維持できる。

大地震動時に倒壊せず、生命に重大な危害を及ぼさない。

大地震動時に倒壊の恐れがあるが、文化財としての主要な価値を損なうことなく復旧できる。

活用内容

不特定多数が利用する大規模なもの。

通常の用途に供しているもの。

ほとんど人が立ち入らないか、滞留時間が短いもの。

木造建築物被害状況の目安

中地震動時

軸組

損傷なし。仕口の緩みが生じることがある。

変形が生じる(層間変形角1/60以下)。

大きな変形が生じるが、倒壊しない。

雑作

一部が破損することがある。

破損・落下する恐れがあるが、再用して復旧可能。

過半が損壊して、失われる可能性がある。

 

土壁

ほとんど被害が生じない。

亀裂を生じ、塗り替えが必要となることがある。

落下し、壁下地も損壊する。

 

安全

安全

安全に退避できる。

生命に重大な危害を及ぼさない。

 

機能

機能継続

機能維持

機能喪失

 

大地震動時

軸組

変形が生じる(層間変形角1/60以下)。

大きな変形が生じるが、倒壊しない(層間変形角1/30以下)。

倒壊する危険性がある。

 

安全

安全に退避できる。

生命に重大な影響を及ぼさない。

危険

 

 

機能

根本的な修理を必要とせず、当面使用できる。

使用できない。

使用できない。

(書式)

第3章 耐震性能の向上措置

(基本的な考え方)

1 耐震診断の結果に基づいて耐震性能の向上措置を検討する(但し、「専門診断」は診断と補強案等の検討を併せて実施する)に当たっては、「重要文化財(建造物)耐震診断指針」第5章に示す事項に留意するものとする。

(管理・活用方法の改善)

2 管理・活用方法の改善

(1) 管理体制

当該建物の維持管理、防火管理、安全管理、及び防災環境の保全に必要な管理の体制を整える。

1) 日常的な管理を遂行するために同一敷地内での管理者の常駐が望ましい。

2) 常駐が不可能な場合は、定期的なパトロールの実施と緊急時の連絡に係る体制の整備に努める。

(2) 維持管理

経年による劣化や変形、及び風雨や虫害による損傷による耐震性能の低下をきたさないように、以下の事項に留意して定期的な点検を実施するものとする。また、中規模以上の地震動及び台風等の強風、豪雨等を被った後は、臨時点検を実施する必要がある。

1) 接合部の緩み

2) 部材の損傷

3) 土壁の亀裂、剥離

4) 雨漏り

5) 樋、排水路の通水

6) 換気

7) 虫害(特に蟻害)

(3) 防火管理

ア 火気の使用と可燃物の保管方法を見直し、地震時における出火防止のために必要な措置を講じる。

イ 消防設備と消火体制の現状を見直し、地震時における消火活動の実施に必要な措置を講じる。

1) 自営の初期消火設備の設置に努めるものとし、電気・水道が途絶しても作動可能な自己完結型の消火栓設備(貯水槽・ポンプを備えた加圧型や高所に貯水槽を備えた自然流下型)が望ましい。

2) 消火設備の耐震性の確保に努め、配管の脱落防止等の必要な強化措置を講じる。

3) 関係機関等と協議して消防用水利の確保に努める。

4) 自衛消防隊を組織し、消防訓練の実施に努める。

(4) 安全管理

ア 人命の安全確保のために必要な措置を講じるものとし、内部に不特定の人が常時滞在する用途の建物にあっては、以下に留意する。

1) 公開範囲や順路等を明確にするなど人的管理のために必要な措置を講じる。

2) 緊急時における避難経路を確保し、常時分かり易く表示する。

3) 屋外への退避に時間を要したり退避困難な場合は、一時避難可能なスペースの確保等についても検討する。

4) 必要に応じて公開範囲・入館者数・滞留時間・使用頻度等の限定、屋内及び周囲への立入り制限、危険性の明示などの措置を講じる。

イ 損壊から保護すべき重要文化財等の重要な財産を存置する建物にあっては、財産の保全のために必要な措置を講じる。

1) 他の建物への移動の可能性について検討する。

2) 収納箱や覆いを設けるなどの防護策を検討する。

3) 前掲の対策が困難で当該建物の耐震性能の向上を図る必要がある場合は、基礎診断・専門診断を経て再検討する。

(5) 環境保全等

ア 立地する土地の形質に留意し、崖崩れ、出水等による当該建物への二次災害のおそれがないように、擁壁の設置等の必要な措置を講じる。

イ 人家の密集状況、空間地の有無など敷地周囲の状況に配慮し、隣接する建物、塀、樹木等(以下、「隣接建造物等」という)の倒壊や出火による当該建物への二次災害のおそれがないように、倒壊防止や延焼防止等の必要な措置を講じる。

ウ 当該建物が被災した場合に周囲に滞在する人や隣接建造物等に危害を及ぼす可能性に留意し、軒高と等距離以内の範囲を目安として人の接近状況を把握し、接近制限等の必要な措置を講じる。

(応急措置)

3 非常災害時の応急措置

(1) 損傷や変形の進行を防止するための応急措置

ア 傾斜や垂下の進行防止のための支柱やワイヤー等を付加する措置

イ 損傷の進行や脱落の防止のために部材を養生する措置

(2) 局部的な破壊が建物全体の被害を拡大するのを防ぐための措置

ア 継手・仕口部分の締め直し及び金物による緊結等の補強

イ 土壁の剥離・亀裂など損傷部分の塗り直し

(3) 局所的に必要な簡易な補強

1) 部材の折損、脱落の恐れのある箇所の締め直し・金物補強

2) 脆弱な部材の断面積を補うための添木の付加

3) 煙突、町家のうだつ、看板など付帯構造物の固定・補強

4) 落下や倒壊の恐れのある部材や什器の固定

5) 床面下での足固め・根がらみ等の付加による柱相互の連結

(4) その他、保存に及ぼす影響が軽微な補強

(根本的対策)

4 耐震補強を含む根本的な修理を行う際は、以下に留意する。

(1) 一般的留意事項

ア 専門的な技術者・技能者に委託し、設計及び施工の質を確保する。

イ 既往の仕様を調査し、伝統的な仕様を尊重する。

ウ 土壁の乾燥等に要する工期を余裕を持って設定する。

エ 損傷した部材の繕いは、形を繕うばかりでなく可能な限り同等の強度を保持するものとする。

オ 調査及び修理の記録を作成する。

(2) 文化財建造物の現状を変更する行為や保存に影響を及ぼす行為を伴ったり、根本修理と併せて施工する必要がある以下に例示する措置については、専門診断の結果を得た上で検討するものとする。

1) 地盤の強化

2) 壁・建具等の仕様の変更

3) 床組・小屋組等の水平剛性の改善

4) 屋根重量の軽減

5) 間仕切りの変更

6) 構造躯体の変更など現状の大規模な変更を伴う措置

7) 外観及び内部の意匠に大きな影響を及ぼす措置

なお、重要文化財に関しその現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、文化庁の長官の許可を受けなければならない(文化財保護法第43条)。

(補強手法の選択)

5 耐震補強が必要な場合、補強手法の選択に際して留意すべき事項を以下に示す。

(1) 添木や金輪による部材の補強、筋違や方立による面剛性の強化、仕口や鎹による接合部の強化など、伝統的な部位の伝統的な補強工法を優先的に検討する。

(2) 既存の材料・仕様の変更が避けられない場合は、同一の材料・仕様によって構成される部位の全体に及ぶ変更を避け、保存部分を設ける。

(3) 付加物による補強を行う場合は、可能な限り建物本来の素材やデザインを損ねないように配慮し、既存部位との納まりについて細部の仕様を含めた検討を行う。

(4) 付加物による補強を行う場合は、当該物と同一性状の材料による手法と新素材の使用を比較検討する。

(5) 新しい素材や工法を採用する場合は、性能が実証されているものとする。

(6) 補強による違和感が生じることのないように、十分配慮する。

(7) 見え掛かりに付加物を設ける場合は、文化財的価値の所在に応じて影響の少ない部分に設け、違和感が少ないように配慮するとともに、本来の構成部材と異なることが認識できるものとする。

(8) 将来行われる修理の容易性と、耐震工学・補強技術の進展に配慮して、付加物の除去・更新が可能な工法・仕様を検討する。

(9) 施工の容易性、維持管理の容易性に配慮した工法・仕様を検討する。

(10) 修理及び補強工事中における耐震性の確保にも配慮する。

(補強部位及び手法別留意事項)

6 各種補強手法の採用に当たって補強部位、補強手法別に留意すべき事項を以下に示す。

(1) 地盤及び基礎の補強

1) 地下遺構の有無と遺構保存の必要性に留意する。

2) 地盤の高さの変更は原則として避ける。

3) 基礎が脆弱な場合は、べた基礎、布基礎、地中梁等を設けて一体化を図る。

4) 軸組全体が移動しても基礎(基壇)からはずれないように、軸組と基礎を緩やかに拘束したり、基礎の幅に余裕をもたせるなどの工夫をする。

5) 必要に応じて、基礎と建物の緊結、免震装置の導入なども検討する。

(2) 軸組の一体化

1) 土台建の場合、土台と柱の接合を強化する。

2) 礎石建の場合、柱脚部相互の一体化を図る。

3) 足固め・根絡み等を新たに挿入する場合は、柱や束の損傷が少ない方法とし、床下の目立たない箇所を優先的に検討する。

(3) 部材の補強

1) 折損部位、腐朽部位を繕う場合は、形状を繕うばかりでなく、帯鉄の使用などにより強度の回復を図る。

2) 部材断面寸法が不足している場合は、添え木(添え柱、辺付け、二重梁)の使用など、本来の材料の取り替えを避け得る方法を優先的に検討する。

(4) 接合部の補強

1) 地震や強風を受けた後は、接合部の点検と楔の締め直しを実施する。

2) 補強金物、カーボン繊維等による継手・仕口の強化を行う場合は、可能な限り既存材料に傷を付けない工夫をする。

(5) 壁の補強

ア 既存の壁の耐力を高める場合

1) 既存の仕様についての十分な調査を実施し、耐力を正しく把握する。

2) 壁下地の軸組からの脱落防止措置を行う。

3) 土壁を塗り直す場合は、施工管理を十分に行い適正な強度が発揮できるようにする。

4) 板壁を耐力壁とする場合は、合い釘などによる板相互の緊結を図る。

イ 壁仕様を変更して強化する場合

1) 筋違、補強枠、補強パネルの使用など壁の仕様を変更する場合は、全面的な変更を避け、旧仕様を保存する部分を定める。

2) 壁の仕様を変更する場合は、仕上げを旧仕様に倣うなど意匠的な配慮をする。

3) 筋違を設ける場合は、接合部に応力が集中しないよう配慮する。

ウ 耐力壁を新設する場合

1) 壁の新設による間取りの変更は原則として避ける。

2) やむを得ず壁を新設する場合は、間取りの根本的な変更とならず、機能的・意匠的な影響の少ない位置とする。

(6) 建具の補強

ア 既存の建具を耐力壁とする場合

1) 軸組と一体の耐力壁とする場合は、可能な限り部材を傷つけないための工夫をする。

イ 建具仕様を変更して強化する場合

1) 保存を図るべきものと、更新可能なものを適切に判断して実施する。

2) 建具の仕様を変更する場合は、仕上げを旧仕様に倣うなど意匠的な配慮をする。

(8) 水平剛性の強化

ア 床下・天井裏の見え隠れ部分を活用する。

イ 床下、天井裏に補強板を敷き詰める場合は、併せて耐火性能の向上に留意する。

(9) その他

ア 張出部の振れ対策として、本体部分からの脱落防止措置を講じる。

イ 上下動、転倒による柱・束等の仕口の抜け出しを防止する措置を講じる。

ウ ねじれ防止対策として、耐力壁等の耐震要素をバランスよく配置する。

エ 積載荷重の著しい増加を伴う活用方法を避ける。

オ 屋根重量の軽減を特に図る必要がある場合は、外観の形式を損なわないものとする。

(留意すべき構造特性)

7 建築種別毎の留意すべき構造特性を以下に示す。

(1) 民家・町家

ア 居室部と土間部では木柄の太さや振動特性が相違する場合が多い。

イ 小屋叉首の脱落の恐れがある。

ウ 壁量が不足したり、壁の配置に偏りがある場合が多い。

エ 通し柱が不足している場合がある。

(2) 住宅系建築(書院、客殿、方丈、庫裏、その他)

ア 壁量が不足したり、壁の配置に偏りがある場合が多い。

イ 平面規模に比べて柱の本数や断面積が少ない場合がある。

ウ 蔀戸や板戸などの建具を取り外している場合が多い。

(3) 社寺建築(仏堂、社殿など)

ア 拝殿や本殿覆屋などの壁量が特に不足するものがある。

イ 向拝などの張出部が振れる恐れがある。

ウ 礎石建ての独立柱など柱脚部相互の一体性が欠けるものがある。

エ 二重門、楼門など、初層の壁量が少なく不安定な構造のものがある。

オ 屋根が特に重かったり、軒の出が深いものが少なくない。

(4) 木造洋風建築

ア 煉瓦造煙突の崩落の怖れのある場合が多い。

イ 木骨煉瓦造の場合は、煉瓦壁が脱落する恐れがある場合がある。

ウ 通し柱が不足している場合がある。

エ 筋違を用いていても有効に働いていない場合がある。

参考資料1 重量積算資料

1 材料の重量

(1) 木材の重量

(単位:kg/m3)


樹種

文献1

文献2

文献3

国産材

針葉樹

スギ

380

440

 

トドマツ

400

 

500

 

 

エゾマツ

430

410

 

 

 

スギエゾマツ

 

 

500

 

 

モミ

440

410

600

 

 

ヒノキ

440

440

600

 

 

ヒバ

450

450

600

 

 

ツガ

500

460

700

 

 

カラマツ

500

610

800

 

 

アカマツ

520

610

600

 

 

クロマツ

540

 

700

 

 

サワラ

 

 

 

 

 

コウヤマキ

 

 

 

 

広葉樹

キリ

300

320

400

 

シナノキ

500

590

 

 

 

カツラ

500

460

 

 

 

シオジ

530

660

800

 

 

クリ

600

 

700

 

 

ブナ

650

670

 

 

 

ミズナラ

680

 

 

 

 

ケヤキ

690

660

800

 

 

シラカシ

830

770

800

 

 

アカガシ

870

 

1,000

 

 

シイ

 

540

 

 

 

トチノキ

 

480

 

 

 

サクラ

 

 

700

北米材

ベイヒ

470

 

600

 

ベイスギ

370

 

500

 

ベイマツ

540

 

500

 

ベイモミ

430

 

400

 

ベイツガ

470

 

 

 

スプルース

450

 

 

その他

赤ラワン

540

 

700

 

白ラワン

500

 

 

 

コクタン

 

 

1,300

 

シタン

 

 

1,300

注)文献1:『新編建築学ポケットブック』(建築学ポケットブック編纂委員会編、オーム社、昭和59年)

文献2:『建築学便覧』(日本建築学会編、丸善、昭和31年)

文献3:JES建築3001

2 各部分の重量

(1) 葺材別単位面積あたりの屋根重量


屋根種別

単位重量(N/m2)

備考(典拠)

茅葺

650

旧太田家(神奈川、軒桁位置での厚50cmを基準として調整する)

本瓦葺

2,500

本願寺阿弥陀堂

桟瓦葺

1,200

旧井岡家(奈良)

桧皮葺

330

善光寺本堂

こけら葺

190

宝林寺仏殿

鉄板葺

290

嶋崎家(長野)

スレート葺

260

旧学習院初等科本館

注)いずれも野地板などは含まない

大野敏「文化財建造物の重量計算について」『「重要文化財(建造物)耐震診断指針」参考資料集』による

(2) 単位面積あたりの土壁重量


土壁種別

単位重量(N/m2)

備考(典拠)

小舞のみ

34

旧太田家(神奈川)

荒土壁のみ

980

標準壁厚を6cmとし、壁厚に合わせて調整する

中塗土のみ

980

同上

漆喰のみ

99

旧井岡家(奈良)

仏堂漆喰壁[cir1 ]

1,200

宝林寺仏殿(荒壁・中塗計6.6cm、漆喰下付、上付共片面6cm)

仏堂漆喰壁[cir2 ]

1,400

燈明寺本堂(荒壁・中塗り計8.2cm、漆喰下付、上付共片面6cm)

仏堂漆喰小壁

1,100

燈明寺本堂

注)大野敏「文化財建造物の重量計算について」『「重要文化財(建造物)耐震診断指針」参考資料集』による

(3) 一般現代木造住宅


部分

種別

重量

kg/m2

備考

屋根

瓦葺

葺土がない

屋根面につき

65

下地・垂木を含み、もやを含まない。

 

 

葺土がある

100

同上

 

石綿スレート葺き

もやに直接葺く

25

もやを含まない。

その他

 

35

下地・垂木を含み、もやを含まない。

 

薄鉄板葺

 

20

下地・垂木を含み、もやを含まない。

 

圧形スレート葺

 

45

下地・垂木を含み、もやを含まない。

もや

もや支点間距離2m以下

 

5

 

 

もや支点間距離4m以下

 

10

 

天井

棹縁天井

天井面につき

10

釣木・受木その他の下地を含む。

 

繊維板・打上板・合板・金属板張

15

同上

 

木毛セメント板張

 

20

同上

 

格縁天井

 

30

同上

 

漆喰塗り天井

 

40

同上

 

モルタル塗り天井

 

60

同上

板張

床面につき

15

根太を含む。

 

畳敷

35

床板・根太を含む。

 

床ばり

張間4m以下の場合

10

 

 

張間6m以下の場合

 

17

 

 

 

張間8m以下の場合

 

25

 

軸組

壁面につき

15

柱・間柱・筋違を含む。

 

仕上

下見板・羽目板・繊維板張

10

下地を含み、軸組を含まない。

 

 

木刷り漆喰塗

 

35

同上

 

 

鉄網モルタル塗

 

65

同上

 

木舞壁

 

85

軸組を含む。

注)建築基準法施行令第84条関係抜粋による

 

 

 

 

-- 登録:平成21年以前 --