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埋蔵文化財の保護と発掘調査の円滑化等について

庁保記第七五号

平成一〇年九月二九日
各都道府県教育委員会教育長あて
文化庁次長通知

埋蔵文化財の保護と発掘調査の円滑化等について

標記のことについては、これまで数次にわたり通知したところであり、貴教育委員会、貴管内各市町村(特別区を含む。以下同じ。)の教育委員会及び関係機関の御努力により、逐次必要な措置が講じられ、各地方公共団体における埋蔵文化財行政の改善・充実が図られてきているところであります。

しかしながら、この数年来、平成六年七月の規制緩和に関する閣議決定、平成七年一一月の総務庁による勧告等において、埋蔵文化財の保護と開発事業との適切な調整、発掘調査の迅速化、発掘調査に係る費用負担の明確化等が指摘されるなど、埋蔵文化財の保護と発掘調査に関する施策の一層の充実と適切な実施が求められています。

また、当庁では、平成六年度から「埋蔵文化財発掘調査体制等の整備充実に関する調査研究委員会」を設け、埋蔵文化財行政に関する基本的な事項について順次調査研究を行っており、平成九年度においては、埋蔵文化財の把握と周知、開発事業に伴う発掘調査の取扱い等についての調査研究を行い、平成一〇年六月、その報告を受けたところであります。

これらの状況を踏まえ、貴教育委員会におかれては、特に左記の事項に留意の上、埋蔵文化財行政の改善・充実に努めるようお願いします。また、管内の市町村教育委員会に対しこの趣旨の周知が図られるようお願いします。

なお、埋蔵文化財に関する重要な事項については、今後とも、速やかに当庁と連絡を取り、適切に対処するようお願いします。

本通知により、昭和五六年七月二四日付け庁保記第一七号、昭和六〇年一二月二〇日付け庁保記第一〇二号、平成五年一一月一九日付け庁保記第七五号の「埋蔵文化財の保護と発掘調査の円滑化について」及び平成八年一〇月一日付けの庁保記第七五号の「埋蔵文化財の保護と発掘調査の円滑化等について」の各通知は廃止します。

一 基本的事項

(一) 埋蔵文化財保護の基本的な考え方

埋蔵文化財は、国民共通の財産であると同時に、それぞれの地域の歴史と文化に根ざした歴史的遺産であり、その地域の歴史・文化環境を形作る重要な要素であることから、基本的には各地域で保存・活用その他の措置を講ずるという理念に基づいて諸施策を進めること。

(二) 埋蔵文化財保護に関する諸施策の推進

埋蔵文化財の保護に当たっては、市町村、都道府県、国それぞれの観点から保護を要する重要な遺跡の条例や法律による史跡指定等の推進、埋蔵文化財行政に係る体制の整備・充実、発掘調査体制・方法の改善等に積極的に取り組むこと。

(三) 開発事業者等への対応の基本

埋蔵文化財に関する開発事業との調整や発掘調査その他の措置に関しては、事業者その他関係者に対し埋蔵文化財保護の趣旨を十分説明し、その理解と協力を基本として進めること。

(四) 関係部局との連携

埋蔵文化財の保護行政は、各地方公共団体における開発担当部局等、教育委員会以外の関係部局との連絡・協調の下に進めること。

(五) 客観化・標準化の推進

埋蔵文化財の保護に関する行政は、保護の対象が地下に埋もれているため的確に把握することが困難であり、また、その内容や所在状況がきわめて多様であるため必ずしも定量的な基準に即して行うことに適しない面があるものの、その施策について国民の理解と協力を得るために、可能な限り客観的・標準的な基準を設け、それに即して進めること。

(六) 広報活動等の推進

埋蔵文化財の保護とそのために講ずる諸措置に関しては、発掘調査成果の公開や文化財保護施策に係る広報活動等に積極的に取り組むことにより、埋蔵文化財行政について広く国民の理解を得、その協力によって進めること。

二 埋蔵文化財行政の組織・体制のあり方とその整備・充実について

埋蔵文化財の保護上必要な開発事業との調整、発掘調査等を円滑に進めるには、それらを的確に執行するための体制が必要である。埋蔵文化財保護の体制については、各地方公共団体において、今後とも更に以下の各事項に留意の上、その整備・充実に努められたい。

(一) 地方公共団体における体制の整備・充実

各地方公共団体においては、埋蔵文化財の保護を図るため、史跡の指定等による積極的な保護及びその整備活用、埋蔵文化財包蔵地の把握と周知、開発事業との調整及び発掘調査の実施、発掘調査成果の公開等の広報活動等の多岐にわたる行政を進めることが求められる。

このため、適切な対応能力を備えた十分な数の専門の職員を確保し、それぞれの担当部署への適切な配置に努めるとともに、常時その能力の向上を図る必要がある。

また、専門職員の資質・技能の向上のため、地方公共団体の設置する発掘調査組織等との適切な人事交流を図るとともに、自らの職員、管内あるいは関係の地方公共団体職員を対象とする研修の実施、奈良国立文化財研究所その他が行う研修への職員の派遣などに努める必要がある。

さらに、埋蔵文化財の保護については、人的な体制とともに発掘調査、出土品の管理や活用等の活動の拠点となる施設の整備・充実も必要であることから、今後とも埋蔵文化財センターの建設等を進める必要がある。

(二) 市町村の役割及び体制の整備・充実

埋蔵文化財は地域の歴史と文化に根ざした歴史的遺産であることから、地域の埋蔵文化財の状況を適切に把握することができる市町村が重要な役割を果たすことが必要である。

このため、埋蔵文化財担当専門職員を配置していない市町村においては、少なくとも埋蔵文化財保護の基本的行政に支障がないよう専門職員の配置を促進することとし、既に専門職員を配置している市町村においても、適切な埋蔵文化財保護行政の執行と経常的な発掘調査の円滑な実施のため、適正な体制の整備・充実を図る必要がある。

なお、小規模な市町村の場合、一定の地域内に所在する複数の市町村が共同して広域の発掘調査組織を設けることも有益である。このような場合には、広域調査組織の設立、運営に当たっての関係市町村間の理解と合意の確保、各関係市町村教育委員会と広域調査組織との連携、職員の採用形態等について十分配慮し、その運営が円滑に行われるよう留意すること。

(三) 都道府県の役割及び体制の整備・充実

都道府県は、大規模な、あるいは複数の市町村にまたがる埋蔵文化財の保護及びこれらに係る開発事業との調整・発掘調査を行い、重要な遺跡の保存・活用等を推進するとともに、管内の市町村における埋蔵文化財保護行政に関する指導・援助及び連絡調整を行うことが求められる。

特に、埋蔵文化財保護の具体的な内容が市町村ごとに大きな差違を生ずることを避け、行政の客観化・標準化を進めるためには、各都道府県教育委員会において、保護の基本となる方針や標準を定め、それを基に管内の市町村を指導することが望ましい。

また、体制の未整備な市町村に係る事業に関して、当面の措置として、発掘調査の緊急性等を踏まえ、自ら発掘調査を実施する等の措置を執り、管内における埋蔵文化財行政に不均衡が生じないよう配慮されたい。

このため、各都道府県においては、開発事業との調整や発掘調査等に当たる体制の整備に努めるとともに、保護の基本となる方針や標準を策定し、管内の市町村への指導・援助及び連絡調整を適切に行うための一層の体制の整備・充実に努める必要がある。

なお、市町村と都道府県との役割分担について、従来の区分では適切な対応が困難な場合には、都道府県と市町村で調整の上、区分の在り方を見直すなど、開発事業の内容等と埋蔵文化財行政側の体制の状況に応じた柔軟な対応を行うことにより、発掘調査等の円滑な実施を図ることとされたい。

(四) 地方公共団体間の専門職員の相互派遣

(二)、(三)で掲げた各市町村及び都道府県の基本的な役割を踏まえつつも、増大する開発事業との円滑な調整を図り、埋蔵文化財の適切な保護を図るためには、各市町村及び都道府県が相互に協力して臨むことが必要である。

各地方公共団体の対応能力を超えるような発掘調査事業の臨時的、急激な増加等に対応して円滑な事業の推進を図るためには、都道府県相互間、都道府県と市町村の間あるいは市町村相互間で専門職員を出向・派遣する等の相互支援を行うことが望ましい。

このため、次の各事項に留意の上、適切な措置を講ずることとされたい。

[cir1 ] 都道府県教育委員会においては、管内の市町村における発掘調査事業の動向とこれに対する対応能力等の状況を的確に把握するとともに、体制が不十分な市町村への専門職員の出向・派遣、市町村間の専門職員の出向・派遣の調整等に努める必要があること。

[cir2 ] 地方ブロック毎の連絡会議等で、各都道府県における発掘調査事業の動向等について情報交換を行い、近隣都道府県間の専門職員の出向・派遣等による相互支援について、検討を進めること。

[cir3 ] 当庁では、これまで大規模な災害復旧に対応する場合等に都道府県の範囲を超える全国規模の専門職員の派遣等について協力要請を行ってきたが、今後も必要に応じて同様の措置を執ることとしたいので引き続き配慮願いたいこと。

(五) 発掘調査を業務とする財団その他の組織・機関のあり方

地方公共団体が設置している発掘調査のための組織・機関は、発掘調査を円滑に進めるために十分な職員体制と調査のための基本的な機材等を整えるとともに、財政的な基盤を確保する必要がある。

また、各教育委員会は、こうした調査組織・機関による発掘調査であっても、調査に関する指導は教育委員会が行うものであるから、これらの組織・機関との連絡を密にすることが必要である。

(六) 民間調査関係組織の適切かつ効果的な導入

発掘調査への民間調査組織の導入については、地方公共団体における埋蔵文化財保護体制の整備を前提として、導入の形態、導入する範囲等についての明確な方針の下に行う必要がある。この場合、次のような原則によるのが適切である。

(ア) 発掘調査に関連する各種の業務について

排土・測量・写真撮影等、発掘調査に関連しこれを支援する業務については、発掘調査の効率的な実施のために有効な場合は、民間の調査支援機関の効果的な導入を図ること。

(イ) 発掘調査について

発掘調査についての民間調査組織の導入については、本来当該発掘調査を実施すべき地方公共団体等が一定程度の発掘調査体制を有している場合であって、その発掘調査体制では発掘調査が著しく遅延している場合又は短期的な発掘調査事業の急増により現在の体制では調査の遅延等の事態が生ずることが予想され、他の地方公共団体からの専門職員の派遣その他の支援によっても対応することができない場合に限って、次の要件の下に行うこと。なお、発掘調査への民間調査組織の導入を行うときは、そのことにより地方公共団体の発掘調査体制の整備が遅滞することのないよう十分留意すること。

[cir1 ] 導入しようとする発掘調査組織は、発掘調査について十分な資質を有する担当職員を備えており、埋蔵文化財の発掘調査を適正に実施する能力を有するものであること。

[cir2 ] 民間の発掘調査組織の導入は、発掘調査を実施する地方公共団体等の発掘調査体制に組み込む形態で行うものとし、発掘調査組織の選択、発掘調査の実施の管理等は、当該地方公共団体が責任をもって行うこと。

三 開発事業との調整について

埋蔵文化財の保護と開発事業の調整は、事業者の理解と協力の上に成り立つものであることを踏まえ、次の各事項に留意の上、遺漏のないよう措置されたい。

なお、公共工事の実施と埋蔵文化財の保護に係る調整については、平成九年八月七日付け庁保記第一八三号「公共工事の実施と埋蔵文化財の保護に係る連絡調整体制の整備について」により通知したところであり、連絡調整体制の整備等による一層の連携強化に努めていただきたい。

(一) 関係部局との連携体制の確保による計画の早期把握

各地方公共団体における開発事業等に対して指導等の行政を担当する部局との間の連携を強化し、各部局に関係する開発事業計画の早期把握と適切な事前調整に努めること。

(二) 事業者との調整

事業者との間で開発事業計画と埋蔵文化財保護との調整を行うに当たっては、次の各事項に留意する必要がある。

[cir1 ] 事業計画が把握された場合は、速やかに事業者との具体的な調整を開始すること。また、埋蔵文化財に係る調整は、当該事業に係る他の行政上の指導や手続きと並行して迅速に行うこと。

[cir2 ] 事業者との事前協議に当たっては、事業の計画や実情について十分了知するとともに、埋蔵文化財の保護についてよく説明して理解を得るよう努めること。

[cir3 ] 埋蔵文化財の範囲や性格等の把握が十分でない場合は、速やかに後述の試掘・確認調査等を行い、これを的確に把握した上で事業計画との調整を行うこととし、調整後に調整内容の変更等の事態を生じないよう努めること。

[cir4 ] 調整により本発掘調査が必要となった場合は、その範囲・調査期間・経費等を提示し、十分に説明し理解を得ること。

[cir5 ] 事業者との調整の経過等については、逐次記録し、調整の結果は協定書等にまとめること。

(三) 発掘調査の円滑・迅速化

開発事業との調整の結果行われる記録保存のための発掘調査については、効率的に進めるため、次の各事項に留意する必要がある。

[cir1 ] 試掘・確認調査を積極的に活用し、その結果に基づき調査区の適切な設定や遺跡の性格等に応じた調査体制の編成等に配慮すること。

[cir2 ] 作業の各段階において土木機械・測量機器を積極的に導入するなどして、その円滑かつ迅速な実施に努めること。

[cir3 ] 事業者との連絡を密にし、調査の行程や進行に支障のない限り工事が並行して実施できるように工夫すること。

四 埋蔵文化財包蔵地の把握と周知について

埋蔵文化財包蔵地の所在・範囲を的確に把握し、これに基づき保護の対象となる周知の埋蔵文化財包蔵地を定め、これを資料化して国民への周知の徹底を図ることは、埋蔵文化財の保護上必要な基本的な重要事項である。周知の埋蔵文化財包蔵地は、法律によって等しく国民に保護を求めるものであるから、その範囲は可能な限り正確に、かつ、各地方公共団体間で著しい不均衡のないものとして把握され、適切な方法で定められ、客観的な資料として国民に提示されなければならない。

このため、都道府県教育委員会においては、平成一〇年六月の埋蔵文化財発掘調査体制等の整備充実に関する調査研究委員会による報告「埋蔵文化財の把握から開発事前の発掘調査に至るまでの取扱いについて」(以下「報告書」という。)の第一章、二を参照の上、次の各事項に留意の上、必要な措置を講ずることとされたい。

(一) 埋蔵文化財として扱うべき遺跡の範囲

何を埋蔵文化財とするかについては、次の 一)に示す原則に則しつつ、かつ 二)に示す要素を総合的に勘案するとともに、地域における遺跡の時代・種類・所在状況や地域的特性等を十分考慮して、各都道府県教育委員会において一定の基準を定めることが望ましい。

なお、埋蔵文化財とする範囲は、今後の発掘調査の進展による新たな発見や調査事例の蓄積、研究の進展により変化する性格のものであるので、前記の基準は適宜合理的に見直すことが必要と考えられる。

一) 埋蔵文化財として扱う範囲に関する原則

[cir1 ] おおむね中世までに属する遺跡は、原則として対象とすること。

[cir2 ] 近世に属する遺跡については、地域において必要なものを対象とすることができること。

[cir3 ] 近現代の遺跡については、地域において特に重要なものを対象とすることができること。

二) 埋蔵文化財として扱う範囲の基準の要素

遺跡の時代・種類を主たる要素とし、遺跡の所在する地域の歴史的な特性、文献・絵図・民俗資料その他の資料との補完関係、遺跡の遺存状況、遺跡から得られる情報量等を副次的要素とすること。

(二) 埋蔵文化財包蔵地の把握と周知の埋蔵文化財包蔵地としての決定

埋蔵文化財包蔵地の所在・範囲の把握は、地域に密着して埋蔵文化財の状況を適切に把握することができる市町村教育委員会が行うこと。

ただし、現在それを実施するための体制の整っていない市町村や埋蔵文化財包蔵地の所在・範囲の把握や資料の整備が不十分な市町村については、当面、都道府県教育委員会が自ら分布調査等を実施すること、又は市町村教育委員会が分布調査等を実施するよう指導し、必要な助言や援助を行うことが望ましい。

埋蔵文化財包蔵地の所在・範囲は、これまでに行われた諸調査の成果に加え、今後、埋蔵文化財包蔵地の所在・範囲の把握を目的として行う分布調査、試掘・確認調査その他の調査の結果によって的確に把握し、常時新たな情報に基づいて内容の更新と高精度化を図ること。なお、これまで所在のみが把握され必ずしも範囲が明確に把握されていなかった埋蔵文化財包蔵地については、早急に所要の調査等を行い、順次範囲を把握すること。

前記によって把握された埋蔵文化財包蔵地については、都道府県教育委員会が、関係市町村の教育委員会との間でその所在・範囲についての調整を行い、周知の埋蔵文化財包蔵地として決定すること。

(三) 周知の埋蔵文化財包蔵地の所在・範囲の資料化と周知の徹底

前記(二)により都道府県教育委員会が決定した周知の埋蔵文化財包蔵地については、都道府県及び市町村において、「遺跡地図」、「遺跡台帳」等の資料に登載し、それぞれの地方公共団体の担当部局等に常備し閲覧可能にする等による周知の徹底を図ること。また、必要に応じて、関係資料の配付等の措置を講ずること。

この資料については、都道府県と市町村が内容として共通のものを保有することとするとともに、常時最新の所在・範囲の状況を表示できるよう、加除訂正が可能な基本原図を用いることや、コンピュータを用いた情報のデータベース化等、機能的な方法を工夫すること。

なお、資料への表示としては、埋蔵文化財包蔵地の区域は、原則として、その範囲を実線で明確に示すこと。また、遺跡が完全に滅失した地域の表示や遺跡の重要性に応じた表示など、表示方法を工夫することも開発事業者側、文化財保護行政側の双方にとって有効なことと考えられる。

五 試掘・確認調査について

周知の埋蔵文化財包蔵地の適切な範囲の決定、開発事業と埋蔵文化財の取扱いの調整、あるいはその調整の結果必要となった記録保存のための発掘調査の範囲及び調査に要する期間・経費等の算定のためには、あらかじめ当該埋蔵文化財の範囲・性格・内容、遺構・遺物の密度、遺構面の数と深さ等の状況を的確に把握しておくことが求められる。また、開発事業に対応して埋蔵文化財の所在地において盛土等を行うに際しても、後述の六(三)のとおり、一定の記録を残しておくことが求められる。

このため、各教育委員会においては、それぞれの目的に応じて必要な知見や情報を得るために、十分な分布調査や試掘調査(地表面の観察等からでは判断できない場合に行う埋蔵文化財の有無を確認するための部分的な発掘調査)、確認調査(埋蔵文化財包蔵地の範囲・性格・内容等の概要までを把握するための部分的な発掘調査)を行うことが必要である。

各地方公共団体においては、このような試掘・確認調査の重要性及び有効性を十分に認識し、これを埋蔵文化財の保護や開発事業との調整等の仕事の中に的確に位置づけ、その十分な実施を確保できる職員の配置等の体制整備を図るとともに、より効率的な試掘・確認調査のための方法の改良等に努める必要がある。

なお、開発事業が計画されている区域において改めて分布調査や試掘・確認調査を行う場合は、事業者その他の関係者の十分な理解を得ておくことが必要である。

六 開発事業に伴う記録保存のための発掘調査等について

(一) 記録保存のための発掘調査の要否等の判断

周知の埋蔵文化財包蔵地における開発事業と埋蔵文化財の取扱いについての調整の結果、現状保存することができないこととされた遺跡については、記録保存のための発掘調査その他の措置を執ることとされているが、どのような取扱いにするかについては、第一にその工事区域が地下遺構の内容や状況等の観点で発掘調査を要する範囲に含まれるかどうか、第二に工事の内容が地下遺構に与える影響の観点で記録保存の措置を必要とする場合に当たるかどうかを判断して定める必要がある。

この二点についての基本的な考え方は別紙一及び別紙二のとおりであるので、各教育委員会においては、これを踏まえ、「報告書」の第三章及び第四章を参照の上、必要な措置を講ずることとされたい。

特に、別紙二の各項に示す事項の中には、実際に適用する上では地域的な特性や従前の取扱いとの関連において更に細目的な基準を必要とするものがあるので、それらについては各都道府県教育委員会において、各地方ブロックで策定された基準又は現在検討中の基準を踏まえる等により工事の種別ごとの取扱い及び数値の適用基準を定めることとされたい。

なお、この適用基準は、埋蔵文化財保護に関する理念の変化や技術的な進歩等に伴って変更されていく性格のものであるから、今後、適切に検討の上、見直しを図っていく必要がある。

(二) 記録保存のための発掘調査範囲の決定

個々の開発事業についてどのような措置を執るか、また、本発掘調査を行う場合の調査範囲については、上記(一)に基づき判断することになるが、試掘・確認調査等により遺跡の性格や内容等を十分に把握した上、専門的な知識及び経験を踏まえて適切に示すことが必要である。このため、都道府県教育委員会が、市町村教育委員会の意見(試掘・確認調査等が市町村以外の調査機関によって行われた場合にあっては、その結果報告に基づく市町村教育委員会の意見)を聞き、調整の上決定することが適切である。

また、その決定内容については、事業者に対し十分に説明を行い、その理解を得ることが必要である。

(三) 盛土等とその留意事項

開発事業との調整に際しては、建築物等の工作物や盛土の下であっても遺跡等を比較的良好な状態で残すことができ、調査のための期間や経費を節減できる場合には、記録保存のための発掘調査を合理的な範囲にとどめ、盛土等の取扱いとすることを考慮することが必要である。

ただし、この場合も、このような取扱いは埋蔵文化財本来の保存方法として必ずしも適切ではないこと、盛土等の施工後は地形や地貌が大きく変化し周知の埋蔵文化財包蔵地であることを実態上把握しにくくなり、試掘・確認調査等を行うこともかなり困難になること等を認識し、盛土等の施工以前に、地下に残る埋蔵文化財の位置と範囲、遺跡の内容・性格等を記録しておく必要がある。そのために事前にその目的に即した試掘・確認調査を行うこと等が必要である。また、盛土等の処理に関する協議・調整、それに伴う踏査、試掘・確認調査及び工事の具体的な範囲・内容等の記録を適切に保管・管理する仕組みと体制を整備するとともに、将来、別の開発事業に際してその存在を見落とされるなどのことのないよう、関係事業者や土地所有者等に周知徹底する措置も必要である。

七 発掘調査の経費等について

(一) 発掘調査経費負担に関する理念・根拠

埋蔵文化財は、我が国の歴史を解明する上で重要な価値を有する貴重な国民共有の財産であり、可能な限り現状で保存することが望ましいものであるが、開発事業等が計画されたことによりこれを現状のまま保存することができなくなった場合、少なくとも、発掘調査によって当該埋蔵文化財の記録を保存することとし、この場合、当該埋蔵文化財の現状による保存を不可能とする原因となった開発事業等の事業者に対しその経費負担による記録保存のための調査の実施を求めることとしている。

このような開発事業等の事業者の経費負担による発掘調査の実施は、文化財保護法第五七条の二第二項による指示等及び「埋蔵文化財関係の事務処理の迅速適正化について」(昭和五六年二月七日付け庁保記第一一号)による各都道府県教育委員会の指導に基づき行われているものである。

(二) 事業者に負担を求める発掘調査経費の範囲等

開発事業等に伴う埋蔵文化財の発掘調査に関して開発事業等の事業者に経費の負担を求めるのは、発掘調査作業に要する経費(機械器具の借損料、立入補償費等を含む。)、出土文化財の整理等に要する経費(応急的な保存処理のための費用を含む。)、報告書作成費等である。

なお、開発事業等の事業者に負担を求める経費の積算に当たっては、当該開発事業に伴う埋蔵文化財の記録保存のために必要な範囲にとどめる等、その節減に努める必要がある。

(三) 発掘調査経費・期間の積算基礎の策定等

開発事業等に伴う発掘調査の経費及び期間については、各地方ブロックごとの標準的な積算基礎の策定が完了したところであるが、今後、標準的な積算基礎の具体的な事案への適用を進めるとともに、必要に応じ、より広範囲の事業に対応できる実用的な内容への補完・改訂等を検討することとされたい。

また、開発事業者と発掘調査経費について協議する際には、経費の具体的な積算根拠等について十分説明し、その理解を得る必要がある。

八 発掘調査成果の活用等による保護の推進

(一) 埋蔵文化財の保護については、広く国民の理解を求め、その協力によって進めることが肝要であることから、各地方公共団体及び関係の機関において、発掘調査現場の公開、調査成果のわかりやすい広報、出土品の展示、その他埋蔵文化財保護に関する事業の実施を積極的に進めることとされたい。なお、出土品については、平成九年八月一三日付け庁保記第一八二号「出土品の取扱いについて」を踏まえ、その積極的な活用に努めることとされたい。

(二) 発掘調査終了後は、可能な限り速やかに調査結果の客観的資料化を行い、発掘調査報告書の早期作成とその公表に努めることとされたい。

別紙一

発掘調査を要する範囲の基本的な考え方

(一) 遺構の所在する場所にあっては、遺構が単独の場合は個々の遺構のみを範囲とし、遺構が歴史的な意味あいを持つ群をなす場合はその群全体の範囲(外側の遺構を順次結んで囲まれる範囲)とすること。

また、ごく少数の遺構が互いに離れて存在する場合は、各遺構のみを範囲とするか、これらを含む区域全体を範囲とするかは、その遺跡の時代や歴史的意味・性格等を考慮して判断すること。

遺跡の中の空閑地については遺跡の時代や性格等を考慮し、広場等歴史的意味があると考えられる場合は、原則として遺構の範囲に含めること。祭祀遺物が分布する区域あるいは廃棄された遺物が集積する区域等のように、顕著な遺構がなくとも出土状況に意味のある遺物が所在する範囲は、遺構に含めること。

(二) 遺物包含層のみの場合は、遺物の出土状況に基づいて、一定の量の遺物がまとまって所在する区域を範囲とし、遺物が散漫に所在する区域は範囲から除外すること。

ただし、出土状況の判定に当たっては、地域性や遺跡の時代・性格等を十分に考慮する必要があり、遺物の出土が散漫な区域であっても地域や時代性等の特性(例えば旧石器時代や縄文時代草創期等、本来遺物が多量に出土することの希な時代の場合)を考慮して範囲に含めるかどうかを判断すること。

(三) 規格性のある区画や類似する構成・性格の遺構が連続しており一部の遺構の在り方から全体が推定できる場合(例えば田畑及び近世の都市・集落等を構成する道路・木樋・側溝等)は、地域性、遺構の残存状況(現在の市街地との重複等)、発掘調査で得られる情報の内容、考古学的情報以外の資料から得られる情報(古文書等の資料の有無)等の諸要素を総合的に勘案し、本発掘調査を要する範囲を判断すること。

別紙二

記録保存のための発掘調査その他の措置を行う場合の基本的な考え方

(一) 工事前の発掘調査を要する場合の基本的な考え方

[cir1 ] 工事により埋蔵文化財が掘削され、破壊される場合は発掘調査を行うものとすること。

[cir2 ] 掘削が埋蔵文化財に直接及ばない場合であっても、工事によって地下の埋蔵文化財に影響を及ぼすおそれがある場合や、一時的な盛土や工作物の設置の場合であっても、その重さによって地下の埋蔵文化財に影響を及ぼすおそれがある場合は、発掘調査を行うものとすること。

埋蔵文化財に影響を及ぼすおそれがあるかどうかは、埋蔵文化財の所在する地域ごとの地質・土壌条件、工事の規模等を勘案し、個々に判断せざるを得ないものであるが、同一地域の同規模の工事に対し、その判断に不均衡が生じることは適切ではないので、都道府県教育委員会において、具体的な工事の規模(盛土の厚さ等)や保護層(工事の施工に際して埋蔵文化財を保護するために設ける一定の厚さの土層、樹脂等による緩衝層)の要否とその程度についての適用基準を定めることが望ましいこと。

[cir3 ] 恒久的な工作物の設置により相当期間にわたり埋蔵文化財と人との関係が絶たれ、当該埋蔵文化財が損壊したのに等しい状態となる場合は、発掘調査を行うものとすること。これを事業の種類ごとに、工事の性質・内容に即して、当該工作物の設置あるいは盛土の施工後であっても必要な場合は発掘調査が可能か否かの観点から具体的に示すと、次のとおりである。

○道路等 次に掲げるもの以外は、発掘調査の対象とすること。

(ア) 一時的な工事用道路、道路の植樹帯、歩道等

(イ) 高架・橋梁の橋脚を除く部分

(ウ) 道路構造令に準拠していない農道、私道

(エ) 道路の拡幅・改修の場合の既存道路部分

ただし、前記のものについても、都道府県教育委員会の定める適用基準により、施設としての将来的な利用計画及び地下埋設物・付帯施設の設置計画の有無・内容等を考慮して発掘調査の対象とするか否かを定めることができる。

鉄道については、道路に準じて取り扱うこと。

○ダム・河川 ダムについては堤体及び貯水池、河川については堤防敷及び河川敷の内の低水路は発掘調査の対象とすること。

ただし、ダム貯水池のうちの常時満水位より高い区域と河川の高水敷については、都道府県教育委員会の定める適用基準により、施設としての将来的な利用計画及び地下埋設物・付帯施設の設置計画の有無・内容等を考慮して発掘調査の対象とするか否かを定めることができる。

○恒久的な盛土・埋立 盛土・埋立については、その施工後の状況が、必要な場合は発掘調査が可能なものかどうか等の観点で、個々の事業に即し、発掘調査が必要か否かを定めることとすること。

ただし、都道府県教育委員会の定める適用基準により、あらかじめ盛土等の厚さの標準を定めておくことができるものとする。この場合、現在の掘削工法の限界、従前の例等から、盛土等の厚さの標準は二~三メートル程度が適当である。

なお、野球場・競技場・駐車場等についても、都道府県教育委員会の定める適用基準により、施設としての将来的な利用計画及び地下埋設物・付帯施設の設置計画の有無・内容等を考慮して発掘調査の対象とするか否かを定めることができる。

○建築物 建築物については、規模・構造・耐用年数等において前記の工作物に比べ比較的簡易なものが多いため、原則として発掘調査の対象とはしないこと。

ただし、その規模・構造・耐用年数・将来の利用計画等の観点で、都道府県教育委員会の定める適用基準により、発掘調査の対象とするか否かを定めることができる。

(二) いわゆる「工事立会」、「慎重工事」を要する場合の基本的な考え方

発掘調査を要しない場合で、いわゆる「工事立会」、「慎重工事」の措置を必要とする場合とその内容は、次の基本的な考え方によること。

[cir1 ] 対象地域が狭小で通常の発掘調査が実施できない場合及び工事が埋蔵文化財を損壊しない範囲内で計画されているが現地で状況を確認する必要がある場合には、工事の実施中地方公共団体の専門職員が立ち会うものとすること。

なお、その際、遺構が確認される等のことがあった場合はその記録を採る等適切な措置を講ずること。

[cir2 ] 遺構の状況と工事の内容から、発掘調査、工事立会の必要がないと考えられる場合は、埋蔵文化財包蔵地において工事を行うものであることを認識の上慎重に施工し、遺構・遺物を発見した場合は地方公共団体と連絡をとるよう求めるものとすること。

 

 

 

 

-- 登録:平成21年以前 --