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文教施設の耐震性の向上の推進について

文施指第一〇三号

平成八年九月三〇日
各国公私立大学長・各国公私立高等専門学校長・国立久里浜養護学校長・各大学共同利用機関長・大学入試センター所長・学位授与機構長・国立学校財務センター所長・文部省各施設等機関長・日本学士院長・文化庁施設等機関長・日本芸術院長・放送大学長あて
文部省大臣官房文教施設部長通知

文教施設の耐震性の向上の推進について

文部省では、先の阪神・淡路大震災において文教施設にも多くの被害が発生したことから、(社)日本建築学会学校建築委員会耐震性能小委員会(委員長:岡田恒男前東京大学教授)に対し、文教施設に必要な耐震性能等についての調査検討を委嘱実施してきたところですが、別添のとおり報告がありました。

既存文教施設の耐震診断及び検討の結果、昭和五六年施行の現行の耐震基準(以下「新耐震設計法」という。)による文教施設は概ね耐震性が確保されていることが確認されましたが、さらに、留意すべき諸点も報告されています。

ついては、貴所管の文教施設について、前記報告を参考とするとともに、特に左記に留意され一層耐震性の向上に努められるようお願いします。

なお、文教施設の耐震性の向上の推進については、平成七年五月一九日付け文施指第一〇三号「文教施設の耐震性の向上の推進について」により、当面の留意事項について通知していることを申し添えます。

一 新築建築物について

(一) 新耐震設計法による建築物においても、一部に被害が発生していることに鑑み、構造計画の重要性について認識するとともに、努めて余力ある設計を行うこと。

(二) 文教施設の機能特性を考慮し、地域防災計画上の避難施設等として計画する場合にあっては、設計地震力を割増して設計することが適当と考えられること。

(三) 鉄骨造建築物の柱脚の設計に当たっては、十分な耐力または変形能力を確保すること。

二 既存建築物について

(一) 既存建築物にあっては、建築物の耐震改修の促進に関する法律(平成七年法律第一二三号)の趣旨に則り、努めて耐震診断及び耐震改修を実施することが必要であるが、文教施設の機能特性を考慮し、より安全なレベルを改修目標とすること。

(二) 既存の屋内運動場等の耐震診断を行う場合は、平成八年六月二七日付け文施指第一三六号「屋内運動場等の耐震性能診断基準の策定について」(文部省大臣官房文教施設部長通知)を参考とされたいこと。

(三) 大空間構造の屋根にプレキャストコンクリート板を使用している建築物では、地震時の屋根材落下の危険性を点検し、必要に応じて落下防止に有効な措置を講じること。

別添

文教施設の耐震性能等に関する調査研究(平成七年度概要版)

平成八年三月

日本建築学会学校建築委員会

耐震性能小委員会

[Roman1 ] 平成七年度調査研究の概要

平成七年兵庫県南部地震では、文教施設にも多くの被害が発生した。本調査研究の目的は、兵庫県南部地震による文教施設の被害を調査し、被害原因を明らかにして、今後の耐震設計法及び既存施設の耐震性能評価法、補強方法等を再検討することである。

鉄筋コンクリート造の学校校舎を対象とする調査では、耐震診断を行い、被災度判定結果(平成六年度調査)との関係を明らかにして、学校施設の耐震設計法、耐震診断法、補強計画、被災度判定法を検討した。

鉄骨造の屋内運動場を対象とする調査では、「屋内運動場等の耐震性能診断基準(文部省 平成七年版)」により診断を行い、学校施設の耐震設計法、補強計画を検討し、同診断基準の改訂案を作成した。

[Roman2 ] 調査結果の概要

一 鉄筋コンクリート造建築物(主に校舎)について

鉄筋コンクリート造建築物については、西宮市、神戸市東灘区、灘区、兵庫区、須磨区等の激震地域及びその周辺に位置する校舎を主な対象として、大きな被害を受けた棟から軽微な被害にとどまった棟も含めて、耐震診断により構造耐震指標を算出した。

耐震一次診断を一〇二棟、耐震二次診断を七〇棟について実施した。一般に指標値が低く、被害が大きい桁行方向の構造耐震指標と被害レベルを表す損傷度との関係を分析した結果は以下のとおりである。

(一) 耐震一次診断による構造耐震指標と被災度の関係は、〇・二から〇・四程度では大破から軽微までばらつきがあるが、〇・四~〇・八程度の場合では中破以下、〇・八以上の場合は軽微または無被害であった。〇・四以下で被災度が小さい場合はあるが、〇・五程度以上であれば被災度が大きい(D>30)場合はなかった。

(二) 耐震二次診断による構造耐震指標と被災度の関係は、〇・二から〇・四程度の場合は大破または倒壊となる場合が多く、〇・四~〇・六程度の場合は中破以下の場合が多いが大破・倒壊となる場合もあった。〇・六以上では多くの場合中破の下(D<30)以下に留まるが、大破、倒壊の判定になる場合が数例あった。

(三) 構造耐震指標が比較的高いにも拘わらず、ある程度の被害を受けた建物は、靭性指標は大きいが、強度指標が大きくない四階建の校舎であり、倒壊には至っていないが、過大な残留変形が生じたために大破と判定されたものである。

二 鉄骨造建築物について

二―一 屋内運動場等の耐震性能診断基準について

鉄骨造建築物については、比較的大きな被害を受けた建築物一八棟、軽微な被害もしくは無被害の建築物七棟について、屋内運動場等の耐震性能診断基準(文部省 平成七年版)で耐震診断調査を実施した結果を踏まえて、平成七年一二月に施行された「建築物の耐震改修の促進に関する法律」に基づく告示に示される耐震診断法の枠組みに従って、現行の基準の改訂案を作成した。

改訂案においては、実際の耐震性能をより正確に評価するために、靭性指標F値の改善を行った。主な変更点は左記の二点である。

(一) 接合部ないしは柱脚で被害を受けた建物については、現行の耐震性能診断基準は、実際の被災度に比べ構造耐震指標を若干過大評価する傾向があるため、接合部(鉄骨の鉄筋コンクリート部分への定着部や柱脚部を含む)の破壊に対応する靭性指標値を現行の一・八二から一・三に低減した。

(二) 保有耐力接合された軸組筋かいに対して、現行の耐震性能診断基準は、構造耐震指標を若干過小評価する傾向があるため、保有耐力接合された軸組筋かいに対応する靭性指標値を現行の二・〇から二・二に増大した。

二―二 鉄骨造建築物(主に体育館)について

耐震診断の結果は、以下のとおりである。

(一) 被害建築物の多くは、新耐震設計法(昭和五六年六月施行)前の基準による建築物で、構造耐震指標は、概ね〇・三から〇・六程度の範囲にあった。

(二) 新耐震設計法前の基準による建築物でも、構造耐震指標が比較的高い建築物は、被害程度が軽微であった。

(三) 新耐震設計法以降の基準による建築物の調査例は少ないが、被害程度は軽微であった。

(四) 構造耐震指標が比較的高い建築物にも拘わらず、ある程度の被害を受けた建築物は、[cir1 ]建設地が造成地ないしは高台であるため、局所的な地震入力の増幅が生じた可能性があること、[cir2 ]接合部の強度の余裕度が十分でないために破断が生じたこと、などが原因と考えられる。

(五) 屋内運動場等の耐震性能診断基準の改訂案を適用した結果は、実際の被災度とより良く対応しており、屋内運動場等の耐震性能をより正確に評価できていると判断される。

[Roman3 ] 今後の対応

一 新築建築物について

今後の文教施設の整備に当たっては、以下の諸点に留意することが望ましい。

(一) 地震時の児童・生徒等の安全確保に併せて、大地震後における教育研究活動の速やかな回復、また、被災直後の一時的避難施設としての機能を考慮すると、設計用地震力の割増(一・二五倍程度)を考慮することが望ましい。

(二) 敷地の状況をよく調査し、液状化などの可能性があれば、地盤改良など適切な対策を行う必要がある。また、建物が切土、盛土上に跨る場合は、杭基礎とするなど基礎構造について特に留意する。

一―一 鉄筋コンクリート造建築物について

(一) 桁行、梁間、いずれの方向にも耐震壁をバランスよく配置し、柱の仮定断面は余裕をもって設定するなど強度型の設計を心がける。

(二) 柱がある程度塑性化する場合も想定し、靭性が確保できる配筋(閉鎖型帯筋、副帯筋の使用)が望まれる。

(三) 保有水平耐力、降伏機構を確認することが望ましい。

一―二 鉄骨造建築物について

(一) 柱脚を固定とする場合は、露出形式を避け、十分な埋め込み深さを有する埋込式柱脚とすることが望ましい。

(二) 露出形式柱脚を用いる場合は、アンカーボルトの早期破壊を避け、回転能力の十分あるディテールを選択する。

(三) 鉄骨部分の鉄筋コンクリート部分への定着部においても、アンカーボルトの十分な定着を確保し、パンチングシア破壊などを避けるように鉄筋コンクリート部分を設計すべきである。特に鉄骨屋根部分の崩落は大きな災害を引き起こす可能性があるので、慎重な詳細設計と耐力の余裕が必要である。

一―三 その他

(一) 地震時に二次部材や設備機器の落下を防止する設計が必要である。

(二) プレキャストコンクリート板で構成されるような一体性のない屋根板を載せた構造の大空間架構の設計に当たっては、できるだけ分割パネルを相互に緊結して一体性を増すようにするとともに、地震時に、屋根板を支持している鉛直部材の頂部の水平変形が過大にならないように設計する必要がある。

二 既存建築物について

耐震診断及び補強設計に当たっては、以下の諸点に留意することが望ましい。

(一) 新耐震設計法前の既存建築物については、耐震診断を実施し、必要に応じて耐震補強を行う必要がある。

(二) 補強設計においては、耐震性能の低い部位の耐力または靭性を高めるか、新しく耐震要素を取り設けるかを適宜組み合わせて、設計を行う必要がある。

(三) 補強設計における目標は、文教施設としての特殊性を考慮し、原則として構造耐震指標の割増(〇・七以上)を考慮することが望ましい。

(四) 耐震診断による構造耐震指標が特に低い(〇・三以下)場合は、早急に改築または改修を検討する。

二―一 鉄筋コンクリート造建築物について

(一) 大地震後の継続使用を目標にする補強設計では、靭性指標のみならず強度指標の改善も重視する。

(二) 構造物全体の柱の有効内法高さをなるべく一様にする。強度指標がある程度改善される場合でも、靭性に期待する場合は、短柱は補強あるいは長柱化することが望ましい。ただし、雑壁にスリットを設けて長柱化を図る際には、スリットのディテールを十分検討するとともに、柱の靭性の評価に際しては、帯筋等の配筋の調査を行う必要がある。

二―二 鉄骨造建築物について

屋内運動場で屋根構造の定着部分について、その耐力が十分でなく崩落の可能性のあるものについては、大きな災害を引き起こす可能性があるので、定着部分への補強構造の取設けのほか、必要に応じて屋根構造形式の大幅な変更も含む、慎重な補強・改修設計を行う。

二―三 その他

(一) 地震時に二次部材や設備機器の落下を防止するような対策が必要である。

(二) 大空間構造の屋根にプレキャストコンクリート板を使用している建築物では、地震時の屋根材落下の危険性を点検し、必要に応じて落下防止に有効な措置を講じる。

 

 

 

 

-- 登録:平成21年以前 --