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「―スペシャリストへの道―職業教育の活性化方策に関する調査研究会議(最終報告)」について

7初職第一号

平成七年三月八日
各都道府県教育委員会指導事務主管課長、各都道府県私立学校主管課長、附属学校を置く各国立大学長あて
文部省初等中等教育局職業教育課長通知

「―スペシャリストへの道―職業教育の活性化方策に関する調査研究会議(最終報告)」について

このたび、「―スペシャリストへの道―職業教育の活性化方策に関する調査研究会議(最終報告)」が別紙のとおり、とりまとめられましたので、お送りいたします。貴職におかれては、本最終報告の趣旨を踏まえ、職業教育の活性化に積極的に取り組まれるようお願いいたします。

なお、本最終報告における提言のうち、特に「専門高校」への呼称の変更については、文部省としても関係各方面に対し、積極的に理解を求めることとしておりますので、貴職におかれても積極的に対応くださるようお願いいたします。また、「地域連携講座」の開設については、文部省において、その具体的な実施方法を検討し、後日通知することとしています。

おって、貴管下の学校に対し、本最終報告の趣旨等について周知徹底を図るようお願いいたします。

(別紙)

―スペシャリストへの道―

職業教育の活性化方策に関する調査研究会議最終報告における提言のポイント

1 検討の経緯

職業教育の活性化方策に関する調査研究会議(座長 有馬朗人理化学研究所理事長)は、文部省初等中等教育局長の私的な諮問機関として、平成6年4月26日以来、これからの職業教育の役割や具体的な活性化方策について12回にわたり検討を行い、本年3月8日に最終報告を行った。(なお、平成6年7月11日に「中間まとめ」を公表している。)

2 具体的提言

(1) 「職業高校」から「専門高校」へ

職業教育は職業高校だけで行なわれるものではなくすべての人にとって必要な教育であること、また、職業高校においては「将来のスペシャリスト」として必要とされる「専門性」の基礎・基本を重点的に教育し、生徒はここで学んだことを基礎に、卒業後も生涯にわたり職業能力の向上に努めることが重要になってきていることから、本最終報告では、このような考え方の下に、従来の「職業高校」という呼称を「専門高校」と改め、職業教育及び専門高校のこれからの在り方を明確に打ち出した。

(2) 勤労観・職業観の育成

職業教育は、すべての人にとって必要な教育であることから、小学校、中学校、普通高校においても、勤労観・職業観を育成する教育を充実する。

(3) プロを講師として招へい

専門高校及び専攻科において、産業界、大学等から専門家を招へいし、非常勤講師として最新かつ高度な知識・技術を直接教授してもらう機会を拡充する。

(4) 地域連携講座の開設

地域における産業を担う人材を育成し、専門高校と地域との連携を強めるため、企業等外部からの寄付金により運営される「地域連携講座」を開設する。

(5) 学校・地域連絡会議の設置

専門高校の専門分野や就職等に関する情報を交換するための場として、各学校ごとに、学校、PTA、地元産業関係者から構成される「学校・地域連絡会議」を定期的に開催する。

(6) 科目履修生の受け入れ

専門高校に社会人を科目履修生として受け入れ、社会人により多くの学習機会を提供するとともにその学習成果に対し評価を与える。

(7) 大学入試における特別選抜制度の導入

大学入試において、現行の帰国子女特別選抜と同様、大学の判断により特別選抜を行うことができるようにすることにより、専門高校の卒業生が専門高校で学んだ知識・技術を継続して学習できる道を拡充する。

(8) 専修学校との接続

専門高校の卒業者が専修学校等に進学した場合、専門高校で学んだ知識・技術を一層伸ばせるよう、専門高校の教育内容に接続した専修学校等のカリキュラムを開発する。

―スペシャリストへの道―

職業教育の活性化方策に関する調査研究会議最終報告(要約)

1 「職業高校」から「専門高校」へ―21世紀の職業教育を目指して

職業教育の活性化方策に関する調査研究会議(座長 有馬朗人理化学研究所理事長)は、昨年4月の発足以来、これからの職業教育の役割や具体的な活性化方策について、12回にわたり検討を行ってきた。

職業教育をめぐる現状を見ると、社会の著しい変化に伴いこれまで以上にスペシャリスト(高度の専門的な知識・技術を有す人材)が必要とされるようになっているともに、スペシャリストとして求められる知識・技術の高度化や多様化が進んでいる。

このため、職業教育は職業高校だけで行われるものではなくすべての人にとって必要な教育であることを十分認識するとともに、職業高校においては「将来のスペシャリスト」として必要とされる「専門性」の基礎・基本の教育に重点を置き、ここで学んだことを基礎に、卒業後も職場や大学等の教育機関において継続して教育を受けるなど、生涯にわたり専門能力の向上に努めることが重要になってきている。

本最終報告では、このような考え方の下に、従来の「職業高校」という呼称を「専門高校」と改め、職業教育及び専門高校のこれからの在り方を明確に打ち出すとともに、専門高校の活性化方策について具体的な提言を行った。

2 専門高校ををめぐる課題と方策(最終報告のポイント)

課題1 広い意味での職業教育の充実のために

方策

○「職業高校」の呼称→「専門高校」に変更

○進路指導の充実・改善

○勤労観・職業観の育成(小学校、中学校、高等学校を通して)

課題2 急速な社会の変化に対応するために

方策

○高度な施設・設備の整備(高校テクノセンター)

○情報化への対応

課題3 地域社会に開かれたものにするために

方策

○地域連携講座の開設

○学校・地域連絡会議の設置

○科目履修生の受け入れ

課題4 卒業後の多様な進路を確保するために

方策

○専攻科の整備

○推薦入試の拡大

○特別選抜の実施

○専修学校との接続

―スペシャリストへの道―

職業教育の活性化方策に関する調査研究会議(最終報告)

平成7年3月8日

[1 職業教育を充実させるために]

[(1) 21世紀の職業教育を目指して]

[cir1 ] スペシャリストが求められる時代

近年、技術革新、国際化、情報化、少子化、高齢化等により、わが国の社会は大きく変化してきており、それに伴い就業構造の変化や必要とされる専門能力の高度化が進み、高度の専門的な知識・技術を有する人材(スペシャリスト)がこれまで以上に必要とされるようになってきている。

[cir2 ] 高等学校教育の改革

現在、高等学校教育においては、新しい学習指導要領に基づく教育課程の実施や、総合学科の創設に代表されるような個性化・多様化を重視する方向の改革が大規模かつ大胆に進展しており、各高等学校では、特色ある教育が展開されつつある。職業高校は、このような改革の先導的役割を果たすことが期待されている。

[cir3 ] 生涯を通しての職業教育の必要性

今日、社会の変化は目覚ましく、これに対応するためには、職業教育は人生のごく初期におる学校教育だけではなく、高等学校卒業後継続して高等教育等を受けたり、リカレント教育や企業内での訓練・研修等を受けることにより、生涯を通して絶えず新たな知識・技術の習得に努める必要が生じている。

[(2) 「職業高校」から「専門高校」へ]

[cir1 ] 「職業高校」から「専門高校」へ

職業教育は職業高校の生徒だけでなく、すべての人にとって職業生活を送る上で必要なものであり、また、今日の急速な社会の変化に対応するためには、学校教育終了後も生涯にわたり職業能力の向上に努める必要がある。

また、これからの時代、自分の人生を切り開いていくためには、専門能力を身に付け、これをいかに活用することができるかがより重要になってくると考えられる。

このことから、職業高校における職業教育も、現実の産業界から求められる知識・技術の水準を視野に入れながら、スペシャリストとなるための第1段階として、必要とされる専門性の基礎的・基本的な教育に重点を置く必要が高まっている。

したがって、従来の「職業高校」という呼称を、「専門高校」と改めることにより、このような考え方を明確にする必要がある。(以下、この報告書においては、「専門高校」の呼称を用いる。)

[cir2 ] 職業教育の意義

人は、職業を持つことにより生活の糧を得、社会的な役割を果たし、また、自らの個性を発揮することができるのであり、その意味で職業生活に必要な基礎的な知識・技術の習得や、しっかりとした勤労観・職業観の涵養はすべての人に必要なものである。また、急速な社会の変化に伴い、学校教育終了後も生涯にわたり職業生活に必要な知識・技術の向上に努める必要が高まってきている一方で、最近の若者は働くことに対する意識が希薄であるとの指摘もなされている。

したがって、初等中等教育における職業教育は専門高校においてのみなされるべきもの、という従来の認識を改め、職業教育はすべての人にとって不可欠な基礎的・基本的な教育であり、小学校、中学校及び高等学校の普通科、総合学科(P.4141・511(注9)参照)においても、各学校段階の子供の発達段階に応じ、働くことの喜び、楽しさ、苦しさやその意義を学び、職業生活を送るための基礎的な知識・技術の習得を図るとともに、職業教育を生涯を通して適時に行われる教育・学習として捉え直し、一層の充実を図る必要がある。

また、高等学校終了後の職業教育としては、従来は就職後の訓練・研修が主流であったが、最近では急速な社会の変化に伴い、高等教育等を継続して受けたり、大学等の教育機関でリカレント教育を受けたりすることの重要性が高まってきており、専門高校においても、地域社会と連携をとりながら、高等学校専攻科(P.4141・509(注6)参照)等を中心に積極的に社会人の受け入れを行い、適切な学習機会の提供に努める必要がある。

[cir3 ] 専門高校における職業教育

専門高校における職業教育は、これまで有為な職業人の育成などの面で重要な役割を果たしてきており、特に中堅技術者、事務従事者などの養成を中心に我が国の産業経済の発展に大いに寄与している。また、専門高校におる職業教育は、その特性から、生徒の能力・適性等に応じつつ、人間教育的観点からも有効な役割を果たしてきている。

他方、技術革新の進展や職種の多様化等に伴い、スペシャリストとして求められる知識・技術の高度化・多様化が進展しているため、生涯を通して専門能力の向上に努める必要が一層高まっている。

このため、専門高校においては、社会の変化や産業界から求められる知識・技術の水準を視野に入れながら、将来のスペシャリストとして必要とされる専門性の基礎的・基本的な教育に重点を置く必要があると同時に、そこで学ぶ生徒は、自ら学ぶ意欲や社会・経済の変化に主体的に対応できる能力を身に付けて、卒業後も職業生活に必要な知識・技術に関する学習を継続していく必要がある。

さらに、専門高校卒業後、高等学校専攻科や、大学、短期大学、専修学校といった教育機関での学習を希望する生徒に対して、その専門的知識・技術を発展させるため、広く学習継続の道を開くことが重要である。

[(3) 職業教育の活性化方策に関する提言]

このような考え方に基づき、高等学校改革全体を視野に入れながら、この報告書では特に専門高校の活性化方策に焦点を当てて、専門高校の「入学者の問題」「教育内容のあり方」及び「卒業者の進路」の3つの側面から具体的な提言をとりまとめた。

この提言を受けて、文部省、各教育委員会、各学校等において、それぞれの立場から積極的な取り組みがなされるとともに、産業界や学校関係者をはじめ、社会の各方面においても適切な対応がなされることを期待する。

なお、この提言の中で、さらに検討を必要とする問題については、今後別途検討を行っていく必要がある。



[2 専門高校への入学に関して]

[(1) 専門高校への入学者の現状]

専門高校への入学者には、専門高校における教育に魅力を見出し、自分の個性を一層伸ばそうという明確な目的意識を有する生徒もいる反面、不本意感を抱いて入学してきている生徒がいることも否定できない現状である。不本意感が生じる理由は生徒によって様々であろうが、専門高校についての正確な情報がないまま、高校入試の難易度により進学先が決められていることなどが考えられる。

一方、普通科の入学者についても、明確な目的意識や進路意識が形成されないままに進学しているという指摘もある。

[(2) 専門高校の入学者に関し何をすべきか]

[cir1 ] 進路指導の改善・充実と勤労観・職業観の育成

中学校における進路指導は、生徒一人一人の興味・関心、能力・適性、進路希望等を十分考慮してなされなければならない。

生徒が自分で主体的に進路選択を行うことができるように、小学校や中学校の段階から、学校の教育活動全体の中で、発達段階に応じ、しっかりした勤労観・職業観、生き方に対する考え方などを身につけさせることが重要である。

中学校における進路指導の充実方策としては、例えば、企業、工場等の様々な職場を見学させたり、体験学習をさせたり、社会の各分野で活躍する人々の体験談を聞く機会を設けるなど、進路に関する啓発的体験等の一層の充実を図ることが大切である。

このため、現在中学校において実施されている勤労観・職業観の育成に関するモデル事業(注1)を各地域において広く普及させていくことが望まれる。

また、中学生や中学校の教員等に、進路に関する正確で質の高い情報を提供することが重要であり、このため、各高等学校における情報提供の一層の充実に努めるとともに、教育委員会においても進路指導情報ネットワークの整備等に努める必要がある。

さらに、現在進められている高校入試改革については、専門高校の活性化の観点からも生徒一人一人の個性に配慮したものとなるよう、推薦入学の拡大等一層の改革に努めることが重要である。

なお、普通科においても勤労観・職業観を育成することが求められており、職業科目を開設して履修させることや普通科と専門高校間の学校間連携が促進されることが望まれる。また、総合学科の生徒は、「産業社会と人間」(注2)という科目を履修することとされているが、総合学科以外の高等学校においても、勤労観・職業観の育成や明確な進路意識の形成に寄与する「産業社会と人間」と同様の内容を持つ科目を積極的に開設することが期待される。さらに、高等学校において実施されている勤労観・職業観の育成に関するモデル事業を各地域においても広く実施することが重要である。


(注1)勤労観・職業観の育成に関するモデル事業

[cir1 ]中学校進路指導総合改善事業

中学校の進路指導を、業者テストによる偏差値に過度に依存したものから、生徒一人一人の能力・適性、興味・関心、進路の希望等を配慮したものに改めるためには、生徒に高等学校の訪問・見学、体験入学をさせたり、あるいは、様々な職業現場を見学・体験させたり、社会の各分野で活躍する人々を学校へ招へいして体験談等を聞く機会を設けるなど、実体験を通してできるだけ生徒に自ら考えさせるような進路に関する啓発的な経験等の充実を図ることが大切である。

こうした趣旨を活かしたモデル事業として、文部省では地域ぐるみで啓発的な経験等の充実を図る「中学校進路指導総合改善事業」を実施している。これは、中学1年生のうちから計画的に進路意識を育成するよう、3年間にわたって一定地域を指定し、当該地域の中学校、上級学校、PTA、地元企業、社会教育団体、関係行政機関等の連携・協力の下に、勤労や社会奉仕の体験を行うなど進路指導改善のための実践的な研究を行うものである。

[cir2 ]勤労体験学習総合推進事業(LETS)

高等学校における進路指導の改善を図るためのモデル事業として、文部省では勤労体験学習総合推進事業(LETS)を実施している。これは、高等学校の普通科の生徒を主たる対象として、働くことや社会に奉仕することの喜びを体験させることを通じて、将来の生き方や職業選択を視野に入れた進路の自覚を高めることを目的とするものであり、実施校を中心として、一定地域のPTA、地元企業等が連携・協力を図り、職場見学・実習、奉仕活動等を実施している。

(注2)「産業社会と人間」

「職業と生活」「我が国の産業の発展と社会の変化」「進路と自己実現」などに関して学習し、様々な体験学習や討論などを通して、自己の在り方や生き方について認識を深め、将来の職業選択や職業生活に必要な能力・態度を育成する科目である。自己の進路に対する自覚を深めるという総合学科の特色が表れた科目であり、総合学科における教育についてのオリエンテーション的な性格を持つため、1年次に学ぶこととされている。この科目の学習を通して、今後履修する科目の選択や将来の進路を考えることができる。平成6年度に設置された各総合学科においては、ティームティーチングの導入や社会人講師による講義、職場見学、生き方についての討論などが行われている。

[cir2 ] 専門高校に関する正しい理解を

専門高校が持つ魅力についての正しい理解を得るために、様々な方法や各種の情報メディアで広く社会全体にアピールすることを考えなければならない。

専門高校からの情報発信方策としては、中学生やその保護者等に対して、専門高校における体験入学、見学、講習等を実施したり、専門高校を紹介したビデオを活用したり、産業教育フェアをはじめとした各種のイベントを開催したりすることも効果的であると考えられる。

一方、専門高校の卒業生を受け入れる企業に対しては、専門高校における教育に関する情報を発信したり、企業側の様々な情報を専門高校において受信することができるよう、学校と企業とのネットワーク作りを進めることも大切である。

[3 専門高校における教育内容に関して]

[(1) 専門高校に対する様々な期待と課題]

専門高校に対しては、産業社会の進展に対応した最新の知識・技術を身に付け、我が国の産業社会を支える人材を養成することに関し、各界から大きな期待が寄せられている。また、近年、伝統工芸に関する分野の人材を養成する役割を果たすことや、企業・工場等の現場での学習機会を拡充することなどが求められている。さらに、自分の興味・関心等に基づき学習を進め、学校内外の多様な活動を通し、自分なりの生き方を探し自己実現を図りたいという生徒側の希望もある。専門高校においては、このような時代のニーズや生徒の興味・関心等に適切に対応した教育を展開することが望まれる。

また、生徒の興味・関心等に応じて多様な科目を開設し、弾力的な教育課程を編成することが求められているが、一方、同時に教育内容の系統性や総合性といったことにも配慮することが重要であり、そのバランスをいかにとるかが課題である。

なお、今後、生涯を通しての職業教育の必要性や国際化の進展という観点から、専門高校で学ぶ者としては、中学校卒業者に限らず、最新の知識・技術を習得を目的とした社会人、「ものづくり」をとおして人生を豊かにしたいと希望する人々、我が国において産業に関する基礎的な知識・技術を身につけることを希望する留学生などが増加すると考えられ、これらの要望に対応することも必要となってこよう。

[(2) 専門高校の教育をいかに魅力あるものとするか]

[cir1 ] 教育内容の基本的な視点と学科改編の促進

専門高校の活性化を図るに当たっては、現在進められている高等学校教育改革全体の流れの中で捉えることが大切である。

独創性を有するスペシャリストを育てる第一歩として、専門高校では、基礎的・基本的な教養や知識・技術を着実に学習させることや、実際的・体験的かつ課題解決型の学習を行う中で、個性に応じた柔軟な教育を行うことが大切である。

また、生徒の多様な興味・関心等に応えるため、多様な職業科目の開設、普通科を含めた他の高等学校や専修学校との連携、技能審査の活用などが効果的である。

さらに、産業社会の動向や、地域と生徒の実態を踏まえた学科の改編を進めるとことも必要なことである。

[cir2 ] 教員に産業界、大学での研修機会を/学校外の優れた人材を講師として招へい

専門高校において充実した教育を行うためには、教員採用に関して様々な工夫を行い、多様で意欲のある優秀な教員を確保しなければならない。

また、社会の変化に適切に対応した高いレベルの教育を行うことができるよう、常に指導力の向上に努めることが重要である。

このため、職業教育担当教員に対して、定期的・長期的に産業界や大学等における研修の機会を提供することが有効である。

さらに、特別非常勤講師制度(注3)をより一層活用し、産業界等において活躍している方々から直接最新の知識・技術等を教授してもらう機会を増やすことも重要である他、教員採用において、専門分野に関し企業等での実務経験を有する者も採用対象に加える等の工夫も考えられる。

特に、専攻科等における専門的な学習分野においては、積極的に産業界、大学等の人材を活用するといった、柔軟な教育システムが期待される。


(注3)特別非常勤講師制度

小学校、中学校、高等学校、盲・聾・養護学校及び幼稚園の教員は、原則として教育職員免許法により授与される免許状を有していなければならないが、英会話、調理実習、器楽指導、情報等の教科の領域の一部やクラブ活動を担任する非常勤講師については、特例として、各種分野において優れた知識・技術を有する社会人であれば、都道府県教育委員会の許可のもとに免許状を有することなく非常勤講師として採用できることとされている。平成5年度は、高等学校を中心に約1,800人の社会人がこの制度により活用されている。

[cir3 ] 先端的な施設・設備の整備

急速な技術革新等に対応した教育を行うため、専門高校においては、先端的で高度な機器を整備することが求められている。特に、すべての高等学校において整備することが困難である先端的で高度な情報機器、先端技術装置等については、「産業教育共同利用施設(いわゆる高校テクノセンター)」(注4)を整備することにより対応することが有効である。また、一つの専門高校に重点的に整備されている機器を他の専門高校の生徒も活用できるようにすることにより、学校の特色を打ち出すことができる。このため、国においては、整備に必要な支援措置を積極的に講ずることが必要である。


(注4)産業教育共同利用施設(高校テクノセンター)

近年の産業界における急速な技術革新等に対応した教育を行うことを目的とした、先端的で高度な情報機器や先端技術装置等を完備した学習施設。具体的には、総合生産システム、バイオ生産システム、コンピュータ支援ビジネスシステムなどの各高等学校単独では整備が難しい大型の最新設備を備えた施設であり、専門学科、総合学科の生徒や教職員は、ここで実験・実習や研修を行うことにより、先端の知識・技術を学ぶことができる。

[cir4 ] 高度情報化への対応

コンピュータやAV機器の普及及び光ファイバー網の整備等により、我が国は高度情報通信社会へ急速に移行しつつあり、職業教育においても適切に対応することが不可欠となっている。専門高校ではすべての専門分野において、すべての生徒が情報に関する基礎的な科目を履修することとなっているが、今後、ますます進展する情報化に対応するためには、一層充実した教育を行うことが必要となっている。

このため、中長期的な研究とともに、現在の職業教育分野において情報メディアについての利用方法の開発研究が重要である。

また、専門高校における教育においては、映像メディア及び伝送システムを活用した教育を行うことが有効な分野もあるので、今後、施設・設備の整備の際にコンピュータシステム、AV機器等を充実していくことも必要である。

[cir5 ] 地域との連携の強化及び社会人に対する学習機会の提供

○地域との連携の強化

専門高校における教育に対する地域の期待は大きいものがあると考えられ、これからの専門高校においては、こうした期待に応えるためにも、地域社会を担う人材を育成し、地域との結び付きをこれまで以上に強めていく必要がある。生徒が最先端の知識・技術に触れられる機会を一層提供し、生徒の科目選択の幅を広げるためにも、企業等外部からの寄付金により運営される「地域連携講座」を開設することについて検討する必要がある。

また、専門高校と産業界との間で、専門分野や就職等に関する情報を交換するための場として、各学校ごとに、学校、PTA、地元産業界関係者から構成される「学校・地域連絡会議」を定期的に開催することが望まれる。

○社会人に対する学習機会の提供

生涯学習の振興を図る上で、学校教育の充実・向上を図ることに加え、学校の機能を地域社会に開放することが期待されている。専門高校においてもこのような期待に積極的に応え、現在活躍している専門高校の卒業生等の人々に学習機会を提供していく必要がある。したがって、現在、専門高校の教員や施設・設備を活用して実施されている公開講座を積極的に開催することが望まれる。また、社会人により多くの学習機会を提供し、その学習成果に対し評価を与えるため、専門高校において、開設されている授業科目の一部を履修することができる科目履修生として社会人を受け入れることを検討する必要がある。このことは、専門高校の魅力を広く伝えるという面からも意味のあることである。

[4 専門高校の卒業者の進路に関して]

[(1) 専門高校の卒業者に関し何が問題なのか]

現在、専門高校の卒業者の約3分の2は企業等へ就職しているが、専門高校で知識・技術をしっかり学んだ者が社会に出て大いに活躍できる機会の提供、処遇等で十分配慮される仕組みの確立が必要である。さらに、技術を有する者が尊敬される社会的風潮の醸成を図ることが、今特に求められている。

また、産業の高度化に伴い、専門高校で習得した技術をさらに高度化させたいという者のためには、継続して学習できる場を用意する必要がある。

[(2) 専門高校卒業者の進路に関し何をなすべきか]

[cir1 ] しっかりした専門能力を身に付けるために

○技能・技術検定の活用

専門高校において、目的意識を持った意欲的な学習活動を促すため、職業資格に関連した科目の開設や技能審査の成果の単位認定制度(注5)の活用を図るとともに、新しい技能・技術検定の創設、文部大臣認定制度の活用及び他の検定の実施機関との連携・協力などを積極的に進めることが重要である。


(注5)技能審査の成果の単位認定制度

生徒の学習意欲を高め、主体的、創造的な学習態度の育成を図るとともに、優れた能力を一層伸ばす観点から、生徒が高等学校教育に相当する水準を有すると認められた技能審査に合格したときは、相当する教科・科目の増加単位として単位認定することができる制度であり、平成3年4月の中央教育審議会答申及び「高等学校教育の改革の推進に関する会議」における検討を経て、平成5年4月から制度化された。

種々の技能審査のうち具体的には、とりわけ高等学校における教育との関連が深いと考えられるものは、

[cir1 ] 電気主任技術者、自動車整備士等の公的な職業資格付与のための試験、

[cir2 ] 日本英語検定協会等の団体において実施する文部大臣認定の技能審査、

[cir3 ] 全国商業高等学校協会、全国工業高等学校長協会、日本学校農業クラブ連盟、全国高等学校家庭科教育振興会等において実施する技術検定、

[cir4 ] 都道府県教育委員会の委託を受けた都道府県産業教育振興会等が実施する技術検定等

があげられる。

○高等学校専攻科の充実

産業社会の高度化に伴い、一層高度な技術を習得する場として、現在、看護や水産の分野を中心に高等学校専攻科(注6)が設置されているが、優れた技術を習得した人材を育成するために、これら以外の幅広い分野における多様な高等学校専攻科の設置を図ることが求められている。

高等学校専攻科においては、最新で高度な知識・技術を教えることができるようにするため、特別非常勤講師制度等を積極的に活用し、産業界、大学等から専門家を招へいすることも大いに考慮されるべきである。

また、高等学校専攻科は、職業生活に必要な知識や技術を学びたいと希望する社会人に対しても、積極的に学習機会を提供していくことが望まれる。

国においては、施設設備の充実や教員定数の改善等、専攻科に対する支援を積極的に検討する必要がある。


(注6)高等学校専攻科

高等学校専攻科は、高等学校を卒業した者(これと同等以上の学力を有する者を含む。)に対して、さらに詳しく、かつ深く特別の事項を教授し、その研究を指導することを目的としており、その修業年限は1年以上であることとされている。

平成6年5月現在、専攻科は114校に設置され、約6,900人の生徒が学んでいる。修業年限は通常1年から2年であり、教育内容としては、本科3年間の教育を基礎として、より専門的な教育が行われている。これから専攻科が設けられる分野としては、上級の職業資格取得を目指す分野、地域振興のために伝統工芸等の地場産業の後継者育成を目指す分野、社会人のリカレント教育を行うことを目指す分野などが考えられる。

○専修学校等との接続

専門学校の卒業生のうち、約2割が専修学校(注7)等に進学しているが、こうした者が専修学校等の学習において、専門学校で身に付けた知識・技術を一層伸ばすために、例えば、専修学校等のカリキュラムにおいて専門高校の教育内容に接続したカリキュラムを開発することなどが考えられる。また、専修学校等の関係者と専門高校の関係者との情報交換会を開催するなど、専修学校等との連携を図る必要がある。


(注7)専修学校

専修学校は、生涯学習社会の進展の中で人々の多様な学習ニーズに応え、職業や実際生活に必要な能力の育成や教養の向上を図ることを目的としており、昭和51年に発足した。専修学校には、入学資格に応じ、専門課程、高等課程、一般課程という3つの課程区分が設けられている。この中でも特に、高等学校卒業予定者程度を入学資格としている専門課程(いわゆる「専門学校」。現在約2,800校程度。学生約68万人。)との接続について、カリキュラム開発等一層の連携を図ることが望まれる。

[cir2 ] 専門高校の卒業者が大学に進むために

専門高校での学習を踏まえ、さらに大学等で学習を続けることを希望する者で、かつ、大学等において学習する能力・適性がある者に対して、大学等へ進学する道を広く開くことが大切である。

このため、専門高校卒業後その専門分野に関しさらに大学等において学習を希望する生徒に対しては、大学入試等において、専門高校卒業者に対する推薦入学の拡大、帰国子女特別選抜等と同趣旨の専門高校の卒業生のための特別選抜(注8)の導入、専門高校において取得した資格の重視、入試で職業科目の出題などの配慮・工夫が求めらる。

さらに、個々の学生の個性やニーズに対応したきめ細かな教育を行うため、大学等においてカリキュラムを工夫し、補習教育を行うなど入学者に対する配慮が求められる。

国においては、このような大学等における専門高校卒業生に対する取り組みを促進するため、積極的に支援措置を講ずるべきである。

また、生涯学習の観点から、専門高校卒業者に限らず、いったん企業等に就職して実務経験を積んだ後、大学において専門分野をさらに学びたいと希望する者について、社会人特別選抜等により、大学教育を受けられる機会を拡充する必要がある。

なお、総合学科(注9)の卒業者についても、専門高校の卒業者と同様の配慮が望まれる。

加えて、専門高校で学んだ生徒は、専門高校における実験・実習により専門分野に関して体験的なトレーニングを受けており、また、それぞれの専門分野に対する強い目的意識を有している。このような専門高校卒業者が引き続き大学等で学習を続けられことは、現在問題となっている理工系の人材確保の観点からも意味のあることと考えられる。


(注8)帰国子女特別選抜等と同趣旨の専門高校の卒業生のための特別選抜

大学入学者選抜における特別の選抜方法として、現在、推薦入学のほか、帰国子女特別選抜及び社会人特別選抜等がある。

帰国子女特別選抜は、帰国子女が外国において異なる教育を受けてきたことや、日本語の能力が十分でないことなどから、また、社会人特別選抜は、社会人が高等学校卒業後日時が経過していることなどから、それぞれ広く本人の能力・適性に応じた選抜がなされるよう、一般の入学志願者とは異なる特別な方法(学力検査の免除又は負担の軽減、面接、小論文、その他大学が適当と認める資料の組み合せ)により入学者選抜を行うものである。

今後、専門高校におけるカリキュラムの特性等にかんがみ、専門高校卒業後その専門分野に関しさらに大学等において学習を希望する生徒のために、一般の入学志願者とは異なる選抜方法を導入することが望まれる。

(注9)総合学科

昭和23年の新制高等学校発足後、高等学校教育は長年、普通教育を主とする学科及び専門教育を主とする学科(その中で職業教育を主とする学科が職業学科)という2種類の学科の下で行われてきたが、高校教育改革を強力に推進していくための枠組みとして、平成6年度から第三の新たな学科として「普通教育及び専門教育を選択履修を旨として総合的に施す学科」、すなわち「総合学科」が創設された。

総合学科の特色としては、普通科目と専門科目双方にわたって主体的に履修科目が選択できるようになっていること、将来の職業選択を視野に入れた自己の進路への自覚を深める学習を重視していること、普通科目と専門科目の履修により実社会で役立つ生きた力が身に付けられること等があげられる。

職業教育の活性化方策に関する調査研究会議委員

荒井桂 埼玉県教育委員会教育長

◎有馬朗人 理化学研究所理事長

石崎昭二 静岡県立焼津水産高等学校長

江上節子 産能短期大学オープンカレッジ校長

佐藤仁作 会津杏林学園高等学校長

清水希益 東京都立芝商業高等学校長

鈴木敏恵 建築家、横浜建築研究所教育システム部長

西�清久 国立教育会館館長

野中進 東京都立園芸高等学校長

野原明 文化女子大学教授、NHK(部外)解説委員

フランソワーズモレシャン 共立女子大学客員教授

星野良雄 東京都立町田高等学校長

堀浩 北海道大学大学院地球環境科学研究科長

堀篭登喜雄 トヨタ自動車株式会社顧問

(豊田合成株式会社取締役副社長)

諸井虔 秩父小野田株式会社代表取締役会長

渡邉光男 東京都立小石川工業高等学校長

(◎・・・座長)

-- 登録:平成21年以前 --