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生涯学習の基盤整備について

中央教育審議会答申

平成二年一月三〇日
 

生涯学習の基盤整備について

はじめに

一 中央教育審議会は、平成元年四月二四日、文部大臣から「新しい時代に対応する教育の諸制度の改革について」諮問を受けた。同年六月、後期中等教育の改革とこれに関連する高等教育の課題を検討する「学校制度に関する小委員会」及び生涯学習の基盤整備について検討する「生涯学習に関する小委員会」を設置し、審議を進めてきた。

本審議会は、「生涯学習に関する小委員会」を中心として、文部大臣の諮問において審議事項として示された生涯学習の基盤整備に関する次の事項について審議を行った。

[cir1 ] 生涯学習の総合的な振興を図るため、生涯学習の推進体制、学習情報の提供、生涯学習に関する専門家の資格、生涯学習活動重点地域等について法的整備を行うとともに、民間教育事業の支援の在り方を検討する。

[cir2 ] 地域の生涯学習の中心機関となる「生涯学習センター」(仮称)を設置し、自ら主催講座等の事業を行うとともに、放送大学の学習センターとなるなど各種の学習・教育機関との連携を図る方途を講ずる。

[cir3 ] 「生涯学習センター」(仮称)の機能として、このセンターやその他の教育訓練機関の学習の成果を適切に評価し、学校教育の単位として転換する仕組み及びこれらを各種公的資格の基礎とするための方途について検討する。

[cir4 ] 短期大学については、その果たす役割、社会的・地域的ニーズの変化等を踏まえ、生涯学習の基盤整備についての諸施策との関連で、「生涯学習センター」(仮称)の開設の奨励など、生涯学習機関としての在り方について検討する。

なお、諮問において後期中等教育の改革とこれに関連する高等教育の課題に関して示された前記[cir4 ]の審議事項については、「生涯学習センター」(仮称)の開設を奨励することについて審議を行った。

二 「生涯学習に関する小委員会」は、平成元年一〇月三一日、「生涯学習に関する小委員会審議経過報告」をとりまとめ、総会の了承を経て公表した。

本審議会は、この審議経過報告に関する関係団体の意見等を勘案して慎重に審議を重ね、ここに答申としてとりまとめた。

三 今回の答申をとりまとめるに当たっては、生涯学習は人々が自発的意思に基づいて行うことを基本とするものであり、生涯学習の基盤を整備することが当面する重要な課題であるとの基本的認識に立ち、人々の生涯学習を支援するための施策を中心に検討した。

なお、前記[cir3 ]の審議事項のうち、学習成果の評価認定の仕組みや学校教育の単位として転換する仕組み等については、幅広い観点から今後更に審議を続けることとしている。

四 もとより、生涯学習を全体として振興していくためには、本答申で提言する施策を推進するとともに、学校教育、社会教育をはじめとするあらゆる学習機会を相互の関連性を考慮しつつ総合的に整備充実していくことが必要である。

行政当局においては、今後の我が国における生涯学習の重要性にかんがみ、この答申で示した諸施策を速やかに実施するよう要望する。

第一 生涯学習の基盤整備の必要性

一 近年、社会の各分野において生涯学習への関心が高まり、学校、地域、職場等において、個人やグループが様々な機会や手段・方法を利用して多種多様な学習活動を行っている。

このように生涯学習が盛んに行われている社会的背景としては、所得水準の向上、自由時間の増大、高齢化の進行等に伴い、学習自体に生きがいを見いだすなど人々の学習意欲が高まっていることに加え、科学技術の高度化や情報化・国際化の進展により、絶えず新たな知識・技術を習得する必要が生じていることが挙げられよう。特に今後は、産業構造や就業構造の急激な変化、さらには、本格的な高齢化社会の到来を背景に、人々の学習需要は一層高度かつ多様なものとなるであろう。

また、我が国においては、学校教育への過度の依存に伴う学歴偏重の弊害が生じており、今後はこれを是正して、人々が生涯にわたって学習し、それを正当に評価する社会を築いていくことが重要と考えられる。

生涯学習については、第一二期中央教育審議会が、昭和五六年に「生涯教育について」答申を行っている。この答申においては、人々は、自己の充実・啓発や生活の向上のため、適切かつ豊かな学習の機会を求めており、これらの学習は、各人がその自発的意思に基づいて行うことを基本とし、必要に応じ自己に適した手段・方法を自ら選んで生涯を通じて行うものであり、生涯学習と呼ぶのがふさわしいとしている。

そして、この生涯学習のために、自ら学習する意欲と能力を養い、社会の様々な教育機能を相互の関連性を考慮しつつ総合的に整備充実しようとするのが生涯教育の考え方であるとしている。言い換えれば、生涯教育とは、国民の一人一人が充実した人生を送ることを目指して生涯にわたって行う学習を助けるために、教育制度全体がその上に打ち立てられるべき基本的な理念であるとしている。

この答申では、以上のような考え方に立って、乳幼児期から高齢期に至る生涯教育に関する課題及び基本的な施策の方向を示している。

また、昭和五九年から六二年まで設置された臨時教育審議会は、その答申において、我が国が今後、時代の変化に主体的に対応し、豊かで活力のある社会を築くためには、学歴社会の弊害を是正するとともに生涯学習体系への移行を図っていくことが大切であるとした。

そして、どこで学んでも、いつ学んでも、その成果が適切に評価され、多元的に人間が評価されるよう、人々の意識を社会的に形成していく必要があると指摘している。その上で、人生の各段階の要請にこたえ、新たな観点から、家庭、学校、地域などの各分野の広範な教育・学習の体制や機会を総合的に整備する必要があると提言した。

二 これらの答申の趣旨に基づき、学校教育、社会教育などの分野において、生涯学習を振興する観点から各種の施策が進められており、様々な学習の機会が提供されている。

これらの中で最も組織的・体系的に学習の機会を提供しているものは学校である。生涯学習における学校の役割としては、次の二つのことが重要である。

第一は、人々の生涯学習の基礎を培うことである。このことはとりわけ小学校、中学校や幼稚園の段階で重要である。

生涯学習の基礎を培うためには、基礎的・基本的な内容に精選するとともに自ら学ぶ意欲と態度を養うことが肝要である。平成元年三月に行われた学習指導要領の改訂においても、これらの観点が特に重視されている。

第二は、地域の人々に対して様々な学習機会を提供することである。このことはとりわけ大学・短期大学、高等専門学校、高等学校や専修学校(以下、「大学・短大等」という。)に対して要請されている。

このような要請に応じて今日では、社会人を受け入れたり各種の公開講座を開催するとともに、図書館や体育館・運動場等の施設を地域の人々の利用に供する動きが広まりつつある。

また、放送大学は現在、その対象地域が関東地域に限られているが、広く社会に開かれた大学としてその全国化への期待が高まっている。

次に、教育委員会や社会教育施設等が提供している様々な教育・スポーツ・文化活動の機会がある。

特に公民館や図書館、博物館等では、地域における人々の学習需要に応じて、多様な学習の機会が提供されている。今日では、その学習需要の高度化・多様化に対応して、学習の目的も知識・技術の習得を求めるものから趣味や生きがいにかかわるものまで、また、その内容も専門的なものから日常的なものまで極めて幅広いものとなっている。このほか社会通信教育による学習や社会教育関係団体の活動など様々な学習活動も行われている。

社会教育は、これまでも地域の諸課題に応じて大きな役割を果たしてきており、その重要性は一層高まっている。今後は特に、青少年の学校外活動・地域活動、女性の社会参加の増大に伴い必要となる学習活動、さらには高齢者の充実した生活設計をささえる学習活動を促進することが重要である。

さらに、今日では、種々の行政機関や民間の教育事業者も様々な学習の機会を提供している。

都道府県では、母子の健康や高齢者の生活に関する講座、勤労青少年や働く女性のための講座など、それぞれの行政目的に応じた様々な講座を開催している。また、民間教育事業者による教育・スポーツ・文化事業も都市部を中心に盛んになっている。例えば、カルチャーセンターは、民間の創意工夫により、人々の学習需要に柔軟に対応した学習機会を提供している。

これらのほか、公共職業訓練所等では、職業人としての能力開発が組織的に行われている。さらに、各企業等でも、様々な形で教育・訓練を行っており、従業員が大学・短大等に再入学することを奨励したり、有給教育・訓練休暇を認めているところも増加している。

このように、今日の我が国においては、学校、地域、職場等を通じて多種多様な学習機会が提供されており、今後ともそれぞれの学習機会をより充実し、人々の学習活動をより活発にしていくことが必要である。

三 以上のような生涯学習の考え方及び現状を踏まえると、今後生涯学習を推進するに当たり特に次の点に留意する必要があろう。

[cir1 ] 生涯学習は、生活の向上、職業上の能力の向上や、自己の充実を目指し、各人が自発的意思に基づいて行うことを基本とするものであること。

[cir2 ] 生涯学習は、必要に応じ、可能なかぎり自己に適した手段及び方法を自ら選びながら生涯を通じて行うものであること。

[cir3 ] 生涯学習は、学校や社会の中で意図的、組織的な学習活動として行われるだけでなく、人々のスポーツ活動、文化活動、趣味、レクリエーション活動、ボランティア活動などの中でも行われるものであること。

生涯学習を振興するに際して国や地方公共団体に期待される役割は、人々の学習が円滑に行われるよう、生涯学習の基盤を整備して人々の生涯学習を支援していくことである。

このような観点から今日の状況をみると、次のような課題を指摘することができよう。

まず第一は、学習者が自ら適切な学習機会を選択し、自主的に学習を進めることができるよう、学習情報を提供することや学習者のための相談体制を整備することである。

生涯学習は、前述のように、学習者の自発性、自主性に基づいて行われることが基本である。学習の目的や課題は様々であり、各人が最も適した学習機会や方法を自ら選択していくことになる。しかし、現状では、生涯学習に関する情報を提供したり、これらの情報に基づいて学習者の相談に応じる体制は、必ずしも十分に整備されていない。

今後は、これらの学習情報の提供や学習相談の体制を整備することが必要であり、その際、地域の生涯学習施設相互の間を最新の情報通信手段で結んで、生涯学習に関する情報のネットワークを構築することが重要である。

また、情報の収集・提供や学習相談など、生涯学習に関して十分な知識経験を有する専門的職員の役割が大きい。さらに、充実した学習機会を提供するためには、優れた指導者・助言者を確保することが必要である。その際、地域において生涯学習に関し知識経験を有する者を広く求めることも重要であろう。

第二は、潜在的な学習需要を持つ人々に対しても適切な配慮を行い、併せて学習意欲を高めるための啓発活動や学習の成果の評価を行うなど、生涯学習を奨励することである。

今日では、多くの人々が様々な学習を行っている一方、学習意欲はありながら様々な要因により、学習の機会に恵まれていない者も多い。これらの人々に対しては、学習しやすい環境を整備することが重要であり、教育・スポーツ・文化等のための施設を身近に整備したり、利用時間帯の柔軟化を図るなど学習者の立場に立った利用しやすい施設の運営に配慮することが必要である。

特に今後は、産業構造や就業構造などの急激な変化に対応して勤労者の生涯学習の必要性が高まっていることから、その職業能力開発や多様な学習を促進することが重要な課題となると考えられる。このため、各企業等における教育・訓練を充実することや労働時間の短縮、有給教育・訓練休暇制度の普及などにより勤労者が学習活動に参加しやすい諸条件を整備することが望まれる。

さらに、積極的に学び、自己の向上を図ろうとする人々の意欲を高めるためには、学習グループの育成や生涯学習の啓発に関する各種の事業を通じて地域の学習環境の整備を図るほか、学習成果を評価して学習を奨励する方策についても検討すべきであろう。

第三は、人々の学習需要に対応した学習機会を確保するため、生涯学習施設相互の連携を図ることである。

今日では、生涯学習に関する多様な機会は、教育・スポーツ・文化施設、職業訓練施設等様々な施設により提供されているが、これまでのところ相互の連携・協力について十分に考慮されているとはいえない。

人々の学習需要に対応するためには、それぞれの地域において人々がどのような学習機会を求めているかを把握するとともに、必要な場合には新たな学習プログラムの研究開発を行い、関係学習施設の相互の連携の下に、学習者に利用しやすい形で学習機会を提供していくことが必要である。

特に、民間の教育事業については、人々の多様な学習需要に柔軟に対応して、生涯学習の進展のため果たす役割が期待されている。

また、地域における学習需要の高度化に対応して、大学・短大等の果たす役割も一層重要になると考えられる。

第四は、以上の課題を踏まえて、生涯学習を総合的に推進するため、関係行政機関等の各種の施策に関し、連絡調整を図る体制を整備することである。

生涯学習に関しては、国、地方の段階で種々の行政機関等が様々な施策を展開している。今後、前記の諸課題を踏まえ、生涯学習を総合的に推進していくためには、これらの関係行政機関等において、国、地方の間の連携・協力にも十分留意しながら、それぞれの施策について連絡調整を図ることが望ましい。このための組織を国や地方の段階で整備していくことが必要である。

第二 生涯学習の基盤整備のための施策

前記第一の考え方に基づき、審議事項に沿って、生涯学習の基盤整備のための施策として、国・都道府県・市町村における生涯学習の推進体制、地域の生涯学習の中心機関、生涯学習活動重点地域、民間教育事業の支援の在り方について検討を行った。

一 生涯学習の推進体制について

今日、国・都道府県・市町村の行政機関等では、それぞれの行政目的に従って、教育・スポーツ・文化、健康、職業能力開発等の学習機会を提供したり、学習の場を整備するなどの施策を行っている。

今後、人々の高度化・多様化する学習需要に対応し、生涯学習を総合的に推進していくためには、それぞれの施策を充実するとともに、相互の連携・協力を図ることが重要である。

このため、国・都道府県・市町村において、生涯学習の各種施策の連絡調整を図る組織を整備することが必要と考えられる。

(一) 国における連絡調整組織

国においては、教育・スポーツ・文化等に関する生涯学習の推進のための重要事項や文部省と関係省庁の諸施策に関し連絡調整を要するものなどについて調査審議を行う組織の設置について検討する必要がある。

この組織は、教育・スポーツ・文化等の学識経験者等で構成し、運営に当たっては、地方公共団体等の意見も反映されるように留意する必要がある。

(二) 都道府県及び市町村における連絡調整組織

都道府県においては、現在、そのすべてに、生涯学習推進のために連絡調整を行う組織が設置されている。今後は、これらに対して制度上の位置付けを与える必要があると考えられる。

また、市町村においても、一部では連絡調整のための組織が設置されているが、これらの組織についても、制度上の位置付けを与える必要があると考えられる。

二 地域における生涯学習推進の中心機関等について

諮問で示された地域における生涯学習の中心機関となる「生涯学習センター」(仮称)については、都道府県の設置する「生涯学習推進センター」と大学・短大等の生涯学習センターとに分けて検討を行った。

(一) 「生涯学習推進センター」について

[cir1 ] 地域における生涯学習をより一層推進していくためには、学習機会を提供するだけでなく、人々が学習機会を選択したり、自主的な学習活動を進めることについて援助を行うことも大切である。今後は特に、生涯学習に関する情報を提供したり、各種の生涯学習施設相互の連携を促進し、人々の生涯学習を支援する体制を整備していくことが重要である。このため、それぞれの地域の生涯学習を推進するための中心機関となる「生涯学習推進センター」(以下、「推進センター」という。)を設置することが必要と考えられる。

この「推進センター」は、その果たすべき機能や人々の学習活動圏の広がりにかんがみ、都道府県が設置し、次に掲げる事業を集中して行うことが適当である。

なお、現在でも、これらの事業の一部を行う機関を設置している都道府県もあり、これらについては、その機能を一層充実することにより、「推進センター」として整備を図っていくことが望まれる。


(1) 生涯学習情報の提供及び学習相談体制の整備充実に関すること

(2) 学習需要の把握及び学習プログラムの研究・企画に関すること

(3) 関係機関との連携・協力及び事業の委託に関すること

(4) 生涯学習のための指導者・助言者の養成・研修に関すること

(5) 生涯学習の成果に対する評価に関すること

(6) 地域の実情に応じて、必要な講座等を主催すること

なお、放送大学との連携・協力を行うこと

(1) 生涯学習情報の提供及び学習相談体制の整備充実に関すること

人々が最も適した学習機会を選択することができるようにするためには、地域における種々の学習情報を迅速に入手することができ、また、学習相談を手軽に利用できるような条件整備が重要である。

このため、「推進センター」と各市町村や生涯学習施設との間をコンピュータ等の情報通信手段で結ぶネットワークを構築することにより、都道府県内の学習機会やその内容、利用方法などに関する情報を公民館、図書館等の身近な施設で提供できるようにする。このようなシステムを活用することにより、これらの施設における学習相談活動の一層の充実を図る。

また、各都道府県の「推進センター」相互間における連携・協力を進め、生涯学習情報の交換の範囲を広げるようにする。これにより、提供できる情報量を豊富にするとともに、各地における優れた実践例を参考にして、よりよい学習機会の提供を行うなどの効果が期待できる。

なお、これらの生涯学習情報システムが全都道府県において整備される見通しが得られる段階では、全国的なネットワークとして機能するための中心的組織を整備することについて検討する必要がある。

(2) 学習需要の把握及び学習プログラムの研究・企画に関すること

実態調査や学習相談活動などにより、人々の学習需要を的確に把握し、これに対応した学習機会を提供する。また、新たな学習プログラムの研究開発を進める。

(3) 関係機関との連携・協力及び事業の委託に関すること

地域の学習機会を整備充実するため、大学・短大等、社会教育施設、スポーツ・文化施設、教育訓練施設、あるいは民間教育施設との連携・協力を図る。必要に応じて、これらの施設等の自主性を尊重しつつ、講座の開設を委託する。

(4) 生涯学習のための指導者・助言者の養成・研修に関すること

生涯学習を推進するためには、多様な学習活動について指導・助言を行う者の役割が重要である。

人々の生涯学習を支援し、様々な分野において指導・助言を行う人材の確保や資質の向上を図るため、ボランティアを含め生涯学習に関する指導者・助言者の養成や研修を行う。

(5) 生涯学習の成果に対する評価に関すること

人々の学習活動を奨励するためには、学習成果を客観的かつ多元的に評価認定することが有益であると考えられる。しかし、評価認定の仕組みについては、どのような範囲を評価の対象とするか、評価の水準はどの程度のものとするかなどの課題があり、今後引き続き検討することとする。

差し当たり、地域の実情に応じて、都道府県が行うボランティアや社会教育指導員などの養成・研修事業における学習の成果を評価認定し、各種機関が行うボランティアの登録の参考となるようにするとともに、市町村が社会教育指導員を採用する際に活用できるようにする。

このほか、地域の特色ある事業に関して行われる人材養成等についても、同様の取扱いをすることが考えられる。

(6) 地域の実情に応じて、必要な講座等を主催すること

それぞれの地域の実情に応じて、既存の機関では十分に提供されていない学習機会を充実するため、例えば、近年、学習需要が高まっている体系的・継続的な講座を主催したり、学習プログラムの研究開発に関連して先導的に講座を開設するなど、「推進センター」自体が、学習機会を提供する機能を併せ持つことも考えられる。

なお、放送大学は人々の生涯学習活動に大きな役割を果たすものであり、その実績等を評価しながら全国化することが望まれる。その場合、「推進センター」を放送大学の学習センターの場として活用するなど、放送大学と「推進センター」との連携・協力を行うことも期待される。

[cir2 ] 「推進センター」がその機能を十分に果たしていくためには、生涯学習に関して幅広い知識経験を有する専門的職員を配置する必要がある。

「推進センター」には、学習情報の収集・整理・提供、学習相談、学習プログラムの研究・企画、指導者研修などについて十分な知識経験を有する専門的職員が不可欠であり、このような資質能力を有する者の養成確保を図らなければならない。

また、社会教育に関しては、現在、社会教育主事や図書館の司書、博物館の学芸員などの資格制度が整備されているが、この「推進センター」に置かれる専門的職員についても、既存の専門的職員との関連も踏まえながら、生涯学習に関する実務経験や知識も考慮して、資格を設けることが適当である。

なお、この専門的職員については、他の生涯学習施設にも配置を奨励することが望まれる。

(二) 大学・短大等の生涯学習センターについて

これからの大学・短大等は、生涯学習機関としての役割を強く期待されている。これまでにも、聴講生・研究生制度の活用、社会人特別入試の活用、通信制による教育の提供、昼夜開講制の実施、夜間等において教育を行う大学院の開設など、社会人を大学・短大等へ受け入れるための取組みが行われてきている。また、学校の機能等を社会に開放することを目的として、学術研究の成果を社会へ還元するための公開講座の開設が逐年拡充されてきているほか、図書館や体育施設の開放も推進されている。このほか、新しいタイプの単位制高等学校や社会の変化に即応した職業教育等を行う専修学校、さらには高等学校等の公開講座も、幅広い学習者を対象として新たな学習機会を提供している。

今後、大学・短大等においては、生涯学習機関としての役割をも視野に入れて、履修形態やカリキュラムの多様化・柔軟化を進めていくことが重要である。また、放送大学の全国化との関連で、放送大学との連携・協力が図られることも必要である。

以上のような取組みを進めるとともに、体系的・継続的な講座の実施や大学・短大等における学習機会に関する情報の提供・学習相談など、社会人を対象とした取組みをより積極的に行う体制として、地域の学習需要を考慮しながら、各大学・短大等の自主的な判断により生涯学習センターを開設することが期待される。

また、生涯学習センターは、地域の実情に応じ、前記の「推進センター」等と協力して、必要な講座を開設したり、学習プログラムの研究開発を行うなど、地域社会との密接な連携を図ることが望まれる。この場合、大学・短大等の自主性が十分尊重される必要がある。

(三) 「推進センター」等の名称について

名称については、それぞれの設置者が、その実情に即したふさわしい名称を検討することが適当である。

(四) 学校教育の単位へ転換する仕組み等について

生涯学習の成果を学校教育の単位として転換する仕組み及びこれらを各種公的資格の基礎とするための方途についても検討するとされており、今後、関係審議会等との関連も考慮しつつ、更に審議を続けることとする。

三 生涯学習活動重点地域について

地域における生涯学習を振興していくためには、人々の日常生活圏における生涯学習活動の場の整備が重要な課題である。生涯学習活動をささえる教育・スポーツ・文化施設等の整備状況をみると、地域的な偏りがみられ、特に民間施設等は都市部に集中している。

今後は、全国各地で、それぞれの地域特性を生かしつつ、充実した生涯学習活動の場を整備していくことが求められており、国においては、各地域における生涯学習活動の場の整備を誘導していく方策が必要である。

その方策としては、地域の要請に基づき日常生活圏において「生涯学習活動重点地域」を設定し、同地域に教育・スポーツ・文化等の生涯学習施設を集中的に整備し、高度かつ多様な学習機会を提供していくことが考えられる。その際、今後は特に民間活力の利用が重要であり、そのための税制、融資上の優遇措置を講ずることについて検討する必要がある。

四 民間教育事業の支援の在り方について

人々の学習需要の増大とその高度化・多様化を背景として、カルチャーセンター等の民間教育事業が特に都市部において活発な事業を展開している。このような民間教育事業については、今後も、多様な学習需要に柔軟に対応しつつ、創意ある充実した学習機会を提供して発展することが期待されている。

国及び地方公共団体は、民間教育事業者の自主性を尊重し、それぞれの自由な発展にゆだねることを基本としつつ、事業の種類や実態も考慮し、必要に応じて間接的な支援を行うことが望ましい。

このような支援の具体的な方策としては、「推進センター」の機能を活用するなどにより、地域における学習需要の動向等に関する情報の交換を行うこと、人々に対する学習情報提供・相談活動において民間教育事業に関する情報提供も行うよう配慮すること、民間教育事業者の指導者の養成・研修に協力することが考えられる。また、民間教育事業者が相互に協力しつつ、自主的に事業の水準の維持向上を図るための団体の育成を促進することも大切であろう。

〔参考資料〕

一 諮問文

文政政第一一八号

中央教育審議会

次の事項について、別紙理由を添えて諮問します。

新しい時代に対応する教育の諸制度の改革について

平成元年四月二四日

文部大臣 西岡武夫

(理由)

今後の我が国の社会については、国際化、情報化、高齢化など大きな変化が予想されている。このような社会の変化に適切に対応した教育を実現するため、これまでも生涯学習、初等中等教育、高等教育など各般にわたる教育改革を推進しているところであるが、今後とも、中長期的展望に立って制度上の諸課題について不断に検討していくことが必要である。

今日の学校教育については、後期中等教育や高等教育の著しい普及とその実態の多様化に伴い、高等学校教育の画一性・硬直性や学校不適応者の増加、更には受験競争の過熱化や偏差値偏重の弊害など様々の問題が指摘され、後期中等教育及びその高等教育との接続等の在り方が問われている。また生涯学習については、人々の学習需要の高度化・多様化に応じて体系的な振興方策を樹立することが求められている。

よって、この際、後期中等教育から高等教育にわたる教育の諸課題に係る改善方策及び生涯学習に係る振興方策に関して、次のような施策を講ずることの適否及び問題点について検討することが必要である。

(審議事項)

一 後期中等教育の改革とこれに関連する高等教育の課題

今日の後期中等教育については、時代の変化や生徒の多様な実態に柔軟に対応していくことが求められている。このため、新しい高等学校学習指導要領の趣旨を徹底するとともに、今後は学校制度についても所要の見直しを行い、後期中等教育のより一層の多様化・弾力化を図ることとし、これに関連する高等教育の課題も併せて次のような諸改革を行う。

(一) 高等学校の修業年限を見直し、現行の三年制のほか四年制高等学校の設置を認める。この場合、分野を限定して専門教育に限るか、あるいは普通教育にも認めるかについて検討する。

(二) 社会経済の進展に対応した専門教育の実現を図るとともに、高等学校教育における幅広い職業教育の充実を図るため、現行の学科制度の再編成を行う。

なお、高等学校間の単位互換を推進するなど、普通科と職業学科との有機的連携を図るための措置を講ずる。

(三) 職業・実際生活に必要な教育を重点的に行う高等学校や、幅広い選択を可能とする総合的な高等学校、国際化の進展に対応した高等学校など新しいタイプの高等学校の設置を奨励する。

(四) 高等学校における単位制度の趣旨を生かし、生徒の学習における選択の幅を広げるため、多様な選択科目の開設が可能となる措置を講ずる。

(五) 特定の分野などにおいて特に能力の伸長が著しい者について、大学入学の年齢制限緩和など、教育上の例外措置を講ずることの可否について検討する。

(六) 高等専門学校については、後期中等教育と高等教育を一貫して行う教育機関として一層の充実を図るため、分野の拡大、高等学校からの編入学の拡大などの拡充方策を講ずるとともに、新しい名称を検討する。

(七) 短期大学については、その果たす役割、社会的・地域的ニーズの変化等を踏まえ、左記二の諸施策との関連で、「生涯学習センター」(仮称)の開設の奨励など、生涯学習機関としての在り方について検討する。

(八) 後期中等教育の改革と関連して、後期中等教育と高等教育の接続の改善を図る観点から、高等学校教育と大学の一般教育との関係、四年制高等学校の卒業者等に係る大学の修業年限の在り方、入試時期の繰下げなどについて、大学審議会との関係を考慮しつつ、検討する。

二 生涯学習の基盤整備

人々の高度化・多様化する学習需要に応じて生涯学習の振興を図る観点から、生涯学習の推進体制・推進機関を整備するとともに、様々な学習成果を適切に評価し学校との連携を強化するため、次のような施策を推進する。

(一) 生涯学習の総合的な振興を図るため、生涯学習の推進体制、学習情報の提供、生涯学習に関する専門家の資格、生涯学習活動重点地域等について法的整備を行うとともに、民間教育事業の支援の在り方を検討する。

(二) 地域の生涯学習の中心機関となる「生涯学習センター」(仮称)を設置し、自ら主催講座等の事業を行うとともに、放送大学の学習センターとなるなど各種の学習・教育機関との連携を図る方途を講ずる。

(三) 「生涯学習センター」(仮称)の機能として、このセンターやその他の教育訓練機関の学習の成果を適切に評価し、学校教育の単位として転換する仕組み及びこれらを各種公的資格の基礎とするための方途について検討する。

三 以上のほか、関連する重要事項について検討する。

二 文部大臣諮問理由説明

本日は、御出席いただきましてありがとうございます。

このたび、皆様方に中央教育審議会委員の御就任をお願い申し上げましたところ、御多忙な中にもかかわらず快く御承諾をいただきました。厚くお礼を申し上げます。

中央教育審議会は、我が国の教育、学術又は文化に関する基本的な重要施策に関して御審議をいただく最も重要な審議会であり、昭和二八年に発足して以来、我が国の文教の基本的な在り方に関して数々の貴重な答申を行ってこられました。文部省としては、本審議会答申の趣旨の実現に努め、教育条件の整備、教育内容の改善等各般にわたる施策を着実に実施し、我が国の教育、学術、文化の発展充実を図ってきたところであります。

今回の中央教育審議会は、約五年半ぶりの再開となりますが、前回の第一三期の審議会において「時代の変化に対応する初等中等教育の教育内容などの基本的な在り方について」御審議をいただき、教科書に関する答申と教育内容等に関する審議経過報告をいただきました後、御承知のように臨時教育審議会との関係で、第一四期中央教育審議会の発足を見合わせていたものであります。

臨時教育審議会は、昭和五九年から三年間の任期の間に四次にわたる答申を提出され、教育及びこれに関連する分野に関して広範多岐にわたる改革提言を行われました。文部省としては、教育改革を中心となって推進する立場から、同審議会答申及び閣議決定された教育改革推進大綱に基づき、これまでに教育内容の改善や教員の養成・研修制度の改善、大学教育の高度化・活性化、更には生涯学習の推進体制の整備など所要の施策を着実に実施しているところであります。

このような各般にわたる施策を進めると同時に、更に今後の中長期的な制度上の諸課題を検討するため、このたび中央教育審議会を再開して新たな御審議をお願いすることといたしました。

今回、本審議会に諮問いたします事項は「新しい時代に対応する教育の諸制度の改革について」であります。

まず、諮問事項のうち後期中等教育を中心とする学校制度の改革について御説明申し上げます。我が国の学校教育は、戦後の新しい教育制度の下で、教育を重視する国民性や経済の高度成長に伴う国民の所得水準の向上等により、著しい普及発展をみるに至っております。高等学校や大学への進学率の向上による量的な拡大はもとより、その水準についても、特に初等中等教育については国際的にも評価されております。そして、このような教育の普及発展が、戦後における我が国の成長と発展に大きく寄与してきたことは言うまでもないところであります。

しかし、近年の社会の急速な変化の中で、教育に関して様々な問題が生じていることも事実であります。青少年の問題行動の増加や受験競争の過熱化は大きな社会問題となり、また、これまでの学校教育はどちらかと言えば画一的・硬直的で、社会の変化や生徒の実態に適切に対応していないとの指摘もなされております。そして、このような学校教育に係る諸問題は、生徒の能力・適性等の多様化が進む後期中等教育を中心に顕在化しております。後期中等教育の主たる機関である高等学校は、戦後の新しい教育制度の下に創設されたものでありますが、今日では約九四%もの進学率に達し、創設当時には予想し得なかった様々の問題を生じております。例えば、偏差値偏重の進路指導の問題や高等学校間・学科間での格差、序列化の問題、更には不本意入学や中途退学の問題等が指摘されております。文部省としては、このような高等学校の実態に対応するため、これまでにも学習指導要領の改訂をはじめとして各般の施策を講じてきたところでありますが、今後は、生徒の多様な個性、能力等を積極的に評価し、様々な学習要求に応じ、その個性の伸長を図る等の観点から、学校制度についても所要の見直しを行い、後期中等教育のより一層の多様化・弾力化を図る必要があると考えております。

また、これに続く高等教育についても、その著しい普及に伴う様々の問題や、一般教育の在り方、更には生涯学習の機関としての新しい役割など多くの課題が生じております。さらに、大学入試制度は、高等学校教育から義務教育にまで大きな影響を与えており、その改善は今後の教育改革推進に当たって避けて通ることのできない重要な課題となっております。

高等教育に係る諸問題については、去る三月一四日に大学審議会に対して大学の一般教育の在り方や大学入試制度の改善等について御検討をお願いしたところでありますが、本審議会においても後期中等教育との接続の改善を図る観点から、関連する諸問題について検討を進めていただきたいと考えております。具体の審議を進めるに当たりましては、両審議会の円滑な連絡に十分留意して参りたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

なお、学校制度の改革については、これまでにも昭和四六年の本審議会答申「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について」など様々の提言がなされておりますが、以上申し上げた諸課題につきましては、改めて今日的観点から検討していただきたいと考えております。

次に生涯学習の基盤整備についてであります。

新しい時代に対応する教育の諸制度を改革するに当たっては、学校教育だけでなく、学校以外における様々な教育・学習活動の振興を図り、更にこれらと学校教育との相互の連携を強化していくことが重要な課題となっております。

この点に関しては、昭和五六年に本審議会からも「生涯教育について」答申をいただいており、また、先の臨時教育審議会においても様々の提言がなされておりますが、今後は、生涯学習社会への移行を目指して、人々の学習需要の高度化・多様化に応じて体系的な振興方策を樹立することが必要であります。

文部省としては、昨年、生涯学習局を設置して生涯学習の総合的な振興を図ることとしたところでありますが、本審議会におかれては、これまでの施策の展開を踏まえつつ、より具体的かつ体系的な振興方策を御検討いただきたいと考えております。

今回は、以上のような考え方に基づき、現在、本審議会において御審議をお願いしたい事項について諮問を行ったものであります。諮問に当たりましては、具体的な施策の方向を示してその適否及び問題点について御検討していただくこととし、できるだけ集中的な御審議をお願いしたいと考えております。なお、これらの事項のほか、広く関連する重要事項についても忌憚のない御意見を頂戴したいと考えておりますのでよろしくお願いいたします。

本日諮問申し上げました事項は、いずれも今後の我が国の教育の基本に係るものであり、我が国が二一世紀に向かって教育改革を進めていく上で中長期的な展望を明らかにしなければならない大きな課題であります。したがって、それぞれの事項に関する御提言をいただきますに際しては、改革を実施するための手順及び実施の目途についても併せて御提言をいただければ幸いに存じます。

委員の皆様方におかれましては、御多忙のところ恐縮に存じますが、何とぞ格別の御協力を賜りますようお願い申し上げます。

〔以上のような諮問理由説明が行われ、さらに次のように付言された。〕

今回、諮問申し上げました事項には、大学審議会との関係で、例えば、大学入試の問題や臨時教育審議会答申とのかかわりで義務教育段階についての御審議を、特にお願いいたしておりませんが、今次一四期中央教育審議会の御審議を通じて、あるいは追加諮問の方法で御審議賜ることもあることを申し添えさせていただきます。何とぞよろしくお願いを申し上げます。

三 文部事務次官補足説明

ただいま大臣から、諮問に関する基本的な考え方を御説明申し上げましたので、その趣旨を更に補足的に明らかにするため、このような諮問の背景になっている具体的課題について、文部省として考えておりますことを御説明申し上げます。

まず、「後期中等教育の改革とこれに関連する高等教育の課題」についてであります。

第一は、高等学校の修業年限の見直しについてであります。我が国の高等学校の修業年限は、これまで全日制の課程については一律三年としてきましたが、高等学校教育の弾力化を図る観点から、四年制高等学校の設置を認めることについて検討する必要があると考えております。高等学校の修業年限を弾力化する構想については、これまで理科教育及び産業教育審議会の答申において高等学校における専門教育を深める観点から、更に臨時教育審議会の答申において教育内容の在り方、取扱いなどと関連して提言されておりますが、今回の審議におきましては、これらの提言を踏まえ、四年制の高等学校の設置について、これを分野を限定して専門教育に限るか、また、普通教育に関しても四年制を認めるかどうか、その適否も含めてご検討をお願いいたします。また、四年制高等学校を設置した場合の教育内容の在り方や大学との接続の仕方などについても、併せて御審議いただきたいと存じます。

第二に、高等学校における学科制度の再編制についてであります。高等学校の学科については、いわゆる普通科と職業学科などがありますが、職業学科については、その学科区分が社会経済の進展に応じた先端的な分野や複合的な分野の専門教育を行うためには十分に対応しきれるものとなっていないなどの指摘もあります。一方、普通科においても、卒業後直ちに就職する生徒などについては、職業に関する基礎的な科目等の教育を充実する必要があります。また、希望する学校又は学科に進学できなかったいわゆる不本意入学のため学習意欲も十分でない生徒が少なからずいるとの指摘もあります。したがって、普通科と職業学科の区分の在り方も含め学科制度について検討し、その再編成を図る必要があります。また、これらの改革と併せて高等学校間の単位互換の推進などによる普通科と職業学科との有機的な連携方策についても御審議をお願いしたいと存じます。

第三に、新しいタイプの高等学校の設置の奨励についてであります。既に、例えば、数多くの選択科目を設け生徒の幅広い選択を認める高等学校や、複数の職業学科を設け生徒が学科を超えて履修することのできる高等学校、あるいは国際化への対応に重点を置く高等学校など、特色ある新しいタイプの高等学校が設置されてきております。また、職業や実際生活に必要な知識・技術の修得に関する教育を重点的に行う高等学校も必要と考えられるところであり、その教育内容について必修教科・科目の在り方を含め検討する必要があります。今後は、生徒の多様な学習要求に応え、生徒の選択学習の機会をより一層充実していくため、様々な新しいタイプの高等学校の設置を奨励していくことが重要ではないかと考えておりますので、その方策について御審議をお願いしたいと存じます。

第四は、高等学校における単位制についてであります。高等学校は現在も学年制と併せて単位制がとられておりますが、実態としては、ほとんど義務教育段階と同様の学年制に基づく運用がなされております。しかし、今後、生徒の多様な学習要求にきめ細かく対応した教育を行うためには、高等学校における単位制の趣旨を生かし、生徒の学習における選択の幅を広げることが重要であると考えておりますので、その具体化のための方策について御審議をお願いしたいと存じます。

第五に、特定の分野などにおいて特に能力の伸長が著しい者に対する教育の在り方についてであります。特定の分野などにおいて特別に能力の伸長がみられ、心身の発達の程度からみても問題ないと教育上確信される者について、大学入学の年齢制限緩和など例外的な措置を認めることの可否、特定の分野の範囲、あるいはそのような能力の評価の方法や仕組みなどについて御審議願いたいと思います。また、例外措置の一つとして、現行の大学入学資格検定制度を拡充することにより、大学入学に係る年齢制限を緩和することの可否についても御審議願いたいと考えております。なお、この問題については、国民の意識の動向を見極める必要があるとともに受験競争を過熱化するおそれもあることなどから、十分慎重な検討が必要であると考えております。

第六に、高等専門学校及び短期大学についてであります。高等専門学校の改革につきましては、既に臨時教育審議会の答申にも指摘がありますが、社会経済の進展に対応しつつ、後期中等教育と高等教育とを一貫して行う教育機関としての特性を十分に活かして、各地域の発展の核となるよう、分野の拡大や新しい名称など高等専門学校の拡充方策について更に検討する必要があると考えております。また、短期大学につきましては、現在果たしている役割、社会的・地域的ニーズなどを踏まえつつ、「生涯学習センター」の開設を奨励するなど今後の生涯学習社会において果たすべき役割について検討していただきたいと考えております。

第七に、後期中等教育と高等教育との接続の問題であります。まず、現在進められている大学審議会での審議との関連も考慮しつつ、高等学校教育と大学の一般教育との関係について検討する必要があると考えております。また、四年制高等学校卒業者や「生涯学習センター」での単位修得者に関して大学教育への適切な接続の在り方について検討する必要があります。さらに、高等学校教育の安定化を図るとともに、大学入試にゆとりを持たせ面接や論文の活用など受験生の能力・適性等を多面的に評価できるようにするため、例えば大学の入学時期を六月や九月などとし、これに応じて大学の入試時期も繰り下げることについて検討していただきたいと考えております。

次に、「生涯学習の基盤整備」についてであります。

第一に、生涯学習の総合的な振興を図るための法的整備についてであります。現在、社会教育法をはじめ社会教育に関する種々の法令が制定されておりますが、今後、生涯学習体系への移行に積極的に対応するため、これらの法令の見直しを含め、生涯学習の推進体制や推進機関、専門家の資格、生涯学習活動重点地域の整備等について総合的な法的整備を図る必要があると考えております。なお、生涯学習全体の振興を図るためには、民間の教育・文化・スポーツ事業の動向や実態を視野に入れ、公的な事業の役割を考慮しつつ、それらを支援し、連携を図っていくことが重要な課題となっておりますので、これらに対する支援等の在り方についても御審議いただきたいと存じます。

第二に、地域の生涯学習の中心的機関となる「生涯学習センター」(仮称)の設置についてであります。現在、各地域には公民館、図書館、博物館など様々な社会教育施設や各種の教育訓練機関が設置されておりますが、人々の高度化・多様化する学習需要により適切に応えていくためには、これらの機関の一層の充実を図ることはもとより、「生涯学習センター」を設置し、地域の生涯学習の中心となって、自ら主催講座等の事業を行うとともに、種々の学習の成果を適切に評価する機能を付与することが必要であると考えております。この「生涯学習センター」は、各種の学習・教育機関との連携を図るとともに、学習の成果のうち一定のものについては学校教育の単位として転換する機能を持たせることを考えておりますので、そのため仕組みや更にこれらを各種公的資格の基礎とするための方途についても御検討いただきたいと考えております。

以上、今回の諮問事項に関して文部省として考えておりますことを御説明申し上げました。これをもって、私の補足説明を終わります。

四 第14期中央教育審議会総会・生涯学習に関する小委員会審議経過


回数

開催月日

審議の概要

第165回総会

平成元年4月24日(月)

○ 会長に清水司委員、副会長に山崎正和委員を選出

○ 西岡文部大臣から諮問

○ 西岡文部大臣諮問理由説明、阿部文部事務次官補足説明

○ 自由討議

第166回総会

5月17日(水)

○ 後期中等教育及び高等教育の現状等の説明、自由討議

第167回総会

6月13日(火)

○ 生涯学習の現状等の説明、自由討議

○ 「学校制度に関する小委員会」及び「生涯学習に関する小委員会」の二つの小委員会の設置を決定

第1回小委員会

7月5日(水)

○ 座長に三浦朱門委員を選出

○ 生涯学習の現状及び課題について

第2回小委員会

7月24日(月)

○ 参考人意見交換「地方及び大学における生涯学習の推進状況について」

・榛村純一氏(静岡県掛川市長)

・佐藤博氏(兵庫県立嬉野台生涯教育センター次長)

・塚本哲人氏(元東北大学教育学部附属大学教育開放センター所長、宮城学院短期大学生涯学習センター所長)

○ 生涯学習の基盤整備について自由討議

第3回小委員会

8月7日(月)(集中審議)

○ スポーツ、文化活動における生涯学習関連施策について

○ 生涯学習の基盤整備について自由討議

第4回小委員会

8月18日(金)

○ 学校における生涯学習関連施策について

○ 大学審議会・大学教育部会における審議の概要について

○ 生涯学習の基盤整備について自由討議

第5回小委員会

9月7日(木)

○ 参考人意見交換「民間教育事業の実情等について」

・山本思外里氏((株)読売・日本テレビ文化センター専務取締役)

・山口國光氏((株)山梨文化学園専務理事)

○ 生涯学習の基盤整備について自由討議

現地視察

9月19日(火)

○ 放送大学

○ 放送教育開発センター

○ 浦安市中央公民館

現地視察

9月21日(木)

○ 朝日カルチャーセンター

○ 江東区文化センター

現地視察

9月26日(火)

○ 群馬県生涯学習センター

○ 放送大学群馬学習センター

第6回小委員会

9月29日(金)

○ 民間教育事業の支援の在り方について

○ 審議経過報告(骨子案)について

第7回小委員会

10月6日(金)

○ 審議経過報告(案)について

第168回総会

10月18日(水)

○ 生涯学習に関する小委員会審議経過報告(案)について

第8回小委員会

10月24日(火)

○ 審議経過報告(案)について

第169回総会

10月31日(火)

○ 生涯学習に関する小委員会審議経過報告

○ 学校制度に関する小委員会における審議状況の報告

第9回小委員会

12月8日(金)

○ 審議経過報告に関する関係団体との意見交換

(社)全国公民館連合会

・吉里邦夫氏((社)全国公民館連合会会長全国生涯教育・社会教育センター協議会

・國松治男氏(全国生涯教育・社会教育センター協議会会長、国立教育会館理事、社会教育研修所長)

・坂西輝夫氏(全国生涯教育・社会教育センター協議会副会長、群馬県生涯学習センター館長)

(財)日本体育協会

・鈴木祐一氏((財)日本体育協会専務理事)

国立大学協会

・太田時男氏(横浜国立大学長)

日本私立大学団体連合会

・青木宗也氏(日本私立大学団体連合会・教育改革委員会委員長、前法政大学総長)

・加藤地三氏(日本私立大学団体連合会・教育改革委員会委員、昭和女子大学教務部長)

・中原爽氏(日本私立大学団体連合会・教育改革委員会委員長、日本歯科大学理事長・学長)

全国公立短期大学協会

・與良清氏(全国公立短期大学協会会長、東京都立立川短期大学長)

・木村正俊氏(全国公立短期大学協会理事、神奈川県立外語短期大学長)

全国高等学校長協会

・永嶋達夫氏(全国高等学校長協会常務理事、東京都立戸山高等学校長)

全国定時制通信制高等学校長会

・馬場信房氏(全国定時制通信制高等学校長会理事長、東京都立小石川高等学校長)

・金森久氏(全国定時制通信制高等学校長会事務局長、東京都立九段高等学校長)

第10回小委員会

12月20日(水)

○ 審議経過報告に関する関係団体との意見交換

都道府県教育長協議会

・渋谷正己氏(都道府県教育長協議会第2部会主査、神奈川県教育委員会教育長)

全国町村教育長会

・手塚英一氏(全国町村教育長会会長、栃木県塩谷郡藤原町教育委員会教育長)

公立大学協会

・山住正己氏(東京都立大学人文学部長)

日本私立短期大学協会

・佐久間彊氏(千葉経済短期大学長)

・高鳥正夫氏(東横学園女子短期大学長)

・馬渡房氏(東洋女子短期大学理事長・学長)

全国専修学校各種学校総連合会

・竹内繁氏(全国専修学校各種学校総連合会副会長、読売理工専門学校理事長)

なお、全国都市教育長協議会は、都合により書面をもって意見発表に代えられた。

第11回小委員会

平成2年1月16日(火)

○ 生涯学習の基盤整備について(答申)(案)

第170回総会

1月24日(水)

○ 生涯学習の基盤整備について(答申)(案)

第171回総会

1月30日(火)

○ 生涯学習の基盤整備について(答申)を石橋文部大臣に提出

○ 学校制度に関する小委員会における審議状況の報告

五 第一四期中央教育審議会委員・臨時委員・専門委員名簿

(平成二年一月三〇日現在)

会長 清水司 日本私学振興財団理事長

副会長 山崎正和 大阪大学教授・劇作家

(一) 生涯学習に関する小委員会関係

○ 委員 荒巻禎一 京都府知事

石井威望 東京大学教授

大賀典雄 ソニー株式会社代表取締役社長

岡野俊一郎 日本オリンピック委員会専務理事

加藤秀俊 放送教育開発センター所長

草野忠義 全日本自動車産業労働組合総連合会事務局長

高坂正尭 京都大学教授

(座長)三浦朱門 作家・社団法人日本文芸家協会理事長

○ 臨時委員 清水畏三 学校法人桜美林学園理事長・学園長

    桜美林大学教授

○ 専門委員 大森厚 学校法人中央工学校理事長・校長

小野寺辰夫 岩手県金ケ崎町教育委員会教育長

片山美恵子 主婦

谷口正幸 石川県公民館連合会理事長

道正邦彦 財形住宅金融株式会社会長

星野雅春 日本青年団協議会会長

山本恒夫 筑波大学教授

(二) 学校制度に関する小委員会関係

○ 委員 緒方四十郎 日本開発銀行副総裁

見城美枝子 テレビジャーナリスト・エッセイスト

(座長)

河野重男 お茶の水女子大学長

佐野文一郎 国立劇場理事長

田中健藏 前九州大学長・九州大学名誉教授

西尾幹二 電気通信大学教授

松本三郎 学校法人慶應義塾常任理事・慶應義塾大学教授

水上忠 東京都教育委員会教育長

村崎芙蓉子 新宿三井ビルクリニック副院長

吉村融 埼玉大学教授

○ 臨時委員 田村哲夫 学校法人渋谷教育学園理事長

    渋谷女子高等学校長

    渋谷教育学園幕張高等学校長・同附属中学校長

中澤浩一 東京都立両国高等学校長

    全国高等学校長協会会長

○ 専門委員 市川昭午 国立教育研究所教育政策研究部長

伊藤育子 静岡県島田市立六合中学校教諭

井上輝夫 東京都港区立御成門中学校長

上田幸夫 東京都港区立御田小学校長

坂田正二 広島文化女子短期大学長、呉女子短期大学長

西川泰夫 上智大学教授

脇田仁 岐阜工業高等専門学校長

備考 委員・臨時委員は、所属する小委員会以外の小委員会にも出席し、発言することができる。

-- 登録:平成21年以前 --