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「日本語教員の養成等について」の送付について

文学教第一五六号

昭和六〇年五月三〇日
各機関の長あて
文部省学術国際局長通知

「日本語教員の養成等について」の送付について

外国人に対する日本語教育については、かねてより種々御尽力いただき感謝いたします。

さて、文部省では日本語教育振興のための具体的方策について、昭和五八年秋以来有識者の方々に検討をお願いしておりましたが、去る五月一三日に「日本語教員の養成について」の報告をいただきました。本報告は、日本語教員の養成等を図る上で重要な指針となると思われますので、参考にしていただきたく、送付いたします。

将来、我が国と諸外国との国際交流は更に活発化し、留学生をはじめ日本語を学習する外国人はますます増加すると予想されます。これらの外国人に対する日本語教育の充実振興のためには大学や日本語教育機関等の御協力が重要であると考えておりますので、今後とも格段の御協力をお願いします。

日本語教員の養成等について

昭和六〇年五月一三日

日本語教育施策の推進に関する調査研究会

[Roman1 ] 日本語教員養成の必要性

日本語を学習する外国人(以下「日本語学習者」という。)は、国内においては昭和五〇年に一〇、四二九人であつたのに対して昭和五八年には、二五、九三八人と年平均一二・一%の伸び率で著しく増加している。このような傾向は、今後、我が国と諸外国の相互関係が一層緊密化するとともに引き続き継続するものと考えられる。なお、留学生問題調査・研究に関する協力者会議がまとめた「二一世紀への留学生政策の展開について」(昭和五九年六月)においては、二、〇〇〇年(昭和七五年)における留学生の受け入れ数を一〇〇、〇〇〇人まで引き上げることを想定して諸施策を講ずることとしている。今後、これらの諸施策が実施されていくとともに留学生の着実な増加が予想され、留学生が日本語学習者の総数の増加の重要の要因になると予想される。

このような状況を考慮して将来の目安として国内の日本語学習者数を試算すると表一のとおりである。

(表一)国内の日本語学習者数の試算 (人)


目的別日本語学習者

昭和五八年

(実数)

昭和六七年

昭和七五年

留学生

五、八〇〇

二六、一〇〇

六五、〇〇〇

その他(一般成人、技術研修を目的とする者等)

六、四〇〇

二四、〇〇〇

七七、五〇〇

合計

一二、二〇〇

五〇、一〇〇

一四二、五〇〇

(備考)

一 留学生については、留学生問題調査・研究に関する協力者会議「二一世紀への留学生政策の展開について」における想定数である(なお、この想定数は、留学生総数のうち日本語の学習を必要とする者の数を試算したものであり、大学等に入学するための予備教育として日本語教育を受ける者を含む。)。

二 その他(一般成人、技術研修を目的とする者等)については、文化庁「国内の日本語教育機関の概要」に基づき、昭和五四年から五八年まで年平均伸び率(一五・八%)を用いて試算した。

三 外国人子弟で日本語を学習する者が昭和五八年現在約一三、七〇〇人いるが、その性格を異にするので、この試算においては除外した。

このような日本語学習者の増加を反映して国内の日本語教員は、昭和五〇年に一、〇三一人であつたのに対して昭和五八年には、二、三四一人と年平均一〇・八%の伸び率で著しく増加している。

前述した表一の試算に基づいて、将来の目安として国内において必要となる日本語教員数を試算してみると表二のとおりである。

(表二)国内において必要となる日本語教員数の試算(人)


  

昭和五八年

(実数)

昭和六七年

昭和七五年

留学生を対象とする教員

一、〇〇〇

四、三〇〇

一〇、六〇〇

その他(一般成人、技術研修を目的とする者等)を対象とする教員

一、二〇〇

四、四〇〇

一四、三〇〇

合計

二、二〇〇

八、七〇〇

二四、九〇〇

(備考)

一 留学生を対象とする日本語教員については、前出の「二一世紀への留学生政策の展開について」における想定数である。

二 その他(一般成人、技術研修を目的とする者等)を対象とする教員については、日本語教員一人当たり日本語学習者数の昭和五四年から昭和五八年までの平均によつて試算した。

三 なお、昭和五八年の場合、日本語教員の約三割が専任教員で、その他は兼任又は非常勤である。

一方、海外において日本語を学習する者についても近年、諸外国の我が国に対する関心が極めて高くなつていることを反映して増加しており、外務省・国際交流基金の調べによれば昭和四九年に七七、八二七人であつたのに対して、昭和五七年には四〇五、七七九人と年平均二二・九%の伸び率で急増している(このほか、中国ではラジオ講座等による日本語学習者が二〇〇万人を超えると推定されている。)。

このような日本語学習者の増加に伴い、海外の日本語教員は昭和四九年に二、二五四人であつたのに対して、昭和五七年には五、八九〇人と年平均一二・八%の伸び率で増加している。

このように今後必要となる国内における日本語教員数は、著しく増加すると予想されるうえ、海外における日本語学習者の増加に伴い相当数の海外の日本語教員の養成や研修も我が国で行われると考えられることから、今後計画的に日本語教員養成機関の整備・充実を図る必要がある。その第一歩として、国立大学において、日本語教員の養成を主目的とする学科等を設け、日本語教員養成の中核的役割を果たすほか日本語教員養成の副専攻課程を設けるなどの方途により、日本語教員の養成確保に努めることが肝要である。

一方、日本語教員養成機関として、昭和五八年現在、大学・大学院が一九機関、一般の日本語教員養成機関が二一機関あるが、その教育内容・水準や養成の期間等はまちまちであり、標準的な基準も設けられていない。例えば、大学(大学院)では、日本語教員養成のための時間数を五〇〇時間以上かけているものが多いのに対して、一般の機関では、その時間数は多様で三〇時間未満から六〇〇時間まで幅がある。また、これら機関全体で昭和五八年度に教育を受けた者は、約二、〇〇〇人程度であるが、そのうち日本語教員養成のために最低限必要な時間数と考えられる四二〇時間([Roman2 ]の四参照)を充たすものは、約一六〇人程度にすぎない。

このような状況にかんがみると、日本語教員の養成に当たり量的な整備・充実とともに質的な整備・充実を図ることが急務である。

[Roman2 ] 日本語教員養成のための標準的な教育内容等

一 日本語教育は、我が国と諸外国との国際交流を活発化し、我が国に対する理解を深めるための基盤を培うものであり、これを推進する日本語教員には、国際的感覚と幅広い教養、豊かな人間性、日本語教育に対する自覚と情熱、日本語教育に関する専門的な知識・能力などが要求される。

日本語教育の一層の充実のためには、日本語教育の専門家として必要な知識・能力を有する優れた日本語教員の養成が不可欠であり、このためには、日本語教員養成における教育内容・水準の基準が明確にされることが必要である。

二 日本語教育の専門家として必要とされる知識・能力は、次のとおりである。

(一) 基礎的な知識・能力

大学(四年制)卒業又はそれと同等程度の知識・能力

(二) 日本語教育に係る知識・能力

・日本語の構造に関する体系的、具体的な知識

・日本人の言語生活等に関する知識・能力

・言語学的知識・能力

・日本語の教授に関する知識・能力

・表現・理解力等の日本語能力

・日本事情に関する知識

・外国語及び外国事情に関する知識・能力

三 日本語教員の養成は、その要請される知識・能力の水準に応じて次のとおり行われるべきである。

(一) 一般の日本語教員

ア 大学の学部に、日本語教員として最低限必要な知識・能力を習得させることを目的として、他の専門分野の教育(国語教員養成課程、英語教員養成課程等)と併せて日本語教員の養成を行う副専攻課程を設ける。

イ 一般の日本語教員養成機関においては、大学卒を基礎資格として、大学の学部の副専攻課程と同等程度の教育内容・水準を確保する。

(二) 指導的教員又は教員の養成にあたる者

ア 大学の学部に、日本語教員として必要な相当程度の知識・能力を習得させることを目的として日本語教員の養成を主として行う主専攻課程を設ける。

イ 大学院修士課程に、日本語教員の養成に携わる者を養成するコースを設ける。この場合、学部における日本語教員養成の主専攻課程を修了した者を対象とするコースとそれ以外の者を対象とするコースを設けるものとする。

なお、日本語教育に関する高度な研究能力を備えた者を養成するための博士課程の設置を検討する必要がある。

四 各日本語教員養成機関の目的に応じた日本語教員養成のための標準的な教育内容は、次のとおりである。


日本語教員に必要な知識・能力

一般の日本語教員養成機関

大学の学部日本語教育副専攻

大学の学部日本語教育主専攻

大学院修士課程

Aース

Bコース

一―(一)

日本語の構造に関する体系的、具体的な知識

(科目名例示)

日本語学(概論、音声、語彙・意味、文法・文体、文字・表記)

一五〇時間

一〇単位

一八単位

四単位

二単位

一―(二)

日本人の言語生活等に関する知識・能力

三〇時間

二単位

四単位

  

  

(科目名例示)

言語生活

日本語史

  

  

  

四単位

二単位

日本事情

一五時間

一単位

四単位

  

  

言語学的知識・能力

(科目名例示)

言語学概論、社会言語学、対照言語学

日本語学史

六〇時間

四単位

八単位

七単位

五単位

日本語の教授に関する知識・能力

(科目名例示)

日本語教授法、日本語教育教材・教具論評価法、実習

一六五時間

九単位

一一単位

九単位

一〇単位

合計

四二〇時間

二六単位

四五単位

二四単位

二八単位

(備考)

一 前記の知識・能力の他に表現・理解力等の日本語能力、外国語に関する知識・能力、世界の諸地域に関する知識の習得を図る必要がある。なお、日本事情には学習者の背景により古典及び文芸を含み得る。

二 大学院修士課程のAコースは、大学の学部における日本語教員養成の主専攻課程を修了した者を、Bコースはそれ以外の者を対象としている。

三 一般の日本語教員養成機関の授業時数は、大学の学部における副専攻課程の一単位を一五時間とし、実習については四五時間として算出したものである。

[Roman3 ] 日本語教員検定制度

一 前述のとおり、日本語教員は、高い資質・能力を必要とする専門職であり、このような日本語教員の資質・能力の向上に資するため、日本語教員検定制度を設ける必要がある。この制度は、日本語教員となるための要件を限定しようとするものではないが、これにより、日本語教員の専門性の確立と待遇の改善が図られ、日本語教員の社会的地位の向上にも資することが期待される。

二 日本語教育検定は、受験者の知識・能力が日本語教育の専門家として必要とされる知識・能力の水準に達しているかどうかを審査し、証明するものとする。この検定は、公益法人で検定を実施するにふさわしい団体として文部大臣から認定された者が試験の方法により実施し、その水準は大学の学部における日本語教員養成の副専攻課程修了と同程度のものとすることが望ましい。

なお、日本語教育に関する経験、業績等を持つ者や、一定の水準以上の日本語教員養成の課程を修了した者に対する検定上の配慮についてはその方途を検討することが望ましい。

-- 登録:平成21年以前 --