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へき地教育振興法の制定について(抄)

文初財第三八二号

昭和二九年七月五日
各都道府県教育委員会あて
文部事務次官通達

へき地教育振興法の制定について(抄)

六月一日、へき地教育振興法(法律第一四三号)が公布になり即日施行されました。この法律は別に添付しましたが、制定の趣旨、概要及び留意すべき事項等は左記のとおりでありますから、その施行にあたっては遺憾のないようにして下さい。

なお、貴管下各市町村教育委員会へもこの旨を御連絡願います。

一 制定の趣旨

この法律は、へき地における教育の現状にかんがみ、教育の機会均等の趣旨から、その特殊事情に応ずる教育内容の充実、教職員の確保、施設及び設備の整備等の面における総合的施策を明らかにし、国及び地方公共団体がそれぞれの段階においてこれらの施策を実施することとし、もって、へき地における教育の水準の向上を期するものである。

二 概要及び留意すべき事項

(1) 目的及び定義

第一条及び第二条は、この法律の目的及び定義を規定したものである。

へき地学校」の定義において、学校を公立の小学校及び中学校に限っているのは、実際にへき地にある学校はこれらの学校であり、義務教育の振興に重点を置く必要があるからである。

(2) 市町村の任務

第二条から第九条までは、具体的施策を規定したもので、市町村の任務は第三条に規定されている。

へき地における教育を振興する責務は、へき地を持つ市町村が、まず第一次的に果さなければならないのであるが、へき地の事情はそれぞれの地方によって異なっているので、それぞれの市町村において実情に即した施策を実施する必要があり、本条に規定している諸施策についても、重点の置き所や、とりあげ方はそれぞれ異なってくるわけである。

第一項第一号のへき地における教育の内容の充実について例示として、教材教具等の整備と教員の研修とがあげられているのは、前者は、へき地の児童生徒が生活経験の領域が狭く、また単級、複式教育においては、学級編成の特質上教材教具について特別な工夫を必要とするからである。後者については、へき地学校に勤務する教員は単級、複式教育に適した学習指導法等について特別に研修を必要とする場合が多いにもかかわらず、一般に有資格の教員が少く且つ諸種の事情から研修の機会に恵まれていないことが多いからである。

同項第二号は、教員の福利厚生についての規定であるが、へき地学校に勤務する教職員の福利厚生には、大いに意を払う必要がある。たとえば、教員住宅以外にも、交通費の補助その他が考えられる。

同項第三号に規定する体育、音楽等の学校教育及び社会教育の用に供するための施設とは、へき地集会室と呼ばれている施設のことで、へき地においては、学校教育と社会教育とがきわめて密接な関係の下に運営されるべき特質があること、及びへき地には、およそ教育文化施設が乏しいので、多方面に使用しうる施設が必要であることにかんがみたいものである。

第二項は、健康管理の適正な実施と通学の便を図るための措置についての規定である。健康管理の適正な実施のためには、無医村等が共同で学校医、学校歯科医を設置したり、医薬品を整備したり、都道府県との協力により巡回診療を実施する等の措置が考えられ、また通学を容易にするためには道や橋の整備、スクールバス、スクールボートの開設等の措置があると思う。

(3) 都道府県の任務

第四条は都道府県の段階において実施すべき任務を規定している。都道府県は、一般的に市町村に対して指導助言をする立場にあるが、第一項において、へき地教育については、今後特に重点的に実情に即した適切な指導助言をするように規定している。

学習指導、教材教具等について必要な調査、研究を行い、及び資料を整備することを規定しているのは、これらの事務の中には都道府県において実施するのが適当とされるものがあるからである。

また教員の研修について教員に十分な機会を与えるとは、研修の場所をなるべくへき地教員のために便利なところに選ぶとか、研修の時期を適切に選択するとか、研修に要する費用について考慮する等のことである。

へき地学校にとって最もたいせつなことは、優秀な教員を確保することである。そのためには、へき地学校の教員の待遇を適正にするとともに、へき地学校に必要な教員を供給する措置が実施されなければならない。第二項から第四項まではこれらについて規定したものである。

へき地学校における教員の需要をみたすことの困難な都道府県においては、必要に応じて、へき地学校に勤務する教員を養成することを目的とする教員養成施設を設置して教員の確保を図らなければならない。(教育職員免許法別表第一備考第二号)

また、へき地学校に勤務する教職員の給与は都道府県が負担し、その定数は都道府県の条例で定める範囲内で市町村の教育委員会が都道府県の教育委員会と協議して定めるのであるが(市町村立学校職員給与負担法第一条、第三条)都道府県は、特殊勤務手当(へき地手当、単級手当、複式手当)の支給について、及び、定数の決定について、特別の考慮を払うとともに、市町村が行うこれらの者の採用について指導、あつ旋等をしなければならないのである。

なお、このほか都道府県の任務としては、市町村に交付する負担金、補助金等の配分に関し第九条の規定により特別の配慮が必要とされている。

(4) 国の任務

国の任務については、第五条から第九条にわたって規定がある。第六条は国の補助について、すなわち、国は市町村が教員住宅を建築したとき、学校教育及び社会教育の用に供する施設を設けたとき、並びに、都道府県がへき地学校に勤務する教員養成施設を設けたとき、その経費の一部を補助することを規定している。

(中略)

第九条は、学校施設費、教材費等についての負担金等の配分について、へき地における教育の特殊性に即応して、適切な配分を行うよう規定したものであるが、教材費の配分等に見られるように、この線にそった具体的施策も順次実施されつつある。

(5) なお、この法律には衆議院及び参議院の附帯決議が附されているので、参考のために添付する。

 

 

 

 

-- 登録:平成21年以前 --