三 日米教育協力研究

 OECDの報告書が日本の教育の将来に対する提言であったとすれば、日米教育協力研究の成果として昭和六十二年一月に発表された米国側研究報告書「日本教育の現状」は、その後書きとしてベネット教育長官が「日本の教育から読みとるべきもの」と題する一文を寄せているように、日本の教育から何らかの教訓を得ようという意図を持ったものであった。

 そもそもこの日米教育協力研究は、五十八年の中曽根・レーガン日米首脳会談での意見交換が契機となり、その後日米文化教育交流会議合同委員会の勧告を受けて、五十九年九月に森文部大臣とベル教育長官との間で正式にその実施が合意されたものである。そして、日・米双方に研究グループが組織され、六十一年一杯まで相互に調査・研究が行われ、六十二年一月、双方の報告書が同時に公表された。このような相互の教育についての研究が実施された背景には、この当時日・米いずれにおいても教育改革が大きな課題となっていたという事情があった。

 ベネット長官が述べているように、アメリカが日本の教育に関心を寄せるのは、日本が達成した強力な経済競争力、安定した民主国家、犯罪の少ない文明社会そして基礎的な技術基盤がしっかりとした信頼度の高い機能的な社会に、教育が少なからず貢献しているとの認識に基づくものである。そして我が国の教育から得られる教訓として、1)親が教育に重要な役割を果たしていること、2)教育について明確な目的意識を持ち、強い動機付けがあること、3)学習時間を最大限に確保し、効率的に用いること、4)教師が有能で熱心なこと、5)子供に勤勉の精神や良い学習習慣を植え付けようとする確固たる姿勢があることなどを挙げている。

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