一 海外子女教育の必要性の増大

 海外子女教育が切実な教育問題として社会的に取り上げられるようになったのは、海外に在留する子女が急増した昭和四十年代の後半からであった。文部省に設けられた海外子女教育推進の基本的施策に関する研究協議会は、五十一年四月、海外の日本人学校等の教職員の確保、帰国子女の受入れを主目的とする高等学校の設置などの当面の緊急措置を提言した。この提言に基づき、教員派遣制度の整備・拡充等の措置が講じられた。

 さらに、六十年代に入ると、我が国の国際的活動は一層活発化し、国際社会における役割と責任も高まるなど、海外子女教育を取り巻く諸情勢も大きく進展した。そのような中で、臨時教育審議会答申等において、海外子女教育の充実が我が国の国際化を図る上で不可欠の重要課題であるとの指摘が相次ぎ、その在り方について新たな展開を求められるようになった。このため文部省では、六十三年七月、それまでの海外子女教育室に代え海外子女教育課を設置するとともに、有識者の協力を得て今後の海外子女教育の推進の在り方について調査研究を行い、平成元年十月に「今後における海外子女教育の推進について」の報告書を取りまとめた。同報告書は、海外子女教育を新しい国際化時代を生きる子供の育成を目指すものととらえ、これを推進するための観点として、個性重視の多様な教育、国際性の涵(かん)養を図る教育及び現地社会に開かれた教育を強調した。現在この報告書の線に沿って、海外子女教育の新たな施策が各般にわたって実施されてきている。

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