三 日本語教育施設の質的向上

 国内における日本語教育が進展する中で、日本語教育施設の相当部分は民間事業として運営されてきたが、急増する日本語教育施設の中には教育水準や経営の面で問題があるのではないかとか、本来、高等教育機関以外の教育機関で日本語等を学習することを目的として我が国に滞在している就学生の不法就労の「かくれみの」になっているのではないかとの指摘が見受けられるようになった。また、昭和六十三年には中国・上海において入学の許可を受けた多数の就学希望者が、日本への入国ビザを取得できず、日本語学校へ納入した納付金も返還されないなど、就学生をめぐる問題が表面化した。こうした状況を踏まえ、教育的観点に立って日本語教育施設の質的向上を図り、真に日本語の教育を受けようとする外国人が安心して日本語を学習できる環境を整備するため、文部省の調査研究協力者会議において日本語教育施設の運営に関する基準が検討され、六十三年十二月、修業期間、教員数、教員の資格要件、施設・設備等について日本語教育施設が備えるべき基準が取りまとめられた。

 この基準を踏まえて、平成元年五月、日本語教育振興協会が任意団体として発足し、日本語教育施設の審査・認定事業を開始するとともに、日本語教育施設の質的向上を図るための事業にも着手した。同協会は翌年の二月にはこれら事業の重要性にかんがみ、文部省及び法務省から財団法人としての許可を受け、また十一月には外務省も加えた三省の共管となった。同協会の審査・認定事業は、文部省の認定事業とされているほか、法務省の入国・在留管理にも反映されている。同協会によって認定された日本語教育施設は、三年末現在四九七施設に上っている。

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