四 大学等における留学生の受入れ体制

受入れ体制の整備充実

 特に昭和五十年代の後半から留学生が急増する中で、我が国への留学希望者に対する海外での情報提供、適切な入学選考方法、日本語予備教育などの留学準備体制及び大学等における受入れ体制の整備が重要な課題とされ、積極的な施策が講じられてきた。

 これまで、海外における留学情報の提供事業は、財団法人日本国際教育協会に五十五年に設置された留学情報センターにおいて実施されてきたが、平成元年度からは、直接に海外の留学希望者に教育研究情報の提供を行うための日本留学説明会を開始することとし、初年度にマレーシア、タイ、インドネシアで実施して以来、韓国、中国等へその対象地域の拡大が図られた。

 国費留学生の大学入学前予備教育は、昭和二十九年から、学部レベルは東京外国語大学附属日本語学校で、大学院レベルは大阪外国語大学留学生別科で実施してきたが、その後の国費留学生の増加に対応するため、逐次その充実を図ってきた。学部レベルは、平成三年度から大阪外国語大学でも実施することとし、留学生別科を改組して学部レベル及び大学院レベルの総合的な予備教育機関として留学生日本語教育センターを設置した。また、大学院レベルの予備教育については、昭和五十四年度に名古屋大学でも開始されたのに始まり、予備教育と専門的な教育研究との連携に配慮しつつ順次整備が進められ、現在合わせて九国立大学で実施されている。また、外国人留学生については、一般教育科目として外国語等に代えて日本語・日本事情を履修できることとし、三十六年から、その担当教官の配置を進めてきており、平成三年度までに七三大学に配置した。さらに、留学生に対する教育研究指導上の教官の負担を軽減するため、留学生数の多い学部または研究科の基幹的講座に留学生担当の講師を昭和五十九年度から配置しており、平成三年度まで六一大学に配置した。

 これらの留学生に対する留学予備教育及び日本語・日本事情等の一元的・体系的実施と留学生の教育研究上、社会生活への適応上の悩みに関する指導体制を確立するための学内共同教育研究施設として、二年度から、計画的に留学生センターが整備されてきており、三年度までに東京大学など六大学に設置した。

 また、留学生の円滑な教育研究の遂行のため、三年度現在、一〇大学の大学院研究科等において、英語による授業を行うコースを開設している。

 事務体制の整備に関しては、留学生数の増加に伴う業務量の増大と複雑化に対応するため、昭和四十七年度から業務担当職員の配置を行っており、平成三年度までに四六大学に配置した。さらに、留学生センター設置の六大学については、留学生の受入れから帰国まで一貫してフォローした各種世話業務を実施するため留学生課又は留学生主幹を整備した。なお、留学生の宿舎については、従来からの外国人宿泊施設管理要員を配置しており、三年度までに四四大学に配置した。経費についても、国立大学においては、留学生数に配慮した教育経費の配分など特別な措置をとるとともに、留学生を受け入れている私立大学等に対しては、日本私学振興財団を通じて昭和五十一年度から、受入れ留学生数や日本語・日本事情に関する科目の実施状況に応じて助成を行ってきた。

安定した生活基盤の確立

 留学生の充実した勉学生活を支える安定した生活基盤を確立する上で、奨学金等の充実を図ることはもとより、特に厳しい住宅事情にある我が国においては、留学生のための宿舎の確保が大きな課題とされてきた。

 このため文部省では、国立大学の留学生宿舎の整備を進め、最近の十年間を中心にこれまで四五大学五二施設を整備した。また、財団法人日本国際教育協会においては、駒場留学生会館及び関西留学生会館の運営を行うとともに、平成二年には祖師谷留学生会館を開館したほか、財団法人国際学友会においては、既設の留学生寮の運営に加え、昭和四十七年に仙台留学生会館の開館、六十二年に大阪国際交流センター国際学友会館新築移転、平成二年には仙台留学生会館別館の整備を行った。さらに、元年度に財団法人学徒援護会は財団法人内外学生センターと名称変更するとともに、新たに留学生に対する援助事業を開始し、東京学生交流会館及び三年に開館した福岡学生交流会館における留学生への宿舎提供事業のほか、各種の宿舎確保事業を実施している。これらに加え、財団法人留学生支援企業協力推進協会が昭和六十二年度から開始した社員寮提供事業や地方公共団体による留学生宿舎の建設など、各方面の協力により、留学生のための宿舎の確保が図られた。文部省では、これらの財団に対する補助の充実や、地方公共団体による留学生宿舎建設費に対し財団法人日本国際教育協会を通じて建設奨励金を支給する制度を平成元年度から開始するなどにより、留学生宿舎の確保に努めている。

 税制上も、奨学事業や学生寄宿舎事業に係る特定公益増進法人に対する寄附金についての損金算入(法人)や寄附金控除(個人)及び学生寄宿舎設置法人の固定資産税の非課税措置等に加え、昭和六十年度には、留学生宿舎設置法人の不動産取得税の納税免除措置が創設され、平成四年度には、留学生交流推進事業に係る特定公益増進法人に対する寄附金についての損金算入(法人)や寄附金控除(個人)が創設された。

地域における受入れ体制整備とアフターケアの充実

 各地域において、大学を中心に官民一体となった留学生受入れ体制を整備することが重要であるとの観点から、地域の留学生交流推進会議の設置を推進してきたが、昭和六十一年に兵庫県に設立されて以来、現在までにほぼすべての都道府県に設置され、地域の特色を生かした種々の留学生支援活動が展開されるに至った。また、帰国留学生が我が国とそれぞれの母国との架け橋として活動ができるよう、財団法人日本国際教育協会を通じて専門誌の送付等の各種のアフターケア事業を実施してきたが、五十一年度からは、帰国後五年以上経過した留学生を日本に招へいして研修させる制度を開始し、その充実に努めている。

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