二 留学生受入れ一〇万人計画

 既に見たように、昭和五十年代中ごろ以降我が国への留学生数は飛躍的増大を遂げたが、このような増加を促進する長期的・総合的留学生政策の展望を示したのが、中曽根総理大臣の指示により設けられた「二十一世紀への留学生政策懇談会」が五十八年八月に提出した報告書「二十一世紀への留学生政策に関する提言」であった。文部省はこれを受けて、提言の具体的なガイドラインの策定を有識者に委嘱し、五十九年六月その報告書「二十一世紀への留学生政策の展開について」を得た。これらの報告書は、留学生受入れ数を二十一世紀初頭には当時のフランス並みの一〇万人に増加させるとの目標を掲げるとともに、その実現に向けて、世界に開かれた大学を建設し、国際人としての日本人を育成するという見地に立った、国による新しい留学生政策の展開等に努力することを基本としつつ、留学生の受入れに関する各種施策の一層の充実と改善が必要であると指摘した。

 留学生の交流は、我が国と諸外国相互の教育研究水準の向上及び相互理解の増進に寄与するとともに、特に相手国が開発途上国の場合は人材養成への協力という点から重要な意義を有するものである。文部省では、これらの提言及び六十三年に留学生受入れ体制の一層の整備充実を政府が一体として進めるために発足した「留学生等の交流推進に関する閣僚懇談会」のまとめ等も踏まえ、各般の施策を積極的に推進してきた。

 さらに、その後、私費留学生の生活・居住環境の悪化等新たな問題点も指摘されるに至ったことから、文部省では、平成二年五月に「二十一世紀に向けての留学生政策に関する調査研究協力者会議」を発足させ、留学生受入れ一〇万人計画の円滑な達成のために従来の施策を見直すとともに、今後のあるべき留学生政策について検討を行っているところである。

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