二 第二国立劇場(仮称)の設立準備

 文化財保護委員会に設置された「芸術施設調査研究協議会」の昭和三十一年の答申に基づき、四十一年に我が国古来の伝統的な芸能の公開、伝承者の養成等を行う国立劇場が設置されたが、これは「日本民族の文化遺産である古典芸能を正しく保存するとともに、新しい世代の芸能創造発展を図る」という同答申に示された国立劇場の目的の前半部分を実現したのにとどまった。

 こうした経緯から、オペラ、バレエ、ミュージカル、現代舞踊、現代演劇等の現代舞台芸術の振興及び普及を図ることを目的とする第二国立劇場(仮称)の設立に対する要請が、国立劇場設立当初から関係者の間で起こっていた。この要請にこたえるため、文化庁は四十六年以来設置準備のための調査を実施するとともに、四十七年十二月第二国立劇場(仮称)設立準備協議会を発足させ、基本構想の検討を開始した。専門家による検討の結果、五十一年五月には、同協議会で基本構想案が承認された。

 用地は、五十二年十二月文化庁から大蔵省に対して通商産業省東京工業試験所跡地の提供方を依頼したのを受けて、五十五年五月には、国有財産中央審議会において同跡地を用地として利用する旨の答申がなされた。ところが、同跡地が、現代舞台芸術のための劇場の用地として適当かどうか等について一部に議論が起こり、結局、この議論の収束を待って劇場建築のための設計競技が国際的な規模で実施され、入賞最優秀作品を発表し、基本設計に入ったのは、六十一年のことであった。

 建築の実施設計も進むうち、平成元年三月には、「国立劇場法の一部を改正する法律」の成立により古典芸能のための国立劇場を管理運営している特殊法人国立劇場(二年三月日本芸術文化振興会と改称)が第二国立劇場(仮称)の設置者となることに決定するとともに、二年三月には、用地が特殊法人に現物出資され、ここにようやく、第二国立劇場の設置準備が新たな段階に進むこととなった。

 現在、設置者である特殊法人日本芸術文化振興会と隣接する地権者は共同して、第二国立劇場(仮称)及び周辺街区を劇場の立地にふさわしい文化的な雰囲気のある街区とするため、都市計画法上の特定街区として一体的に整備することとしている。管理運営については、芸術家、芸術団体などの創意を最大限に取り入れた運営により、活力ある現代舞台芸術の創造を確保するために、財団法人を設立して包括的に委託することとし、そのための具体的検討を進めている。

 第二国立劇場(仮称)は、現代舞台芸術のセンターとして、オペラ、バレエ、現代舞踊等の公演を行う大劇場、主として現代演劇の公演を行う中劇場、オープンステージを持つ小劇場の三つを総合した劇場であり、また、実演家及び舞台の技術者等の研修、情報センターとしての機能を併せ持つよう計画されている。劇場の完成、開場の暁には、四面舞台を備えた国際的にも遜(そん)色ない劇場となり、我が国舞台芸術振興の中核として、また国際文化交流の拠点として大きな役割を果たすことが期待される。

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