二 大学院の整備・充実

 大学院が、独創的、先駆的な研究を遂行し得る高度な研究者や社会の各分野で必要とされる多数の研究者の養成について、中心的機関として果たす役割は極めて大きい。

 大学院は、戦後の新しい学校制度においては、その体系の最高段階に位置するものとして大学に置かれた。新制の大学院は、昭和二十五年に初めて設置されて以来、高等教育全体の規模の急速な拡大の中、拡充の方向をたどり、四十年代の末には、大学全体の約半数に大学院が設置されるに至っていた。

 しかしながら、研究者養成の観点からは、当時の大学院博士課程における教育研究の状況は必ずしも満足すべきものではないとの指摘もなされ、その在り方の根本的な改革、制度の弾力化、学生の処遇等が課題となっていた。こうした状況の下、四十九年には、大学院設置基準が文部省令として制定されることにより、大学院博士課程の目的が高度の研究能力を有する者の養成であることが、明確に示された。また、五十一年には、独立研究科やいわゆる独立大学院の制度が発足するなど、学問の新しい展開に対応できる制度の弾力化が進められた。さらに、五十年代を通じて、規模の拡大に伴う教育条件の低下の改善等を目指した高等教育計画により、高等教育の質的充実が図られた。また、各大学の創意と工夫を奨励し、特色を発揮した多様な教育研究を展開し得る道を開くため、平成元年九月に大学院設置基準の改正等が行われた。なお、今後の大学院の整備については、三年五月及び十一月に大学審議会から答申が行われた。同答申においては、優れた研究者の養成等の観点から、大学院に期待されている役割が増大しているのに対し、現状においては、質・量の両面にわたり不十分な点が多く、教育研究組織の整備、大学院学生の処遇の改善等を進めるとともに、十二年度における大学院学生の規模については少なくとも現在の二倍程度に拡大する必要がある旨指摘されており、その整備充実が課題となっている。(第五章第四節参照)

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-- 登録:平成21年以前 --