一 学術研究の発展とその背景

 我が国の戦後の学術研究は、昭和二十年代の研究体制の変革期を経て、三十年代後半からの経済の高度成長を背景として、大学の規模の拡大、国立学校特別会計制度や科学研究費補助金制度等の財政基盤の整備、共同研究体制等の研究組織の整備など、量的拡大が図られるとともに基盤整備が着実に進められた。

 四十年代も終わりに入ると、四十八年の第一次石油危機を契機として我が国の経済は安定成長期を迎え、その後五十年代後半には、財政再建、緊縮財政政策の下、行財政の面でも合理化やいわゆる予算のゼロあるいはマイナスシーリングが行われるなど、我が国の学術研究は次第に厳しい条件の下に置かれることとなった。また、学問の専門分化の進展と境界領域・複合領域の発展、加速器・核融合実験装置・大型望遠鏡・衛星・ロケットなどの大規模な設備を必要とするいわゆるビッグ・サイエンスの登場、学術の国際交流の活発化、学術情報の増大など学術研究の内在的発展から生ずる新たな研究上の要請が生じてきた。一方、資源エネルギー、環境保全、海洋利用、人口問題、地震予知、がん対策などの問題の解決に貢献するため、学術研究に対する社会的要請が増大してきた。

 このように、限られた予算の中で増大する様々な学術研究の課題にこたえなければならないという困難な状況の中で、研究費については、基盤的研究費を確保するとともに、独創的・先駆的研究を重点的に助成するための科学研究費の拡大が図られた。研究組織については、研究の進展に柔軟に対処できるよう共同利用にも配慮した研究組織の整備が進められた。研究者の養成については、大学院の整備充実、フェローシップ制度の充実等により、特に優れた若手研究者の養成・確保と研究の流動性の促進が図られた。

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