二 学校保健の充実

保健教育と保健管理の充実

 学校保健は、健康な生活に必要な知識や能力の育成を目指して教科体育・保健体育や特別活動など学校の教育活動全体を通して行う保健教育と、学校保健法に基づいて行う健康診断、環境衛生の改善などの保健管理とに分けられる。

 このうち、保健教育については、昭和五十二年及び五十三年の学習指導要領の改訂において、小学校では児童の身近な生活における健康・安全の問題の理解、中学校では生活における健康問題の基本的事項の理解、高等学校では健康の総合的な認識と集団の健康の理解に重点を置いて内容の改善を行った。また、平成元年の改訂においては、臨時教育審議会の答申の趣旨も踏まえ、児童生徒が発達段階に応じて自主的に健康で安全な生活を実践することのできる能力と態度を育成することを重視して、小・中・高等学校を通じて心の健康及び生活行動と健康とのかかわりに関する内容を充実した。

 一方、保健管理については、児童生徒の疾病構造の変化等を背景として、昭和四十三年九月、文部大臣が保健体育審議会に「児童生徒等の健康の保持増進に関する施策について」諮問し、四十七年十二月、答申が出された。この答申は、児童生徒の疾病異常の早期発見、事後措置など健康の回復と維持はもとより、健康の増進に一層留意した積極的な学校保健を指向し、「健康診断の項目および方法の改善」、「学校環境衛生の改善」、「学校保健センター的な機関の設置」等多岐にわたったものとなっており、その後の学校における保健管理の充実方策の基本となった。文部省では、この答申及びその後の状況変化等に対応して、次のような施策を講じてきた。

 まず、児童生徒の定期健康診断については、四十七年答申に基づき、翌四十八年に学校保健法施行規則を改正し、「心臓」及び「尿」を必須検査項目に追加するとともに、「栄養状態」、「視力」等について検査内容の充実を図った。また、その後の児童生徒の健康問題の変化等に対応し、健康診断の在り方を検討するため、六十二年、財団法人日本学校保健会内に「健康診断調査研究委員会」が設けられたほか、平成三年度からは、児童生徒のアレルギー等の新しい健康問題について定点的に観察する「児童生徒の健康状態サーベイランス事業」が開始された。

 教職員の健康診断については、成人病対策として、昭和四十七年答申を受けて翌四十八年に同規則を改正し、「尿」及び「胃の疾病及び異常の有無」を追加し、さらに平成二年の改正により、疾病の発生予防にも重点を置いて、「肝機能検査」、「血中脂質検査」等を加えた。

 学校環境衛生については、昭和四十七年答申で環境衛生検査の実施基準の策定が提言されたのを受けて検討が進められ、五十三年に学校保健法及び同法施行規則を改正し、環境衛生検査を法律上明示するとともに、計画的にこれを実施しなければならないこと、及び検査の項目と事後措置、日常における環境衛生について規定を設けた。

 一方、財団法人日本学校保健会は、学校医、学校歯科医、学校薬剤師のほか学校保健関係教職員などから組織され、学校保健推進のための自主的な活動を続けてきたが、四十七年答申において、学校保健に係る重要問題に関し、調査、研究、指導の役割を持つ学校保健センター的な機関の設置が提言されたことを踏まえ、文部省では、同会においてその機能を果たすことができるよう、四十八年度以降、毎年同会に補助を行っている。同会では、その時々の課題に対応して委員会を設け、調査研究等の事業を行い、また、その成果として「喫煙・飲酒・薬物乱用防止に関する保健指導の手引」、「エイズ問題を含む性に関する指導推進事業報告書」等を刊行し、学校等に配布している。

養護教諭の配置促進等

 養護教諭は、児童生徒の養護をつかさどる専門的職員として、学校における保健活動の中核を担っているが、学校教育法附則で、当分の間置かないことができるとされており、配置の促進が課題とされてきた。文部省では、昭和三十四年度以降、定数の改善を図っており、公立義務教育諸学校の第四次定数改善計画(四十九~五十三年度)では小・中学校とも本校数の四分の三の学校に配置し、さらに、第五次定数改善計画(五十五~平成三年度)では四学級以上の学校に養護教諭を一人配置することを基本とした改善を行い、ほぼ全校への配置がなされるに至った。また、養護教諭の現職教育充実のため、昭和五十五年度から養護教諭実技講習会、六十年度からヘルスカウンセリング指導者養成講座を開催しているほか、平成元年度からは新規採用者研修を開始した。

 一方、学校医、学校歯科医及び学校薬剤師についても、その職務の重要性にかんがみ、配置の促進を図るため、地方交付税における報酬単価の引上げに努めてきている。

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