一 国立学校特別会計予算の変遷

 国立学校特別会計は、昭和三十九年に、国立学校の充実に資するとともに、その経理を明確にするため、一般会計と区分して設置された。その歳入としては、一般会計からの繰入金、授業料等収入、附属病院収入、学校財産処分収入等があり、歳出としては、国立学校の運営費、施設費等がある。国立学校特別会計が発足した三十九年度の歳出予算額は、一、四〇〇億円足らずであったが、四十七年度には四、〇〇〇億円近くに達し、その後、五十六年度までの間は歳出予算の規模も年平均約一五%増加した。

 その後、平成三年度においては、国立学校特別会計予算の規模は、初めて二兆円台の二兆九二八億円の規模に達し、また、一般会計からの繰入額は一兆二、六五九億円となったが、昭和五十六年に設置された臨時行政調査会の答申を受けて財政再建のためのシーリング枠の設定等が行われたため、五十七年度からの国立学校特別会計の歳出予算の規模は、年平均四%台の低い伸びにとどまり、平成四年度の歳出予算額は、二兆二、一七三億円となっている。この間、施設設備費が一時期に比較して減額となっており、また教育研究面の基盤となる経費である学生当及び教官当積算校費の単価は、昭和五十九年度から平成元年度まで据置きとなっているなど、教育研究条件を圧迫している。なお、国立学校特別会計の歳入に占める一般会計からの繰入率は、昭和四十八年度までは八〇%台を維持していたものの、その後次第に減少し、平成四年度には、六二・八%となっている。これは、厳しい財政事情の下、国立学校特別会計の充実を図るため、授業料等収入、附属病院収入、学校財産処分収入、外部資金収入等の自己収入の確保に努めたことによるものである。このうち、外部資金収入の増加傾向は、奨学寄附金の受入れ、民間等との共同研究制度、受託研究制度など、大学と社会の連携・協力の仕組みにより、各大学がその主体性の下に社会の諸要請に対応してきていることを表していると言うことができる。

 また、昭和五十七年以降、国の厳しい財政事情の下で国立学校の教育研究施設が老朽化・狭隘(あい)化し、その解消が重要な課題となった。このため、平成四年度には、老朽化・狭隘化が特に著しく、かつ、緊急に整備を要する大学の学部、研究所等の改築、改修等を「特別施設整備事業」として計画的に実施するため、国立学校特別会計に、「特別施設整備資金」が設けられた。これにより、国立学校の移転整備等に伴い不要となった跡地の処分により一時的に多額の処分収入が生じる場合に、これを単年度で費消することなく資金として保有し、この資金を活用して計画的に事業を実施することが可能となった。なお、これに関連して国立学校の財産の有効活用等国立学校の財務の改善に資するための業務を行う機関として、四年七月国立学校財務センターが設置された。

 今後、大学審議会の答申等を踏まえ、特色ある大学教育の推進、大学院の高度化や量的整備、学術研究の振興などを推進するための必要な予算額の確保が国立学校特別会計の大きな課題となっている。

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