二 人的交流

 人的交流としては、大学教員の外国への派遣、外国人教員の大学への受入れ、学生の海外への留学、外国人留学生の受入れ、さらには帰国子女の受入れ等の多方面の課題がある。教員の外国への派遣については、国公私立大学等の教員の教授・研究能力の向上を目的とした文部省の在外研究員等派遣事業により、平成二年度には、一、三九〇人の派遣が行われた。私立大学にも適用されることとなったのは、昭和四十九年度からである。このほか、毎年度五〇名程度、外国語教員の資質向上のために英国、ドイツ、フランス、オーストラリアに三か月から一年間の教員の派遣が行われている。

 大学における外国人教員の受入れ制度については、明治以来、外国人教師又は講師としての任用制度があったが、国公立大学の正規の教授等に外国人が就くことはできなかったため、昭和五十七年九月、大学における教育、研究の進展を図るとともに学術の国際交流の推進に資することを目的とする「国立又は公立の大学における外国人教員の任用等に関する特別措置法」が議員立法として制定された。法律では、外国人の教授等が教授会、評議会等に参加することができること、任用については各大学の定めるところにより任期制を採用できること、従来の外国人教師等の制度は存続することなどが規定されている。

 この法律に基づく外国人教員の数は、国立大学等に限った場合、平成三年現在で一六五人と、この五年前の四・六倍にまで増加した。また、従来からの外国人教師等を含む外国人教員の数は、国公私立大学等合わせて、三年には三、〇一四人(本務者)となっており、この二十年間で三・二倍に増加している。これら外国人教員は、語学の会話指導などに効果的な役割を果たしている。

 一方、学生の海外への留学状況については、私費留学が中心となっており、一九九一年版ユネスコ統計年鑑等によれば、アメリカを中心に主要五〇か国の高等教育機関に在籍する日本人学生数は三万七、〇〇〇人である。

 外国からの留学生の受入れは、いわゆる留学生の受入れ一〇万人計画により、最近十年間でそれまでの六倍と顕著な伸びを示しており、三年には、四万五、〇〇〇人に達し、そのうち学部における留学生は、国立大学四、四〇〇人、公立大学五〇〇人、私立大学一万二、三〇〇人で、総数一万七、二〇〇人、大学院については、国立大学九、九〇〇人、公立大学六〇〇人、私立大学三、四〇〇人で、総数一万三、八〇〇人、短期大学については一、三〇〇人、高等専門学校については二〇〇人、専修学校については一万二、五〇〇人をそれぞれ受け入れている。

 また、海外に滞在し、現地での教育を受けた後に帰国する、いわゆる帰国子女の我が国の大学への受入れについては、昭和六十二年度現在で、国立大学では四七大学一一三学部、公立大学では一三大学三二学部、私立大学では七三大学一六三学部が面接、小論文を含む特別選抜を行っている。

 なお、国際的な人的交流に当たっては、学校制度の差異が障壁になることが多く、国内の制度の弾力化が重要な課題となってきたことから、文部省では、留学生や帰国子女の我が国の大学、短期大学等への受入れを容易にするため、五十三年以降、大学入学資格、学期の区分、入学時期等の弾力化を進めてきた。

 入学資格については、1)文部大臣が高等学校の課程に相当する課程を有するものとして指定した在外教育施設の課程の修了者(五十三年)、2)国際バカロレア資格を有する者で十八歳に達した者(五十四年)、3)外国において中等教育を修了しても学校教育の十二年の課程を修了したことにならない者で一定の要件を満たしたもの(五十四年)、4)外国において我が国の大学入学資格検定に相当する試験に合格した者(五十六年)についてそれぞれ大学入学資格を認める学校教育法施行規則等の改正を行った。さらに、大学卒業までに十六年を要しない国からの留学生等で一定の要件を満たしたもの(五十六年)に対する大学院入学資格の認定、インドシナ難民の増加に対応した卒業証明の方法の簡素化(五十六年)、中国からの引揚者等の子女に対する一定の条件の下における大学入学資格の認定(平成元年)等を内容とする通知、告示の改正(元年)を行った。

 学期の区分等については、昭和四十八年に、諸外国の大学との間の学生の交流に資する等の観点から、三学期制を採ることができるようにするための大学設置基準の改正を行うとともに、五十一年には、四月以外の学年の途中における入学を認める学校教育法施行規則の改正を行った。その結果、三学期制を採用している大学は、平成元年度現在で国立三四大学、公立四大学、私立二一大学、四月以外の入学を実施している大学は、昭和六十三年度現在で国立六大学、私立七大学となっている。

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