二 主任制度の創設

主任の省令化

 学校における主任は、明治以来の伝統を持つものであり、特に戦後、教育に対する要望の強まりや学校の大規模化の趨(すう)勢に応じ、学校運営上の必要により、文部省令で定める以前から既に全国的に普及していた。一方、昭和四十六年に出された中央教育審議会の答申「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について」では、校長の指導と責任の下に生き生きとした教育活動を組織的に展開できるよう、校務を分担する必要な職制、すなわち、教頭、教務主任、学年主任、教科主任、生徒指導主任などの管理上、指導上の職制を確立しなければならないと述べられていた。この指摘を受けて、文部省では、主任の制度化が学校運営上の重要な課題であることを考慮し、その省令化等について検討が続けられた。

 この主任の省令化に当たっては、主任制が学校における管理運営体制の強化を図るものであり、学校運営の中に上命下服の命令体制を持ち込むものであるとして当初から反対の立場を採る日教組等の一部の教職員団体は、ストライキを含む反対闘争を展開した。このような中で、文部大臣は主任制は調和のとれた学校運営を目指し、学校における教育指導の充実を図るためのものであるとの見解(五十年十二月「調和のとれた学校運営について」)を発表するとともに、更にその補足として、主任等の制度化の目的は教育指導面の強化にあること、主任は管理職ではない等といった見解(同年十二月「主任の制度化にあたって」)を示した。そして、同年十二月、主任の省令化を内容とする「学校教育法施行規則の一部を改正する省令」が公布され、翌年三月から施行され、主任の制度化が図られた。これを受けて各都道府県において学校管理規則の改正が行われ、施行日までに一四県、五月までに四二県で制度化され、この段階で大部分の県及び市町村で主任制が実施された。そして、残る五都府県についても、五十六年の沖縄県を最後に実施され、主任制は全国的な実施を見た。

主任手当の拠出

 主任手当については、人材確保法による第三次給与改善としての人事院勧告に基づき、国立学校に置かれる主任等のうち教務主任、学年主任等に対して教育業務連絡指導手当(いわゆる主任手当)として支給されることとされ、公立学校の教員についても昭和五十七年までにすべての都道府県で支給されることとなった。

 日教組等一部の教職員団体は、主任制度そのもの及びそれに基づく主任手当支給に反対してきたものの、主任制度自体が定着してきたため、主任制反対闘争の重点として主任手当拠出運動を展開した。この主任手当拠出運動は、主任制度に反対し、主任手当が不要であることを国民に訴える目的で、主任等が自らに支給された主任手当を組合に拠出し、その拠出金を、例えば、奨学金の給付や住民への文化活動等に充当しようとするものである。

 この主任手当の拠出運動が組織的、継続的な運動として全国的に行われていることは主任制度及び主任手当支給の趣旨に反するものであり、国民の教員に対する不信を招き、ひいては人確法の趣旨を損なうおそれがあることにかんがみ、文部省は、五十八年一月に各都道府県・指定都市教育委員会に対して「主任制度及び主任手当の趣旨の徹底について」通知した。そして、各教育委員会においても、主任手当の拠出を是正するための努力が払われた結果、近年、手当を拠出する者が減少するとともに、拠出金が教職員組合が当初設定した目的に必ずしも使われていないなど拠出運動自体の形骸(がい)化が見られ、主任制度は確実に定着してきている。

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