三 教科書無償給与制度の維持

 教科書無償給与制度は、昭和三十七年の「義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律」及び三十八年の「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」によって確立し、三十八年からの年次計画を経て、四十四年には義務教育諸学校全学年の児童生徒に対する無償給与が完成した。以来、教科書無償給与制度は憲法第二十六条の精神をより広く実現するものとして定着し、広く国民の支持を得て実施されてきた。

 しかし、この制度に対しては主として財政的な見地からしばしば見直し論が主張された。五十六年には臨時行政調査会が、教科書無償について「廃止等を含め検討する。」と答申したことから議論を呼んだ。この答申の趣旨は六十一年の臨時行政改革推進審議会答申にも引き継がれた。しかし、六十二年の臨時教育審議会第三次答申において「今後、社会・経済や国民の意識・教育観の変化、教科書の在り方をはじめ初等中等教育全体の在り方の動向との関連において検討を続けることとし、当面、義務教育段階の無償給与制を継続する。」との結論に達し、同年、臨時行政改革推進審議会も「義務教育教科書無償給与制度については、臨時教育審議会の答申の趣旨を踏まえ、検討を行う。」と答申するに至った。この間、教科書無償制度の在り方については、与党の政務調査会、文教部会、文教制度調査会などにおいても種々論じられ、また、五十八年には教科書無償給与制度は維持すべきとする中央教育審議会の答申なども出された。

 一方、教科書無償給与制度の趣旨を徹底するため、文部省では四十一年度以来小学校新入学児童に対する教科書給与袋に制度の趣旨を記載するとともに、五十八年には、児童生徒に対する適切な指導や保護者に対する配慮を求める局長通知を都道府県教育委員会等に発して関係者を指導した。

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