一 養護学校の義務制実施への道

養護学校の整備計画と「義務化」政令

 昭和四十六年五月の参議院内閣委員会において、文部省設置法の一部改正法案に対する附帯決議の一項目として、養護学校義務制実施の促進が採択され、さらに同年六月に出された中央教育審議会答申が「これまで延期されてきた養護学校における義務教育を実施に移す」ことを提言したのを受けて、文部省では四十七年度を初年度とする特殊教育拡充計画を策定した。特に養護学校については養護学校整備七年計画を立て、最終年度の五十三年度までに、全対象学齢児童生徒を就学させるのに必要な養護学校の整備を図ることとした。

 この計画を前提に、四十八年十一月に、五十四年四月から養護学校の就学及び設置の義務制を実施する旨の予告として、「学校教育法中養護学校における就学義務及び養護学校の設置義務に関する部分の施行期日を定める政令」が公布され、五十四年度から養護学校教育が義務教育になることが確定した。

養護学校整備のための行財政施策

 右の政令公布に前後して、文部省では、養護学校未設置県の施設の新増築費補助率を三分の二に嵩(かさ)上げするとともに、昭和四十九年度からの第四次教職員定数改善計画において教職員定数の充実を図り、養護学校の整備を図ることとした。また、同年度から五十三年度まで養護学校教育義務制等準備活動費補助、特殊教育訪問指導費補助を行い、また五十九年度まで介助職員経費補助を行った。こうした中で、東京都では早くも四十九年度から希望者全員就学を実施するに至った。

 これに先立つ四十八年度には、四十六年度設置の国立特殊教育総合研究所が全面的に事業を開始し、これと相互協力の下に重度・重複障害児の教育を行う学校として、国立久里浜養護学校を同研究所に隣接して設置した。また、四十八年七月には、特殊教育の改善に関する調査研究会を設けた。同研究会では、特殊教育の対象の拡大とともに課題となった重度・重複障害児教育の在り方に関し調査研究を行い、五十年三月、在宅児に対する訪問教育、就学猶予・免除の運用等を内容とする報告をまとめ、次いで軽度心身障害児に対する学校教育の在り方に関する調査研究を行い、五十三年八月に報告をまとめた。義務制実施を半年後に控えた五十三年十月には、これら調査研究の成果に基づき、義務制実施後の就学指導の基準として、初等中等教育局長名で「教育上特別な取扱いを要する児童・生徒の教育措置について」 (第三〇九号通達)が出され、現在に至っている。

養護学校、特殊学級の発展

 右の拡充計画の期間中に養護学校は着実に整備され、昭和五十三年には学校数で五〇〇校、児童生徒数で五万人を超えるに至った。他方、特殊学級についても同計画において増設することとされており、学級数は四十七年の一万七、三三〇から五十三年の二万一、五〇八学級に伸びた。しかし、児童生徒数は、養護学校が整備されたこと等により、一三万人余から一二万五、〇〇〇人余に減少した。なお、自閉症が情緒障害として位置付けられ、その教育が定着したのは、この時期である。

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