三 定時制・通信制教育の振興

定・通教育の状況の変化

 勤労青少年教育として重要な役割を果たしてきた高等学校の定時制課程は、昭和四十年代に生徒数の大幅な減少を生じた。その後の生徒数も、四十五年度三七万人、五十年度二四万人、五十五年度一五万人と減少し、その後若干の増減があったが、平成三年度も一四万人にとどまっている。こうした生徒の減少の背景には、言うまでもなく全日制課程への進学率の急激な上昇や社会経済の著しい変化がある。またこの間、定時制課程に学ぶ生徒の実態は、勤労青少年のほか、全日制課程に適応できなかった生徒やいったん社会に出た後入学してくる者の増加など、多様なものに変化してきた。一方、通信制課程については、昭和四十年度以降生徒数は一二万人から一六万人の間をほぼ横ばい状態で推移してきている。その生徒には主婦や高齢者など必ずしも卒業を目的としないで、特定の科目のみを履修する者も増加しており、生涯学習的な性格を強めている。

 文部省では四十七年八月に高等学校定時制・通信制教育改善調査研究協力者会議を設けて検討を進め、同会議は修学条件の改善や教育課程の改善等について報告を行った。教育課程については、五十三年の高等学校学習指導要領の改訂において、卒業に必要な単位が八〇単位以上に削減されたこと、職業に関する教科・科目の一部をこれと密接に関連する実務で代替できること、大学入学資格検定の合格科目をもってそれに相当する教科・科目の修得とみなすことができることなど定時制・通信制教育に関する改善が図られた。また、修学援助の措置としては、四十八年に定時制教科書給与が、四十九年には定時制教育修学奨励費が、五十年には定通教育修学指導事業が、また五十一年には通信制教育修学奨励費が、それぞれ開始された。

定・通教育の新たな展開

 昭和五十年代以降の定時制通信制教育は、従来の勤労青少年教育機関としての役割に加えて、教育の機会均等の拡大及び生涯学習の観点から多様な履修形態を提供する後期中等教育機関としての役割の比重が一層増大してきた。また、臨時教育審議会からは、修業年限の「四年以上」から「三年以上」への弾力化、技能教育施設指定権限の都道府県への委譲が提言された。このため文部省では、高等学校定時制通信制教育検討会議を設けて検討し、六十二年十二月の同会議の報告に基づき平成元年に学校教育法等を改正し、上述の趣旨の実現を図った。元年に改訂された学習指導要領においても定時制・通信制課程の特性に配慮した改善が行われており、生徒の実態に応じた教育の展開が更に図られようとしている。

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