二 情報化への対応

情報教育の始まり

 我が国の初等中等教育における情報化への対応は、昭和四十年代後半に、高等学校の専門教育として情報処理教育が行われたことから始まった。例えば、工業では情報技術科、商業では情報処理科が設置された。その後、情報処理教育は高等学校を中心に徐々に拡大されてきた。

 一方、学校における指導方法についても、従前の一斉指導中心の考え方から、児童生徒一人一人の特性等を大切にする指導の重要性が認識され、視聴覚機器や教育機器等を活用して情報を提示したり、処理するなど、指導方法の工夫改善の動きが高まってきた。

情報教育の推進

 昭和六十年六月の臨時教育審議会第一次答申は、教育改革の基本方向の一つとして情報化への対応について提言した。また、同年八月には、文部省の「情報化社会に対応する初等中等教育の在り方に関する調査研究協力者会議」が第一次審議取りまとめを公表し、そこでは情報化社会における学校教育の役割を述べるとともに、学校教育におけるコンピュータ利用の基本的な考え方として、学校教育本来のねらいの達成、新しい資質の育成、発達段階に応じた導入、諸メディアの活用による学校の活性化などが示された。

 六十一年四月の臨時教育審議会第二次答申は、前述の情報化協力者会議の第一次審議取りまとめで示された将来の高度情報社会に生きる児童生徒に必要な「新しい資質」を、「情報活用能力(情報リテラシー)」として定義付け、「読み、書き、算盤(そろばん)」と並ぶ基礎・基本として、学校教育においてその育成を図ることを提言した。

 臨時教育審議会の答申では、情報活用能力の育成のほか、情報手段の活用による学校教育の活性化、情報モラルの確立、情報化の「光と影」への対応についても触れられた。

 六十二年十二月の教育課程審議会の答申では、「社会の情報化に主体的に対応できる基礎的な資質を養う観点から、情報の理解、選択、処理、創造などに必要な能力及びコンピュータ等の情報手段を活用する能力と態度の育成が図られるよう配慮する。なお、その際、情報化のもたらす様々な影響についても配慮する」として、情報教育の重要性が盛り込まれた。さらに、平成元年に告示された学習指導要領では、各教科・科目等の中に情報活用能力の育成をはっきりと位置付け、1)中・高等学校の「数学」、「理科」でコンピュータに関する基礎的な内容を取り入れたこと、2)中学校の「技術・家庭」に新たな選択領域として「情報基礎」を設けたこと、3)小・中・高等学校を通じて、コンピュータ等教育機器の活用を図ること、などが示された。

情報教育の基盤整備

 情報教育を推進し、情報化への対応を進めるためには、コンピュータ・ハードウエアの整備、教育用ソフトウェアの整備、教員研修の充実等の諸施策を総合的に推進していかなければならない。このため、文部省では、昭和四十年代から、コンピュータを含む教育機器全般の利用について研究を推進する観点から、教育機器研究指定校、研修用の教育機器に対する国庫補助等の施策を進めてきたが、六十年度には、コンピュータを中心とした新しい教育機器等を使用した教育方法の開発研究を促進するため教育方法開発特別設備費補助を創設し、公立の小・中・高等学校及び特殊教育諸学校へのコンピュータ等の導入に対し国庫補助を開始した。さらに、平成二年度からは対象をすべての公立学校に拡大し教育用コンピュータ整備費補助を創設した。また、公立の小・中学校において余裕教室をコンピュータ教室へ改造する際に改造と一体として行われるコンピュータの設置及び私立学校へのコンピュータの導入に対しても国庫補助を行うこととなった。また、教育用ソフトウェアの整備については、昭和六十二年度から情報手段の教育活用に関する実践研究を都道府県教育委員会等に委託し、模範的、先導的な優れた教育用ソフトウェアの研究開発を進めた。また、平成二年度からはソフトウエアの整備費を地方交付税により財源措置するようになった。

 教員研修の充実については、昭和四十五年度から高等学校の情報関連学科の教員及び情報処理教育センターの教員に対して専門的な研修を行ってきたが、六十三年度からは中学校技術科担当教員、高等学校の数学・理科担当教員、情報処理関連学科以外の情報教育担当教員等に対して研修を行い、さらに、平成元年度からは、中学校数学・理科担当教員に対しても研修を拡大した。

 このほか、昭和六十一年度に学校におけるコンピュータ利用等に関する研究指定校を設け、コンピュータを利用した学習指導、コンピュータに関する教育、校務処理におけるコンピュータ利用等についての実践的な研究を開始した。

 また、財団法人コンピュータ教育開発センターが文部省と通商産業省の共管法人として設立され、学校におけるコンピュータ利用促進のための基盤的技術についての研究開発を行っている。

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