一 国際化への対応

国際理解教育の推進

 国際理解教育については、第二次大戦後ユネスコを中心に提唱され、我が国の学校教育においてもかなり重視してきたが、その後の国際化の進展に伴い国際理解教育の充実の必要性が一層強く要請されるようになった。昭和四十九年の中央教育審議会答申や六十二年の臨時教育審議会最終答申においても、国際社会の一員として、国際社会に積極的に貢献するとともに国際社会において真に信頼される日本人の育成の必要性が指摘された。

 学校教育において国際理解教育は、各教科、道徳、特別活動等のそれぞれの特質に応じ、総合的に推進されている。平成元年の学習指導要領の改訂でも、我が国の文化や伝統の尊重と国際理解の推進を改訂の基本方針の一つとして掲げ、各学校段階を通じて、国際理解教育の充実を図るよう各教科等の内容の改善を行った。

 また、六十三年度から、学校教育法施行規則の改正により、高等学校における留学制度が設けられ、高等学校段階の留学生交流が拡大してきたほか、外国への修学旅行や外国の学校との姉妹校交流が活性化するなど、様々な国際交流の機会が増加しており、多様な形態の国際理解教育が活発に展開されるようになってきた。

 なお、このほか教育の国際化の問題として、海外子女教育及び帰国子女教育が重要であるが、これらに関しては第十一章第五節で取り上げているので、ここでは触れないこととする。

外国語教育の改善

 様々な分野における国際化が進展するとともに、世界の国々の相互依存度が一段と強まり、それに伴って外国語によるコミュニケーション能力の育成の必要性が高まってきた。昭和四十九年の中央教育審議会答申「教育・学術・文化における国際交流について」においても、中学校・高等学校における外国語教育については、コミュニケーションの手段としての外国語能力を養成するため教育内容・方法等について一層の改善を図るべきことが指摘された。

 文部省では、外国語教育の改善のため、五十二年度に米国から、その翌年度には英国から、ネイティブ・スピーカーを招致する事業を開始した。これらの事業は、六十二年度からは、文部省、外務省及び自治省並びに地方公共団体が協同して行う「語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム―Japan Exchange and Teaching Program)」として発展し、以後毎年拡充が図られている。平成三年度には、世界八か国から約二、七〇〇名の英語、フランス語及びドイツ語のネイティブ・スピーカーが外国語指導助手として招致され、全国の中・高等学校等で外国語担当教員と協同授業を実施しており、生徒のコミュニケーション能力の育成に重要な役割を果たしている。こうした外国人の招致事業とともに、我が国の学校の英語担当教員の資質の向上を図るため、昭和五十四年度から海外研修を開始し、毎年拡充を図ってきた。

 外国語教育の改善としては、教育内容や教育方法の改善が重要である。平成元年の学習指導要領の改訂では、コミュニケーション能力を一層育成するよう配慮して改善が図られ、中学校については週当たり授業時数三時間を一時間増やすことができることとしたり、高等学校については、聞くこと、話すことの指導が充実するよう、オーラル・コミュニケーションに関する科目を新たに設けるなどの措置を講じた。また、二年度からは、アジアの国々の言語なども含め、英語以外の多様な外国語教育が高等学校で指導されるよう推進施策を実施した。このような施策に加え、外国語教育の改善を図るため、文部省では、二年に外国語教育の改善に関する調査研究協力者会議を開催し、改善の基本方向や具体的改善方策についての検討を開始した。

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