三 社会の変化と教育の対応

 教育の著しい量的拡大に伴い、児童生徒の実態は多様になり、学校教育は従来に比して一段と困難な問題を抱えることとなった。特に物質的に豊かな社会における児童生徒の耐える力の低下、社会の成熟に伴う価値観の多様化と社会の規範力の低下等の状況の中で、学校教育は多くの解決困難な問題に直面することとなった。例えば、校内暴力、いじめ、登校拒否などの生徒指導上の諸問題がマスコミでも大きなニュースとなり、学校も教育行政当局もその対応に苦慮したのは、昭和五十年代以降の特徴的な状況であった。

 一方、国際化や情報化の進展に伴い、学校教育においてもその対応が強く求められるようになった。このため教育課程の改訂において国際理解教育を充実し、高等学校における留学制度を設け、外国語教育の改善のため多数のネイティブ・スピーカーを招致するような諸施策が実施された。また、情報教育に関しては、教育課程に情報教育を採り入れ、学校におけるコンピュータの整備を図るとともに、指導教員の研修等を充実した。

 さらに、五十年代ごろから、一般の社会では広く週休二日制が普及し始め、学校週五日制が現実的な課題となってきた。六十二年の教育課程審議会答申においては、学校週五日制を漸進的に導入することが提言され、これを受けて文部省は、平成元年度から「社会の変化に対応した新しい学校運営等に関する調査研究協力者会議」を発足させ、学校週五日制について研究を始めた。また、調査研究協力校を九都県六八校指定し、二年四月から月一~二回の試行を行い、その実施上の諸問題を具体的に研究した。調査研究協力者会議は、研究協力校の研究成果も踏まえ、四年二月最終報告を公表し、当面、月一回第二土曜日を休校とする段階的実施を提言した。これを受け、文部省では四年九月から月一回第二土曜日を休業とする学校週五日制の実施を決め、四年三月に学校教育法施行規則の改正を行った。学校週五日制の問題は一九九〇年代の学校教育の大きな課題の一つとなっている。

 なお、平成三年の中央教育審議会の答申において、後期中等教育の改革について、学科制度の再編成、新しいタイプの高等学校の奨励、単位制の活用、高等学校間の連携の推進、学校・学科間の移動の弾力化、特に能力の伸長の著しい者に対する教育上の例外措置、高等学校入学者選抜の改善などが提言された。高等学校の改革・再編も国・地方を通じての今後の大きな課題の一つである。

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