一 生涯学習推進体制の整備

生涯学習審議会等

  我が国が二十一世紀に向けて生涯学習社会を実現していくためには、従来の学校教育、社会教育、文化、スポーツといった枠を越えて、学習者の視点からこれら を総合的にとらえ直すことが必要である。文部省では、このような広い視野に立って生涯学習を積極的に振興していくため、平成二年八月、生涯学習の振興のた めの施策の推進体制等の整備に関する法律第十条に基づき、生涯学習審議会を発足させた。

  生涯学習審議会は、学校教育、社会教育及び文化の振興に関し、生涯学習に資するための施策に関する重要事項及び社会教育一般等に関する事項等を調査審議す るほか、生涯学習に資するための施策に関する重要事項に関し必要と認める事項を文部大臣又は関係行政機関の長に建議することとされており、同審議会は、三 年二月に文部大臣から「今後の社会の動向に対応した生涯学習の振興方策について」諮問を受け、四年七月に答申を行った。

  生涯学習が根付くためには、それぞれの地方において、関係者の連絡・調整により多様な事業が展開されることが重要である。このため、文部省では、既に臨時 教育審議会が発足する以前の昭和五十七年度から都道府県において教育委員会・首長部局・教育関係者等で構成される生涯学習推進会議等の連絡調整機関の設置 を奨励・援助していたが、これらは、六十三年には、全都道府県に設置されるに至った。また、その後制定された生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整 備に関する法律第十一条により、都道府県において、条例で、教育委員会又は知事に建議する権限を有する都道府県生涯学習審議会を設置することができること とされ、平成三年度末までに一八道府県で設置のための条例が制定された。その他の都府県においても設置に向けて準備・検討を進めているところであり、近い 将来、ほとんどの都道府県に設置されるものと予想され、今後、生涯学習の推進体制の整備が一層進むものと期待される。

  さらに、市町村においても、教育委員会と関係機関・団体等との連携協力体制の整備が図られつつあり、それぞれの地域の特色を生かした多様な施策が展開され ている。特に、近年、「生涯学習のまち」のような宣言を行い、地域を挙げて生涯学習の推進に努める市町村も増えているが、文部省では、昭和六十三年度から 生涯学習モデル市町村事業を実施し、こうした動きを積極的に支援してきている。

生涯学習フェスティバル

  文部省では、広く国民一般に対して生涯学習に係る活動を実践する場を全国的な規模で提供すること等により、国民一人一人の生涯学習への意欲を高めるととも に、学習活動への参加を促進し、生涯学習の一層の振興に資することを目的として、平成元年度から、地方公共団体等との共催により生涯学習フェスティバルを 開催している。これは、生涯学習活動の普及・啓発及び生涯学習社会への課題・研究・諸提案に関するシンポジウム・講演・フォーラム等や、生涯学習を体験す る教室・講座・展示・コンクール・公演、生涯学習に関連する多様な情報を展示・紹介する生涯学習見本市等の多彩な催しを総合的に実施する全国的規模のイベ ントである。

 第一回は、元年十一月に千葉県において開催され、二四万人余が来場した。二年は京都府で開催され、四五万人余が来場した。三年は大分県で開催され、六八万人余が来場した。

  この事業は、多くの人々に生涯学習の楽しさに触れる啓発の機会を提供するものであると同時に、文部省及び教育行政関係者と、各種教育団体、さらには近年、 生涯学習において非常に大きなウェイトを占めるに至っている民間教育事業者との連携協力の促進の場となる面からも、重要な役割を果たしている。この事業の 成果を踏まえ、都道府県や市町村において、独自に生涯学習に関する祭典・イベントを実施する動きも広がりつつある。

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-- 登録:平成21年以前 --