三 生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律の制定

 中央教育審議会の答申を受け、文部省は、「生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律案」を国会に提案し、同法は平成二年六月に成立し、七月から施行された。この法律は、いわゆる基本法的性格を持つものではなく、生涯学習の振興という時代の要請にこたえるため、文部省を中心として、当面実現可能な、また速やかに実施すべき諸施策を規定したものであり、将来における生涯学習の推進のための諸施策の先導的役割を果たそうとするものであった。

 法律では、中央教育審議会答申の提言のうち、法律になじむかどうか検討の結果、1)生涯学習の振興に資する都道府県の事業、2)地域生涯学習振興基本構想、3)生涯学習審議会等、という三つの施策が盛り込まれた。

 第一に、生涯学習の振興に資するための都道府県の事業の推進体制の整備について定め、都道府県の教育委員会が学習や文化活動の情報の提供、学習方法の開発等の事業を一体的総合的に実施することについて規定している。

 第二の地域生涯学習振興基本構想は、一定の特定地区内において、その周辺の広範囲にわたる住民のために、教育・スポーツ・文化等に関する高度かつ多様な学習の機会の提供を重点的に行うとともに、それに際し、民間事業者の能力を活用するための方策を規定したものである。

 第三に、生涯学習の振興の中心的役割を果たす文部省に、生涯学習に資するための施策に関する重要事項等を調査審議する生涯学習審議会を置くこととし、同時に、都道府県においても、生涯学習審議会を設置することができることとし、市町村においては、関係機関及び関係団体との連携協力体制の整備に努めることを求めている。

 もとより、生涯学習振興の行政は、この法律に掲げられたことに尽きるものではなく、取り組むべき課題は少なくない。しかしながら、この法律の成立により、生涯学習振興を進めるための国及び都道府県における体制の整備が図られた。

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