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一 臨時教育審議会設置までの教育改革の検討

 昭和五十年代の中ごろになって、核家族化や都市化の進展を背景としつつ、社会連帯意識の喪失、家庭の教育力の低下等が進み、他方で第二次ベビーブームによる過大規模校の増加や受験競争の低年齢化等、児童生徒の教育環境が悪化した。青少年非行が急上昇し、また、小・中学校でのいじめ、登校拒否、校内暴力等社会的に大きな関心を呼ぶ事態が頻発した。中でも五十八年二月に横浜市内で発生した浮浪者襲撃事件、東京都町田市の中学校での教師による生徒の刺傷事件、さらに同年六月愛知県の戸塚ヨットスクールでの訓練生の死亡事件など、社会に衝撃を与える事件が発生した。

 文部省においては、こうした時代の課題に対応すべく五十六年に発足した第一三期中央教育審議会が審議を続け、五十八年十一月、同審議会の教育内容等小委員会が「審議経過報告」を取りまとめ公表した。経過報告では、学校教育をめぐる諸問題を分析し、その画一性、硬直性を指摘するとともに、今後重視されなければならない視点として、自己教育力の育成、基礎基本の徹底、個性と創造性の伸長、文化と伝統の尊重等を掲げた。学校制度についても、弾力化や時代の変化に柔軟に対応する必要があるとし、「現行制度を最善のものとして新しい可能性の開発や実施を拒む考え方は適当ではない」とした。また、文部省においては、五十八年七月、事務次官を座長に、「児童生徒等の急増、急減対策等に関する省内連絡会議」を発足させ、児童生徒数の急増急減に関連して幅広く学校教育に関する諸制度の在り方の検討を開始した。

 しかし、この時期と前後して、いわゆる教育荒廃に文部省限りで対応すべきでなく、政府全体としてこれに取り組むべきであるという考え方も強くなり、五十八年六月、法律に基づく審議会ではないが、内閣総理大臣の裁定により「文化と教育に関する懇談会」が設置された。同懇談会は、五十九年初めになって、臨時教育審議会が設置されることになったことから、予定を早め、五十九年三月「報告」をまとめた。この報告書は、教育改革の基本理念を示しており、教育面に深刻な病的現象が起きている根本原因として、1)学校教育の急成長過程で発生したゆがみへの対応の遅れ、2)教育の機会均等の理念が画一主義に転ずるなどの教育理念の形骸(がい)化の二点を挙げている。また、教育改革の方向と課題としては、小学校低学年の教科再編成、中・高校教育の継続化、中等教育の多様化・弾力化、高等教育機関の間の単位の相互認定、一般教育と専門教育の統合・再編成、大学の修業年限の弾力化などを掲げている。

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