四 臨時行政調査会

 昭和五十六年三月、行政全般に検討を加え、社会経済情勢の変化に対応した適正かつ合理的な行政の実現に資するため、総理府の附属機関として、臨時行政調査会が設置された。この時、多額の赤字国債の発行を余儀なくされるなど国の財政が窮迫していたことから、同年六月には、いわゆる「ゼロシーリング概算要求」の閣議了解がなされ、行財政改革による徹底的な歳出削減により、財政再建を推進することが必要であるとされた。臨時行政調査会は、行政改革の突破口を「増税なき財政再建」に求め、同年七月、第一次答申を提出したが、文教関係についても、公財政支出の縮減と受益者負担の増額を求めるなどの観点から、多岐にわたる提言を行っている。その後、臨時行政調査会は、五十七年七月に基本答申を、翌五十八年三月に最終答申を提出し、同月解散したが、行財政改革の仕事はその後の臨待行政改革推進審議会に引き継がれた。

 臨時行政調査会の文教関係についての主要な指摘事項としては、1)義務教育費国庫負担金関係では教職員の増加を抑制する、2)教科書無償は廃止等を含め検討する、3)公立文教施設等の教育施設の事業量を大幅削減する、4)私学助成の総額を前年度以下に抑制する、5)国立大学の学部等の新増設を原則として見送る、6)育英奨学事業について有利子貸与制度への転換と量的拡充を図る、などがあり、五十七年度以降の予算編成において大きな影響を与えた。

 文教行政は、本来、財政状況に対応して伸縮し難い面を持っており、特に、五十年代には、第二次のべビーブームにより学校教育が量的拡大をする時期を迎え適切な条件整備が必要となっていた。しかしながら、臨時行政調査会の提言に沿って、予算要求時のゼロシーリング、さらにはマイナスシーリングにより国の予算で政策的経費に充てる一般歳出の抑制が続き、文教関係が大半を占める「文教及び科学振興費」を見ても五十七年度から六十三年度までの七年間ほぼ同額で推移した。

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