二 中央教育審議会四十六年答申の実施状況

 文部省では、中央教育審議会の四十六年答申を受けて、直ちに諸課題を実施に移すべく昭和四十六年七月事務次官を本部長とする教育改革推進本部を設けた。しかし、一方ではこの四十六年答申に対しては、先導的試行や高等教育の種別化などについては、関係者の合意が得られていない状況だったことから、改革が進捗(ちょく)しない面が生じた。しかしながら、それ以外の拡充方策や教育の質の改善に関連する事項については、四十年代後半から五十年代の文教行政において、各種審議会や関係方面の意見を踏まえ、実現可能な機会をとらえて、数多く実施に移された。

 その主要なものを見ると、初等中等教育については、教育内容の精選・小中高校の一貫等を趣旨とする学習指導要領の改訂(五十二・五十三年)、公立学校の学級編制・教職員定数改善計画(四十九年以降)、幼稚園教育振興計画(四十七年以降)、養護学校の義務制の実施(五十四年)などがある。教員の資質・能力の向上については、いわゆる人材確保法による教員の待遇改善(四十九年以降)、新教育大学の設置(五十三年以降)などがある。高等教育については、高等教育懇談会の設置(四十七年)による高等教育計画の策定(五十一年以降)、高等教育制度の多様化・弾力化のための制度の整備(単位互換制度、設置基準の制定・改正など)、新構想大学の設置(四十八年以降)、独立大学院制度の創設(五十一年)などがある。私学助成(四十五年創設)については、四十六年答申では国の財政援助の充実等について提言しているが、私立学校振興助成法の制定(五十年議員立法)により格段の充実が図られた。また、五十四年度入学者選抜から、共通第一次学力試験が実施されたが、四十六年答申においても、入学者選抜制度の改善について提言している。

 なお、六十年代以降においても、四十六年答申は、臨時教育審議会など各種審議会の提言やそれを受けた教育改革の実施に直接間接に影響を及ぼしていることが少なくない。例えば臨時教育審議会の提言を受けた初任者研修制度の実施(平成元年以降)なども、四十六年答申以来、各種の審議会等で提案されたものが実現を見たものである。

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