一 中央教育審議会四十六年答申

 中央教育審議会は、昭和四十六年六月、「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について」を答申した。この答申は、明治初年と第二次大戦後に行われた教育改革に次ぐ「第三の教育改革」と位置付け、学校教育全般にわたる包括的な改革整備の施策を提言している。

 答申の背景としては、一つには、社会の急速な進展と変化が学校教育に多くの新しい課題を投げ掛けていたことであり、もう一つは、高等学校及び大学への進学率の上昇やベビーブーム世代の到来による急速な量的拡充が教育の多様化を要請し、学校教育の在り方の見直しが求められるようになったことである。このような動きは既に三十年代から始まり、中央教育審議会は、三十八年には、「大学教育の改善について」の答申を行い、産業・経済及び科学技術の発展や、高等教育の対象が選ばれた少数者から能力、適性等において幅のある階層へと変わったことに対応し、高等教育も多様化を進めるとともに、高等教育の計画的整備を図る必要があることなどを提言している。また、四十一年には、「後期中等教育の拡充整備について」の答申を行い、高等学校進学率の上昇に伴い、生徒の能力や将来の進路に応じた教育が行われるよう教育内容を多様化する必要があることなどを提言した。

 これらの答申の考え方を引き継ぎつつ、中央教育審議会では、四十二年以来四年の歳月をかけて、就学前から高等教育までの学校教育全般について検討し、四十六年答申として多岐にわたる事項について答申した。およそこの種の包括的な課題について検討するとき、その答申事項は性格的に多岐にわたるが、今、答申事項を概念的に分類すると、三つの類型が考えられる。一つは四・五歳児から小学校低学年までを一貫する学校や中学校と高等学校を一貫する学校の設置等初等中等教育の学校体系の改革に関する先導的試行や高等教育機関の種別化・類型化による高等教育の多様化のように従来の基本的な制度や仕組みを組み替える改革である。二つ目は幼稚園教育の普及や特殊教育の充実等のように教育の機会均等の実現を図るなど一層の量的拡充方策とも言うべきものである。五十一年に初めて策定された高等教育計画も大学の規模、適正配置等の観点から計画的に整備する拡充方策の一つと言えよう。三つ目は、教育の質にかかわるもので、教育課程や教育方法の改善、教育条件の水準維持、教員の養成・研修・待遇改善等がこれに当たる。学校の管理運営体制の改善等も教育の質の向上の類型に入ると言えよう。

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