六 芸術文化の国際交流

 戦後、古美術展の国際交流は、年とともにその繁度を高めている。わが国古美術の海外展は、政府レベルのものが圧倒的に多いが、これに対して外国古美術展の国内開催は、そのほとんどが民間レベルで行なわれている。

 今日までに、政府レベルで開催した外国の古美術展には、文部省とフランス文化省の共催で、昭和四十一年東京国立博物館で開催した「フランスを中心とする一七世紀ヨーロッパ名画展」と、文化庁とボストン美術館の共催で、四十七年、京都および東京の国立博物館で開催した「ボストン美術館東洋美術名品展」の二展である。また、これら古美術展、特に、日本古美術の海外展について、いわゆる総合展よりテーマ展の開催が多くなっていることが注目される。

 戦後、ユネスコの協力によって国際演劇協会(ITI)が設けられ、各国にその支部が設立され、各国の伝統上演芸術の国際交流は急に脚光をあびることになった。二十九年のべニス演劇祭での能の上演、三十二年、ベルリンの世界パントマイム祭への歌舞伎の参加、三十七年、バンクーバー博覧会への文楽の派遣を契機に、わが国の能、歌舞伎、文楽等は、それぞれ、強い興味と関心をもって諸外国によって受け入れられてきており、財団法人国際文化振興会が、わが国の伝統上演芸術の海外派遣を活発に行なっている。

 なお、わが国の国際的地位の向上に伴い、文化の分野においても、わが国に対する諸外国の理解と国際交流の増進の必要が痛感されるに至り、四十七年に「国際交流基金」が設立されることとなった。この基金は、人物交流、外国における日本研究に対する援助ならびに日本語の普及、日本文化紹介資料の作成等の事業を通じて、わが国に対する諸外国の理解と、相互理解の増進のため、国際文化交流事業を効率的に行なうことを目的としている。基金の設立に伴い、国際文化振興会は解散、その事業は、この基金によって引き継がれることになっている。

 国際機関との協力については、わが国は、ユネスコ傘下の機関として設立された文化財保存修復センター(通称ローマ・センター)に四十二年以降加盟している。このセンターは、加盟国数の増加とともに、着実に発展のみちをたどっているが、近くアメリカ合衆国、ソ連の加入により事業のいっそうの発展が期待される一方、救済の手を待つ世界の文化財はぼう大な量にのぼっており、わが国も東洋圏の代表として、国際舞台での活躍が切望されている。

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