二 留学生の招致・派遣と教育協力

 戦後の国際交流事業のなかで注目すべきものに、文部省による、多数の国費外国人留学生の招致と、発展途上国の教育発展のための協力・援助の二つである。このほかに政府としては、コロンボ計画等により、海外技術協カ事業団(OTCA)を中心として、発展途上国の技術者を対象とした教育・訓練事業を実施している。これは質量ともに充実したもので、海外より研究者・技術研修者をわが国に招致して、教育・訓練を行なったり、発展途上国にわが国の専門家を派遣したり、さらには、現地に技術研修センターを設けて訓練を行なったりしている。これらの事業のうち教育に関係するものについては文部省も協力している。

 国際機関を通じて行なうものとしては、ユネスコ、国連等と協力して行なっている諸教育訓練計画がある。(「ユネスコ」に関しては第七節参照)

 戦後の国費外国人留学生の制度は、昭和二十九年度に二三人を受け入れた時に始まる。この制度の重点は、東南アジア諸国からの留学生の受け入れにおかれ、人材の養成を通じてこれらの発展途上国の社会的・経済的発展に寄与することに協力しようというものである。そうして制度創設以来国費外国人留学生の数は年々増加し、四十六年までに東南アジアを中心に六十数か国から合計二、五〇〇人に達している。一方、私費留学生の数も年々増加しており、戦後今日までに一万人以上が来日したと推計される。このほか、わが国の賠償金により、三十五年度から四十年度にかけて約四○○人のインドネシア政府派遣留学生を受け入れている。

 現在、わが国には、約四、六〇〇人の外国人留学生が在学しているが、そのうち国費留学生は、約七〇〇人、私費留学生は約三、九〇〇人で、これらの八割以上がアジア諸国からの留学生で占められている。留学生のうち、学部在学者が約六割、大学院在学者が約四割弱、その他が短期大学に在学中である。

 外国人留学生に対しては、受け入れ大学で教育、厚生補導が行なわれているほか、三十二年から文部省の補助金を受けて「財団法人日本国際教育協会」が、留学生会館の運営、医療費補助、帰国後の事情は握そのほか留学生のための各種世話事業を行なっている。

 近年、海外における日本語教育もしだいに普及しつつあるとはいえ、わが国で受け入れる外国人留学生の大多数は、日本語の力のないまま来日する結果となっている。現在、留学生に対する日本語教育は、東京外国語大学附属日本語学校および特設日本語学科、大阪外国語大学留学生別科のほか、私立大学、各種学校等で行なわれているが、一般外国人を対象とするものも含め、国内の日本語教育機関は合計一〇〇を越えている。外国人に日本語を正しく効果的に教えるため、日本語教育の教材の開発に多くの努力がなされてきているが、文化庁としても漢字辞典、専門用語辞典、基本語用例辞典を始めとして、日本語読本や日本語教育指導参考書を作成して各教育機関に配布し、また、日本語教育映画、オートスライドを制作して、日本語教育の充実・発展に資している。

 戦後、外国政府等の奨学金による日本留学生の海外派遣は、「研究者・教員の国際交流」の項で述べた「ガリオア」、「フルブライト法による計画」によりアメリカ合衆国留学の道が開かれたが、これと相前後して、政府奨学金を提供する国がしだいに増えてきた。これらいわゆる「公費留学」による日本人留学生の派遣数は、現在、年間約五〇〇人であり、今日まで世界三〇数か国、約九、五〇〇人に及んでいる。このほか私費留学生として、年間約三、二〇〇人の日本人が海外に留学している。

 文部省では、特にアジア諸国についての地域研究の振興に資するため、四十三年度から国費により、インド、ネパール、タイ、フィリピン等の諸国に、日本人留学生を二年間派遣する制度を実施し、地域研究者の養成を図っている。高等教育の国際化促進の要請が高まりつつある現在、今後とも、留学生受け入れ体制の整備を図りつつ、留学生制度の拡充を行なうとともに、日本人学生の海外派遣を積極的に促進することが必要である。

 なお、高等学校生徒の留学については、文部省は、毎年日米交互に開催される日米学生会議、ワールド・ユース・フォーラム主催世界高等学校生徒集会およびAFS国際奨学金による高校生のアメリ力合衆国への留学等のほか、オーストラリアと西ドイツへの高校生の夏期休暇を利用しての派遣に協力している。

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