三 無形文化財および民族資料の保護

無形文化財の保護

 昭和二十九年の法律改正によって重要無形文化財の指定制度が新設されて以来、四十七年一月末現在で六四件の指定が行なわれている。指定の内訳は表93のとおりである。

表93 重要無形文化財指定一覧

 表93 重要無形文化財指定一覧

 そして、これらの重要無形文化財の保持者と認定し、その保持者(各個指定)に対しては、三十九年度以降特別助成金(四十七年度は一人年間六〇万円)を支給し、そのわざの維持向上と伝承者養成を助成している。

 このほか、日本能楽会、伝統歌舞伎保存会、文楽協会等の芸能関係団体や日本工芸会、久留米絣保存会、香川漆芸研究所等の工芸関係団体に対して補助金を交付して伝承者の養成を図るほか、無形文化財の公開事業の助成を行なっている。

 また、無形文化財保存育成方策の一つとして、その実態を記録にとどめて保存を図る制度があるが、これは、四十七年一月末現在で、芸能関係一一二件、工芸関係三八件を数えている。そして、四十五年度からは新たに地方の民俗芸能の保存育成のための措置として約九〇件を選び、現地公開や記録作成の助成を実施している。

 わが国古来の伝統的な芸能の公開、伝承者の養成等を行なう目的で国立劇場が設置されたのは四十一年六月であった。国立劇場設置のことは、三十年ごろからその議が起こり、国立劇場設立準備協議会を設けて検討が進められてきたものであるが、特殊法人国立劇場の管理・運営の下に開場したものである。以後、国立劇場は、その大小二つの劇場で、歌舞伎・文楽・邦楽・その他の古典芸能を上演し、わが国無形文化財の保存と普及に大きな貢献を果たしつつある。

民俗資料の保護

 昭和二十九年の文化財保護法の改正によって、新たに指定制度が設けられた重要民俗資料については、職業階層から見て、また地域的・時代的に見て、代表的・典型的なものや、それらの特色を示すにたる重要な系列を構成するものについて厳選して指定する方針の下に、同年中に六件を指定し、その後毎年数件ずつ指定を行なってきた。その結果、四十七年一月現在で、総数八四件となっている。近年、産業の近代化や生活様式の変化に伴って民俗資料も急速に散逸、滅失しつつあり、その保存対策を講じつつあるが、最近各地方に急速に設置されてきた地方歴史民俗資料館および五十一年開館を目標に文化庁で設立準備を進めている国立の歴史民俗博物館が、民俗資料の保存活用に大きな役割を果たすことが期待されている。なお、民俗資料の保存のために、三十四年度から民俗資料収蔵庫を国庫補助により建設してきており、四十六年度までに二〇館を建設した。また、無形の民俗資料については無形文化財と同様の選択記録作成の制度があるが、二十九年にこの制度が新設されてから四十六年度までの間に、三四種目が選択されている。

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