四 各種学校における産業教育

 各種学校は、明治の初期から今日に至るまで、さまざまな分野において教育の普及と発展に貢献してきたが、戦後は主として職業、家政その他実際生活に必要な知識・技術を習得させることを目的とする実用的・専門的な教育機関として、社会の要請にこたえて大きな役割を果たしている。また戦後の各種学校は中学校または高等学校卒業後の青年のための教育機関としても重要な地位を占め、昭和四十六年五月一日現在、学校数八、〇五七校、生徒数一三〇万九、〇七九人を数えるに至っている。

 教育内容による種別をみると、和洋裁・料理など主として女子を対象にした家政に関する知識・技術などを教授する課程が最も多く、四十六年現在、生徒数で全体の約三八%を占めている。これら家政関係の課程のなかには花嫁修業的な色彩の強いものもあるが、女子の技能教育あるいは職業教育に寄与しているとみられるものも少なくない。一方、無線通信・ラジオ・テレビ・電子計算機等工業系技術に関する課程、経理・タイプなど商業系の知識、技術に関する課程、その他理美容・看護など各種職業に必要な教育を行なう課程等、第二次、第三次産業と密接な関連をもって職業に必要な知識・技術を教授する課程も、わが国産業の発展を反映して戦後急激に増加しており、生徒数で約四六万人、全体の約三五%を占めている。

 このように、各種学校は、わが国の産業教育においても重要な地位を占めており、その社会的意義が広く認識されるに伴い、各種学校教育の振興を積極的に図るべきであるとする意見がしだいに強くなってきている。しかし、現行の学校教育法の関係規定は、そのような見地から制定されたものではなく、また各種学校規程も各種学校教育振興の意図をもちながらも、学校教育法のわく内で定められたものであるため、その面ではふじゅうぶんな点もあり、制度改善の必要性が関係者から要望されるようになった。

 他方、このような状況を反映して、一部の都道府県においては、地方の各種学校協会に対する助成、各種学校に対する融資、助成等の措置が講じられるようになり、国においても三十九年以降工業系・医療系等の一定の課程を有する各種学校について、私立学校振興会(現在は日本私学振興財団)による融資の道を開いたわけである。今後社会の要請にこたえて各種学校の整備・充実を推進するためには、多種多様な目的、性格、内容、規模を有する各種学校を画一的に取り扱う現行制度ではふじゅうぶんな点が多いので、後期中等教育あるいは高等教育の拡充・整備の問題とも関連して、各種学校の特色と実態に即した制度の改善を行なうことの必要が痛感されている。

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