二 教員研究・研究機関の整備・拡充

国立教育研究所

 文部省所轄の国立教育研究所は、教育に関する実際的・基礎的な研究調査を行なう中心機関として昭和二十四年六月に設立された。まず組織については、設立当初は庶務部、研究調査部、指導普及部、資料部の四部制で発足したが、翌年資料部を附属教育図書館に改め、以来教育内容、教育方法、教育制度などの各分野の研究・調査の組織の拡充を図り、現在は研究部門が五研究部一七研究室となっている。この間、四十二年度にはユネスコとの協力事業遂行のためにアジア地域教育研修室が指導普及部内に設けられ、また四十七年度からは、第五研究部が、科学教育研究センターに発展することが予定されている。

 同研究所の研究・調査のおもなものは、二十七年度~三十二年度に「地方教育行政制度に関する調査」、四十二年度に「学校経営と教職員のモラルに関する研究」、三十六年度以降「大学入学試験に関する研究」、四十年度以降「大学における人間形成の研究」などの研究・調査活動を行なうとともに、諸外国と共同して、三十六年度~四十年度に「国際数学教育調査」、四十一年度~四十六年度に「国際理科教育調査」をそれぞれ実施してきた。

地方の教育研究・教育研修センターの設置と整備

 理科教育の振興を図るため、国は昭和三十五年度から五か年間に各都道府県が設置する理科教育センターの施設費について三三か所分の補助を行なってきたが、理科のみならず各教科の指導を充実し、教員の研修活動一般を促進するための中心的な施設の設置要望の声が強まってきた。

 そこで四十年度から各都道府県が理科を含めた各教科、進路指導、教育相談等の教育全般にわたる研修を目的とする教育研修センターを設置する場合、一施設当たり三、〇〇〇万円の国庫補助を行ない、本格的な教育研究・研修センターの設置を奨励してきた。その結果四十六年度までに教育センターは、三三都道府県に設置をみ、教員の研修事業の充実および自主的研究団体の活動に大きく貢献している。

教育研究団体とその助成

 教員の資質向上は、教育委員会の実施する研修等と相まって、教員みずから自発的に行なう研修に期待するところがきわめて大きい。昭和三十年の半ばごろから、教員の間に教職の本質的使命を自覚し純粋に教育研究を促進すべきだという気運が盛り上がり、組合とは別に自発的に教育研究団体を組織する動きが活発になってきた。

 しかし、これらの団体は組織および財政基盤の弱小なものが多く、所期の成果を収めることが困難と思われるので、国では三十五年度から初等中等教育の振興に役だつ研究活動を行なう団体に対して財政援助を行なうとともにその組織の自主的な整備・統合・再編成を助け、団体の組織基盤を強化して研究活動の円滑な運営と効果の高揚を助けてきた。補助金交付額の推移をみると、初年度の三十五年度は一、三六八万五、〇〇〇円であったものがその後の強い要求を反映して、三十八年度四、八六八万円、四十一年度一億六、六一五万円と大幅に伸びたのが注目される。その内容は、一つは中央教育研究団体に対するもので、すなわち、全国的地域を結成単位とする教育研究団体で、団体の行なう研究活動に要する経費について、団体の年間会費収入総額を限度として定額を補助し、二つは都道府県(地方)教育研究団体に対するもので、都道府県の区域を結成単位とする教育研究団体で、都道府県がその団体の会費収入を限度額として補助金を支出した額の二分の一相当を当該都道府県(指定都市を含む。)に補助している。

表68 教育研究団体補助金交付額の推移

表68 教育研究団体補助金交付額の推移

 なお、このほか文部省は、小・中・高校の教員等が行なう科学研究を助成するため科学研究費補助金(奨励研究(B))を実施しているが、その起源は古く師範学校、中学校の教員等に交付された昭和十六年の科学奨励金に遡り、四十六年度の交付額は、二、五六〇万円、三一〇件に及んでいる。

国立教育会館の設置

 昭和三十九年六月、全国の教育関係者のための研修会場となり、また教育に関する内外の資料の展示等を行なって、広く教育関係者に利用させ、教育研究活動の促進を図ることを目的として、国立教育会館が文部省南隣の地に設置された。四十五年度における研修室等の利用回数は一万余回にのぼり教育関係者に幅広く活用されている。また、教育関係職員の長期宿泊研修を目的とする三〇〇人の収容規模をもつ分館を筑波研究学園都市に建設することがすでに決定されている。

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