六 高等学校入学者の選抜

入学者選抜方法の改善

 昭和三十一年九月に、学校教育法施行規則の一部が改正され、従来空白となっていた高等学校入学者選抜方法に関する事項が新たに規定された。こうして、それまで通達によって指導されてきた事がらが、法令上に明記されたのである。さらに、三十八年以降の高等学校生徒の急増に際し、入学者の選抜が適正円滑に行なわれるよう三十八年八月に、同施行規則の一部を改正した。そのおもな要点は、高等学校の入学は、中学校長から送付された調査書や選抜のための学力検査の成績などを資料として行なう入学者の選抜に基づいて許可するものとし、入学志願者が入学定員以内のときは選抜が選考となるが、特別の事情がある場合のほか学力検査は実施することとされた。また、この省令改正を機会に通達(三十八年八月二十八日付け)が発せられ、省令改正に伴い従前の通達の関係部分を修正したほか、面接、進路指導の強化、公立高等学校の通学区域、入学調整の措置の強化がその内容であった。

表53 選抜学力検査の実施教科の年度別推移

表53 選抜学力検査の実施教科の年度別推移

 しかしながら、その後の高等学校への進学率の急激な上昇、特定校への志願者の集中等に伴って過度の受験準備教育が誘発されているという批判が高まってきた。このような事態に対処するため、文部省は、四十一年三月に「高等学校入学者選抜方法に関する会議」を発足させ、その報告をもとにして同年七月に、「公立高等学校の入学者選抜について」の通達を発した。この通達の主要な点は、1)中学校長から送付される調査書をじゅうぶん尊重することとし、調査書の信頼度と客観性を高めるため、記載内容および取り扱い等については、各都道府県においてじゅうぶん研究して適切に定めること、2)学力検査の実施教科については、各都道府県において従来の実施状況とその中学校教育への影響を考慮し、高等学校の種類と実情に応じて適切に定めることなどであった。

 この通達によって指導されたこともあって、四十二年度以降の公立高等学校の入学者選抜方法について、各都道府県教育委員会では、中学校教育の正常な運営を確保し、受験者の過重な負担の軽減を図るため、地域の実情に応じた各種の改善が行なわれてきている。なお、四十六年春の公立高等学校入学者選抜の実施状況の概要は、1)選抜学力検査の実施教科は逐年軽減されてきており、2)調査書の信頼度を高めたり、その公正確保のための措置がとられ、3)合格者決定のために用いる資料の取り扱いにおいて、学力検査の結果と調査書の成績とを主たる資料としているが、大部分の都道府県において、調査書の学習の記録の成績に学力検査の結果と同等またはそれ以上の比重をかけて取り扱っており、4)特定校への志願者の集中と学校間の格差を少なくするため、いわゆる学校群制度などの総合選抜の方法がとられている。すなわち、八都府県において、同一県内の同一地域または学区においてその措置が実施されている。

お問合せ先

学制百年史編集委員会

-- 登録:平成21年以前 --