四 教材・教具の整備

理科教育振興法

 新学制は実施されたが、戦中、戦後の荒廃の中で、学校における理科の実験実習用の教材・教具ははなはだしく不足し、新時代に即応する理科教育の実施がきわめて困難な状態にあった。そこで、理科教育の実験・実習を重視して、昭和二十八年、「理科教育振興法」が制定された。この法律は、科学的な知識、技能および態度を習得させ、くふう、創造の能力を養うことなどを目的とし、理科教育に関する総合計画、教育内容・方法の改善、施設・設備の整備・充実、理科担任教員の現職教育と教員養成計画の樹立等を国の任務として規定している。

 同法施行令によって理科教育設備基準が設定され、二十九年度から施行された。この基準は、小学校、中学校、高等学校、特殊教育諸学校別に規定され、国がその購入費の二分の一を補助することとなった。かくて、理科教育に必須な設置基準が明らかになり、かつ、その財政的裏づけが保障される措置が確立されたのである。その後、教育課程の改訂に即し、また機械・器具の進歩等に応ずるため、三十六年度と四十一年度には全学校について、四十六年度には小学校、四十七年度には中学校について設備基準の改訂を行ない、四十八年度には高等学校について改訂を行なうこととしている。また、同法の規定とは別に、四十五年度からは、時代の進展と教育課程の改訂に即して新たに必要とされる算数・数学教育の設備について、義務教育費国庫負担金の対象とする教材基準とは別個に設備基準を設け、二分の一の国庫補助を行なうこととなった。なお、これらのほか、理科教育および産業教育審議会の答申を受けて、四十三年度から高等学校に理科・数学に関する学科を設置することとなり、その設置を促進するため、別途理科および数学教育のための設備を補助することとなった。

学校図書館法

 学校における図書館は新教育の一つの重要方針であり、その充実と活動は期待されていた。

 昭和二十四年七月に、文部大臣の法令によらない諮問機関である「学校図書館協議会」が「学校図書館基準」について答申した。以来、同基準の法制化を期待する声が高まり、二十八年に至って、議員立法で「学校図書館法」が制定され、小・中・高校および特殊教育諸学校に学校図書館が置かれることとなった。同法に基づく主たる施策は次のとおりである。

 (一)司書教諭の養成については、二十九年度以降、司書教諭養成の講習を実施してきたが、四十七年一月現在、約五万人の有資格者を数えるに至っている。(二)学校図書館の設備および図書の整備については、二十九年度以降、公立学校に対して、「書だな」、「カードケース」および「図書」が政令で定める一定基準に達するのに必要な経費の二分の一を国が負担することとしたが、整備目標を達成したので、小・中学校については三十二年度で負担を打ち切り、以後は教材費の国庫負担金に含めて措置することとし、高等学校についても三十六年度をもって負担を打ち切った。

新しい教育機器の利用

 昭和三十三年度の改訂学習指導要領において視聴覚教材の利用を掲げ、その手引書等を刊行してきたが、それ以来各学校においては視聴覚教材の利用は非常な勢いで進行した。昭和四十年代にはいって、いわゆる教育機器利用による学習指導法の改善が特に注目されるようになった。教育機器ということばは、特に定まった概念があるわけではないが、一般には、従来から利用されてきている放送、映画、スライドに加え、近年クローズアップされてきたVTR、OHP、LLなどの視聴覚機器から、シート式磁気録音機などの各種個別学習機器、反応分析装置、さらにはCAI(Computer Assisted Instruction)に至るまでの機器を意味して使用されている。CAIはともかくとして、他の教育機器については、従来の一せい指導の改善、個別またはグループ別指導の機会の増大といった観点から、諸々の課題をかかえながらも、強く関心がもたれるようになった。

 文部省では、このような時代のすう勢を考えて、まず、教育機器の利用についてじゅうぶん研究を行なうこととし、四十四年度に全国二二の中学校を教育機器研究指定校として三年間の研究を委嘱した。さらに四十五年度には小学校についても同様の指定校を設け、四十七年度には高等学校についても教育方法研究のための指定校を設けることとなった。一方、これと並んで、文部省では、四十五年度からは、教育機器利用に関する講習会を毎年開催するようになり、さらに四十六年度からは、中央講習会のほか全国を三地区に分けた地区別の講習会も開催して、教育機器利用に関する指導者の養成を図っている。また、このような教育機器についての研究や研修が、各都道府県においてもすすめられる必要があることから、四十六年度からは各都道府県教育研修センターに対し研修用の教育機器を整備するための国庫補助金を支出するようになった。

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