八 教員および教員養成の整備

教員養成

 新学制の定着に伴い教員に対する高い専門学力と教職教養が要請されるようになり、昭和二十八年、二十九年と教員免許制度が改正され、資格内容の充実が図られた。中央教育審議会および教育職員養成審議会は相次いで教員養成制度の改善・充実のため建策した。これらの意見に基づき、四十一年から四十三年にかけて学芸大学・学部の名称を教育大学・学部に改め、その目的に即した充実が図られ、東京、大阪の教員養成大学に初めて大学院修士課程が設けられた。なお、四十六年には中央教育審議会から将来の方策について答申が出されており、教育職員養成審議会が目下その具体案の検討を進めている。特別な領域の教員養成に関しては、盲学校教員、聾(ろう)学校教員、養護学校教員のそれぞれ養成課程の設置が二十八年以来促進され、また、近年の幼稚園就園率の上昇に伴う幼稚園教員の量質の拡充の要請にこたえて、四十一年から国立の教育大学・学部のすべてに幼稚園教員養成課程を設置する計画が進められている。中学校、高等学校の教科担任教員のうち供給困難なものについては計画養成を図ることとし、二十七年以来、数学、理科、音楽、美術、工芸、書道、保健体育、看護について特別教科教員養成課程を国立の教育大学・学部に設置してきたが、現在その課程数は合計五〇、学生定員は約一、二〇〇人となっている。養護教員の養成と需給もなかなかむずかしい分野で、従来、文部大臣の認定ないし指定した機関で養成されていたが、四十年からは修業年限三年の国立養護教諭養成所を逐次設けて安定的な養成と供給を図っている。現在その数は九である。最後に、高等学校の工業教員の養成については一般の工学部で行なうこととされているが、科学技術者の社会的な需要と重なり、特に工業教育の拡充振興期には所要の工業教員の確保がきわめて困難となった。そこで三十六年、臨時に修業年限三年の国立工業教員養成所を九国立大学に設けてその養成に当たったが、工業科の増設計画が一応達成された四十二年をもってこれは休止された。このように特定な領域の教員の養成、確保のため、国立の教育大学・学部を通じて以上のようなきめ細かい措置が講ぜられた。

教員の研修

 教員の資格の向上、養成の充実とともに教員の研修や現職教育がきわめて重視されてきた。そのための施設としては、昭和三十五年以来都道府県の理科教育センター、四十年以来は他の領域も含めた教育研修センターの設置が進み、国はこれに対して積極的な助成を講じてきた。また教員が自発的に組織する教育研究団体による研究、研修が三十年代にはいってしだいに活発になってきた。これら研究団体の財政基盤の弱小な事情にかんがみ国は三十五年からこれらに財政援助を与え、教員の自発的研究、研修の活発化を応援している。三十九年、全国の教育関係者の研修の場として国立教育会館が設置されたが、四十五年の実績では研修会等の利用は一万回をこえる活況である。また、学習指導要領の改訂の機会の講習会をはじめ教育の各領域にわたり理論、実践、実技についての講習会が毎年文部省および教育委員会によって実施されている。

教員の給与と服務

 教員の人事制度については幾多の措置がなされているが、ここでは特に給与と服務の二点についてふれる。昭和二十八年の給与法の改正により教育職員の俸給表が一般職俸給表から独立し、小・中学校、高等学校、大学のいわゆる三本建てとなり、従来の教育職員の調整額は本俸に含められた。三十二年に等級別の給与体系に移り、以後この等級別俸給表は毎年改訂され、かつ俸給表の構成も種々改正される過程で従前の教員給与の有利性が必ずしも明確ではなくなった。一方、教員の超過勤務については特定の場合のほかはこれを命じない指導方針がとられてきた。しかし、公立学校教員には労働基準法が適用されているため超過勤務の事実をめぐる理解が分かれたため、文部省は教員の勤務状況の実態調査の結果に基づき、超過勤務手当に代えて教職特別手当を支給すべく法案を第五十八回国会に提出したが超勤命令のいわゆる歯止め措置をめぐる論議で成立しなかった。四十六年に至り改めて人事院の意見申し出により、文部省は教員の職務と勤務の態様の特殊性に基づき教職調整額を支給し、超過勤務手当制度を適用しなりこととする法案を作成し、これが国会で成立し、四十七年一月から施行され、多年の懸案でありかつ、学校の管理・運営上の大きな問題であったいわゆる超勤問題は解決した。同時に教職員についてのみ本俸相当の性格をもつ教職調整額が創設されたことは、教員の給与改善に一歩前進を画することとなった。

 教員の服務については、いわゆる教育二法の制定がある。二十八年の「山口日記事件」や「京都旭丘事件」などいわゆる偏向教育事件が契機となって、教員を党派的勢力の不当な支配から守り、その自主性を擁護する趣旨の「義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法」および公立学校の教育公務員の政治的活動の制限を一般地方公務員とは別に、国立学校の教育公務員と同様とする内容の教育公務員特例法の一部改正法のいわゆる教育二法が二十九年六月に施行された。

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